始まりのデュエル 始まりの笑顔　作：クロノスギア

戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターとともに地を蹴り宙を舞い、フィールド内を駆け巡る、これがデュエルの最終進化系！
アクションデュエル！

お決まりの掛け声とともにデュエルがスタートする。フィールドの中央には赤い燕尾服、赤いマント、シックハットを身にまとった男がいる。彼の名は「天之川一（あまのがわはじめ）」生きた伝説と呼ばれた男だ。

アクションデュエル。技術の進歩で「リアルソリッドビジョンシステム」と呼ばれる新技術によりカードのモンスター、魔法、罠がリアルに再現され、実際に触れられるようになった。これを利用しフィールド内に散らばる「アクションカード」を探しだしデュエルを有利に進める、これがアクションデュエルだ。
ここはアクションデュエルの決勝戦。対戦相手は、早々にアクションカードを探しに行ったが天之川一は一歩も動かない。彼の一つ一つの挙動が数々の人々を惹きつける、巧みな戦術、モンスターを駆使したパフォーマンス。そして口から放たれるその言葉。

「ITS SHOW TIME！私はDT（ドラグトリッカー）アルセーヌ・アサルトを召喚！」

天之川一の決め台詞とエースモンスターだ、彼の行うエンタメデュエルは見るものすべてを魅了し笑顔にした。

しかしこの決勝の舞台が悲劇に変わる。

彼が飛び乗った高台が急に消え去り天之川一が高所から転落したのだ。原因は装置の不具合、事故であった。この決勝戦は中止となり、勝者のいないデュエルと、なってしまった。

…。

「ねえ母さん…」
「なに？」
「僕、父さんみたいなエンタメデュエルでみんなを笑顔にしたい！」
「…そう、あなたならできるはずよ…」
「うん、絶対になってみせるよ！」

「みんなを笑顔にするエンタメデュエリストに！」

…。

あの事件から10年が過ぎた。

ここはかつて伝説のデュエリスト「天之川一」が暮らした街「久留須町」。そこにある小さなカードショップが物語の始まりである。

「…うう、パパもママもヒドイデス…私はハリウッドなんかイカナイと…」

彼女はティアナ・フェイトスケル。ハリウッドスターの母と映画監督の父を持つアメリカ人と日本人のハーフだ、今年で年齢は16才。今はこの街に越してきたばかりで散歩がてら街を見て回っていた。

「私はあの人のようなエンターティナーになりたいと何度も…。あら？ついたみたいデスネ」

カードショップ「カオリ」アクションデュエルもできる比較的小さなデュエルパークだ。デュエルパークとはデュエルを楽しむためのデュエリスト達の社交場。デュエルで腕を競ったりカードのトレードなどが行われている。

「アクションデュエル…まずは第一歩デス！」

意気揚々とその一歩を踏んだ…

「そんな横暴だ！」

中からの怒号そして子供達の鳴き声。

「何度でも言おう、ここは我が「西園寺グループ」が買い取ると言っている」

声の主は黒服を数人連れお金がぎっしり詰まったトランクをみせていた。

「お金もいらない！さっさと帰れ！」
「うるさいな、ここは僕が買い取って僕専用のデュエルパークにするんだよ」

少し幼い声が聞こえる。そこには10才程度の子供が高そうな服を見にまとい黒服に指示を出していた。

「めんどうだ、やっちゃえ」
『はっ』

黒服達が店長と思われる人物に殴りかかる。その時

ヒュン！

間を割るようにトランプのカード、ジョーカーが地面に突き刺さった。

「子供達を泣かせるなんて大人のすることかい？」

ティアナの後ろから帽子を深くかぶり、パーカーを羽織った青年らしき人物が入ってきた。

「あ、アナタは…」
「ねえ、デュエルしようよ」

それは唐突だった。

「はぁ？なに言ってんの？」
「君が勝ったらここを好きにしていい。僕が勝ったらここに二度と関わらないしても出さない…どう？」
「はっ…まあ…暇つぶしにはなるかな。おい」
「はっ」
「ルールはせっかくだアクションデュエルといこう。さ、準備しな」
「OK」

少年と黒服達はフィールドに向かうがティアナはフィールドに向かう青年を止めた。

「ど、どうしてあんな無茶な条件を出したんデスカ⁈もし負けた…」
「負けないさ」

それは確信にもちかい言葉だった。

「大丈夫、信じて」

ティアナはこれ以上なにも言えなかった。

…。

フィールドには黒服の一人と青年が向き合っていた。

「さて、始めようか？」
「いつでも構わん」
「…。？、どうしたのみんな！いつもの掛け声は⁉︎」

子供達は、思い出したかのようにアクションデュエルの掛け声を始める。

戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が！
モンスターとともに地を蹴り宙を舞い！
フィールド内を駆け巡る！
みよ！これがデュエルの最終進化系！

アクション…デュエル！