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1-1 始まりは火山から 作:バスクぶとん
気がついたら知らない場所にいた、鉄星クロムです。
何の電波も届かない場所なんて、平成でもあるまいしこの時代になってそんなことあるのかな。どれだけ山奥なんだろう。
……まあ、山奥というよりかどちらかというと――
_人人人人人人_
> 火山の中 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
――ってな感じなのだけども。
真上に青空がのぞいているだけで、あと周りは全て溶岩。完全に活火山です。僕はターミネーターか。死ぬほど熱い。
ちゃぷちゃぷ。
こういう、いわゆる『目が覚めたら~』っていうやつは神隠しっていうのかな? 流行りの異世界転移かも。
実際のところはどうか分からないけど、問題なのはここが人里離れてそうなところ。
お約束なら、まずは街の見える草原に出るとか、街道に出てお金持ちの馬車に拾ってもらえるとかじゃないの? 腕には自信あるよ。
ちゃぷちゃぷ。
……とりあえず上がるか。火山観測所とかあるだろ。
***
火口から脱出し、今は山頂からすぐ近くの地面にいた。
結論、何もない。
振り返れば真っ赤に染まるマグマと大量の水蒸気があるんだけどね。さっさとここを離れよう。
川が見えたからそっちへ行ってみる。山頂からの眺めは、赤熱している大地を含めても素晴らしい景色だった。テレビの画面越しに見るんだったらもうちょっと感動していられたんだけど。
***
山道を歩いていくと、途中でギャアギャアと鳴く何かの声が聞こえた。よく見れば、街中では見ないような大きな翼をもった鳥が飛んでいた。本当にどれだけ山奥なんだろう。
さらに歩いていくと、グォォオオ! という唸り声とともに、大きな影がジェット機のような速度で上空を通り過ぎていった。山の中だとドラゴンなんかもいるんだなぁ。
川が見えた。
澄んでいてとてもきれいな川だ。澄み過ぎて魚もいないみたい。
こんなきれいな水を汚すのも忍びないのだが、汚れたままでいるのも気分が悪いので行水しましょう。どぼん。
洗剤なんて当然持っていないけれど、僕の服に使われているスーパーファイバーは汚れに強いものなので、水洗いでも気にならないくらいにきれいになった。僕のボディも当然として。
適当な木の枝に服を干して、”ねっぷう”! 威力95・命中90……言ってみたけどあれはブレス攻撃らしいね。全然違うわ。服は乾いた。
ここをキャンプ地とするつもりもないので早く下山しよう。
***
……囲まれている。
それに気がついたのは、下山し始めてしばらく経ってから。
ある程度山を下りると木々が生い茂っていて、ほとんど視界が利かなかった。
数は40、いや41? これだけの数に囲まれていたら気がつくと思うんだけど、生物とは思えない妙な気配だ。
周りを取り囲んでいるナニモノかが包囲をじりじりと狭めてくる。僕が気がついていることに気がついたのか。
姿を現したのは犬に似ていて目つきが鋭いけもの、いわゆるオオカミだ。絶滅したんじゃなかったのか!
”バウッ! バウッ!”
オオカミたちは僕の視界に入った途端に跳びかかって来た。どうやら僕をエモノだと思っているらしい。残念だが食われてやるわけにはいかない、恨むのなら僕を火山に放置した何者かを恨んでくれ。いるかどうかわからないけど。
まず一発。
”ギャン!”
さらにもう一発。
”グフ!”
真っ先に向かってきた勇士たちに敬礼(しないが)。すると後続のオオカミたちは包囲を維持したまま”ウゥゥゥ……”と低く唸り声をあげていた。及び腰になっている様子だ。
どうしたものかと考えていると、木々の奥から重い足音が響く。
見えたのはサイズ感を間違えていそうなほどに巨大な爪。続けて、森の木々を押しのけながら現れる巨大な双眸。さらに驚くべきことに、その怪物は燃え盛る炎を身に纏っていた。
”ウォオオオ!”
振り抜かれる巨大な前足。咄嗟にガードしたがその上からでも浮かされた。体重差があるみたい。
「キサマ、何者ダ」
「それはこっちの台詞だ!」
……っていうか誰? オオカミが喋ってる。少々聞き取り辛い、どこから出しているのか分からない声だ。
「オレノツメヲ受ケ止メルトハ……。強イ精霊ノチカラダ」
「精霊の力? 何それ」
「ソノチカラヲヨコセ! 決闘ダ!」
「会話してくれ」
この喋るオオカミ話通じないな。
そうこうしている間に巨大オオカミはすっと立ち上がり、その腕にデュエルディスクが装着される。
「同胞タチヨ、集エ」
巨大なオオカミの呼びかけによって、他のオオカミたちが集合する。もう包囲はいいのか? そしてオオカミたちは光となって巨大オオカミの手の中に納まり、カードの束となった。なるほど、分からん。
「構エヲトレ、精霊ノチカラヲモツモノヨ」
「分からん……けど、まあいい。あと、僕の名前は鉄星クロムだ」
「ソウカ、クロムヨ、用意ハイイカ?」
「いつでも!」
「ナラバ……」
「「決闘」」
何の電波も届かない場所なんて、平成でもあるまいしこの時代になってそんなことあるのかな。どれだけ山奥なんだろう。
……まあ、山奥というよりかどちらかというと――
_人人人人人人_
> 火山の中 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
――ってな感じなのだけども。
真上に青空がのぞいているだけで、あと周りは全て溶岩。完全に活火山です。僕はターミネーターか。死ぬほど熱い。
ちゃぷちゃぷ。
こういう、いわゆる『目が覚めたら~』っていうやつは神隠しっていうのかな? 流行りの異世界転移かも。
実際のところはどうか分からないけど、問題なのはここが人里離れてそうなところ。
お約束なら、まずは街の見える草原に出るとか、街道に出てお金持ちの馬車に拾ってもらえるとかじゃないの? 腕には自信あるよ。
ちゃぷちゃぷ。
……とりあえず上がるか。火山観測所とかあるだろ。
***
火口から脱出し、今は山頂からすぐ近くの地面にいた。
結論、何もない。
振り返れば真っ赤に染まるマグマと大量の水蒸気があるんだけどね。さっさとここを離れよう。
川が見えたからそっちへ行ってみる。山頂からの眺めは、赤熱している大地を含めても素晴らしい景色だった。テレビの画面越しに見るんだったらもうちょっと感動していられたんだけど。
***
山道を歩いていくと、途中でギャアギャアと鳴く何かの声が聞こえた。よく見れば、街中では見ないような大きな翼をもった鳥が飛んでいた。本当にどれだけ山奥なんだろう。
さらに歩いていくと、グォォオオ! という唸り声とともに、大きな影がジェット機のような速度で上空を通り過ぎていった。山の中だとドラゴンなんかもいるんだなぁ。
川が見えた。
澄んでいてとてもきれいな川だ。澄み過ぎて魚もいないみたい。
こんなきれいな水を汚すのも忍びないのだが、汚れたままでいるのも気分が悪いので行水しましょう。どぼん。
洗剤なんて当然持っていないけれど、僕の服に使われているスーパーファイバーは汚れに強いものなので、水洗いでも気にならないくらいにきれいになった。僕のボディも当然として。
適当な木の枝に服を干して、”ねっぷう”! 威力95・命中90……言ってみたけどあれはブレス攻撃らしいね。全然違うわ。服は乾いた。
ここをキャンプ地とするつもりもないので早く下山しよう。
***
……囲まれている。
それに気がついたのは、下山し始めてしばらく経ってから。
ある程度山を下りると木々が生い茂っていて、ほとんど視界が利かなかった。
数は40、いや41? これだけの数に囲まれていたら気がつくと思うんだけど、生物とは思えない妙な気配だ。
周りを取り囲んでいるナニモノかが包囲をじりじりと狭めてくる。僕が気がついていることに気がついたのか。
姿を現したのは犬に似ていて目つきが鋭いけもの、いわゆるオオカミだ。絶滅したんじゃなかったのか!
”バウッ! バウッ!”
オオカミたちは僕の視界に入った途端に跳びかかって来た。どうやら僕をエモノだと思っているらしい。残念だが食われてやるわけにはいかない、恨むのなら僕を火山に放置した何者かを恨んでくれ。いるかどうかわからないけど。
まず一発。
”ギャン!”
さらにもう一発。
”グフ!”
真っ先に向かってきた勇士たちに敬礼(しないが)。すると後続のオオカミたちは包囲を維持したまま”ウゥゥゥ……”と低く唸り声をあげていた。及び腰になっている様子だ。
どうしたものかと考えていると、木々の奥から重い足音が響く。
見えたのはサイズ感を間違えていそうなほどに巨大な爪。続けて、森の木々を押しのけながら現れる巨大な双眸。さらに驚くべきことに、その怪物は燃え盛る炎を身に纏っていた。
”ウォオオオ!”
振り抜かれる巨大な前足。咄嗟にガードしたがその上からでも浮かされた。体重差があるみたい。
「キサマ、何者ダ」
「それはこっちの台詞だ!」
……っていうか誰? オオカミが喋ってる。少々聞き取り辛い、どこから出しているのか分からない声だ。
「オレノツメヲ受ケ止メルトハ……。強イ精霊ノチカラダ」
「精霊の力? 何それ」
「ソノチカラヲヨコセ! 決闘ダ!」
「会話してくれ」
この喋るオオカミ話通じないな。
そうこうしている間に巨大オオカミはすっと立ち上がり、その腕にデュエルディスクが装着される。
「同胞タチヨ、集エ」
巨大なオオカミの呼びかけによって、他のオオカミたちが集合する。もう包囲はいいのか? そしてオオカミたちは光となって巨大オオカミの手の中に納まり、カードの束となった。なるほど、分からん。
「構エヲトレ、精霊ノチカラヲモツモノヨ」
「分からん……けど、まあいい。あと、僕の名前は鉄星クロムだ」
「ソウカ、クロムヨ、用意ハイイカ?」
「いつでも!」
「ナラバ……」
「「決闘」」
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53 | 1-2 見慣れないルール | 577 | 0 | 2021-01-18 | - |
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