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第三話・デュエル・ランキング 作:でんでん

第三話・デュエル・ランキング

 目を覚ました遊李が見たのは、気絶している男と少年、そしてなぜか旧デュエルドームで一人佇む自分だった。特に意味などない、というか何も起こってない筈だ、そうだ、きっとそうなんだ……突然の事態に動揺しながら、デュエルディスクにきらめく「YOU WIN」の文字から目をそらして、遊李はぼんやり空を見つめていた。
 しかし放っておくわけにもいかず、少年をまず助け起こすと、男をそのままにして旧デュエルドームの中に設置されている連絡用のパッドから職員室へ緊急用の連絡メールを送る。十分ほどして、どこに行っていたのやら、阿久根先生が保健室の先生を連れてやってくると、少年ともども保健室へ運んでいった。

「ふむむ……気は失っていますが、大した怪我ではないですよ!」

 保険教諭、工藤恵美はそう言って、最低限の処置を施すと書類をまとめるために机へ向かった。が、当然阿久根先生の追及からは逃れられない。

「なんでこんなことになった。そもそもお前はあそこで何をしていた。何故デュエルしている。何故カードが散らばっていた。どうなっている。お前の髪型はなんだ」

 普段無口であまり叱責しないような教師である阿久根が動揺のためか、時折無為な質問を挟みつつも遊李に様様なことを問い詰める。それに大して彼は申し訳無さそうな顔をしながら、「偶然……」とだけ呟く他になかった。



「で、遊李。どうしたのよ」
「別に。目立たなきゃそれでいいからな」
「いやなんの話? もう、シャキッとしてよ」

 あの事件から二日後、デッキの件、デュエルの件を色々問いかけられながらも、監視カメラに映像が残っていない、暴虎という男が暴行を加えた形跡がある、など様様な理由から遊李はお咎めなし、滝沢天満という名の倒れていた少年は治療のため二日ほど学校を休み、暴虎は退学処分となった。しかし、遊李の心のなかには記憶を失っていた、数分の空白――デュエルをしていたかもしれない空白で自分が何をしていたのか、どことなく予想がついていたから、そればかりが気になってどうしようもない余り普段の彼からは少し想像できないような憂鬱の表情になっていた。

「あれは……でも、なんでこの時期に……」
 うわ言のようにもごもごと繰り返す遊李に痺れを切らした如月はバン、と思い切り机を叩く。
「もう! いい加減にしなさい! 今日が何の日か忘れたの?」
「へ?」
「ランキングよ! ラ・ン・キ・ン・グ! 新学年一週間ちょいで初動ランキングが裁定されるって、先生の話聞いてなかったの?」
「あ、ああそうか。すまん、忘れてた」

 デュエル・アカデミアでは、委員会のほとんどがデュエル委員会連盟として、学生評議会という生徒会のような組織に統率されている。そこから派生する広報、図書、風紀などはそれぞれデュエルに関わる活動を行い、切磋琢磨し合い成長していくデュエルライフをサポートする。その中の一つ、デュエル広報委員会はアカデミアのデュエルディスクに内蔵されているデュエル・レコーダーを元に学年ごとのランキングを作る。
 このデュエル・レコーダーは違法なデュエルや規則に反するデュエルを取り締まる他、デュエルの勝敗やデッキタイプ、戦術などをデータとして認識しアカデミアの運営に役立てるため作られた。このレコーダーの勝敗でランキングの元が作られ、そこから更に委員会の人間がデュエルの模様を自ら確認して、評価を下し最終ランキングを作る。委員会の中でも評議会・広報委員会・風紀委員会の三つだけが、デュエルレコードにアクセスできる権限を持つため、生徒たちは畏怖を持って彼らの事を俗に「トップスリー」と呼ぶ。畏怖……即ち、自分らのデッキや戦術が知られているという、半ば恐怖にも近い畏怖。

「ま、どうせ低いだろうが」
「見てみなきゃわからないじゃない」

 最初から後ろ向きというのはある種の努力家に大して苛立ちを覚えさせるものである。どうでもいい、という態度を崩さない彼を半ば強引に牽引すると、ランキング表が映し出されている中央玄関のディスプレイ前まで連れてきた。

「ええと、遊李は……」
「まずお前だ。如月葵は……お、141位」
「へへーん、どうよ! 一学年1251人中上位20%!」

 得意げに如月はない胸を強調する。遊李は呆れたように頭を振るって自分の名前を探した。

「へえへえ、凄いですね。ええと、120位台には……いないな。じゃあ1100位台は……いない。あれ、じゃあ1000位……」

 この順序で探していっても、彼の名前は一向に見つからない。さすがの遊李も不安になって、先生に直接聞こうと考え始めたその時。

「あああっ!! 遊李、あ、あ、あれ!あれ!」
「おいどうし――は、はぁ!?!?」

 まさかあまりの弱さと適当さにランキング外では?という杞憂を抱いてともに探していた如月が突然大声を上げてディスプレイを指差していた。驚いてその方を見ると、そこに遊李の名前が表示されていた。順位は……28位。

「えっ……」
「嘘よ……《回数剣》入りフルモンスターデッキが……」

 しかし何度疑ってみてもそこに記されている数字、名前に誤りはなかった。無論、同姓同名の人間などいやしない。
 遊李がたちまち全速力で「広報委員会委員室」へ駆けていくのに続き、如月は陸上部の異常な脚力を持ってその後を追った。


「おい、広報委員ッ!」
「ちょ、遊李、いきなり何してんの!?」

 ランキングが発表される当日、広報委員は皆集まって生徒たちの反応を伺いつつ次の広報企画会議を行う。そこへ無理やり乱入した形となったので、当然委員会面々の反感を買った。

「な、なんですか。現在会議中です。ランキングの不当性を訴えるなら後ほど……」
「不当というよりあれじゃ適当だ! なんで俺が28位なんだよ!?」
「28位なら十分じゃないですか。トップ100なんてそうそうなれないですよ。さ、帰って帰って」
「でも……」

「ちょっとまった」

 言い争いを初めた委員と遊李を静止する声が、会議の上座側から聞こえた。静かな、それでいて少し楽しそうな声。女性の声であった。そのまま立ち上がったのは、桃色の柔らかそうなロングヘアー、小さな星が鏤められたような瞳、アヒルのような可愛らしい口元、赤いフレームのメガネを掛けて、左手には書類を挟んだクリップボードを持っていた。

「あなた、伯浪遊李くんね?」
「な、なんだよ」
「私の名前は御手洗君江、広報委員会の副委員長よ。お怒り中のあなたに説明してあげる。私達、広報委員会のランキング制定基準を」
「なに!? そんなんどうだっていいから速くランキングを……うわっ!」

 御手洗の唐突な申し出に困惑する遊李をよそに、突然扉がしまったかと思うと、会議室の奥に設置されているスクリーンが光り、と同時に部屋が一斉に暗くなった。スクリーンに青い光がよぎり、次第にその線を明瞭にしていく。
 映し出されたのは、多くのデュエリストの戦績表だった。

「まず私たち広報委員会は、コンピューターが勝率やデュエル数、平均勝利ターン、敗北ターンなどから導き出したランキングを一つ一つ手作業で確認していくの。具体的なデュエルのデータは更にコンピューターによって『一般デュエル』『昇格デュエル』に分別されて、私たちはその昇格デュエルをリプレイ、独自の基準でランキングを上下させる」
「それであの正確さが保たれているわけか……じゃあなんで俺だけ間違ってるんだ?」
「間違ってる? ないじゃない。あなたの勝率は21戦中1勝20敗。私たちは不当なデュエルでランキングを乱す奴らを絶対に許さない……あなたもその典型だったようね。あまりの弱さにコンピューターが一般デュエルに位置づけたから今まで気づかなかったけど」
「うっ……そ、それで?」
「でも最後のデュエル。あれは……一昨日かしら、全部見させてもらったわ。切り札のパトスモンスターとか、何故かシステムが不調で見えなかったけど、それでも数ターンであの劣勢をひっくり返したのは凄いわ。天才。これだけで大幅昇格よ」
「ぱ、パトス!? 遊李、アレロパシーしたの!?」

 今度は副委員長の反応に如月が反応した。遊李は信じられない、と言った顔で如月と御手洗とスクリーンを交互に見ながら、徐々に不安を孕んだような表情へ変化していった。

「じゃ、じゃあそれが原因で俺はあんな上位に?」
「そ。でもこれからはあんな手抜きデュエルしないでね。ていうか、もう手抜きデュエルしたらわかるから」
「で、でもさ。たった一勝だぜ。運が良かっただけかもしれない」
「そう? うーん、そうかもね」
「だからさ。頼む。――今回の昇格をなかったことにしてほしいんだ」

 委員達が一斉にどよめいた。通常30位以内というのは学費完全免除、単位三科目保管優待、レンタルデッキ・カードの制限解除など様様な恩恵を受けられる、謂わば特待生的位置づけになれる。教師側はランキングをきちんと把握しており、高ランクであればあるほど優遇してもらえるようになる。さらに言えば、学内で尊敬され崇められ、不純なことを言うなら異性から人気が出てもおかしくはない。それを放棄してくれと彼は言ったのである。
 御手洗は暫く沈黙して、遊李の飴色の瞳を見つめ続けた。
 そのとき、不意に彼女は腕を上げ、上腕についている分厚いブレスレットのようなものをいじる。その動作が意味するところはただ一つだった。

「お、おい。なにを」
「伯浪遊李。私は言ったわよね。ランキングの不正はいかなる場合であっても認められない……ただし、あなたのような超特殊なタイプは、ちょっとだけ例外措置をとってもいいかもしれない。ということで!」

 彼女が急に飛び跳ねたかと思うとデュエルディスクが腕に展開され、ディスク上に七色の光がほとばしった。展開完了の印である。
 先程の副委員長らしい威厳が保たれた声は崩れ、一気に遊びを楽しんでいる少女のような口振りになって、御手洗は遊李を指差し、威勢よく言った。

「私と、レンタルデッキで勝負しなさい!」
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