第12話:ナナリアの理由　作：ドクダミ2号

翔「・・・なぁ、ナナリア。」
翔はナナリアに話しかけた。ある事を聞き出したかったからだ。
ナナリア「何だ？お喋りする余裕がよくあるな。こいつらとお前の命がかかっているのに。」
翔「・・・お前は何故教団に入った？」
ナナリア「・・・！」
翔「何の為に？何を目的に？教えてくれ。」
ナナリア「・・・随分と落ち着いたな。さっきまで激昂してた癖に。・・・理由なんか無い。例えあったとしてもお前が知る必要など無い。」
翔「・・・俺のターン。ドロー・・・。」
翔には不思議だった。何故、ナナリアは虚しさと悔しさが入り混じった目をしているのか。あんな酷い・・・いや、惨い事をする様な連中の中にいるのに・・・虚しさは解る。だが・・・！
翔「カードを3枚伏せる。・・・ターンエンド。」
ナナリア「モンスターを召喚しないだと？随分と余裕だな。」
翔「余裕なんかねぇよ。・・・召喚するようなモンスターがいなかっただけだ。」
ナナリア「・・・嘘だな。その目を見れば解る。・・・まぁいい。好きにやらせて貰うぞ。私のターン！」
翔「・・・けっ！嘘じゃねぇよ・・・。確かに手札にモンスターはあるが・・・」
召喚は必要無い・・・そう言いたかった。・・・ナナリアの為にも・・・。
ナナリア「気にいらないな。お前のその感じ。何を考えている？」
翔「何だろうね。俺にも分かんねぇや。」
ナナリア「・・・私は手札から魔法発動。椿の採集、私はフィールドの椿竜の巫女を墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする。」
・・・気に入らないのは、こっちだっての。やりにくいったらありゃしない・・・。
ナナリア「椿竜の巫女はフィールドから墓地に送られた時、デッキ、手札から椿竜と名のついたモンスターを特殊召喚する。現れよ、赤の椿竜！」
攻撃力2800・・・展開力と火力が高いデッキか・・・。椿の兵士は攻撃力1800・・・そしてあいつはまだ召喚権を使っていない・・・。
ナナリア「私は椿の兵士を召喚。効果は・・・言わなくても分かっているな。手札から椿の狂戦士を特殊召喚。」
・・・頃合いか。
翔「・・・理由ねぇ。」
ナナリア「・・・？」
翔「いや、お前が協力する理由を考えてたのさ。」
ナナリア「・・・で？話はそれだけか？」
翔「・・・で、色々考えたんだけど・・・やっぱり楽しんでるんだろうなって。」
ナナリア「何？」
翔「いや、やっぱりあんな奴らと一緒にいるんだ。人が傷つくのを・・・人が死ぬのを・・・楽しんでるんだろうなって。だってそうじゃなきゃ・・・ねぇ？」
ナナリア「・・・。」
翔「下向いてだんまりか。図星だろ。図星だからそうやっているんだろ？」
ナナリア「・・・。」
身体が震えている・・・読みは当たりか？
翔「あー、嫌だ嫌だ。最低だよあんたら。本当にふざけてーーー」
その時、大きな怒号が翔の言葉を遮った。
ナナリア「分かった口をっ！！！きくなぁ！！！」
・・・やっぱりか。
ナナリア「お前に！！！私の何が分かる！！！ふざけるな！！！人が傷つくのなんか・・・死ぬのなんか・・・見たく無い！！！」
翔「じゃぁ何故教団なんかに入った！！言ってみろ！！！」
ナナリア「お前に私の苦しみが分かるか！！？どれだけ悔しいか、分かるか！！！？赤の他人のお前が・・・分かるか！！！」
ナナリアのモンスターが一斉に攻撃してくる。合計ダメージは・・・8000だ。伏せカードに魔術師の反射鏡があるが・・・
翔「ぐあああぁぁ！！」
遊亜翔LP8000→0
ナナリア「はぁ・・・はぁ・・・！何故、攻撃を受けた！？止められただろ！？」
翔「・・・人には、素直に傷つきたくなる時もあるのさ・・・」
ナナリア「そんなこと言ったってお前・・・血塗れに・・・！」
翔「げほ！がは！・・・これくらい・・・、アレ？おか・・・しいな・・・、意識が・・・遠のいていく・・・？」
そのまま翔は、ドサっと音を立てて倒れた。
ツァン「ンー！！ン、ンー！！」
雪乃「フー！！ンー！！ンー！！」
兄貴「・・・死にましたかね？」
ナナリア「・・・さぁな。・・・女達は・・・解放してやれ。」
兄貴「えぇ！？俺たちまだ楽しんでないんですが・・・！？」
ナナリア「いいから解放してやれ！！」
兄貴・下っ端「は、はい〜！！」
ナナリア「・・・翔・・・。・・・よかった、死んでないな。」
ナナリアは即座に脈を取った。辛うじて生きてはいたがこのままではいずれ死ぬだろう。
兄貴「ほらよ、よかったな。ったく、折角の上玉だったのに・・・ブツブツ」
ナナリア「さて・・・こいつらの目の前で裏切り行為はできない・・・。病院に急いで運ぶにも・・・、歩きじゃ・・・！」
ナナリアは必死に翔を生かそうと考えた。その時。
遊星「翔！！大丈夫か！！？」
クロウ「助けに来たぜ！！」
ジャック「いるなら返事をせんかぁ！！」
ナナリア「あの声は・・・5Ds！？いつの間に味方に・・・でも丁度いい！」
兄貴「えぇー！？何で5Dsがここにいるんだよ！？しかも残りの女達もちゃっかり解放されてるし！・・・逃げろー！」
下っ端「ひえぇー！！」
兄貴と下っ端は、尻尾を巻いて逃げていった。ナナリアだけがその場に残った。
遊星「逃げないのか？」
ナナリア「逃げる必要なんかない。それより翔を！！」
遊星「え？あ、あぁ。」
ナナリアは翔を遊星に託した。きっと、助けてくれるだろう・・・そう願って。
ナナリア「私もこれで残る必要はなくなったな。そいつが起きたら伝えてくれ。・・・ありがとうと。」
ナナリアはそう言い残し、足早に消えていった。
・・・次回に続く