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HOME > 遊戯王SS一覧 > 分岐する交差

分岐する交差 作:エスカル

公園の先には大きな屋台の車が止まっていた。
おいしそうなクレープの写真が数枚貼り付けられており、私の食欲をそそるよ~。
ここは少し寄り道して、クレープを食べるとしよう。

「不破君、あそこのクレープ屋寄らない?」
「OK」

不破君も了承してくれたので、2人でクレープ屋の近くに自転車を停める。
チョコにバナナにイチゴに、色とりどりのフレーバーがあって目移りまでしちゃう。

「いらっしゃい」

店員である女性は優しい顔つきを向けてくれる。
何の味にしようかな、迷っちゃうよ。

「俺は……残額を考えればこの『チョコプレーン』かな」

残額って、そういやさっき小説買ったばっかりだった。
私のほうはある程度残ってるけど、不破君の事情を考えてなかった。
さっき家族の話が一切出てこなかったのもあって、もしかしたら小説を買うだけで精一杯だったのかも。

「ありがと」

考え事をしてる間に不和君が女性店員からチョコクレープを受け取り、ホクホク顔になる。

「愛流さんは何にするんだ?」
「あ、私は……この『フルーツミックス』をください」

イチゴにバナナ、キウイなどさまざまなフルーツがクレープの中に入ってる一品だ。
少々値は張るが、あれだけの贅沢を尽くした品なら値段も納得できるというものだ。
800円を支払い、店員さんが私にクレープを差し出してくれる。

「はい、どうぞ。少し大きいから落とさないように気をつけてね」
「ありがとうございます」

おお、たくさんのフルーツが入ってる。
これはまさに大きいボリューム、期待を裏切らない一品だよ。

「あそこのベンチで食べようか」

不破君に案内され、ベンチに2人で座る。
私の隣に不和君が座り、クレープを食べ始める。

「甘っ」

顔をニコニコさせながら言うものだから思わずくすっと笑ってしまう。
やっぱり誰かが笑顔でいるのを見るのはいいものだ。
さてと、私も早速幸せを噛み締めるとしますか。

「!」

こ、これは!
最初に出迎えたのはイチゴの酸味!
だけど中に入ってる練乳クリームがイチゴの酸味と融合を果たし、奇跡の味わいを生み出してる!
口の中で甘味と酸味が上手いことチューニングし、奇跡のシンクロを生み出してるよ。
次にかぶりついたところにはバナナがあり、そこにはチョコクリームが入っていた。
チョコの甘さとバナナの自然な甘さが交じり合ってるのに、くどくなく自然と口に入っていく甘さ。
さっきの酸味と甘味の融合体を軽く凌駕する味わいの後、次にかじりついたところにはキウイの酸味。
甘味でいっぱいになった口の中を酸味で中和し、また新しく味を楽しめるようにしてる。
しかもクレープ生地もクリームや果汁が染み出してベショベショになって残念な食管にならないように少し固め、なのにふんわり感を損ねずに焼き上げてる。
こんな素晴らしいクレープを食べたのは初めてだ。

「愛流さん、幸せそうだな」

不破君に声を掛けられて横を見ると、すでにクレープを食べ終わっていた不和君が微笑みながら私が食べてるのを見ていた。
さっき私が不破君を見ていたときと同じ種類の笑顔だ。

「クリーム付いてる」

へ?
私が確認する前に、不破君が私の口の横を拭って、そのクリームを舐めちゃった。

「おいし」
「ちょちょちょ、何してるの!」
「クリーム取ってあげたんだけど」
「そうだけどそうじゃなくて!」

ぷんぷんしてる私を尻目に不破君は何で怒られてるのかわかって無い顔だ。
口に近いところについてたクリームを舐められるなんて……確かに私が気にしすぎかもしれないけど、恥ずかしいよ。
あっ、あのクレープ屋の店員さん、すごく温かい笑顔で私たち2人を見てる!
もしかしてそういう関係なんじゃないかって誤解されて無いかな!?

「まったくもう」

おいしいクレープを食べてる最中にまさかこんな辱めを受けるなんて思ってなかった。
でもまあクレープのおいしさはこの恥ずかしさを打ち消すほどのものだった。
食べ終わってお腹をさする。
少しお腹膨れちゃったけど、夕食入るかな?
そんな心配をしてると、一瞬だけ頭に痛みが走った。

「……っ」

不破君も一瞬だけ頭を抑えていたが、私の視線に気づいたのか首を横に振る。

「なんでもない。ちょっと一瞬頭に痛みが走っただけだ」
「不破君も?」

なぜいきなり頭の痛みがシンクロしたのか。
疑問に思っていたが、不破君はベンチから立ち上がる。

「まあ今は一切痛みは感じないし、きっと冷たいクレープを一気に食べたから頭キーンってなったんだろう」

それって確かカキ氷やアイスクリームを一気に食べたときに起きる現象。
クレープって写真とか見てると冷たいイメージあるけど、実際にはカキ氷やアイスほど冷たさを感じる食べ物ではない。
でも、確かに今は一切痛みを感じないし、きっと気のせいだったんだろう。


(助けてですの~!)

ん?
今、なんか女の子の声が聞こえたような?
不破君を見ると、不破君も怪訝そうな顔であたりを見渡してる。

「今の声」
「うん、私も聞こえた」

不破君もちゃんと聞こえていたというのなら、今の助けを求める声は一体?


『D/G Open』

今度は機械的な音声だ。
どこから……って不破君がカバンの中からなんか黒いブレスレットみたいな物体出した。
今の声はそこからなの?

「……なるほどな」

いやちょっと一人で納得してないで?
どうか私にも分かるように説明プリーズ。

「愛流さん、今すぐここから離れて」
「いやなんで?」
「今からちょっとありえないことが起こる」

ありえないこと?
それって一体?

「あ~れ~ですの~!」

さっきよりも明確な声。 
顔を上げると、銀と黒の入り混じった輪が青空に出来ていた。
そしてそこから出てきたのは……

「もう限界ですの~」

どどどどどドラゴンメイド・フルス!?
誰かがこの近くでデュエルディスクを使ってデュエルしてるのかな!
しかもフルスはこちらにめがけて落下してくる!
これはドラゴンを愛するものを見守ってくださる神様のご褒美なのでしょうか!

「私の胸に飛び込んできて~!」

叫ぶと同時にフルスちゃんが私の体にダイレクトアタック。
くぅ、さすがはリアルソリッドビジョン、相当な重量と力!
だが私のドラゴン愛はそれぐらい超越する!

「……マジ? 己の体の3倍ぐらいはあるドラゴンを受け止めた」

不破君が少し顔を引きつらせてるがそんなものはこの奇跡の出会いの前では些細なことに等しい!
ああ、フルスちゃん。
ドラゴンメイドの中で唯一胴長で、この国の竜の伝承にふさわしい姿。
その凛々しさを出そうとしてるけどもつぶらな瞳のおかげで可愛らしさすら残してる。
まさに竜神が可愛らしさを注ぎ込んで生まれたような、神に匹敵するような存在だよ~

「うぅ……あ、ごめんなさいですの、思いっきりつぶしちゃったですの!」

ふふ、私はこれぐらいで潰されるほど生半可なドラゴン愛の持ち主ではない!
この重みだって幸せの重みよ!

「元に戻るですの」

元に戻るって事は、まままさか『ドラゴンメイド・ラドリー』の姿に!?
同時にドラゴンだったフルスちゃんが青髪が映える、着物風のメイド服を着込んだ少女に変身した。

「可愛い~!」
「あわわわわっ」

ラドリーが可愛らしい声を上げてるのを聞きますます強く抱きしめる。
抱き心地も最高!
本当の姿はドラゴンなのに人間の姿になり、ふわふわとした柔らかさも得てる。
しかも頭には角が生えて尻尾も隠せて無いあたり、まだ完全に人間に変身できないちょっと抜けちゃった子感も出ててグッド!
ほっぺをつんつん、おお、もちもち。

「にゃにするですの?」
「ちょっとほっぺをつついたの。もちもちしてすべすべな肌でうらやましい」

実際ここまで大福感を感じさせる触り心地は初めてだ。
お母さんがたまに「肌に弾力性が欲しいわ」と嘆いていたが、なるほどこのような素晴らしい感触になるのなら求めるのも分かるというものだ。

「え、えっと……とりあえず助かったですの」
「助かったって、一体何から逃げてたんだ?」

ラドリーが安堵した顔を浮かべたのを見て不破君が話しかける。

「そういやきっとデュエル中で巨大なモンスターが襲い掛かってきて逃げたんだよね。さすがはリアルソリッドビジョン、こういった生物的な本能まで実現させるとは」
「いやさすがにそういった機能は無い」

どうして不破君が断言するんだろう?
それよりも、デュエルに支障は無いだろうけどもこのデュエルをしてる相手を見つけないと。
もしかしたら他のドラゴンメイドともお触り出来るかも。

「リアルソリッドビジョン……って何ですの?」
「えっと、ラドリー、でいいかな?」
「あ、はい」
「一体何に追われてきたんだ?」

なんか話が進行してる。
いや、それよりもラドリーがリアルソリッドビジョンを認識して無いどころか、流暢に話をしてる?
これって一体なんだろ?

「ラドちゃん、私に教えて」
「ラドちゃん!?」

私が無意識に呟いた言葉に不破君が驚愕してる。
え、そんなにへんな呼び方だったかな、いまさら恥ずかしくなってきた。

「ラドちゃんで構わないですの。ついさっきまで追われて、たまたま飛び込めそうな穴があったから飛び込んだですの。そうしたらお二人……そういやお名前を知らないですの」
「遊紅愛流」
「不破修輔」

私も不破君も名乗り終えると、ラドちゃんがあたりを見渡す。

「どうやら追いかけてこないようですの」
「さっきから話が進まないが、一体何に追われてたんだ……いや、穴が閉じてない!」

不破君、そんなに切迫してどうしたの!
確かに輪は消えて無いけど……そんなに慌てることなのかな。

「不破君こそ何か知ってるの、あのわっかのこと」
「急いで閉じないと……いや、この子を元の世界に」
「その心配は要らないですの」

あれ、どうしてこんなに暗い顔に。
可愛い子が落ち込んだ顔をしてるのは相当嫌だ。

「私が暮らしてた元の家は、侵略者の手によって壊されてしまったですの。元々仕えていたご主人様も消されちゃって……その侵略者から逃げてたですの」

ラドちゃんの元の家もご主人様も消した?
こんな可愛い子から生きがいを奪うなんて、なんて酷い奴だ。
絶対に許しておけない。

「不破君、包丁とかチェーンソーとかいろいろ用意しよう。ラドちゃんの幸せを壊したのが誰かは知らないけど、私を怒らせた罪は大きいよ」
「落ち着いて。殺傷力の高さを見せなくていいから」

『みーつけた』

何今の声?
あのわっかの中から聞こえてきたよね。
って、何あれ、光線!?

「追いつかれちゃったですの!?」

ラドちゃんの顔に恐怖の色が浮かんでくる。
あのわっかの中にいるのが、ラドちゃんの幸せを壊した張本人!
あんな光線ごときに……わあああっ!
光線を間一髪避けたが、さっきまで私と不破君が一緒に座っていたベンチが光線に貫かれて破壊された。

「愛流さん、ラドリーを連れて自転車に乗って自分の家まで逃げろ」

不破君が鍵を投げ渡す。
おそらく不破君の自転車の鍵だろう。
ラドちゃんが不破君の自転車に乗って逃げる、ということだろう。

『逃がさないよ』

空から黒い何かが落ちてきた。
腕が6本あり、間違いなくこの星ではとあるカードでしか見ることが出来ない異形の存在……『エーリアン・リベンジャー』だ。

『なんだ、人間か。異世界を巡り歩いてきたが、この世界は異質だな。俺様がエネルギーを使わなくてもも存在を維持できる。ちょうどいい、この星を侵略するとしよう』

侵略?
まさか小説とかアニメとかでしか聞いたことが無いセリフを現実で耳にすることになるとは。

「残念だが、それは土台無理な話だ」
『邪魔をするのなら容赦しないぞ』

リベンジャーが腕の一本を不破君に向ける。
いや、ダメだよ不破君が撃たれちゃう。

「同じ『異端』な者同士でぶつかりあおうじゃないか」

不破君がいつの間にか装着していた黒いブレスレットが鈍い光を放つと、不破君の手に灰色と黒色が入り混じったカードが現れる。

「あれはなんですの?」
『おどしか? そんなもので俺の光線が防げると思うな!』

腕からビームが放たれ不破君に迫る。


『χ Card Master・Huwa approval』

「異端よ、異なる存在と交わり、新たな力となれ」

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』
『アストログラフ・マジシャン』

不破君がそれぞれの手にカードをかざす。
そして胸の前で『X』の文字をかざすように交差させた。

『Differrent・X・Cross』

『何』

リベンジャーの言葉はもっともだ。
私だって目の前に立ってる不破君が、オッドアイズの尻尾を生やし、魔術師の服を着てるように見えてるのだから。
そしてその光線は不破君が手をかざし消え去っていたのだから。

「さて、デュエルか、この姿での戦い、どちらか好きなほうを選ばせてやる」
『ふん、俺は知ってる、それをコスプレというのだろう。そんなコスプレごときでこの俺を倒せると思うな』

不破君がオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと魔法使いの力を交差させて体に纏った!
しかもドラゴンの立派な尻尾が……ああ


「……愛流さん、何尻尾の部分に抱きついてるの?」
「はぅ、無意識に!」

なんという恐ろしい魔力。
ドラゴンの尻尾と魔法使いの魔力を身にまとって私を無意識に行動させるなんて。
不破君、恐ろしい力を……

「いやそんな力ないから!」

しかも心まで読むなんて、マインドまでスキャンできるというのか!?

「口に出てたよ!」
「そうですの、口に出てたですの」

そしてラドちゃんも不破君の背後に隠れている。
にしてもこの力があれば……私もドラゴンの一部を身に纏える、いや、ドラゴンになれるかもしれないかも。
でも、今はそれどころではない。
ラドちゃんから幸せを奪った悪魔が目の前にいる。

『今が最終警告だ。そのドラゴンメイドを引き渡せばお前とそこの娘は見逃してもいいぞ』
「いや今侵略するといったよな? お前を倒す以外の選択肢はもう俺の中には無いぜ」

まさか、リアルソリッドビジョンでもない、本物のモンスターが現れて、しかも不破君がそれと戦うためにいきなり変身した。
まさかほのぼのとした放課後からいきなりこんな刺激的なことが起こるなんて……世の中、何が起こるか分からないものだ。

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コンドル
今までの日常が一変してしまい、これからシリアスな展開に?かと思いきや、流石は遊紅さん、ブレない。
しかし不破さんが変身したというのはどういうことなのか、また続きを待たせていただきます。 (2020-08-31 08:08)
エスカル
コンドルさん 感想ありがとうございあす。

この小説のシリアスなどたかが知れてるので……まあふざけすぎるつもりも無いので、肩の力を抜いて愛流さんの奇行を見届けてあげてほしいです。

果たして不破君がいきなり変身したのはどういうことか。これから先も楽しみにしていただければうれしいです。

これからも応援していただければ幸いです。ではまた。 (2020-09-01 05:27)

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