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第二話 出会い 作:鈴木颯手
海馬ランドにて行われたデュエルアカデミア入学試験で教員に勝利した黒崎龍吾は現在飛行機に乗っていた。行先は勿論デュエルアカデミア高等部がある島だ。
入学試験から数日後黒崎龍吾の元に合格通知が届き寮もラーイエローとなっていた。ラーイエローの上、オベリスクブルーは中等部でいい成績を出したものしか最初は入れないため高等部からはどれだけの実力者でもラーイエローからスタートとなる。
黒木龍吾もその一人であり彼はラーイエローの制服を支給されていた。そんな彼の隣に一人の男が座る。
「となり、失礼するよ」
「……ああ」
男、三沢大地の言葉に龍吾は短く答えた。龍吾は会話をする気は無いようで足を組み、腰を深々と椅子に座らせ目をつぶっていた。そんな龍吾の様子に三沢は苦笑し彼の事を考える。
「(黒木龍吾、何処かで聞いた名だとは思っていたが……。まさかプロデュエリストだったとはな)」
三沢は入試試験後すぐに龍吾について調べ上げた。その結果、数年前にジュニアリーグで活躍したデュエリストであることが判明した。三沢もジュニアリーグをテレビで見ていた為龍吾の事を頭の隅で覚えていたのである。
更に、龍吾は黒木カンパニーというIT企業の御曹司である事も調べていくうちに判明した。とは言え本人はデュエルの腕から社長になるつもりはなく弟が後継者となっていた。
ある意味では雲の上の人物である龍吾と話す機会が出来た三沢は少し興奮していたのだが本人はこの対応であった。三沢は駄目元で挨拶をしてみる。
「俺は三沢大地。君は?」
「……知らないふりはしなくていい。俺の事は知っているか、もしくは調べたのだろう?」
「っ!」
「相手の動きを見れば簡単にわかる」
それだけ言うと龍吾は黙る。少しして寝息が聞こえてきた為眠りについたことがうかがえた。しかし、当の三沢は自分の動きから察した龍吾の洞察力に驚いていた。
「(……黒木龍吾は相手の動きを封じつつ高火力で倒すタイプのデュエリスト。まさかここまで洞察力が高かったとは……。いや、だからこその強さなのか)」
三沢は改めて龍吾の凄さを知ると同時に同じデュエルアカデミアに通える事に興奮していくのだった。
「……」
入学式、歓迎会と怒涛の一日を終えて龍吾はラーイエローの寮を離れて校舎を散策していた。特に理由はないが「ここに来た方が良い」という一種の勘のようなものが働いたからであった。
「あら?」
「ん?」
そして、廊下の一角で一人の女生徒と遭遇した。金髪の髪を腰まで垂らした女性、天上院明日香は龍吾に声をかけた。
「貴方もデュエルを見に来たの?」
「……この時間にデュエルはできないはずだが」
「それでも行っている馬鹿な生徒がいるのよ。どう? 一緒に見に行かない? 受験で注目を浴びた黒木龍吾さん?」
「……」
龍吾は明日香が自分の名前を知っている事に驚きはしない。受験の時に見ていたとなれば名前を呼ばれた時に知っているし自身の出自を考えれば可笑しくはなかった。
故に、考えるのはついていくか否かだ。とは言え特に断る理由もない龍吾の答えは決まっている様なものだったが。
「……そうだな、見に行くか」
「そう、それなら良かったわ。私は天上院明日香、改めてよろしく」
「……ああ」
明日香の自己紹介に短く答えた龍吾は会場に向けて歩き出すのだった。
「罠カード、“ヘル・ポリマー”発動!」
会場に付いた時にはデュエルは始まっており、対戦相手の一人、万丈目準が罠カードを発動していた。
「“ヘル・ポリマー”って……」
「デュエリストにとって、基本的な知識よ」
そのデュエルを観戦していた一人、丸藤翔の呟きに明日香が答えた。龍吾もその言葉に心の中で同意しつつ盤面を素早く確認した。
「(“リボーン・ゾンビ”に“ヘル・ポリマー”……か。相手は、“フレイム・ウィングマン”か? 三沢が言っていたE・HERO使いか)」
龍吾は状況を素早く確認し終えると改めて明日香と翔の方を向く。明日香が“ヘル・ポリマー”の効果を説明したようだが翔の反応から、あまり理解はしていないようだった。
「……“フレイム・ウィングマン”はあのレッド生の元を離れブルー生のものとなる」
「えっと……」
「黒木龍吾だ」
「龍吾君。ブルー生の方が万丈目準、レッド生の方が遊城十代よ」
「そうか」
特に興味はないのかそのままデュエルを眺めていく。“E・HERO フレイム・ウィングマン”の喪失から一気に劣勢へと切り替わった十代だが直ぐに取り返しダメージを与えていくが万丈目の方が上手であっという間に再び劣勢へと切り替わっていった。
しかし、十代がドローをした瞬間、警備員の接近に気付いた明日香によってデュエルは中断となり全員がその場を離れる事となった。十代は勝利できると思っていたのかデュエルの続行をしたかったようだ。
「そんなに良いカードを引いたのか?」
「ん? あんた誰だ?」
「アニキ、入試の時で凄く強かった人っスよ」
「ああ! お前が黒木龍吾か! 俺は遊城十代! よろしくな」
「……ああ」
「んでな、俺が引いたのはこのカードだ!」
そう言って見せたのは“死者蘇生”のカード。十代の反応から、“フレイム・ウィングマン”を墓地より蘇生させようと考えているのだろう。しかし、その嬉しそうな十代に龍吾は淡々と事実を告げた。
「……“フレイム・ウィングマン”は融合召喚でしか特殊召喚は不可能だ。墓地からの蘇生はできない」
「えッ!? そうなのか!?」
「そうよ。死者蘇生を使うのならあの場において最も防御力の高い“クレイマン”を出すしかなかったでしょうね」
「そんな~」
衝撃の事実に十代はがっくりとするが直ぐに気持ちを持ち直した。
「よし! なら次は負けないようにするだけだ! 翔! すぐに寮に戻ってデッキ構築だ!」
「あ! 待ってよアニキ~!」
十代は走って寮へと戻っていく。その後を翔が追いかけていくがその様子は兄貴分に振り回される子分の様であった。それを見送った明日香は龍吾に問いかけた。
「どう? 彼のデュエルは?」
「……実力はある。チャンスをつかみ取る運も持っている。だが、E・HEROは手札を多く消費する。それをどう補っていくのかが強く成るポイントだろうな」
「へぇ……」
意外とよく見ていたと明日香は思い、龍吾の方を見る。龍吾は何を思っているのか、十代の方を見ているがその表情からはうかがい知る事が出来ない。それでも、十代に何かを感じた事は明日香にも分かり薄く笑みを浮かべた。
「(高校生活、楽しくなりそうじゃない)」
「(あの鳴き声、彼もそうなのか……)」
二人は全く別々の事を思い浮かべつつも高校生活初日は終了していくのだった。
入学試験から数日後黒崎龍吾の元に合格通知が届き寮もラーイエローとなっていた。ラーイエローの上、オベリスクブルーは中等部でいい成績を出したものしか最初は入れないため高等部からはどれだけの実力者でもラーイエローからスタートとなる。
黒木龍吾もその一人であり彼はラーイエローの制服を支給されていた。そんな彼の隣に一人の男が座る。
「となり、失礼するよ」
「……ああ」
男、三沢大地の言葉に龍吾は短く答えた。龍吾は会話をする気は無いようで足を組み、腰を深々と椅子に座らせ目をつぶっていた。そんな龍吾の様子に三沢は苦笑し彼の事を考える。
「(黒木龍吾、何処かで聞いた名だとは思っていたが……。まさかプロデュエリストだったとはな)」
三沢は入試試験後すぐに龍吾について調べ上げた。その結果、数年前にジュニアリーグで活躍したデュエリストであることが判明した。三沢もジュニアリーグをテレビで見ていた為龍吾の事を頭の隅で覚えていたのである。
更に、龍吾は黒木カンパニーというIT企業の御曹司である事も調べていくうちに判明した。とは言え本人はデュエルの腕から社長になるつもりはなく弟が後継者となっていた。
ある意味では雲の上の人物である龍吾と話す機会が出来た三沢は少し興奮していたのだが本人はこの対応であった。三沢は駄目元で挨拶をしてみる。
「俺は三沢大地。君は?」
「……知らないふりはしなくていい。俺の事は知っているか、もしくは調べたのだろう?」
「っ!」
「相手の動きを見れば簡単にわかる」
それだけ言うと龍吾は黙る。少しして寝息が聞こえてきた為眠りについたことがうかがえた。しかし、当の三沢は自分の動きから察した龍吾の洞察力に驚いていた。
「(……黒木龍吾は相手の動きを封じつつ高火力で倒すタイプのデュエリスト。まさかここまで洞察力が高かったとは……。いや、だからこその強さなのか)」
三沢は改めて龍吾の凄さを知ると同時に同じデュエルアカデミアに通える事に興奮していくのだった。
「……」
入学式、歓迎会と怒涛の一日を終えて龍吾はラーイエローの寮を離れて校舎を散策していた。特に理由はないが「ここに来た方が良い」という一種の勘のようなものが働いたからであった。
「あら?」
「ん?」
そして、廊下の一角で一人の女生徒と遭遇した。金髪の髪を腰まで垂らした女性、天上院明日香は龍吾に声をかけた。
「貴方もデュエルを見に来たの?」
「……この時間にデュエルはできないはずだが」
「それでも行っている馬鹿な生徒がいるのよ。どう? 一緒に見に行かない? 受験で注目を浴びた黒木龍吾さん?」
「……」
龍吾は明日香が自分の名前を知っている事に驚きはしない。受験の時に見ていたとなれば名前を呼ばれた時に知っているし自身の出自を考えれば可笑しくはなかった。
故に、考えるのはついていくか否かだ。とは言え特に断る理由もない龍吾の答えは決まっている様なものだったが。
「……そうだな、見に行くか」
「そう、それなら良かったわ。私は天上院明日香、改めてよろしく」
「……ああ」
明日香の自己紹介に短く答えた龍吾は会場に向けて歩き出すのだった。
「罠カード、“ヘル・ポリマー”発動!」
会場に付いた時にはデュエルは始まっており、対戦相手の一人、万丈目準が罠カードを発動していた。
「“ヘル・ポリマー”って……」
「デュエリストにとって、基本的な知識よ」
そのデュエルを観戦していた一人、丸藤翔の呟きに明日香が答えた。龍吾もその言葉に心の中で同意しつつ盤面を素早く確認した。
「(“リボーン・ゾンビ”に“ヘル・ポリマー”……か。相手は、“フレイム・ウィングマン”か? 三沢が言っていたE・HERO使いか)」
龍吾は状況を素早く確認し終えると改めて明日香と翔の方を向く。明日香が“ヘル・ポリマー”の効果を説明したようだが翔の反応から、あまり理解はしていないようだった。
「……“フレイム・ウィングマン”はあのレッド生の元を離れブルー生のものとなる」
「えっと……」
「黒木龍吾だ」
「龍吾君。ブルー生の方が万丈目準、レッド生の方が遊城十代よ」
「そうか」
特に興味はないのかそのままデュエルを眺めていく。“E・HERO フレイム・ウィングマン”の喪失から一気に劣勢へと切り替わった十代だが直ぐに取り返しダメージを与えていくが万丈目の方が上手であっという間に再び劣勢へと切り替わっていった。
しかし、十代がドローをした瞬間、警備員の接近に気付いた明日香によってデュエルは中断となり全員がその場を離れる事となった。十代は勝利できると思っていたのかデュエルの続行をしたかったようだ。
「そんなに良いカードを引いたのか?」
「ん? あんた誰だ?」
「アニキ、入試の時で凄く強かった人っスよ」
「ああ! お前が黒木龍吾か! 俺は遊城十代! よろしくな」
「……ああ」
「んでな、俺が引いたのはこのカードだ!」
そう言って見せたのは“死者蘇生”のカード。十代の反応から、“フレイム・ウィングマン”を墓地より蘇生させようと考えているのだろう。しかし、その嬉しそうな十代に龍吾は淡々と事実を告げた。
「……“フレイム・ウィングマン”は融合召喚でしか特殊召喚は不可能だ。墓地からの蘇生はできない」
「えッ!? そうなのか!?」
「そうよ。死者蘇生を使うのならあの場において最も防御力の高い“クレイマン”を出すしかなかったでしょうね」
「そんな~」
衝撃の事実に十代はがっくりとするが直ぐに気持ちを持ち直した。
「よし! なら次は負けないようにするだけだ! 翔! すぐに寮に戻ってデッキ構築だ!」
「あ! 待ってよアニキ~!」
十代は走って寮へと戻っていく。その後を翔が追いかけていくがその様子は兄貴分に振り回される子分の様であった。それを見送った明日香は龍吾に問いかけた。
「どう? 彼のデュエルは?」
「……実力はある。チャンスをつかみ取る運も持っている。だが、E・HEROは手札を多く消費する。それをどう補っていくのかが強く成るポイントだろうな」
「へぇ……」
意外とよく見ていたと明日香は思い、龍吾の方を見る。龍吾は何を思っているのか、十代の方を見ているがその表情からはうかがい知る事が出来ない。それでも、十代に何かを感じた事は明日香にも分かり薄く笑みを浮かべた。
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