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遊戯王EM【更新停止】/EX-5 サーカス七不思議 作:にしん

 ある日の休日。俺はサーカス併設の施設でエンタメデュエルの講義を受けていた。今日の分が終わったので帰ろうとする。


「ミミカちゃんミミカちゃん!」


本日最後の講義の講師だったミミカちゃんを呼ぶのは講義室入り口にいたローラさん。最前列の席に座っていた俺は荷物をまとめながら耳を澄ませる。


「なぁに、ローラさん?」

「最近話題の“サーカス七不思議”って話知ってる?みんなその話で持ち切りだから私も詳しく聞いてみたの!」

「七不思議?そんなのあったんだね~。どんなの?」

「七不思議!?」


俺はつい反応してしまう。こういう不思議なことについてはやはり俺が男だからか、子供だからか。気になってしまうのだった。


「おっ、虹くんも気になるかいなるかいかい?ふふ、話してあげようじゃないかぐへへ」


何やら変ににやけるローラさん。よほどすごい内容なんだろう。ミミカちゃんも興味津々に聞く。

ローラさんはわざとらしく真面目な顔になり、右人差し指を立てて語り始める。


「まずは1つ。これは観客から聞いた話なんだけど、サーカスをやる日に限って一部の観客席で謎の声・・・まるでお化けのようなおどろおどろしい声が聞こえるんだって。「ウオオォォ~ン」って感じらしいよ」

「お、お化け!?きゃー!」

「お化けかぁ・・・ん?」


ローラさんの「ウオオォォ~ン」の発音に俺も聞き覚えがある。確か俺が初めてこのサーカスの舞台裏に来た時・・・


「ま、まさか虹くんも聞いたことが・・・!」

「もしかして、サーカスシステム?の音じゃない?いっつも隙間風みたいな音してるし」

「「あっ・・・」」


ローラさんとミミカちゃんは俺の発言に顔を見合わせる。


「なーんだ、それかぁ」

「お化けじゃなくてよかったぁ~」


七不思議の1つ目、完。


「んじゃ次。サーカス裏の花畑なんだけど・・・季節じゃない花がいっつも咲いてるの。すごい不思議だよねー」


花畑あるのか。いつも正面口とここの施設、隣のカードショップしか利用していないから全く知らなかった。だけど、確かに季節じゃない花が咲いているのは確かに不思議だ。

だけど、ミミカちゃんは少し悩んだ後すぐに答えを出した。


「あっ、それ育ててるのあたしだよ~。すごいでしょ?」

「なーんだ、ミミカちゃんかぁ」


流石はチアブルームの応援。七不思議の2つ目、完。


「うーん、じゃあ次。隣にカードショップあるでしょ。そこのー・・・」


しばらく七不思議の話で盛り上がったものの、全て心当たりのある内容だったり当事者だったりと七不思議じゃない感じだった。だけど、最後の1つだけは本当に不思議なものだった。


「うーん、これが最後。最近起こり始めたんだけどね。ここって夜になると誰もいなくなるから真っ暗でしょ?」

「「うん」」

「なのに、たまーに団長室と隣の準備室に明かりがついてるの。そこから変な笑い声が聞こえてくるの。しかも2人以上」

「だ、団長じゃないの・・・?」

「作業してたら笑い声聞こえないよな・・・で、電話してたとか?」

「私も最初はそう思ったよ。確認のために外から近づくといきなり静まり返り、真っ暗になった・・・そして、ガラスが割れる音がした・・・」

「「な、なんだってー!?」」


不思議どころか心霊現象などの超常現象っぽい内容にビビる俺とミミカちゃん。そして自分で話しておいて何故かガクブルしているローラさん。


「と、というわけで私たち3人で確認したいと思う」

「マジかよ・・・」

「こ、怖いよぉ」

「さ、3人いるから大丈夫・・・多分。とにかくまずは暗くなるまで待つしかないね。私ジュース買ってくる」



・・・



 施設を出た時にはお外は真っ暗、星空広がる夜になっていた。俺たちはサーカスをぐるっと回り、団長室があるであろう窓の近くまで来る。セキュリティのためか、サーカスの壁から数mは柵があるので近づけないが、内側にミミカちゃんの花畑がありかつ、その柵の内側に入るにはサーカスに入らないといけない。


「見て・・・」

「「明かりがついてる・・・!」」


団長室と隣の準備室の窓は明るかった。だけどあの笑い声はまだ聞こえてこないようだった。


「よ、よし・・・サーカスに入って確認しよう」

「ついに正体を見に行くのか・・・なんだかわくわくするな」

「ふえぇ、怖いけど頑張る・・・」


裏口かつサーカス団員専用入り口に行く。ローラさんが開けようとすると、ミミカちゃんが何かに気づく。


「ねえ、何か落ちてるよ?」

「ん?暗くてよく見えないな・・・」

「ちょっと待ってね。スマホスマホスマホス・・・っと」


ローラさんがスマホのライトを照らすと、そこにあったのは数枚の白い羽根。鳥でもいたのだろうか。いや、いるとしたらスズメかハトぐらいだろう。その白い羽根はこの場所としては違和感あった。


「モンスターかな・・・?とにかく用心して進もう」


暗い廊下を照らすライト役のローラさんを先頭にゆっくりと進んでいく。どこからもなく空調のような音だけが不気味に響き渡る、いかにも何か出そうな雰囲気の廊下。俺とローラさんは少しだけわくわくしていたが、ミミカちゃんは怖がっていた。その影響か、ミミカちゃんは俺のパーカーの裾をちょこんとつまんで震えながら歩いていた。なんだかいつもと違ってかわいい。


ガタンッ!!


「ひっ!?」

「な、何の音・・・?」


突然の物音に流石にビビる俺たち。立ち止まったかつ反射でミミカちゃんが俺の背中にしがみつく。


「ミ、ミミカちゃん?」

「あっ・・・ご、ごめんね、虹くん」

「い、いや・・・でも、何の音だ?」


ローラさんはどこからもなくメカメカしいゴーグルを取り出して覗いた。


「うーん、結構響いてたしもうちょっと先かも。団長室あたりかな?」

「お、おう・・・流石に怖くなってきたな」

「とにかく進むしかないね」


もう少し進む。そしてついに団長室の近くまで歩いた。


わははははっ!!おーほほほほ!!


「わ、笑い声・・・!」

「3人、いるみたいね」

「つまり団長だけじゃないのか」

「うーん、でも聞き覚えあるようなないような・・・」


その時、あの音が響き渡る。


パリーン!!


「「「ひっ!!?」」」


何かが割れる音。そしてがたがたと何かが崩れ落ちる音。そして笑い声と悔しがっているような叫び声。そして、何かが爆発する音。


「な、ななな・・・何が起きているのでしょうか・・・」

「ロ、ローラさん見てきてくださいよ・・・」

「わ、私も流石に怖くなってきた・・・」

「~~~っ」


団長室を目の前にしてこの異様な雰囲気に膝をついてしまう俺たち。ローラさんも恐怖からかスマホをライトを下にして床に落として廊下が真っ暗になる。非常口を示す緑色の光と、消火栓の赤い光だけが見える。

その間も団長室からは変な笑い声や物音など、変な音が聞こえてくる。今の俺たちにはそれを理解するほどの余裕は恐怖でなかった。

そしてこの不気味な廊下の雰囲気で一気に恐怖が俺たちを襲う。もはや自衛するための反射で抱き合って泣くしかなかった。

そして・・・団長室の扉がゆっくりと開く。





・・・





「な、何事ですか、これは・・・団長?」


俺たちの目の前に広がっていた団長室は、散らかった本や花瓶やソファーの綿やカード、割れたビール瓶、そして巨大な白い鳥と散らかった白い羽根。

そして、完全に出来上がっていた教祖と白鳥 ソニ子。と顔が赤いけど割と正気を保っている団長。


「こ、これは・・・その、遊んでただけだよ」

「はっはっは~!この我が負けるなんぞ、ありえぬこと・・・もう1回勝負だぁ~~~」

「うへへ、教祖ったら、まだ負けたこと認めてないのね~」

「「・・・」」


俺とミミカちゃんは目の前に広がるとてつもなく変な光景に開いた口が塞がらない。ローラさんはジト目で団長を見て呆れていた。


「散らかっているのはなんでですか?ね、団長」

「ちょ、ちょっとふざけすぎただけだよ。教祖が。終わったら片づけるから・・・ローラさんたちだってこんな時間に何の用だい?」

「私たちは普段真っ暗な団長室が明るい上に変な声がしてたから気になってきただけです。そしたらこんな・・・変なことになってるなんて思ってもいませんでした」

「「うんうん」」


とりあえずローラさんの呆れの言葉に頷くしかない俺とミミカちゃんだった。


「アリシアさんが見たら何ていうんだろう・・・」

「ア、アリシアには言わないでくれ。忙しくてこんな時ぐらいしか教祖と遊べないんだ。ちゃんと片づけるから・・・」


その時、団長室の扉が勢いよく開く。いきなりのことに全員静かになり、その扉の方を向く。と・・・


「最近帰りが遅いと思って見に来たら・・・こんなことしていたのですね。団長」

「ア、アリシア!?」


そこにいたのは普段の凛々しい事務担当ではなく、腰に手を当て、仁王立ちで団長を睨むアリシアさんだった。

そしてアリシアさんはこの惨状を見て再び団長を見る。その顔はニッコリ笑っていた。・・・だけど、その眼、その表情は笑っていないことをその場にいた全員が強烈に察し、反射的に片づけを始めた。この無言と笑顔の圧力に俺とミミカちゃんとローラさんも片づけをせざるを得なかった。


「そんなバナナナ・・・」

「我は反省している・・・我は、ぐぅ」

「うぐぅ・・・ふざけすぎたわ・・・」

「こんなに激しく散らかした責任は果たしてもらいます。ほら、もっとしっかり片づけて!しっかり動いて!今日は団長室が元に戻るまで返しませんよ!ね、団長」


「な、なんでぇー!私たち関係ないよねー・・・」

「ふええん、なんであたしたちまで~」

「俺もかよ!うわああ!」

「・・・あなたたちは後でご飯奢るから、ね」



こうしてサーカス七不思議は全て解決したのでした。おしまい。

・・・その後、団長と教祖らは団長室でのお酒・・・もといプチ宴会を控えたとか。
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