52.交錯する想い　作：くちなし

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少女のビジョンはまだ続く。

「⋯⋯私⋯⋯死んじゃったんだ⋯⋯」

数時間後。病院のベッドの上に置かれた体。頭には布がかぶせられていて、右手がない。
いや、正確には、重機でつぶされて取れた、と言ったほうがいいのだろうか。
ベッドの脇には机が数個置いてあり、家族写真と蝋燭、壊れたデュエルディスクに、右腕が置かれていた。

「なんで、、なんで死んじゃったの、、！こんなむごい姿で、、」

母親であろう女性が左腕を両手で握って泣いている。
その後ろにあの丘にいた子供たち、病院の医師。

ーーー回想②終

「まじかよ、、」

そういや、デュエルディスクは左腕につけてた。
あのデュエルディスクは右利き用のはず、、
もしや、右腕が無くて、重くて付けられないから、無理矢理左腕につけてたのか、、？

「⋯⋯」

少女がゆっくりと起き上がる。

「⋯⋯あんた、、死んでるのか、、？」

冷静に質問してみる。

「⋯⋯あなた⋯⋯私の記憶⋯⋯見た⋯⋯いや、見れたのね⋯⋯」
「一部分だがな、、」
「⋯⋯あなたが見た通り、私はこの世の者ではないわ⋯⋯言うならば地縛霊⋯⋯かしら？」

地縛霊、、？いや、嘘だ。そんなの非科学的だ。
そう思ってたボクが、今実際に居合わせているのである。

「あなた⋯⋯名前は⋯⋯悠里って言ったよね⋯⋯」

そうだが？？

「ありがと⋯⋯私は、デッキを組むだけ組んで、実戦した試しがほとんどなかったから⋯⋯」

身体のある霊なんてまた珍しいな。

「⋯⋯楽しかったわ⋯⋯」
「墓はどこだ」
「え⋯⋯？私の⋯⋯？」

他に誰がいるんだ。

「そう⋯⋯私のは無いわ⋯⋯取り壊されちゃったの」
「そうか」
「悠里なら⋯⋯このデッキを使いまわせる⋯⋯エースであるレッド・デーモンも出せるわ⋯⋯」
「ボクにくれる、と？」

少女は黙ってうなずく。

「それと⋯⋯これ、持っていって⋯⋯」

少女は、身に着けている真っ白のワンピースのポケットから、1枚のカードを悠里に渡す。

「それ、私の大切なカードなの⋯⋯私だと思って使って⋯⋯」

常に霊が憑いていると考えると怖いな。

「もう⋯⋯時間ね。悠里、本当にありがとう⋯⋯私を楽しませてくれて⋯⋯」
「気にすんな。安らかに眠んな。長い間こんなとこで待ってたんだろ？決闘者を」
「そうね⋯⋯長かったわ。⋯⋯そろそろ行くわ⋯⋯助けが必要な時は呼んで⋯⋯」

少女のからだが光ったと思いきや、足元から光の粒となって消えていく。

「待て、、！名前を教えろ！」
「⋯⋯私の名前は⋯⋯遠野幽香(とおの ゆうか)よ⋯⋯」
「そうか。あとでお参りしとく⋯⋯」
「悠里ったら、ほんと優しいのね⋯⋯」

そう言って少女は消えた。

ーーー

「ここは、、」

冥道トンネルの出口か。携帯の電波も戻っている。
ここどこだーーって、！WRGP始まっちまう！
自転車、自転車、、！

「あれ、、？」

自転車の代わりにDホイールが置いてある。紫色のカラーに、桜吹雪、そして、赤のライン。

「幽香、、ありがとよ」

さて、行くか、、みんなのもとへ！

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その頃、瑞穂たちは、会場に無事着くことができ、エントリーを済ませていた。

「悠里、まだかしら、、」
「もう始まってまうで、、？」

昨日の午後4時に出発し、宿で寝泊まり、現在時刻は午前7時半。
オープニングセレモニーは1時間後の8時半に始まる。
会場は、アカデミアから車で1時間以上かかる大きなところである。

「よし、悠里のことはあきらめて、代理メンバーで行くわよっ！」
(まったく、、早く来なさいよ、、！)

上っ面だけ元気そうに声を張り上げて言う瑞穂だが、内心とても心配かつ不安であり、
そのことはみんなも同じで、早く来てほしいと願っているのである。

「電話かけてみるわ」
「電話って、さっきつながってなかったんでしょ？」
「それでも！あいつは、何回も言ってやらなきゃ動かないんだから、、！」

電話をかけてみる瑞穂であった。

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「すげぇ、、」

感嘆する悠里。それもそのはず。とても速いのである。
Dホイールは初めて乗る悠里であったが、後ろから支えられている様な感じがする。

「、、！」

携帯のコール音が鳴る。Dホイールの画面に触れると、電話に出れるのである。

「あっ！つながった！悠里ぃ！！いま何時だと思ってるのよ！！」
「7時半だろ？知ってるよ」
「オープニングセレモニー8時半よ！？今どこにいるの！！」
「冥道トンネルにいた」
「はぁ！！？冥道！？いいから早く戻ってきなさい！オーバー？？」

電話が切れた。っと、同時に次の電話。

「もしもし悠里、、？」
「久しぶりだね」
「ゆ、悠里～～！！」

電話の主は義姉の桜花である。

「し、心配したんだから！！」
「ごめん。今まだ家なのか？」
「いえ、駅だわ。海清くんが、WRGPの観戦券をくれたの。見に行く途中よ」
「そりゃあ、ちょうどいい。ボクも向かってる。なんてったって出るんだから」
「え、、！？わ、わかったわ。じゃあ、向こうでね！」

そして、次の電話

「もしもし、悠里くん。。？」
「香織か。どした」
「どうした、じゃないですよ！みんな待ってますよ！」
「知ってる。悪いな」
「もうすぐ始まりますけど、悠里君いなかったら意味ないんですよ！みんなでやりたいんですから！」
「みんなで、、か、、」
「、、悠里、、あなたのカード、私が持ってるわ、、」
「有希、、！」
「悠里、焦らなくていいから急ぎなさい。怪我しちゃ意味ないんだから」
「ユニフォーム持って待ってるっさ！」
「はよおいで！観月いないと、いつものムード出ないんよ！」
「こうして、みんな悠里の顔を見たがってるんだ。もちろん、オレもだけどな」
「安楽木！氏家さんに城ヶ崎、ウミキヨ、、！」
「ゆ、、悠里！とにかく、急いで来なさいよねっ！さもないと、死刑にするから！」
「ありがとよ」

電話が切れる。
待ってろ！すぐに行ってやる！！

ーーー

悠里、カッコいい⋯⋯

「Dホイールは私と悠里がカードを交え、戦った証、そして、友達の印⋯⋯私は遥か彼方から見守っていることにするわ⋯⋯」

ーーー

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次回(自壊)予告ですよ⋯⋯
こんにちは、遠野幽香です⋯⋯
悠里とカードを交え、Dホイールとデッキを受け取った悠里はDホイールを走らせているわ⋯
悠里にかかった電話越しに伝わったそれぞれの想いは紡ぐことができるのかしら⋯⋯？
そういえば、今日はWRGPの初日よね。悠里、まさかそこに向かっているのかしら⋯⋯？

次回！第53話　「開戦」

⋯⋯楽しかったわよ、、悠里とのデュエル⋯⋯

P.S WRGPで使ってほしいデッキ等がありましたら書き込んでください！
※ただし、LINKが主軸のテーマや極神、既出キャラが使うデッキはなしでお願いします
　複数でも構いませんよ～(多かった場合はこちらで選びますが、、)
例≫命削り真龍 VS 命削り真龍→✖　純Kozmo VS AFKozmo→○

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