１３　Wicked God　作：ター坊

「「「デュエル！！」」」


遊希・遊路VS加菜恵の変則デュエル
●初期ライフ等ルールは基本通り
●遊希→遊路→加菜恵の順番でターンを巡る。
●遊希・遊路はＬＰとフィールドを共有し、相方のモンスターをリリースや素材・攻撃要員にすることもできる。
●先攻扱いである遊希・遊路はドローフェイズの通常ドローと攻撃ができない。
●加菜恵は後攻扱いで１ターン目からドローフェイズの通常ドローと攻撃ができる。


「私のターン」
「遊希。スペースは共有だが遠慮なくバンバン使え」
「お言葉に甘えてそうさせて貰うわ。私は手札から光属性モンスター１体を墓地に送り、『銀河戦士』を特殊召喚！『銀河戦士』の効果でデッキから『銀河新星』を手札に加える。さらに私のフィールドにギャラクシーモンスターが存在することで『銀河騎士』をリリース無しで召喚。『銀河騎士』の召喚に成功した事で攻撃力を１０００ダウンして墓地から『銀河眼の光子竜』を特殊召喚するわ！来なさい、ギャクシーアイズ！！」
星々の輝きを纏う翼を翻し、遊希のエースモンスターが降臨する。
「『銀河戦士』のコストで捨てたのはそいつだったか。やるな」
「まだこんなものじゃないわよ。私は『銀河騎士』と『銀河眼の光子竜』でオーバーレイ！レベル８のギャラクシーモンスター２体でオーバーレイネットワークを構築！銀河に舞い踊る白き守護竜よ、優しき光と風で迫る災厄から全てを守り抜け！エクシーズ召喚！ランク8、風の銀河眼！『銀河眼の大気竜(ギャラクシーアイズ・アトモスフィア・ドラゴン)』！！」
光の渦から竜巻が発生するとそこから４枚の純白の翼を持つ美しいドラゴンが飛翔する。
「俺の世界にもこんなモンスターはいない…。やはりこの世界固有のモンスターもいたか」
その美しさに相方の遊路も頷く。
「ならもう１体見せてあげる。私のフィールドの『銀河戦士』を対象にして手札からチューナーモンスター『銀河妖精(ギャラクシー・フェアリー)』の効果を発動！『銀河戦士』の攻撃力を０にする代わりにこのカードを特殊召喚するわ。」
「レベル３のチューナー…つまり！」
「私はレベル５の『銀河戦士』にレベル３のチューナーモンスター『銀河妖精』をチューニング！銀河に煌めく儚き結晶、その輝きであらゆるものを幻惑する。彼のものに永遠の眠りをもたらせ！シンクロ召喚！ 水の銀河眼！『銀河眼の氷晶竜(ギャラクシーアイズ・ダイヤモンドダスト・ドラゴン)』！！」
透き通るガラスのような氷のドラゴンが冷気を纏って静かに翼を開く。
「『銀河妖精』の効果で１枚ドロー。『銀河新星』を捨てて『ギャラクシー・トレード』を発動。さらに２枚ドローして捨てられた『銀河新星』の効果でデッキから『銀河割断』を手札に加え、カードを２枚セットしてターンエンド」
遊希は風と水のギャクシーアイズを並べてセットカードを構えた上、手札２枚の余力を残す圧倒的展開力を見せた。
「さて。次は俺のターンだな。…遊希ほど派手には行きそうにないな。俺は『堕天使イシュタム』の効果で『神属の堕天使』と共に墓地に送って２枚ドロー。さらに『堕天使スペルビア』を捨てて『トレード・イン』の効果で２枚ドロー。もう１回『トレード・イン』で『堕天使ゼラート』を捨てて２枚ドロー…ふぅ。『堕天使の戒壇』を発動して墓地のスペルビアを特殊召喚し、スペルビアの効果で墓地のイシュタムを特殊召喚。さらにイシュタムの効果で１０００ＬＰ払って戒壇の効果を適用してゼラートを特殊召喚。そしてスペルビアとゼラートでオーバーレイ！２体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚、ランク８『神竜騎士フェルグラント』！！…これでターンエンド」

遊希・遊路:LP 8000→7000

遊路自身言う通り遊希と比べたら地味ながらも良いモンスターを揃え、ターンを終えた。
ここで、ここまで遊希と遊路が築き上げた布陣を振り返っておこう。一言で言えば圧倒的数の暴力である。
「遊希のフィールドにはダイアモンドダスト・ドラゴン…それにセットカードの中に混じってるはずの『銀河割断』の万能カウンターが２回…」
「しかもアトモスフィア・ドラゴンの戦闘・効果破壊の耐性のおかげで戦線も崩壊しにくいですね」
「遊路様のイシュタムによる『神属の堕天使』適用とフェルグラントのモンスター効果無効化もかなりの牽制になります」
「えーと…ダイアモンドダストと『銀河割断』で魔法・罠を２回、モンスター効果だと…全部フルで使えば４回も止められる！」
「オマケニ遊希サンハ２枚・アニキハ４枚手札ヲ残シテマス！」
「こりゃあ余裕で勝つんじゃないか？」
確かに綾香・詩織・遊月・千夏・スティーブン・朱里那の言う通り並のデュエリストであれば泣き出したくなるレベルの絶望的な布陣である。そう、並であれば…。
「私のターン、ドロー」
加菜恵は特に狼狽える様子もなく手札を眺めていた。
「…っ！」
「遊希？」
圧倒的布陣を敷きながらも遊希は顔をしかめてしまう。
「精霊の力を持つ貴方には分かってしまうのね。私は魔法カード『神の天眼』を発動。チェーンは出来ないわよ」
「くっ…」
チェーン不可ならばせっかくの万能カウンターも意味も成さない。
「手札の神属性モンスターを見せる事で次の私のターン終了時まで相手は私のモンスターの召喚・特殊召喚及び全ての効果の発動を無効にすることはできなくなるわ。そして見せるカードは…」

ﾍﾟﾗｯ『邪神ドレッド・ルート』

「あいつの手札に既にあるのか…」
「これで邪神を降臨するにあたって邪魔はなくなった…。魔法カード『魔獣の懐柔』を発動。デッキからレベル２以下の獣族モンスターを３体特殊召喚できるわ。私が特殊召喚するのは『魔轟神獣ケルベラル』、ノズチ、キャシー、の３体よ」
愛嬌のある３体の魔獣が姿を現す。
「私は『魔獣の懐柔』の効果でこのターン、獣族以外のモンスターの特殊召喚はできないけどこうすれば関係ない。私は３体の魔轟神獣をリリースし、降臨せよ『邪神ドレッド・ルート』！！」
「くぅっ…！！」
「なんだ、このぴりついた感覚は…！」
精霊の力を持つ遊希は頭を抑え、遊路も異様な雰囲気をその肌でビシビシ感じた。発生した黒い渦から生えるように出てきた巨人の邪神は翼を広げて雄叫びを挙げ、空気を震わせてビルを地震かのように揺らした。
「これが邪神…。制御する演算をどれだけ繰り返したか…。さぁ、邪神。働きなさい」
「…」
『邪神ドレッド・ルート』…恐怖の根源の名の通り、その場に立っているだけで遊希と遊路は今までにないプレッシャーを感じていた。そのプレッシャーはモンスターにも伝染した。
「えっ。私達のモンスターが…」
遊希の美しい２体のギャラクシーアイズと遊路のモンスターに黒い靄(モヤ)が掛かっていく。それは恐怖という言葉を具現化したのか、モンスター達は黒い靄に包まれた瞬間、明らかに戦意を失っていった。
「これはやはり…」
「異世界にも邪神が存在するのかしら？」
そう。この黒い靄こそドレッド・ルートの効果。威圧感だけでフィールドのモンスター全てを弱体化させてしまうのだ。
「そんな…。全モンスターのステータスを半減…これが邪神の力…」(だけど私のセットカードは…)
「さぁバトルフェイズよ。ドレッド・ルートは戦闘によって発生する相手への戦闘ダメージを倍にするのよ」
「何！？そんな効果が搭載されているのか！？」
遊路は自身の世界のドレッド・ルートとの違いに意表を突かれた。この攻撃を通せば一撃で瀕死となる。
「攻撃対象は『銀河眼の氷晶竜』！！フィアーズノックダウン！」
「『銀河眼の大気竜』のオーバーレイユニットを１つ使って効果発動！これにより私のギャクシーモンスターは戦闘・効果によって破壊されない。さらに『銀河眼の氷晶竜』が攻撃対象になった事で効果発動！相手フィールドの表側表示のモンスターを全て破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える！ダイヤモンド・リフレクト！！」
氷晶竜によって吹雪のバリアができ、ドレッド・ルートの拳と激突する。


ﾋﾟｷﾋﾟｷ

吹雪のバリアに触れたドレッド・ルートの拳が凍ると思われたが

バリーン！！

ドレッド・ルートのパワーが競り勝ち吹雪のバリアは脆いガラス細工のように砕け散った。
「邪神にはそんな効果効かないわよ」
「なら、これならどうかしら。速攻魔法発動『爆裂銀河(ビッグバン・ギャラクシー)』！！私はさっきオーバーレイユニットとして墓地に送られた『銀河眼の光子竜』を除外して私のフィールドのギャラクシーモンスターの攻撃力を除外したモンスターの攻撃力だけアップする！」
「…遊希！待t」
これが遊希の逆転の一手。これで『銀河眼の氷晶竜』の攻撃力は４３００、ドレッド・ルートを上回りこれで勝ったと遊希は確信したが現実は意外な結果を導いた。

邪神ドレッド・ルート ATK 4000 (戦闘ダメージ倍加)VS 銀河眼の氷晶竜 ATK 2150

遊希・遊路:LP 7000→3300

「きゃあっ！！」
「うおっ！」
それは邪神の力なのか、ＲＩＭシステムは使われていない筈なのに拳の風圧が遊希と遊路の体を襲う。
「一体、どうして…」
「邪神裁定というやつがこの世界にもあったか…」
「邪神裁定…？」
聞き慣れない単語に遊希は首を傾げる。
邪神裁定
遊路の世界での邪神カードは一般にも広く流布されているが特殊なデュエルイベント等ではＲＰＧのラスボスのような役割を持つこともあり、ある種の特別なカードということで固有の特殊ルールが存在し、俗称としてそう呼ばれている。『邪神ドレッド・ルート』の場合、全モンスターのステータス半減の永続効果はこの効果以外で数値の変化が起きる度に再適用される、というものである。
今回の場合、確かに『爆裂銀河』の効果で『銀河眼の氷晶竜』の攻撃力は４３００となった。しかし、その直後に『邪神ドレッド・ルート』の効果が再適用されて半分の２１５０に落ち込み、結局は少量のダメージ軽減くらいにしかならず、遊希の逆襲の一手は不発に終わった、という訳である。
「くっ…。邪神…一筋縄ではいかないわね」
「しかも俺の世界と違って無敵耐性にダメージ倍加の即死のリスク…厄介過ぎる」
邪神ゆえの理不尽な性能に遊希と遊路は唇を噛み締める。
「でもまだよ。必ず攻略法があるはず…。バトルフェイズ終了時に『爆裂銀河』のさらなる効果！除外したモンスターがレベル・ランクが８以上のギャラクシーアイズモンスターだった場合、私のフィールドに守備表示で戻ってくるわ！来なさい『銀河眼の光子竜』！」
虚空に次元の穴が空き、そこを『銀河眼の光子竜』が潜り抜けてフィールドに降り立つが邪神の威圧にやはり逆らえず弱体化し、翼の輝きが鈍る。
「無駄なことを…。私はカードを１枚セットしてターン終了よ」
「…私のターン、ドロー…。…『銀河眼の氷晶竜』と『神竜騎士フェルグラント』を守備表示に変更してターンエンド…」
加菜恵は邪神を出して攻撃を通しただけでターンエンドを宣言し、遊希にターンが廻ってきたが邪神の圧倒的火力と威圧感と現状の手札の状況からか、遊希にしては珍しい消極的なプレイで終えてしまった。
「俺のターン、ドロー。俺は『邪神ドレッド・ルート』をリリースしてガメシエルを…」
「残念ね。邪神はいかなる場合でもリリース出来ないのよ」
「ちっ…。そう簡単にはいかないか。なら今のところ打つ手無しだ。ターンエンド」
遊路は壊獣の強制リリースでの除去を狙ったが、その目論見も潰れ、何もできないままターンを終えた。
「私のターン、ドロー」
前のターン使用した『神の天眼』の効果は持続しており、遊希と遊路は加菜恵の行動に対して妨害はできない。
「私はＬＰを１０００払い、『銀河眼の光子竜』を対象にリバースカード『カンパラブル・レベル』を発動。これで私は『銀河眼の光子竜』のレベルと同じになるようにデッキからレベル３以下のモンスターを好きなだけ特殊召喚できるわ。この効果で私はレベル３の『ペロペロケルペロス』と『星見獣ガリス』、レベル２の『森の聖獣ヴァレリフォーン』を特殊召喚するわ」

加菜恵:LP 8000→7000

「再びモンスターが３体…ということは…」
「私は３体のモンスターをリリースし…降臨せよ『邪神イレイザー』！」
３体の獣が生け贄に捧げられると床に深淵の闇が現れ、そこから龍のような体躯の抹消の邪神が顕現した。
「邪神が…２体…」
「『邪神イレイザー』は相手フィールドのカードの枚数×１０００の数値の攻撃力を得るわ」
「今、私達にはモンスター５体にセットカード１枚…」
「攻撃力は６０００…」
「けれど『邪神イレイザー』の真価はこれよ。イレイザーの効果を発動。自身を破壊する」
加菜恵の効果発動の宣言と同時に『邪神イレイザー』の体は熱で溶ける蝋細工のようにドロドロの液体となって漆黒の沼を形成していく。
「そして『邪神イレイザー』が戦闘・効果によって破壊された場合、フィールドのモンスターを全て破壊するわ」
「えっ！？」
広がった沼は飢えているかのように全てを呑み込まんと遊希と遊路のフィールドに迫る。
「させないわ！『銀河眼の大気竜』のオーバーレイユニットを１つ使って効果発動！これでギャラクシーアイズ達を守るわ」
「俺も『神竜騎士フェルグラント』のオーバーレイユニットを１つ使い、自身を対象にして効果発動！これでフェルグラントに無敵耐性を付ける」
これで３体のギャラクシーアイズとフェルグラントは守られ、被害は最小限に止められる、と遊希達は考えていた。
「それはどうかしら？」
しかしその思惑は加菜恵の不敵な笑みと言葉で否定されることとなる。

グバァ！！

漆黒の沼が津波となって襲い、『堕天使イシュタム』やセットカードはもちろんギャラクシーアイズ達は大気のバリアごと、無敵耐性を付与した筈のフェルグラントも呆気なく呑み込まれて消えてしまった。
「『邪神イレイザー』の破壊効果は普通のものとは違うわ。例え破壊耐性があっても、破壊できない状況でもそれらを無視して必ず破壊するのよ」
「そんな…」
邪神のカードパワーに歴戦の遊希も動揺を隠せない。
「…」
一方の遊路は戦意喪失というわけではないが、黙って加菜恵を見据えていた。
「どうかしら、邪神の力」
「…俺達の世界より凄まじいな。…それで、この力を以て時崎さんが復活させたいＳって誰なんだ？」
「…！」
「人類の不死化なんて建前。本音はそいつを復活させたくて日本自体を巻き込むこんな大掛かりな手を打ったんじゃないのか？」
「そんな事を訊いてどうするの？」
「別に。興味でなんとなくさ。アンタをここまでさせる存在って何かな、ってな」
「…貴方は後ろにいる遊月さんと美羽さん…だったかしら。大事？」
「当然。２回死にかけても守り抜いたくらいだ」
「そう。なら突然いなくなったらどうする？」
「さぁ…だけどそんな事、仮定でも想像したくないな」
「そうよね。私もそうだった。あの子が本当にいなくなる日までは」
「あの子…じゃあ時崎さんが復活させたいＳっていうのは…」
「私の娘よ」
加菜恵の口から語られるＰｒｏｊｅｃｔ Ｒ・Ａ・Ｓの目的に遊路と遊希は無論、デュエルを観戦する全員が静かに耳を傾けた。
「５歳の誕生日の日よ。幼稚園バスにトラックが衝突する交通事故で死んだわ。幼稚園から帰ってきたら、晩御飯に美味しいケーキでお祝いしようね。…そう約束したのに…」
「…」
「あの娘には色んな可能性や未来があった…。それを突然理不尽に奪われた気持ちが貴方に解る！？だから私はどんな事をしてでも奪われた未来を取り戻す！」
今まで冷淡な口調の加菜恵の声が初めて荒れた。その叫びに遊路は応える。
「…寂しいもんだな。もしかしたら協力してやったかもしれないのに。俺にもいるんだ。大和っていう遊月との間に生まれた子ども。まだ３ヶ月の赤ちゃん」
「…なんですって？」
「こっちも辛くなる程その言葉、響いた…。不運だったとか、そんな風には絶対に割り切れない。もし大和を失ったら俺も気が狂って何をやるか分からない。大和を取り戻せる可能性があるなら、時崎さんみたいな行動を起こすかもしれない」
「そうよ。だから私はデュエルモンスターズの精霊の神秘という超常現象に蘇生のヒントを見出だし、異次元の研究者となった…。そしてここまで来た！どんなに批判されようとも、例え世界を敵にしてでも私はこの願いを叶える！」
「そうか…。…念のため訊くがやっぱり遊希じゃないとダメなのか？」
「ええ」
「なら無理だ。時崎さんが娘の命を譲れないように俺達は遊希を譲れない。だからこうなってしまった以上、あとはどちらの想いが強いか、その勝負だ」
「そうね。そしてこの一撃で私の願いが叶うわ。デュエル続行！『邪神ドレッド・ルート』でダイレクトアタック！！」


娘の未来を取り戻したい想いかーー
「もしこれが通ったらドレッド・ルートの効果で倍の８０００のダメージに…！」
「ＬＰが満タンでも負けちゃうじゃない！！」
「クソッ！なんか手はねぇのかよ！」
「アニキ！！」
「遊路さん…」
友の未来を守りたい想いかーー
「遊希サン！！」
「遊路様！！」
「遊希…！」
「遊路！！」








「デッキトップを裏側表示で８枚除外し、手札から『機巧蛇―叢雲遠呂智』を守備表示で特殊召喚する！！」
機械龍が咆哮を挙げ、友の未来を繋ぎ止めた。
「くっ、バトル続行！」

邪神ドレッド・ルート ATK 4000 VS 機巧蛇―叢雲遠呂智 DEF 1225

邪神の鉄拳で機械龍は一瞬で屑鉄と化すが遊希と遊路の命はなんとか保てた。
「ふぅ。間一髪」
「ありがとう」
「このデュエル。負ける訳にはいかないからな」
「ええ」
強大な邪神２体の攻防を耐えきって自信が付いたのか、心なしか遊路と遊希の表情は持ち直していた。
「私のターンはこれでターンエンド」
「私のターン、ドロー！」
「相手ターンの開始時に『邪神イレイザー』の効果発動！蘇りなさい！」
加菜恵の声に呼応するかのように床に黒いシミが浮かび、そこから邪神が這いずり出てきた。
「『邪神イレイザー』はフィールドから離れた次のターン開始時に再生する。貴方達にもう勝ち目はないのよ」
「…ごめんなさい」
突如、この場には似つかわしくない言葉が遊希から発せられ、加菜恵も意外といった驚きの表情にも表情をする。
「貴方の境遇を聴いて可哀想と思ってる。…それでも私は生きたい…。守ってくれるみんなのためにも。私のターン、ドロー。モンスター１体を裏守備表示でセットしてターンエンド」
「俺のターン、ドロー！『闇の誘惑』でデッキから２枚ドローし」（…！！これは…）
遊路の引き当てたカード。それは千夏との罰ゲームデート中に手に入れ、せっかくの記念だからと戦略性を無視して入れたカードである。
（でもアレがもう手札にあったら…。いや、ここはもう撃つしかない！）「…マスティマを除外！そして魔法カード『天声の服従』を発動！！」
「あのカードは確か…！！」
観戦していた千夏はそのカードを覚えていた。ＬＰコストは掛かるし相手を選ぶしと散々言った気がしたカードである。そしてその効果は博打とも言える効果である。
「ライフを２０００払い、モンスター名を１体宣言して相手のデッキにあれば俺のものになる、という効果だ」

遊希・遊路:LP 3300→1300

「まさか…！」
「そう、俺が宣言するのは









『邪神アバター』！！」





次回予告


遊希「まさかボスモンスターを強奪するなんて…」
遊月「さすが遊路様！私達が出来ないことを平然となさる！」
美羽「そこにシビれるあこがれるゥ！！」
スティーブン「ソレ悪役ノ台詞ナノデハ…」
千夏「何はともあれこれで大逆転よ！！」
朱里那「おしっ！ぶっ飛ばせ！」
綾香「みんなも応援してね。クライマックスは近いわ！」
エヴァ「次回第14話『Save the world』！ご期待下さい！！」