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先行おまけのようなもの・後編 作:Ales
(《闇次元の解放》……成程、ブースターから入れるようなカードではないし、元のストラクチャーに入ってリミットレギュレーションの期間からしてデビルズ・ゲートかドラゴニック・レギオンだけれど、後者だと厄介ね。)
「魔法カード《名推理》を発動します。宣言どうぞ。」
(えっ……!?)
鈴音が驚くのも無理はない。《名推理》はカードの性能上どうしてもデッキを特定されやすく、また同一パックに使いやすいカードが揃っている訳でもない。また蘇生手段に乏しいストラクチャーデッキにおいて、エースモンスターを落とされるリスクを考えた場合、鈴音にとってはあり得ない採用だったのだ。
「えっと……8、です。」
彼女にとっては無難な選択のつもりだったのだろう。だが、それが逆に朱理にとっては有利に作用してしまった。
(へぇ……そもそも2005.9.1が適用されるストラクチャーデッキは2種類しかない。そのどちらにもレベル8の特殊召喚可能なモンスターは入っていないにもかかわらず、ここを宣言した……知識不足ね。攪乱して押し切れるかしら。)
「一枚目……《巨大ネズミ》ですね。通常召喚可能かつレベル8でない、特殊召喚も可能なモンスターなので攻撃表示で特殊召喚します。そのままバトルフェイズ、《巨大ネズミ》でセットモンスターを攻撃します。」
《巨大ネズミ》 ATK:1400 DEF:600《クリッター》
「フィールドから墓地に送られた《クリッター》の効果を発動します。デッキから《バトルフェーダー》を手札に加えます。」
(あらら……無難と言えば無難かもしれない戦略だけれど、その2枚が入っているデッキはデビルズ・ゲートしかないわよ。勝利確定ね、お疲れ様。)
朱理は内心そう思っているが、これは決して油断した訳でもなく、また過信している訳でもない。【暗黒界】は安定した展開が持ち味のデッキだが、朱理にはそれを受けきるだけの自信があり、故に勝利を確信したのである。
「メインフェイズ2、《タイムカプセル》を発動します。2度目の自分スタンバイフェイズまでカードを1枚を裏向きで除外します。更にカード1枚セットしてターンエンド。」
3rd.Turn
Turn Player:鈴音
鈴音 LP:8000 D:35 H:2 G:2 V:0 Ex:1
A:セットカード
□A□□□
□□□□□□
□ □
□□□Ⅰ□□
□□ⅡⅢ□
Ⅰ:巨大ネズミ
Ⅱ:セットカード
Ⅲ:タイムカプセル
朱理 LP:8000 D:34 H:1 G:2 V:0 Ex:0
(次々とわからないことばかり……でも大丈夫、私だって強くなったんだから……!)
「私のターン、ドロー。メインフェイズ、フィールド魔法《暗黒界の門》を発動します。」
(やっぱり……で、ここで仕掛けるということは手が入ったか、それとも様子見か……)
《暗黒界の門》は当今デビルズ・ゲートにしか収録されておらず、このカードが登場した時点で鈴音のストラクチャーデッキは確定した。尤も、朱理の方も2種のデッキのうち《巨大ネズミ》を無理なく採用できるデッキは守護神の砦のみなのでこちらも確定したも同然なのだが。
「《暗黒界の門》の効果、墓地の《クリッター》を除外して手札の《暗黒界の龍神 グラファ》を捨て、デッキから1枚ドローします。カードの効果によって墓地に捨てられたグラファの効果、《タイムカプセル》を破壊します。」
「通します。」
朱理が除外したカードは《追い剥ぎゴブリン》だった。サイクル・リバースに効果を絡めて場を一掃し、直接攻撃を決める【守護神の砦】との相性は良いのだが、相手との相性は最悪である。《タイムカプセル》の秘匿性とフィールドに残る特性を上手く活かし、貴重な除去を空費させたことになる。
「《暗黒界の斥候 スカー》を召喚して墓地のグラファの効果を発動、スカーを手札に戻して特殊召喚します。」
暗黒界の龍神 グラファ ATK:2700 → 3000
「バトルフェイズ、《暗黒界の龍神 グラファ》で《巨大ネズミ》を攻撃します。」
《暗黒界の龍神 グラファ》ATK:3000 ATK:1400 《巨大ネズミ》
朱理 LP:8000 → 6400
「戦闘によって破壊された《巨大ネズミ》の効果を発動、デッキから2体目の《巨大ネズミ》を特殊召喚します。」
「メインフェイズ2……」
「バトルフェイズ終了時にリバースカード、《血の代償》を発動します。500LPを払い《巨大ネズミ》をリリースしてモンスターをセット。」
朱理 LP:6400 → 5900
(あ……)
アドバンスセットをするモンスターなど数えるほどしかない。そしてそのモンスターを擁するデッキも数えるほどである。鈴音も漸く、朱理のデッキを理解した。
(グラファは墓地にあった方が良いカードとはいえ、《暗黒界の門》と悪魔族モンスターがいれば何度でも効果を発動できる。それに手札交換カードはまだあるし……うん、《守護者スフィンクス》1体で詰むことはない。大丈夫。)
鈴音の思惑通り、《守護者スフィンクス》の手札バウンス効果はグラファにとって悪い方には作用しない。またステータス面でもグラファの攻撃力が上回っているため、戦闘破壊してしまえば解決するのだ。そう考えると、この局面でのセットはさして脅威ではない。
「メインフェイズ2は特に何もしません。ターンエンドです。」
4th.Turn
Turn Player:朱理
鈴音 LP:8000 D:33 H:2 G:1 V:1 Ex:1
A:セットカード
B:暗黒界の龍神 グラファ
C:暗黒界の門
□A□□□
□□B□□C
□ □
□□□Ⅰ□□
□□Ⅱ□□□
Ⅰ:セットモンスター
Ⅱ:血の代償
朱理 LP:5900 D:32 H:0 G:5 V:1 Ex:0
「私のターン、ドロー。メインフェイズ、《シャドール・ビースト》を反転召喚して効果発動。デッキから2枚ドローして手札を1枚捨てます。」
「ぇ……?」
小さく漏らした声が聞こえたかどうか、鈴音には定かではない。だが内心の焦りが表情に出てしまっていた。無論朱理がそれを見逃すはずはなく、してやったりととぼけた微笑を浮かべて続けた。
「カードを1枚セット、ターンエンド。」
5th.Turn
Turn Player:鈴音
鈴音 LP:8000 D:33 H:2 G:1 V:1 Ex:1
A:セットカード
B:暗黒界の龍神 グラファ
C:暗黒界の門
□A□□□
□□B□□C
□ □
□□□Ⅰ□□
□□ⅡⅢ□□
Ⅰ:シャドール・ビースト
Ⅱ:血の代償
Ⅲ:セットカード
朱理 LP:5900 D:29 H:1 G:6 V:1 Ex:0
「私のターン、ドロー。」
(何もかもが予想外……それに、墓地にモンスターがいないから門の効果が発動できない。と言うより、やりづらい……)
デッキ構築のセンス、プレイングの奇特さ、そして態度に至るまで。まるで相手を煙に巻くかの如き振る舞いであった。
「メインフェイズ、《暗黒界の雷》を発動します。対象はセットカードです。」
「チェーンしてリバースカード、《旅人の試練》を発動します。」
「はい……」
流石にチェーンされたら不発になる上、追加効果の手札処理も出来ないカードは使いづらい。おかげで墓地肥やしも出来ず、バウンスへの対策も失敗した形である。
「《暗黒界の術師 スノウ》を召喚、バトルフェイズに移ります。《暗黒界の龍神 グラファ》で《シャドール・ビースト》を攻撃します!」
「《旅人の試練》の効果を発動、手札のカードの種類を外した場合、攻撃モンスターをバウンスします。私の手札は1枚なのでそのまま宣言どうぞ。」
自分で使うと使いづらさが目立つが、相手からすれば面倒な《旅人の試練》。当たる確率は単純に1/3であるが、手札に溜まりやすいカードの傾向からしてモンスターや魔法に偏りやすい。
「魔法カードを宣言します。」
「はい、確認どうぞ。」
そう言って朱理がカードの一部を見せる。裁定上具体的なカード名が特定できる必要はない故の慎重さであるが、その枠はオレンジ色であることは確認できた。
「……モンスター、ですね。グラファは手札に戻します。メインフェイズ2は何もしません。そのままターンエンドです。」
前ターンの攻撃で幾分かライフは削ったものの、どうにも攻めきれない鈴音である。一方朱理は、元のデッキのデザインである反転召喚による効果の発動を活かす、というものだけに1のダメージも与えていない。
「メインフェイズ2移行前に《血の代償》の効果を発動します。500LP払ってモンスターをセットします。」
朱理 LP:5900 → 5400
(あ、旅人の試練とのコンボ……なるほど、こういう使い方もあるんですね。)
手札にカードがなければ発動できない《旅人の試練》だが、手札にモンスターを残すこと召喚できないこととほぼ同義である。それを強引に回避するのが、バトルフェイズ終了時に発動する《血の代償》である。スタンダードではすぐに除去を食らうためまず通用しない戦術だが、除去手段に乏しいリミテッドだからこそ通用するのである。
6th.Turn
Turn Player:朱理
鈴音 LP:8000 D:32 H:2 G:2 V:1 Ex:1
A:セットカード
B:暗黒界の術師 スノウ
C:暗黒界の門
□A□□□
□B□□□C
□ □
□□□ⅠⅢ□
□□ⅡⅣ□□
Ⅰ:シャドール・ビースト
Ⅱ:血の代償
Ⅲ:セットモンスター
Ⅳ:旅人の試練
朱理 LP:5400 D:29 H:0 G:6 V:1 Ex:0
「私のターン、ドロー。」
(ここでこれ、か……どうしたものかしらね。)
山札から持ってきたカードの上部を人差し指の腹でぽんぽんと叩きながら、朱理は変わらず気怠げな無表情であった。
「《メタモルポット》を反転召喚して効果発動、お互いに手札を全て捨ててデッキから5枚ドローします。チェーンして《血の代償》の効果、500LP払って《フォッシル・ダイナ・パキケファロ》を通常召喚します。」
「……はい?」
鈴音が意せず聞き返したのも無理はない。手札が少ないとは言え、【暗黒界】相手に《メタモルポット》は御法度である。パキケファロを引いて展開を防いでいるとは言い条、グラファの効果は確実に受ける。にも関わらず手札を補充したということは、この後の展開に余程自信があるのだろう。
朱理 LP:5400 → 4900
「失礼しました、通します。墓地に捨てられたグラファの効果、《血の代償》を破壊します。」
「召喚権が残っているので、パキケファロをリリースして《守護者スフィンクス》をアドバンス召喚します。これをリリースして《守護神エクゾード》を特殊召喚。800LP払って《早すぎた埋葬》を発動、墓地の《守護者スフィンクス》を特殊召喚、魔法カード《右手に縦を左手に剣を》を発動、全てのモンスターの元々の攻守を入れ替えます。」
メタモルポット
ATK:700 → 600
DEF:600 → 700
シャドール・ビースト
ATK:2200 → 2000
DEF:2000 → 2200
守護者スフィンクス
ATK:1700 → 2400
DEF:2400 → 1700
守護神エクゾード
ATK:0 → 4000
DEF:4000 → 0
暗黒界の術士 スノウ
ATK:2000 → 300
DEF:300 → 2000
「ここでそれを使うということは……」
「お察しの通りですね。バトルフェイズ、《守護者スフィンクス》で《暗黒界の術士 スノウ》を攻撃します。」
守護者スフィンクス ATK:2400 DEF:300 暗黒界の術士 スノウ
鈴音 LP:8000 → 5100
「次、《守護神エクゾード》でダイレクトアタック。」
守護神エクゾード ATK:4000
鈴音 LP:5100 → 1100
「《シャドール・ビースト》でダイレクトアタック。これで終わり……」
「いえ、リバースカード!《暗黒界へ続く結界通路》を発動します!このターンの召喚・特殊召喚を破棄する代わりに墓地の暗黒界を蘇生します。《暗黒界の龍神 グラファ》を特殊召喚!」
暗黒界の龍神 グラファ
ATK:2700 → 3000
「巻き戻し、バトルは中止してメインフェイズ2に移行します。」
(ふぅ……いざというときのために伏せておいて良かった……でもこれで、流れはこっちに来る、勝てる……)
鈴音の表情が僅かに、ほんの僅かに緩んだ。
「では、永続魔法。」
不意に、朱理がそう呟いた。鈴音が顔を上げると、朱理は手札1枚をそっと場に置いていた。
「《エクトプラズマー》を発動します。エンドフェイズに1度モンスターをリリースし、元々の攻撃力の半分のダメージを与えます。《守護者スフィンクス》を自身の効果で裏側守備表示にしてエンドフェイズに移行、《シャドール・ビースト》をリリースして1100ダメージを与えます。お疲れ様でした。」
鈴音 LP:1100 → 0
Win:朱理
(うぅ、何も出来ずに負けてしまいました……)
朱理のLP減少の過半は自身のカードの効果によるもので、鈴音は半分程度しかダメージを与えていない。また朱理が多くのカードで相手を翻弄したのに対し、鈴音の方は基本的な動きすらままならない状態だった。
「あ、あの……」
借り物のデッキを置いて店を出ようとする朱理に、鈴音は声を掛けた。
「何かしら?」
眼鏡の奥の表情は、対戦時と変わらぬ気怠げなそれであった。
「色々、訊きたいことがあります。この後お時間ありますか?」
朱理は中空を見つめて溜息をついた後、熱意に押されたように呟いた。
「良いわよ。丁度良い時間だし、食事、一緒にどうかしら?」
「あ……はい!」
答えを聞かずに店を出る朱理の後を、鈴音は慌てて追った。
「あ、あの……」
「何?もしかして和食の方が良かった?」
鈴音は頭を振って否定する。眼前の女性は、なら何も問題なしといわんばかりにメニューを手に取っている。
「あの、落ち着かないというか……そんなに持ち合わせないのですけど……」
朱理に連れられて来たのは、偶然にも自身の宿泊予定であったホテル内のレストランだった。名を聞けば誰もが知る外資系のホテルだけに、鈴音は先方に感謝していたのだが、食事は流石に手が出ないので駅周辺で適当に済ませてしまおうと考えていたのだ。
「そんなことを気にしていたの?高校生に出させるほどお金持っていないように見えたら心外ね。」
朱理から発せられたのはそんな言葉であった。お言葉に甘えることにしたが、食事の味はこの会話とそれに続く話のせいで全く記憶出来ていなかった。
「それで、色々伺いたいんですけど……まず、何で【守護神の砦】だったんですか?」
「安定しているからよ。」
「でも、私も安定したデッキを考えて【デビルズ・ゲート】を選択しました。逆に、朱理さんはどうしてそうしなかったんですか?」
「そうねぇ……」
ナイフで鶏肉を切り分けながら、朱理は少しの間考え込むと、やがて呟くように説明した。
「安定というのは、安定して展開できるか、ではなくてライフを残せるかどうか、という意味よ。昔のストラクチャーデッキは今のと違って複数欲しいカードは数が揃っているし、それでいて今も強力なカードも多かったから。」
確かに、勝負を分けたのは今や禁止カードとなっている《血の代償》であったといって過言ではない。しかし鈴音は、朱理の言い回しに違和感を覚えた。
「ライフを残す、ですか?」
「ええ。デッキによってターン当りの出力は違うわ。【デビルズ・ゲート】で《闇次元の解放》を使わずに与えられる最大ダメージはどの程度かしら?」
「えっと……《手札抹殺》で手札の暗黒界を落とした後に蘇生して、グラファの効果と《暗黒界の門》を合せたら……えっと……」
律儀に計算しようとする鈴音に、朱理は軽く息を吐いて更に訊ねた。
「あの時は?第5ターン、あなたの手札は2枚、ドローフェイズのドローを含めて3枚ね。フィールドはグラファと門、手札は《暗黒界の斥候 スカー》と《バトルフェーダー》。そこで《手札抹殺》は発動したかしら?」
「そうですね……発動していたと思います。」
「それで総攻撃したとしても、最悪そのターンで決着が付くことはないでしょう?それに《旅人の試練》も伏せていたから、《シャドール・ビースト》のドロー効果も相まって実際には低いダメージで済む確率が高い。不運にも私の手札は《メタモルポット》だけだったから、あの状況で勝つには自分に有利な状況で効果を発動するしかなかった。」
ブースターから採用したカードを引いたという点では運が良かったのだろうが、【暗黒界】相手に《メタモルポット》を引くのは最悪であった。しかし最悪と言い条、自分のターンで決着を付けられるなら何も問題はない。
「えっと……じゃあ、私が《ダークネス・ネオスフィア》を引いていたらどうするつもりだったんですか?」
「ああ、第6ターンの話?その時はその時よ。こちらがもっと攻撃力の高い《メガロック・ドラゴン》を出すか《ハンマーシュート》を引くか、それともそのまま負けるか。勝てない相手に勝つ必要はないわ。」
デッキの残りのカード的には何が来ても動けるはずだったけれど、と無表情で語る朱理に対し、鈴音は深く考え込んでしまっていた。
(デッキの選択は間違っていないと思ってた……でも、違ったのかな。)
確かに、【暗黒界】は強い。他方【守護神エクゾード】はさほど強くない。その前提は全てのカードが使用可能であるスタンダードの考えであり、ストラクチャーデッキをほぼそのままで使用するリミテッドには通用しない。普段はまず見ない《タイムカプセル》然り、《血の代償》の使い方然り、動きが全然違うということを思い知らされたのだ。
「あの、えっと……その、今日はここに宿泊されるのですか?もう少しお話聞きたくて……」
突然変わった話に、朱理は驚いたように一瞬手の動きを止めた。
「ええ、食事が終わったら部屋でお話ししましょうか。」
この夜に話した事が、鈴音が日本初の「リミテッド専門のプロデュエリスト」へと進むきっかけとなったのだが、無論誰も知らない。彼女は高校卒業後にツアープロとして世界各国の大会に参加し、圧倒的な戦績で「女帝」とまで呼ばれるようになった。
他方朱理はと言うと、それ以降デュエリストとして表舞台に出ることは一切なかった。日本で話題となったのはその4年後、牧場主として英国に欧州拠点となる牧場を開設した時、そしてそれから更に3年後に英国ダービーに参戦した時であった。
---
「あれから何年になるかしら?」
鈴音の訪問を受け、彼女の話を一通り聞いた朱理は、窓の外を見ながら呟いた。
「13年ですよ。私は高校を出てすぐにプロになりましたから。」
「そう、それだけしか経っていなかったのね。」
「それだけって……朱理さんは結婚もして、お子様もおられて。随分環境が変わったじゃないですか。」
「だからこそ、それだけなのよ。まだ目標は達成できていないし、一年に一度のその日のために毎日生きていると思うとまだそれだけしか経っていない、そう思えるわ。」
目標、あったんですね。と笑う鈴音に、朱理は窓の外に目を向けたまま黙り込んだ。
「…………ここは、素敵な場所です。朱理さんと知り合えて、本当に良かった。」
風に靡く広い草原、思い思いに駆ける馬。朱理にとっては日常で、鈴音にとっては非日常である。
「私は……あなたと知り合えて、少なくとも退屈はしなかったわ。有難う、お疲れ様。」
少し強く吹いた風が、窓から舞い込んで白いカーテンを揺らした。
《あとがき》
朱理と鈴音のちょっとしたお話、お楽しみ頂けましたでしょうか。この話がどう本作と繋がるのかはお察し頂くとしまして、次回からはちゃんと本編を書きます(遵守するとは言っていない)。
さてここからは少し別の話になるのですが、私の書いている別作品にして本作の前日譚(になりつつある)、「雪と光竜と夢幻世界」の今後の進行についてです。興味のない方はさっくりとブラウザバックして下さって構いません。お読み頂き本当に感謝です。
さてあちらの作品についてですが、前話後書きで触れたように、あまりにも無計画にオリジナルカードを量産(濫造とも言う)したためにバランスが不安定な上に大味なデュエルとなってしまい、はっきりと申しますと筆者の精神力をゴリゴリと削る要因となっています。ただ読者様感謝祭を開催したり、そのキャラクター再登場の確約も頂いた作品と言うこともあり、当方としても手放すには惜しい作品であります。そこで、あちらについては以下のように進行したいと考えております。
「本来は本編終了後に投稿する予定だった後日談‘‘Over the Period’’を進行、そこから断片的に未執筆部分の出来事を回想の形で登場させる」
これによって何かが劇的に変化する訳ではありませんが、いつまで経っても成長しない主人公をはじめ多くのキャラクターに進展が見られる……事を期待している訳であります。それでも(物理的な制約があるので)投稿ペースは緩慢なものになるかと思いますが、気長に待って頂き、《浮上》した時にチラチラ見て頂ければ幸いです。
Thank for you!
Ales
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>「本来は本編終了後に投稿する予定だった後日談‘‘Over the Period’’を進行、そこから断片的に未執筆部分の出来事を回想の形で登場させる」
回想で振り返るという手法はよくありますが、その分普通に書くより技術力が求められますね。ただ、こちらとしては作品が続いてくれるだけありがたいと思っています。モチベーションの維持は大変ですが、頑張ってくださいね。
○追伸
前回記事の件了解しました。件のカードですが、こちらの世界ではやや稀少なもの、という扱いなので精霊といった類のものとしては扱いませんのでご安心ください。何にせよ、あのモンスターを使って遊希の度肝を抜かせてみたいと思った故のデッキ選定でしたので(鬼畜
(2018-06-12 11:35)
確かに、ストラク戦は見たことがないですね。今はともかく、一昔前の環境ならこういうデュエルも求められたのかな、と思って書いて(放置して)いたものを掘り起こして再編したのがこちらです。
>鈴音も朱理も幸せなようで何よりです(保護者感
お互い充実した生活を送る未来ですね。この二人はかなり有名になるエンドだと思います。はい。
>回想で振り返るという手法はよくありますが、その分普通に書くより技術力が求められますね
>ただ、こちらとしては作品が続いてくれるだけありがたいと思っています。モチベーションの維持は大変ですが、頑張ってくださいね
そうなんですよね。モチベーションをが最大の難敵でして。描きたいことはたくさんあるので、そこをどう折り合い付けていくか……とりあえずはお品書きからですね(殴
>件のカードですが、こちらの世界ではやや稀少なもの、という扱いなので精霊といった類のものとしては扱いませんのでご安心ください。何にせよ、あのモンスターを使って遊希の度肝を抜かせてみたいと思った故のデッキ選定でしたので(鬼畜
了解です。確かにあのカード使われたらびびりますわぁ……(完全に他人事) (2018-06-13 23:40)
確かにストラクチャーデッキ同士で行うデュエルは見たことはないです。
この作品を読んで、「ああ、こういうデュエルもあるのか」と知りました。
いずれは寄せ集めの種族、属性混合デッキ同士のデュエルもあるのかなぁ?
なにはともあれ、次回が気になりますな・・・。 (2018-06-27 22:39)
お久しぶりです。コメントありがとうございます&毎度遅れて申し訳ありません。
ストラクチャーデッキ同士の対戦は今後定期的にやりたいと思っております。書いていて割と楽しいので是非ヒラーズさんも(殴
>いずれは寄せ集めの種族、属性混合デッキ同士のデュエルもあるのかなぁ?
完全にバラバラな状態からだと、MtGのブースター・ドラフトみたいな感じになるんですかね。ドラフト系のデュエルは予定になかったですが、試しにやってみて面白くなりそうなら投稿するかもしれません。
>なにはともあれ、次回が気になりますな・・・
更新、遅くて申し訳ありません。お時間があれば、拙作「雪と光竜と夢幻世界」の方もご覧頂ければ筆者が喜びます(ダイマ)。 (2018-07-07 23:00)