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第1話:1-3 作:光芒
☆TURN02(遊大)
「俺のターン、ドロー」
(さて、さっきは面白そうなんて思っちゃったけど……)
遊舞のフィールドには闇属性である超雷龍-サンダー・ドラゴンが2体存在している。双方ともにサーチ封じの効果を持っているため、遊大の常套戦法は二重に止められているのが現状だ。そんな状況を打破するために遊大はフィールドの闇属性モンスター2体を融合素材に指定しているスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンと相手のモンスターを融合素材にできる超融合をデッキに採用している。
しかし、いくら遊大が腕利きのデュエリストと言えどもそう何度も何度も超融合を初手に引き入れられるわけではない。そのカードが手札に無い以上、今あるカードで少しでも流れを自分に引き寄せなければならないのだ。
(普通に考えてまずい展開だ。この手札なら超雷龍が1体だけの方がありがたかったかな)
「俺のフィールドにカードが存在しない時、このカードは手札から発動できる。罠カード、無限泡影を発動。対象は雷神龍-サンダー・ドラゴン」
「雷神龍狙いかぁ……うーん、チェーンする効果は無いよ」
「わかった。これでこのターン終了時まで雷神龍の効果は無効になる」
雷神龍は手札の雷族モンスターの効果が発動する度に対象を取らない除去効果を発動できる。遊舞は前のターンに相手のターンでも発動可能な雷源龍-サンダー・ドラゴンを手札に加えている。このカードの効果を発動されれば雷神龍の攻撃力は更に上昇し、ますます手が付けられない存在になってしまう。それを防ぐための無限泡影であった。
「魔法カード《竜の霊廟》を発動」
《竜の霊廟》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):デッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る。この効果で墓地へ送られたモンスターがドラゴン族の通常モンスターだった場合、さらにデッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。
「俺はデッキからオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンを墓地へ送る。そしてアークペンデュラムはドラゴン族の通常モンスター。よってもう1体、超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴンを墓地へ送る。そして更に速攻魔法《ツインツイスター》を発動」
《ツインツイスター》
速攻魔法
(1):手札を1枚捨て、フィールドの魔法・罠カードを2枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊する。
「手札1枚をコストに、君のフィールドの魔法・罠カードを2枚まで破壊する。破壊するのは……ブリリアント・フュージョンとそのセットカード。チェーンはあるかな?」
「もちろんっ! リバースカードオープン。罠カード《百雷のサンダー・ドラゴン》を発動するよ☆」
《百雷のサンダー・ドラゴン》
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の墓地の雷族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、その同名モンスターを自分の墓地から可能な限り特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。この効果で特殊召喚したモンスターがモンスターゾーンに存在する限り、自分は雷族モンスターしか特殊召喚できない。
「そして手札の雷源龍-サンダー・ドラゴンの効果を超雷龍-サンダー・ドラゴンを対象に発動する!」
チェーン3(遊舞):雷源龍-サンダー・ドラゴン→超雷龍-サンダー・ドラゴン
チェーン2(遊舞):百雷のサンダー・ドラゴン
チェーン1(遊大):ツインツイスター
「チェーン3の雷源龍の効果で、超雷龍の攻撃力は500ポイントアップする!」
超雷龍-サンダー・ドラゴン ATK2600→ATK3100
「チェーン2の百雷のサンダー・ドラゴンの効果で墓地の雷源龍-サンダー・ドラゴンを守備表示で特殊召喚! そして同名モンスターを可能な限り特殊召喚できる! もう1体の雷源龍も守備表示で特殊召喚!」
「チェーン1のツインツイスターの効果でブリリアント・フュージョンと百雷のサンダー・ドラゴンを破壊。守りを固めてきたか」
「へへっ、そういうこと! 百雷のサンダー・ドラゴンで特殊召喚されたモンスターは除外されちゃうけど、雷源龍は除外されても同名カードをサーチできるんだ☆」
口調こそ軽い調子ではあるが、プレイングは悪くない。むしろ3体目の雷源龍をサーチできる体勢を整えるあたり次のターンでこのデュエルを終わらせる腹積もりなのだろう。見た目や言葉遣いで人を判断してはならない、とはよく言ったものである。
「なるほど、よく考えているね。でも……次のターンが来ないとしたら?」
「へっ?」
「俺のフィールドにモンスターが存在しない時、墓地の覇王眷竜ダークヴルムの効果を発動。このカードを墓地から特殊召喚する。特殊召喚に成功したダークヴルムはデッキから覇王門カード1枚を手札に加えることができるけど、超雷龍がいるからその効果は発動できない」
「ツインツイスターのコストで墓地に送ったカードかぁ……」
「そして魔法カード《復活の福音》を発動」
《復活の福音》
通常魔法
(1):自分の墓地のレベル7・8のドラゴン族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
(2):自分フィールドのドラゴン族モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに墓地のこのカードを除外できる。
「墓地のレベル7または8のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンを特殊召喚。そして俺のフィールドに存在する闇属性・Pモンスター2体をリリースすることで、このカードはEXデッキから特殊召喚できる!」
「えっ、何なのその召喚方法は!?」
「君のサンダー・ドラゴンと……まあ似たようなものかな? “その毒は全てを幻惑する。その魂は何物をも魅了する美しき花。紫毒の魔竜よ、あらゆるものを惑わし崩せ!” 融合の竜よ。転生せよ! 融合召喚!!―――《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》!!」
スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンとは似て非なる存在。覇王の力を得た紫毒の竜が妖艶な姿を見せた。
《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》
融合・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2000
闇属性Pモンスター×2
このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。
●自分フィールドの上記カードをリリースした場合にEXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。
(1):1ターンに1度、このカード以外の自分または相手のフィールド・墓地のモンスター1体を対象として発動できる。エンドフェイズまで、このカードはそのモンスターと同じ、元々のカード名・効果を得る。このターン、自分のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
「融合魔法なしで融合召喚……」
「今ではもう珍しいことじゃないけどね。覇王眷竜スターヴ・ヴェノムの効果を発動。このカード以外の自分または相手のフィールド・墓地のモンスター1体を対象として発動。エンドフェイズまでスターヴ・ヴェノムはそのモンスターと同じ、元々のカード名・効果を得る。俺が対象にするのは超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン」
《超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン》
特殊召喚・ペンデュラム・効果モンスター
星12/光属性/ドラゴン族/攻?/守?
【Pスケール:青12/赤12】
(1):自分はドラゴン族モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
(2):自分の墓地のドラゴン族の融合・S・Xモンスター1体を対象として発動できる。このカードを破壊し、そのモンスターを特殊召喚する。
【モンスター効果】
このカードは通常召喚できない。手札からのP召喚、または自分フィールドのドラゴン族の融合・S・Xモンスターを1体ずつリリースした場合のみ特殊召喚できる。
(1):このカードを手札から捨て、500LPを払って発動できる。デッキからレベル8以下のドラゴン族Pモンスター1体を手札に加える。
(2):このカードの攻撃力・守備力は相手のLPの半分の数値分アップする。
(3):1ターンに1度、LPを半分払って発動できる。このカード以外のお互いのフィールド・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻す。
「超天新龍の名と効果を得たスターヴ・ヴェノムの攻撃力・守備力は相手のライフの半分の数値だけアップする。君のライフは初期値の8000」
「ってことは4000アップってこと!?」
「うん、そういうこと」
覇王眷竜スターヴ・ヴェノム(超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン)ATK2800/DEF2000→ATK6800/DEF6000
「攻撃力……6800……!?」
「でも本当の狙いは別にある。ライフを半分払って発動。このカード以外のお互いのフィールド・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻す!」
「えっ……」
「“新龍撃咆”!」
遊大 LP8000→LP4000
破壊耐性を持つ超雷龍2体、そして除外されることで同名カードをサーチできる雷源龍。それらのモンスターをまとめて処理できるのが超天新龍の全バウンス効果。超天新龍の力を得たスターヴ・ヴェノムの咆哮と共に、遊舞のフィールドのサンダー・ドラゴンたちは何もできずに消え去った。
「あたしのモンスターたちがぁ……」
「残念だったね。でも、デュエルってこういうものなんだ。いい勉強になったんじゃないかな? 俺はチューナーモンスター《竜剣士ラスターP》を召喚」
《竜剣士ラスターP》
ペンデュラム・チューナー・効果モンスター(制限カード)
星4光属性/ドラゴン族/攻1850/守0
【Pスケール:青5/赤5】
(1):1ターンに1度、もう片方の自分のPゾーンにカードが存在する場合に発動できる。そのカードを破壊し、そのカードの同名カード1枚をデッキから手札に加える。
【モンスター効果】
このカードを素材として、「竜剣士」モンスター以外の融合・S・Xモンスターを特殊召喚する事はできない。
「バトル。覇王眷竜スターヴ・ヴェノムでダイレクトアタック。“新龍超天絶波”」
覇王眷竜スターヴ・ヴェノム(超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン)ATK6800
遊舞 LP8000→LP1200
「ラスターPでダイレクトアタック。楽しいデュエル、ありがとね」
竜剣士ラスターP ATK1850
遊舞 LP1200→LP0
*
「……ちょっとやりすぎちゃったかな」
デュエルは遊大が在校生の意地を見せた形となった。遊舞も留奈を破るほどの強さこそ見せたのだが、さすがに相手が悪かったと言わざるを得なかった。しかし、遊舞はそう思っていないようで、デュエルに敗れた後は悔しそうにその場で俯いていた。
「あの、大丈夫?」
中学生相手にさすがに大人げなかっただろうか、と思った遊大は遊舞のところに歩み寄る。すると遊舞は遊大が近づいてきたのに気づくと、すっと顔を上げる。
「すっごーい!!」
「えっ?」
「これがセントラル校最強のデュエリスト、高海 遊大のデュエルなのね! アタシ、すっごく楽しかったよ☆」
「そ、それはどうも……」
後攻ワンターンキルを食らったとはいえ、どこまでもポジティブな少女である。しかし、ネガティブよりはポジティブの方がいい。負けた後でも前向きでいれることは間違いなく一種の才能である。
「今日のデュエル、今後の参考にするね! アタシ、絶対にこの学校入るから!」
「う、うん。でももう試験終わっちゃったんだよね?」
「あっ、それもそうだね! でも大丈夫、アタシ受かってるから!」
その根拠のない自信はどこから来るのだろうか。まるで見てきたように言う彼女は小さく手招きをしている。まだ何かあるのだろうか、と思って傍に寄った遊大。すると遊舞は小悪魔のような企んだ笑みを見せる。そして―――遊大の右側に回ると、そっと彼の頬にキスをした。
「っ!?」
遊大はもちろん、その場にいた仁、礼、留奈、美鈴は言葉を失った。
「これは、今日のデュエルのお礼だよ☆ じゃ、そういうことで!」
悪戯っぽく笑った遊舞はそう言ってまるで風が吹くかのように、その場を後にした。何が起きたのか、状況が理解できない様子の遊大は呆然と立ち尽くしていた。
「あ、あ、あの人は……今……遊大さんに接吻を……!」
「おちつけ、美鈴! あれはゆめだ、わるいゆめだ! わるいゆめいがいのなにものでもない!!」
「私だってしたことないのに! なんで、あの人はーっ!!」
「はい、どうどう。きっと帰国子女なのよ。彼女は……」
荒ぶる美鈴を尻目に、遊大は遊舞が立ち去った方向をずっと見つめていた。
(……あの子の笑った顔、どこかで見たことがあるような)
一つの疑念をその胸に抱きながら。
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自分で書いていて思ったんですが、やはりオッレボスターヴのコンボは薬物のようなもので、使っていると逆転力が凄くて乱用してしまいそうになります。できればこのコンボに頼らないでいいデュエルにしたいものですが……
>美鈴落ち着くんだ。今の娘は進んでるんだよ。
それにしては進みすぎているような。ただ、この何気ない一つの行動にも色々と……おっとそれは言ってはいけないことでした。
(2019-06-14 23:34)