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1-7:絶望の襲来(*未修正) 作:氷色
ふと気付くとユウゴは土手道の真ん中に仰向けで倒れていた。
視界には夕暮れ差し迫る空。
身体を起こそうとすると、打ち身や擦り傷を負ったのかあちらこちらが痛む。耳鳴りも酷く、音がやけに聞き取りにくい。
周りを見回すと、先程まで二人がいた場所の地面がまるで爆発でも起こったかのように大きく抉れていた。
「一体、何が…」
目の前の光景から状況を推測しようとするが、頭がうまく働かない。混乱しているというよりは何も考えられないという方が近い。
しかし少し離れた場所に横たわるタツヤを見つけた瞬間、ユウゴは反射的に走り出していた。
「タツヤっ…!」
目を閉じたままぴくりとも動かないタツヤを抱き起こす。
最悪の予想が心臓をギュッと掴み絞る。
「なんでッ、こんな…」
誰かに助けを求めようと辺りを見渡すが、視界の中になぜか誰もいない。
しかし更に状況は悪くなる。
突如、上空から何かが降ってきて、ユウゴの眼前でズドンという音と共に着地した。
降ってきた『それ』を認識したユウゴが絶句する。
「嘘だろ…」
ユウゴはその場に尻餅をついた。
見上げた光景には絶望が仁王立ちしていた。
『それ』はおよそ5メートル程もある巨体。人型ではあるものの、人ではありえないおぞましい姿。
端的に表すならば…
「…悪魔」
頭には山羊のような巨大な角。顔や身体には体皮がなく、骨格が剥き出し。それを繋ぐ筋肉は赤く、ぬめりを帯びて脈動している。眼球のあるはずの場所には真紅のおぼろ気な光が灯るだけで、こちらが見えているのかも分からない。
しかしその顔がぎろりという風にユウゴ達を見下ろした。
同時にユウゴの身体に得体の知れない緊張が走る。
人とも獣とも違う、身体に絡み付くような濃密な臭気が鼻につき胃の内容物を押し上げてくる。
身体が押し潰されそうな感覚。悪魔から感じられる重圧は圧倒的に本物だった。
この非現実的な存在から放たれる圧倒的な存在感がユウゴの脳をじりじりと焼く。
ヤバイヤバイヤバイ…。
脳が身体が本能的に全開でアラートを喚き散らしていた。
身体中の毛穴という毛穴が全部開き、汗が尋常じゃない勢いで吹き出し始める。歯は我知らずガチガチと鳴り、目尻からは涙がこぼれる。
『《魔力》が足りぬ…』
何処からともなく響いてきた声にユウゴの肝は握り潰されるかのようだった。地の底から震えてきたような低い声質。それはこの悪魔のものに他ならない。
『貴様らの《魔力》を頂くとしよう』
そう言って悪魔は嗤ったような気がした。
《魔力》というのが何のことだかは分からないが、それはユウゴ達の命を身体を喰らうということだと頭が勝手に翻訳した。その想像は明確な恐怖となって更にユウゴの身体を絡めとる。
悪魔が人の身体程もありそうなその手をゆっくりとユウゴ達に伸ばした。
この手に掴まれればもうそこで全てが終わる。それは分かるのに、逃げようとしてももう足が言うことを聞かなかった。ただがくがくと震え、タツヤを抱えたまま僅かに後退りしただけ。
しかしその時小さな影がサッと悪魔の前に飛び出してきた。
『クリ~ッ(`´)』
クリボーがつぶらな瞳を座らせ、まるでユウゴを守るように立ち塞がる。
しかし悪魔の巨体に比べ、その姿はあまりに小さく、あまりに非力。
『矮小なる下等精霊が、儂の前を遮るか…』
悪魔が明らかな怒気を以てクリボーに圧力をかける。
それを受けてクリボーがふるふると震えているのがユウゴにも分かった。
クリボーとて恐怖を感じていないわけがないのだ。野良犬の時とは訳が違う。これほどまでに圧倒的な差を感じる相手に立ち向かうことは自らの命を投げ出す行為に他ならない。
しかしそれでもクリボーはユウゴを守ろうと必死に踏み留まっているように見えた。
「クリボー…」
『良かろう…。ならばまず貴様の豆粒にも等しき命から儂に捧げるがいい…!』
「クリボーッ!」
悪魔がクリボーを捕らえようとその手を開く。
それを目の辺りにして、ユウゴの身体は思考よりも先に動き出していた。
今度はクリボーの前にユウゴが両手を広げて立ちはだかる。
しかし今度は悪魔の手は止まらなかった。
握り潰されるッ!!
ユウゴがそう覚悟を決めた時、更にその前に横から影が飛び出してきた。
バチンッという激しい音。
悪魔の手が弾かれていた。
『この人は私のマスターになる人ですよ!何するんですかッ!!』
ユウゴの前に魔法少女が立っていた。
視界には夕暮れ差し迫る空。
身体を起こそうとすると、打ち身や擦り傷を負ったのかあちらこちらが痛む。耳鳴りも酷く、音がやけに聞き取りにくい。
周りを見回すと、先程まで二人がいた場所の地面がまるで爆発でも起こったかのように大きく抉れていた。
「一体、何が…」
目の前の光景から状況を推測しようとするが、頭がうまく働かない。混乱しているというよりは何も考えられないという方が近い。
しかし少し離れた場所に横たわるタツヤを見つけた瞬間、ユウゴは反射的に走り出していた。
「タツヤっ…!」
目を閉じたままぴくりとも動かないタツヤを抱き起こす。
最悪の予想が心臓をギュッと掴み絞る。
「なんでッ、こんな…」
誰かに助けを求めようと辺りを見渡すが、視界の中になぜか誰もいない。
しかし更に状況は悪くなる。
突如、上空から何かが降ってきて、ユウゴの眼前でズドンという音と共に着地した。
降ってきた『それ』を認識したユウゴが絶句する。
「嘘だろ…」
ユウゴはその場に尻餅をついた。
見上げた光景には絶望が仁王立ちしていた。
『それ』はおよそ5メートル程もある巨体。人型ではあるものの、人ではありえないおぞましい姿。
端的に表すならば…
「…悪魔」
頭には山羊のような巨大な角。顔や身体には体皮がなく、骨格が剥き出し。それを繋ぐ筋肉は赤く、ぬめりを帯びて脈動している。眼球のあるはずの場所には真紅のおぼろ気な光が灯るだけで、こちらが見えているのかも分からない。
しかしその顔がぎろりという風にユウゴ達を見下ろした。
同時にユウゴの身体に得体の知れない緊張が走る。
人とも獣とも違う、身体に絡み付くような濃密な臭気が鼻につき胃の内容物を押し上げてくる。
身体が押し潰されそうな感覚。悪魔から感じられる重圧は圧倒的に本物だった。
この非現実的な存在から放たれる圧倒的な存在感がユウゴの脳をじりじりと焼く。
ヤバイヤバイヤバイ…。
脳が身体が本能的に全開でアラートを喚き散らしていた。
身体中の毛穴という毛穴が全部開き、汗が尋常じゃない勢いで吹き出し始める。歯は我知らずガチガチと鳴り、目尻からは涙がこぼれる。
『《魔力》が足りぬ…』
何処からともなく響いてきた声にユウゴの肝は握り潰されるかのようだった。地の底から震えてきたような低い声質。それはこの悪魔のものに他ならない。
『貴様らの《魔力》を頂くとしよう』
そう言って悪魔は嗤ったような気がした。
《魔力》というのが何のことだかは分からないが、それはユウゴ達の命を身体を喰らうということだと頭が勝手に翻訳した。その想像は明確な恐怖となって更にユウゴの身体を絡めとる。
悪魔が人の身体程もありそうなその手をゆっくりとユウゴ達に伸ばした。
この手に掴まれればもうそこで全てが終わる。それは分かるのに、逃げようとしてももう足が言うことを聞かなかった。ただがくがくと震え、タツヤを抱えたまま僅かに後退りしただけ。
しかしその時小さな影がサッと悪魔の前に飛び出してきた。
『クリ~ッ(`´)』
クリボーがつぶらな瞳を座らせ、まるでユウゴを守るように立ち塞がる。
しかし悪魔の巨体に比べ、その姿はあまりに小さく、あまりに非力。
『矮小なる下等精霊が、儂の前を遮るか…』
悪魔が明らかな怒気を以てクリボーに圧力をかける。
それを受けてクリボーがふるふると震えているのがユウゴにも分かった。
クリボーとて恐怖を感じていないわけがないのだ。野良犬の時とは訳が違う。これほどまでに圧倒的な差を感じる相手に立ち向かうことは自らの命を投げ出す行為に他ならない。
しかしそれでもクリボーはユウゴを守ろうと必死に踏み留まっているように見えた。
「クリボー…」
『良かろう…。ならばまず貴様の豆粒にも等しき命から儂に捧げるがいい…!』
「クリボーッ!」
悪魔がクリボーを捕らえようとその手を開く。
それを目の辺りにして、ユウゴの身体は思考よりも先に動き出していた。
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しかし今度は悪魔の手は止まらなかった。
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バチンッという激しい音。
悪魔の手が弾かれていた。
『この人は私のマスターになる人ですよ!何するんですかッ!!』
ユウゴの前に魔法少女が立っていた。
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氷色
ようやく最初の『敵』が現れましたね。ファーストデュエルまであと少し。クリボーの存在にのみ依存していた遊戯王らしさが少しずつ広がりを見せ始めますよ!たぶん…うん…。 (2016-09-05 22:38)
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