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HOME > 遊戯王SS一覧 > 朝霧地影vs神楽坂刹那③

朝霧地影vs神楽坂刹那③ 作:はにわ改

 
「ーー私は……このままターンを終了」

地影対刹那。
地影の3ターン目、彼女はまたしても新しいモンスターは引けず。
魔法・罠カードゾーンには既に4枚のリバース。
最後の1枠を埋めてしまうと、もしもの時に魔法カードの発動などが行えなくなる。
故に現状維持。
地影はそのままターンを終わらせた。

「私の……ターン、ドロー」

そして刹那のターン。
ドローカードをちらりと見る。

「ターン、エンド」

「く……っ!」

またしても。
ドロー、ターンエンド。
こちらは動いてこない刹那に、苦悩すらし始めているというのに、
間髪入れぬというような刹那の、その名前が示すような短すぎるターン。
地影の心は熱を帯びる。

「ーーあ、エンドの前に。
手札が7枚ですので、1枚を捨てます」

そう言って刹那は徐に手札の1枚を墓地へ送る。
このゲームに於ける手札の上限枚数は6枚。
故にエンドフェイズ時に7枚以上ある場合は、6枚になるように捨てるルールである。
であるから、通常はそうならないよう、エンド前にカードを何らかの形で使うなりして、6枚以下にするのが普通だ。
観客も刹那の行動に首をかしげる。

ーーと、そこへ来て地影ははっとさせられた。

「(ーーしまった!
あの人のデッキは『カオス』!
墓地にモンスターを貯められてはーー!)」

地影は気付かされた。
刹那は墓地にモンスターを貯め、頃合いを見てそれを最大限に活用して一気に畳み掛けるデッキタイプ。

つまり今のは刹那のミスではなく、作戦なのだ。

ーーそして刹那は地影にこう語りかけている。
このままそちらが何もしなければ、次のターン以降もこうして墓地にカードを貯めていく、とーー。

「(こ、この人はーーっ)」

例え事前に観察していたとはいえ、初見の相手になんという大胆な戦術だろうか。
刹那のようなデッキの場合、普通はこんな回りくどい事はせず、墓地にカードを貯めたいのならば、カードの効果やコストで効率よく貯めるものである。
だがそれをすれば当然、地影も豊富な妨害カードを使って阻止するはずだ。
更に言えばそうさせて、地影にペースに乗れないようにさせる。

如何に地影でも、手札上限ルールは妨害のしようがない。

「わ、私のターン」

地影のターン。
まだデュエルが開始して数分であるが、既に4ターン目。
ドローカードはまたしても、新たなモンスターを引き入れられる事は出来ず。
元々、今の地影のデッキは相手の行動の妨害に主点を置いているから、こうなるのは当然、というか自然の流れだ。

しかしながら今回は今までとは違い、刹那が『何もしてこない』から、必然的に地影も『動けない』。
即ち、折角伏せたカードたちは消化できずに場に残るのみ。
そして手札も無駄に貯まっていくだけだ。

「た、た……ターン、エンド」

地影は何も出来ないのを知りながら、熟考。
しかしいくら手札を眺めてもする事はない。
故にターンを無為に流すしかない。

「私のターン、ドロー。

……ターンエンド。
エンドフェイズに手札が7枚ですので、1枚を捨てます」

「(ま、また……!
こ、これで2枚目……)」

一方、刹那はまるで迷いない。
颯爽とドローするのみで、ターンを終わらせて、惜しげもなく手札を捨てる。

ーーそんな流れのままターンは進み、遂に8回目の地影のターン。
貯まりに貯まった手札は妨害カードばかり。
しかも7枚に達したため、このままでは自分もエンドフェイズに刹那と同じく手札を捨てなければならない。

ーー悪夢。
地影は刹那に何もされていないのに、追い詰められていた。

観客からは野次が飛び始めていた。
それも主に地影に対して。

何故、殆どがら空きの刹那に攻めないのか、と。
しかも毎ターン思考を重ねながら結局何もせず、何より代わり映えしないデュエル風景に、観客は退屈を覚えずにはいられないのだ。

ーーとはいえ、地影にする事はない。
今さら場に唯一召喚された、攻撃力800の『番兵ゴーレム』で殴りにいく気にもなれない。
ここで殴るなら何故今まで殴らないのか、という話になる。
加えて何度も言うが、今の地影は自分から攻めないスタイルなのだから。

「え、エンドフェイズ……て、手札が7枚なので、1枚捨て……」

ぽろり、と溢れる手札。
それは今の心境を表すように力なく地面に落ちた。
地影は慌ててそれを拾うと、墓地へ送る。

「ーー私のターン」

そして刹那のターン。
何もせずに地影の気持ちを疲弊させた彼女が、
ここから一気にデュエルを仕上げてしまうーー。
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