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第九話 うごめく闇 作:鈴木颯手
般若の人物とのデュエルを終えた翌日、アカデミア内ではちょっとした騒動が起こっていた。というのもオシリスレッドの遊城十代と丸藤翔が立ち入り禁止区域に入ったことで退学になりそうになっていたのだ。
「立ち入り禁止区域に入っただけで退学? 厳しすぎじゃないか?」
「だけどその場所が事故が起こった場所で現在は使われていないというらしいから危険性を考慮しての判断なんだろう。それに、無条件で退学ではなくてアカデミア側が用意したデュエリストと勝利出来たら退学は取り消しになるらしい」
「一応の救済措置は用意しているわけか」
事情を詳しく知っていた三沢に話を聞いた龍吾は一定の納得を見せる。無条件で退学ではなくデュエルを学ぶ学校らしくデュエルに勝利して退学を免れろという事だろう。逆に言えば立ち入り禁止区域に入るという事はそれだけ厳しい罰則が与えられるという事であり、今後は無暗に入ろうとする者はいなくなるだろう。
「それで? 二人は何をしているんだ?」
「今頃タッグデュエルに向けて特訓をしていると思うよ。ただ、十代はともかく丸藤翔の方が少し問題だな」
「……確かにな」
龍吾から見ても丸藤翔はデュエルが上手いとは言えなかった。その辺は十代のフォロー次第でどうにでもなるだろうが一番の問題は本人の気の弱さだろう。少し攻勢が続くと弱腰となり自分のプレイングが出来泣くなる。一度だけ、丸藤翔とデュエルをしたのだが結果は酷かった。攻撃力2000を超えるモンスターを出す必要もなく龍吾は押し勝ってしまえたのだから。
「タッグデュエルの勝利のカギは丸藤翔の成長次第という事だな」
「そうだな。彼が当日までにどれだけ自信をつけてくるのかにかかっている」
三沢と龍吾はお互いにタッグデュエルの勝利の鍵を丸藤翔と定めていた。
そして、二人の予測通りに事は進んだ。タッグデュエルでは迷宮兄弟というかつて武藤遊戯と互角の戦いをしたという人物が対戦相手となりタッグデュエルの経験がない十代と翔を苦しめたが十代のアシストの元翔が勝利を勝ちとり、無事に退学にならずに済んだ。
二人の勝利を三沢や龍吾、明日香等が祝う中、ただ一人憎悪を募らせる人物がいたことに誰もが最後まで気付くことはなかった。
「くそっ! なんであいつらが……!」
万丈目準はブルー寮の自室にてそう怒鳴っていた。十代に負けてからというものプライドがズタズタにされている彼は今回のタッグデュエルにおいて退学になるように仕向けたクロノス教諭以上に十代の退学を望んでいたが結果は勝利を勝ち取り退学にはならなかった。
それが万丈目にとっては我慢ならない出来事であり、殺したい程十代を憎むこととなっていた。
「俺に、俺にもっと力があれば……!」
「……力ヲ求メル代償。ソレサエ払エバイクラデモアゲルヨ」
「っ! 誰だ!?」
万丈目に聞こえたノイズ交じりの声にとっさにそう声をあげた。それもそのはずでここは万丈目の私室であり、他に人がいるなど考えられないのだから。
「ソウ警戒シナイデヨ。私ハ君ニ力ヲアゲヨウト思ッテイルダケダカラ」
そして、気付けばそれは窓際に立っていた。フード付きの黒いコートを羽織り、顔には小面の仮面をつけていて人物を特定する事は出来そうになかった。
「力だと? それよりも一体どこから入ってきた!」
「ソンナ事ハドウデモイイコトダヨ。デ? 欲シクナイノ?」
「……貴様のような不審者の言う事を真に受けると思っているのか?」
「ソレモソウダネ。デハコチラカラ力ヲ与エルッテイウ証明ヲシヨウカ。オ近ヅキノ印トシテ君ニコレヲアゲルヨ」
そういうと小面の人物は一枚のカードを万丈目に渡す。カードを受け取った万丈目はそれを見て目を見開くと同時に小面の人物を見た。
「……本当にいいのか?」
「勿論ダヨ。ソレダケデモソレナリノ強化ハ出来ルダロウケド本当ニ君ガ力ヲ望ムノナラモットアゲルヨ。勿論、代償ハ必要ダケドネ」
「……」
小面の人物の言葉に万丈目は考える。十代に負けてからというもの自分は転落の一途をたどっていると。今ここでそれを止める何かしらの一手を取らないとオベリスクブルーにいる事さえ出来ずにラーイエローに降格になるかもしれなかった。
「(だからと言ってこんな怪しい奴のいう事など……!)」
「迷ッテイルミタイダネ。デモコウイウ手デモ使ワナイト君ハ這イ上ガル事ナンテ出来ナイヨ?」
「……なんだと?」
「エリートッテソウジテ負ケタ時ノ転落具合ガ悲惨ダカラネ。君モソウデアルトハ言イ切レナイケド現状ハソレニ近イ状態ニアルンジャナイ?」
「……」
「ココラデ一度ガツント華々シイ勝利ヲ手ニ入レトカナイトモウ君ガ這イ上ガッテクルコトハ出来ナイヨ。ソレニ、一度テナクシタ君ヲオ兄サン達ハ受ケ入レテクレルノカナ?」
「っ! 何故それを!?」
万丈目の兄たちは政界、経済界でそれぞれトップを目指しており、末っ子の準はカードゲーム界でトップに君臨する事で世界に万丈目帝国を築き上げる事を野望としてきた。そんな兄たちに今の自分を知られる事になればどのような叱責を受けるのかは簡単に想像が出来てしまう。
万丈目の心が大きく揺らいだことを確認した小面の人物は一気に畳みかけた。
「ソレジャ代償ニツイテ言ッテオクヨ。コレヲ聞イテカラデモ遅クハナイデショ? 代償ハ簡単サ。コノ力ヲ使ッテ負ケタ時、君ハ今以上ニ転落スル人生ヲ歩ムコトニナルヨ。二度ト栄光アル存在ニハナレズニ地ベタヲ泥マミレデ這イズリ回ル虫ケラニナルノサ」
それは二度とエリートに戻る事は出来ないという事だったが現状でも手を取らなければ近いうちにそうなるだろう。万丈目は覚悟を決めた。要は負けなければいいのだから。
「……いいだろう。その力を俺に寄こせ!」
「勿論サ。コレデ君ハ今ノ何倍モ強クナレル。ソレハ保証シテアゲルヨ」
小面の人物はそう言うと万丈目に黒い霧を放ち包み込んだ。その霧は日が昇るまでその場にとどまり続けて万丈目を包み込み続けたがそれも日の出とともに消えて万丈目を解放した。解放された万丈目の手には闇の瘴気をまとった一つのデッキが握られているのだった。
「立ち入り禁止区域に入っただけで退学? 厳しすぎじゃないか?」
「だけどその場所が事故が起こった場所で現在は使われていないというらしいから危険性を考慮しての判断なんだろう。それに、無条件で退学ではなくてアカデミア側が用意したデュエリストと勝利出来たら退学は取り消しになるらしい」
「一応の救済措置は用意しているわけか」
事情を詳しく知っていた三沢に話を聞いた龍吾は一定の納得を見せる。無条件で退学ではなくデュエルを学ぶ学校らしくデュエルに勝利して退学を免れろという事だろう。逆に言えば立ち入り禁止区域に入るという事はそれだけ厳しい罰則が与えられるという事であり、今後は無暗に入ろうとする者はいなくなるだろう。
「それで? 二人は何をしているんだ?」
「今頃タッグデュエルに向けて特訓をしていると思うよ。ただ、十代はともかく丸藤翔の方が少し問題だな」
「……確かにな」
龍吾から見ても丸藤翔はデュエルが上手いとは言えなかった。その辺は十代のフォロー次第でどうにでもなるだろうが一番の問題は本人の気の弱さだろう。少し攻勢が続くと弱腰となり自分のプレイングが出来泣くなる。一度だけ、丸藤翔とデュエルをしたのだが結果は酷かった。攻撃力2000を超えるモンスターを出す必要もなく龍吾は押し勝ってしまえたのだから。
「タッグデュエルの勝利のカギは丸藤翔の成長次第という事だな」
「そうだな。彼が当日までにどれだけ自信をつけてくるのかにかかっている」
三沢と龍吾はお互いにタッグデュエルの勝利の鍵を丸藤翔と定めていた。
そして、二人の予測通りに事は進んだ。タッグデュエルでは迷宮兄弟というかつて武藤遊戯と互角の戦いをしたという人物が対戦相手となりタッグデュエルの経験がない十代と翔を苦しめたが十代のアシストの元翔が勝利を勝ちとり、無事に退学にならずに済んだ。
二人の勝利を三沢や龍吾、明日香等が祝う中、ただ一人憎悪を募らせる人物がいたことに誰もが最後まで気付くことはなかった。
「くそっ! なんであいつらが……!」
万丈目準はブルー寮の自室にてそう怒鳴っていた。十代に負けてからというものプライドがズタズタにされている彼は今回のタッグデュエルにおいて退学になるように仕向けたクロノス教諭以上に十代の退学を望んでいたが結果は勝利を勝ち取り退学にはならなかった。
それが万丈目にとっては我慢ならない出来事であり、殺したい程十代を憎むこととなっていた。
「俺に、俺にもっと力があれば……!」
「……力ヲ求メル代償。ソレサエ払エバイクラデモアゲルヨ」
「っ! 誰だ!?」
万丈目に聞こえたノイズ交じりの声にとっさにそう声をあげた。それもそのはずでここは万丈目の私室であり、他に人がいるなど考えられないのだから。
「ソウ警戒シナイデヨ。私ハ君ニ力ヲアゲヨウト思ッテイルダケダカラ」
そして、気付けばそれは窓際に立っていた。フード付きの黒いコートを羽織り、顔には小面の仮面をつけていて人物を特定する事は出来そうになかった。
「力だと? それよりも一体どこから入ってきた!」
「ソンナ事ハドウデモイイコトダヨ。デ? 欲シクナイノ?」
「……貴様のような不審者の言う事を真に受けると思っているのか?」
「ソレモソウダネ。デハコチラカラ力ヲ与エルッテイウ証明ヲシヨウカ。オ近ヅキノ印トシテ君ニコレヲアゲルヨ」
そういうと小面の人物は一枚のカードを万丈目に渡す。カードを受け取った万丈目はそれを見て目を見開くと同時に小面の人物を見た。
「……本当にいいのか?」
「勿論ダヨ。ソレダケデモソレナリノ強化ハ出来ルダロウケド本当ニ君ガ力ヲ望ムノナラモットアゲルヨ。勿論、代償ハ必要ダケドネ」
「……」
小面の人物の言葉に万丈目は考える。十代に負けてからというもの自分は転落の一途をたどっていると。今ここでそれを止める何かしらの一手を取らないとオベリスクブルーにいる事さえ出来ずにラーイエローに降格になるかもしれなかった。
「(だからと言ってこんな怪しい奴のいう事など……!)」
「迷ッテイルミタイダネ。デモコウイウ手デモ使ワナイト君ハ這イ上ガル事ナンテ出来ナイヨ?」
「……なんだと?」
「エリートッテソウジテ負ケタ時ノ転落具合ガ悲惨ダカラネ。君モソウデアルトハ言イ切レナイケド現状ハソレニ近イ状態ニアルンジャナイ?」
「……」
「ココラデ一度ガツント華々シイ勝利ヲ手ニ入レトカナイトモウ君ガ這イ上ガッテクルコトハ出来ナイヨ。ソレニ、一度テナクシタ君ヲオ兄サン達ハ受ケ入レテクレルノカナ?」
「っ! 何故それを!?」
万丈目の兄たちは政界、経済界でそれぞれトップを目指しており、末っ子の準はカードゲーム界でトップに君臨する事で世界に万丈目帝国を築き上げる事を野望としてきた。そんな兄たちに今の自分を知られる事になればどのような叱責を受けるのかは簡単に想像が出来てしまう。
万丈目の心が大きく揺らいだことを確認した小面の人物は一気に畳みかけた。
「ソレジャ代償ニツイテ言ッテオクヨ。コレヲ聞イテカラデモ遅クハナイデショ? 代償ハ簡単サ。コノ力ヲ使ッテ負ケタ時、君ハ今以上ニ転落スル人生ヲ歩ムコトニナルヨ。二度ト栄光アル存在ニハナレズニ地ベタヲ泥マミレデ這イズリ回ル虫ケラニナルノサ」
それは二度とエリートに戻る事は出来ないという事だったが現状でも手を取らなければ近いうちにそうなるだろう。万丈目は覚悟を決めた。要は負けなければいいのだから。
「……いいだろう。その力を俺に寄こせ!」
「勿論サ。コレデ君ハ今ノ何倍モ強クナレル。ソレハ保証シテアゲルヨ」
小面の人物はそう言うと万丈目に黒い霧を放ち包み込んだ。その霧は日が昇るまでその場にとどまり続けて万丈目を包み込み続けたがそれも日の出とともに消えて万丈目を解放した。解放された万丈目の手には闇の瘴気をまとった一つのデッキが握られているのだった。
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