第９話　罰ゲーム　作：とき

ターン４途中
晴海　LP8000　手札1　《エレメントセイバー・モーレフ》＋《霊神の聖殿》
裕美　LP5500　手札2　《シンデレラ》《カボチャの馬車》（守備）＋《ガラスの靴》《ガラスの靴》《鉄の檻》《シュトロームベルクの金の城》

（後は《シンデレラ》で直接攻撃して、モーレフを《シンデレラ》の効果で《ガラスの靴》を装備させて弱体化させれば、次のターン《鉄の檻》の効果でウィラードを蘇生、金の城でアタッカーを呼んで総攻撃をかけて、私の勝ち！勝てる、勝てるんだ…！私はもう負けられない、この最後のコイン、守らなきゃ…！！）

裕美が勝利への逆算を始めるが、晴海はエースを失ったとはいえ動揺を見せずに、裕美と対峙し続けた。

「バトルフェイズ！《シンデレラ》の攻撃力は《エレメントセイバー・モーレフ》には届かないけど、こっちには効果があるよ！《カボチャの馬車》が場に存在する限り、《シンデレラ》は直接攻撃できる！というわけで、《シンデレラ》で直接攻撃！」
「《エレメントセイバー・モーレフ》の効果発動！手札からエレメントセイバーを墓地に送ることで、相手フィールド上のモンスター１体を裏側守備表示にできる！私が選ぶのは、もちろん《シンデレラ》！」
「そんな、《シンデレラ》の攻撃に使ってくるの！？手札１枚なのに！」
「《霊神の聖殿》の効果で、コストを手札の代わりにデッキの《エレメントセイバー・マロー》にする！」
「嘘！？相手ターンにも効果が使えるなんて、ずるいよ！」
「《霊神の聖殿》の効果が使えるのは、「１ターンに１度」だからね。相手ターンにも効果が使えるモーレフなら、相手ターンでも《霊神の聖殿》の効果を発動できるの」
「うう…　装備対象を失った《ガラスの靴》２枚は破壊、ターンエンド…」

ターン４終了
晴海　LP8000　手札1　《エレメントセイバー・モーレフ》＋《霊神の聖殿》
裕美　LP5500　手札1　《カボチャの馬車》＋裏守備モンスター（《シンデレラ》）＋《鉄の檻》《シュトロームベルクの金の城》＋セットカード１枚

「私のターン…　ドロー！」

ドローカードを見る。このカードならば、あの子には可哀想だが、ほぼ勝利を手繰り寄せられるか。

「《エレメントセイバー・モーレフ》の効果発動！《霊神の聖殿》の効果で、コストを手札の代わりにデッキの《エレメントセイバー・マカニ》にする！《カボチャの馬車》を裏側守備表示に！」
「ここで墓地肥やし…　嫌な予感しかしないよ…」
「いや、《カボチャの馬車》が邪魔だったんだけどね。さてと、私の最大戦力の一枚を使おうかな！」
「え、ウィラードが最大戦力じゃないの！」
「墓地のラパウィラ、アイナ、ナル、マロー、それぞれの効果を発動！墓地に存在するエレメントセイバーは、１ターンに１度だけエンドフェイズ時まで属性を好きなものに変えられる。私は風属性を選択！」
「墓地のモンスターの属性を変える…？　何が起きるの？」
「これで私の墓地には、今効果で属性を変えた4体と、元々風属性の《エレメントセイバー・マカニ》の合わせて5体の風属性モンスターが存在する。墓地に5体の風属性モンスターが存在する時、手札から《風霊神ウィンドローズ》を特殊召喚できる！」

不意に精神の空白の間を吹き荒れた暴風から、キャベツのような、バラのようなよくわからない霊体が姿を現した。

「《風霊神ウィンドローズ》の効果発動！特殊召喚に成功した場合、相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する！鉄の檻も、金の城もこれでおさらばだよ！」
「えっ…　ここで金の城も鉄の檻も飛ばされちゃうの！？」
「ウィンドローズがいてよかったよ。私は２体の守備モンスターに、モーレフとウィンドローズで攻撃！《霊神の聖殿》の効果で墓地に風・光の２属性があるので攻撃力は400ポイントアップ！」

《風霊神ウィンドローズ》　ATK2800→3200
《エレメントセイバー・モーレフ》　ATK1900→2300

《エレメントセイバー・モーレフ》　ATK2300　対　DEF600　《シンデレラ》
《風霊神ウィンドローズ》　ATK3200　対　DEF300　《カボチャの馬車》

「私の場…　空っぽだ…」
「私はこれでターンエンド！」

ターン５終了
晴海　LP8000　手札1　《風霊神ウィンドローズ》《エレメントセイバー・モーレフ》＋《霊神の聖殿》
裕美　LP5500　手札1　

「私のターン、ドロー…　ターンエンド」

裕美は完全に意気消沈していた。ライフこそ十分ではあるが、手札も場にも何もなかった。この状況で引いて逆転の兆しになるのは《シュトロームベルクの金の城》か、それをサーチできる《怪鳥グライフ》だが、このカードはそのどちらでもなく、また汎用の罠ですらなかった。

（この状況で《鉄の檻》を引いても、どうしようもないよ…）

ターン６終了
晴海　LP8000　手札1　《風霊神ウィンドローズ》《エレメントセイバー・モーレフ》＋《霊神の聖殿》
裕美　LP5500　手札2　

「私のターン。ドロー…　悪いけど裕美ちゃん、このターンで終わらせるよ！」
「え、そんな…」
「私は《エレメントセイバー・アイナ》を召喚し、効果を発動！手札のエレメントセイバー１体を墓地に送る事で、墓地からエレメントセイバーか霊神を召喚条件を無視して特殊召喚できる！だけど《霊神の聖殿》の効果で、デッキからエレメントセイバーを墓地に落とすことで手札コストを肩代わりできる！私はデッキから《エレメントセイバー・モーレフ》を墓地に送り、《エレメントセイバー・ウィラード》を蘇生する！」

晴海　LP8000　手札1　《風霊神ウィンドローズ》《エレメントセイバー・ウィラード》《エレメントセイバー・モーレフ》《エレメントセイバー・アイナ》＋《霊神の聖殿》
裕美　LP5500　手札2　

「あ…　いやぁ…」
「これで終わらせるよ！アイナ、モーレフ、ウィラードで直接攻撃すればライフ０のはず！攻撃力は《霊神の聖殿》の効果で１２００ポイントアップしているよ！墓地には６属性のエレメントセイバーが全部揃ってるからね！」

《エレメントセイバー・アイナ》　ATK900→2100
《エレメントセイバー・モーレフ》　ATK2300→3100
《エレメントセイバー・ウィラード》　ATK2400→3600


《エレメントセイバー・アイナ》　ATK2100　ダイレクト！
《エレメントセイバー・モーレフ》　ATK3100　ダイレクト！
《エレメントセイバー・ウィラード》　ATK3600　ダイレクト！

晴海　LP8000　手札1　《風霊神ウィンドローズ》《エレメントセイバー・ウィラード》《エレメントセイバー・モーレフ》《エレメントセイバー・アイナ》＋《霊神の聖殿》
裕美　LP0　手札2

WINNER　西川晴海

「きゃああああ！痛いよ…　負けちゃったよ…」
「勝負あり。勝者、西川晴海。では勝者には、敗者のコインカードを与えよう」

レナードが晴海のもとに歩み寄ると、新たなコインカードの光が晴海の手元に集まってきた。そういえば今回は、一気にライフをゼロにしたから裕美ちゃんのスキルもわからなかったし、自分もスキルを使う状況に陥らなかったな、と晴海が思ったのをよそに、レナードは裕美の元に歩み寄る。

「レナードのお兄さん…　負けちゃった。もう、コインカードがないの。スキル、使えないや…」
「そうか。それは残念だね、裕美。でも、もう心配をする必要はないよ」
「どういうこと、お兄さん…」
「コインカードを全て失ったピースに、もはやピースである必要性はないからだ。もう裕美は、マインド・ゲームも、デュエルもする必要はないんだ」
「え…　それじゃあ、私の願いは…？？」
「悪いが、これもルールだ。コインカードを全て失ったピースはマインド・ゲームから脱落する。そして、その精神は勝者の願いを叶えるためのエネルギーになる」
「嘘…！お兄さん、そんなこと言っていなかったよ！負け続けたらダメなんて、聞いてなかった！」
「どんなゲームにも、失敗の限度はあるだろう？コインカードは残機という面も持っている。何故言わなかったかだが…　そのほうがこのゲームが盛り上がるのだよ。負けこんだ相手に手心を加えたデュエルをされても困る」
「そうかぁ、私のお願い…　もう聞いてもらえないんだ…　あはは、失敗したなあ。お父さんとお母さん、仲直りできないのかなぁ」
「放心状態のようだな。そのまま心を砕くのが慈悲か。罰ゲームだ…　マインド・パージ！」

レナードが『罰ゲーム』を宣言すると、裕美側の精神の空白の間がパリン、と割れて崩れ落ち、晴海は現実のカードショップの前に戻ってきた。しかし、裕美の様子がおかしい。ぬとねの区別がつかないような表情のまま倒れ込み、体が動く気配を見せないのだ。

「っ、裕美ちゃん、大丈夫！？」
「うー…　あうあう…　あー…」
「これ、レナードさんが言ってた罰ゲームと関係があるのかな…？　ううん、とにかく救急車呼ばなきゃ！」

晴海は携帯電話を使い（一度家に戻ってからカードショップに行ったので、携帯電話も持ってきていたのが幸いした）、１１９を速やかにダイヤルした。救急車が到着するまでの間、晴海は裕美を介抱しながら、レナードと会話をすることにした。