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Phase5 逆転の一手 作:ニセチノミー
かなり間が空いてしまいまい申し訳ありません。あと、文章力なくてすみません笑
海馬「待たせたな。今回紹介するカードは《エネミーコントローラー》だ!!磯野、カードを持って来い!」
磯野「はっ、こちらになります」
海馬「このカードは簡単言うと攻めにも守りにも使える万能札だ!」
磯野「例えばどのような部分が万能と言えるのでしょう?」
海馬「相手の攻撃モンスターを守備表示に変えて場を凌いだり、自分のモンスターを生贄に相手の強いモンスターを奪い一気にたたみかける事ができるところだ!」
磯野「しかも速攻魔法。これは強力ですね!」
海馬「当たり前だ!このカードだけでなく俺の使うカードはすべて強力なカードなのだ!ワハハハハ!」
夜空の下青に煌めく鉄のジャングル童美野シティ。
その埠頭付近に一台の黒塗りのリムジンが停車した。
車から降りて来た1人の金髪の黒服は海を眺めながら電話をとり通話を始める。
停車されたリムジンは青く輝く街の風景を自身の車体全体に映していた。
「おぉお前か。今童美野埠頭に着いたところだ。ああ、ぐっすり寝てるよ。…了解。
羽田空港までだな」
通話が終わると、黒服はふーっとため息をついた。
少ししてリムジンから黒髪の黒服が降りてきた。
「あのよ」
「あ?どうした?」
「社長って馬鹿だと思わねえか?」
「奇遇だなリチャード。俺も同じ事を考えていたよ」
黒髪の黒服はそう言い終えると金髪の黒服もといリチャードに一本の煙草を二本の指で挟みピンっと弾くように投げ渡した。
リチャードは「おいおい、カッコつけて投げてんなよてか、普通に渡せよな」とほんの少しだけ怒ったかのようにそう言ってあたふたしながら宙に舞う煙草を手中におさめた。
「ったく。しかし社長にはまいったぜ。自分の私怨で俺たちに海馬コーポレーションを襲わせてしかも女の子を誘拐させるんだもんな」
リチャードはたばこをふかしながら空を見上げそう呟いた。
舞い上がった煙が儚く夜の空に溶けていく。
「さてどうするハリー?一回様子を見てみるか?」
「そうだな」
リチャードとハリーはリムジンへと戻り、ハッチを開けた。
そこには飼い猫のように安心しきった表情で眠る亜美の姿があった。
「よく寝ているなぁ…まあそれもそうか。寝ているところをそーっと運んだからな。さて、気は進まないが、そろそろ羽田空港に行かなくては。ハリー、エンジンをかけてくれ」
「あいよ」
リチャードがハッチを閉めようとしたその時、亜美の体が一瞬眩しく光り輝いた。
そしてその頃海馬コーポレーションでは、海馬とジークのデュエルが続いていた。
「これが俺のデッキの力だ。俺には分かる。このデュエルで貴様に勝利が訪れることは無い」
「何故そう言い切れる?ライフが尽きるまでデュエルは分からない。優勢だからっていい気になるなよ」
ジークは少し苛立ちながら海馬を睨みつけ
海馬はジークの睨みを見てフッと軽く笑って返す。
「教えてやる。俺は7年前に最強の決闘王の称号を持つ男を完膚なきまでに叩きのめし、全ての頂点に立っているからだ!こんなデュエル初めから勝敗など分かっていたわ!」
「最強の決闘王…?《あの男》のことか…!?」
「そうだ。俺はその男をも超え全ての頂点に立っている。貴様は頂に立つものに喧嘩を売ったということになるわけだ」
「馬鹿な…!」
「さあ、これを聞いてまだ無駄な足掻きを続けるか?それとも潔く負けを認め亜美を返し退くか?選ばせてやる」
ジークに二択の選択を与えたのちに1枚のカードを伏せた。
そしてジークの返答を黙って待つ。
「私はヨーロッパの無敵の貴公子と呼ばれる男だ。日本のチャンピオンを超えたくらいで虚勢をはる男などに負けるわけにはいかないのだ!君を倒して会社を乗っ取りシュレイダー社が世界1位の企業になる!私のターン!」
「呆れて言葉も出ぬな」
「私は永続魔法《ワルキューレの聖域》を発動!このカードがある限りレベル5以上のワルキューレモンスターをリリース無しで召喚することが出来る!来い!《ワルキューレ・ツヴァイト》」
ATK1900
「さらにツヴァイトの効果発動!このカードが召喚に成功した時、相手フィールドのカード1枚を破壊できる!私が破壊するのはカオスエンペラーだ。」
ツヴァイトは自身の持つ剣に光を宿しカオスエンペラーの腹部にその剣を突き立て、引き抜いた。
その後カオスエンペラーの腹部から亀裂が入り、カオスエンペラーは粉々になって気化していった。
だが、それを予測していたかのように海馬は何一つ表情を変えることはなかった。
「フッ、バトルだ海馬。ツヴァイトでレイド・ワイバーンを攻撃!そして聖域のもうひとつの効果!戦闘を行うワルキューレは1度だけ戦闘では破壊されず、ワルキューレが戦闘でモンスターを破壊した時、攻撃力を300下げて続けて攻撃が出来る!ツヴァイトで海馬にダイレクトアタック!」
「甘いぞ!罠発動!《影からの強襲》このカードの効果で墓地、または除外されているレベル3以下の闇属性モンスター1体を元々の攻撃力を3倍にして特殊召喚しバトルを行う!」
「何!?」
「来い!《闇・道化師のサギー》」
「ケケケケケケ…」
ATK1800
「聖域による戦闘耐性付与は1ターンに1度のみ!サギー、敵を粉砕せよ!《ダーク・グライド》」
「ぐっ!」
ジーク
LP4100→3900
「海馬…!くそっ、ターンエンドだ…」
「万策尽きたようだな。所詮は井の中の蛙…俺のターン!ジーク、貴様は終わりだ」
「くっ…ヨーロッパ無敵無敗の私が…なぜこんな奴に…!」
「俺は手札から《闇・エネルギー》を発動。サギーの攻撃力を3倍にする」
ATK1800→5400
「ワハハハハ!終わりだ!サギーの攻撃!《ダーク・グライド》!!」
「はああぁぁぁぁぁぁ!!!」
ジークLP3900→0
「身の程を弁えろ、雑魚が」
……あれ
……ここは?
視界が霞みがかっていて目の前がどうなっているかが分からない。何故だか高そうな香水の匂いが鼻をくすぐり冷たい風が肌を突いてくる。そして同時に目が少しずつ覚めて行く。
黒い服を着た人が2人?ますます頭がこんがらがって行く。一体何がおきている?そんな事を考えていると突然黒い服の人達が私の腕を掴んできた。
そこで私の目が完全に覚めた。そして少しだけ状況を理解する。
よくわからないけど誘拐された!?そして今私は押さえ込まれている
「おい、まずいぞハリー!こいつ目覚めやがった!」
「睡眠剤を取ってくるからそれまで押さえ込んでろ!」
男の押さえつける力が少しずつ強くなっていく。
何が理由でこんな事になっているのか寝ていた亜美には当然分かるはずもなくその分からない事に対してと亜美を押さえつける謎の男に対して亜美は苛立っていった。
まずは押さえつけられている腕をなんとかしようと亜美は身体全体を使って振りほどこうとした。
「一体なんなの!?っ離してよ!意味っ分からないよっ!」
「こら、暴れるな!おい、まだか!?」
最初は混乱してただ暴れていて気づかなかったが、片方の腕は自由に動かせる事に気付き、動かせる方の腕に力を込め、リチャードの腕に思い切りパンチを入れた。
「っぎゃあああっ!いだぁっ!?」
リチャードは殴られた方の腕を抑えながら嘆き倒れた。
リチャードの悲鳴を聞いたハリーがリチャードの元へ駆け寄る。
その隙に亜美はリムジンか飛ぶように降りた。
「リチャード大丈夫か!?いけない子だなあ。ちゃんとおねんねしてないと…!?」
困った顔をしながらハリーが亜美の元へ歩み寄ったが亜美は素早く間合いを詰めハリーの右の頬を強く殴った。
「があっ…!こいつ、強い!」
「一体誰なの貴方達は?どうして私を?」
「く…そ…デュエルだ!デュエルに勝ったら教えてやるよ!」
ハリーは殴られた頬を抑えながらディスクを構えた。
しかし亜美は今ディスクもカードも持ってはいなかった。当然といえば当然なのだが、これではデュエルができない。
「受けて立ちたいけどディスクもカードも無いからできない」
「ちゃんと俺が持ってきておいたぜ。車ん中にある」
ハリーはよろよろとリムジンへと戻り亜美のディスクとカードを取ってきたのちそれを亜美に手渡した。
それを受けとった亜美の目つきが一瞬鋭くなる。
「安心してくれ。デッキをいじったりはしてないからよ」
「いいから始めよう。」
「デュエル!先攻は俺だ、ドロー」
ハリーLP4000
亜美LP4000
「俺はカードを伏せて、《重力操士》を守備表示で召喚!」
DEF1800
「重力操士の効果発動!1ターンに1度、相手に400ダメージを与える!そしてターンエンドだ」
「うっ…!」
亜美LP4000→3600
「私のターン」
「ドローフェイズ時リバースカードオープン!《ライフ補給装置》!このカードが場にある限り相手のライフが減るたび減った数値分自分のライフを回復する!」
「私は隅烏賊を守備表示で召喚してターンエンド」
DEF1800
「攻めてこないのか。ならば俺のターン!重力操士の効果発動!更にライフ補給装置の効果も発動だ!」
「ぐっ…」
亜美LP3600→3200
ハリーLP4000→4400
「そして手札から《ご隠居の猛毒薬》を2枚発動!俺のライフを2400回復!」
ハリーLP4400→6800
「更に重力操士をリリース、《パワーグラビテーダー》を召喚だ!」
ATK1900
「攻撃力1900…けどそんなに高くない」
「だがこいつには強い効果がついてるぜ!こいつは召喚時、相手にこのカードの攻撃力の半分のダメージを与えることができる!」
「えっ…」
「くらえ!」
「うわあああっ!」
亜美LP3200→2250
「そして俺のライフは補給装置で更に回復だ」
ハリーLP6800→7750
「バトル!行け、パワーグラビテーダー!」
「隅烏賊の効果発動!隅烏賊をモンスターゾーンの左側に移動させ、イカスミトークン1体を特殊召喚する!そしてイカスミトークンは相手の戦闘モンスターの攻撃力と同じになる!」
ATK1900
「ちっ、めんどくせえ。バトル続行だ。パワーグラビテーダーで隅烏賊を攻撃だ」
「くっ、ごめん…隅烏賊」
「カードを伏せてターンエンドだ、おまえにはまだまだライフを提供してもらうぜ」
(この数ターンでここまでライフの差をつけられるなんて…厳しいけどどうにかしなくちゃ)
「私のターン!私は星向鳥を左側モンスターゾーンに召喚!」
DEF1500
「相手のモンスター召喚時、罠発動!《フォースターブレイク》!自分フィールドのモンスター1体をリリースし相手のレベル4以下のモンスターを全て破壊し破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
「そんなっ!?」
「イカスミトークンと星向鳥を破壊だ!そしてフィールドから離れたパワーグラビテーダーの効果!相手に300ダメージを与える!これで3200のダメージで俺の勝ちだ!」
「わあああああっ!!」
「やっぱキュアバーンデッキは最高だぜ…な、何!?」
「ハァ…ハァ…」
亜美LP2250→50
「何故ライフと星向鳥が残っている!?おまえのライフは残り2250で星向鳥のレベルは4だったはずだ!」
「確かに私のライフは2250で星向鳥の元々のレベルは4だったよ…」
「ならデュエルディスクの故障か?」
「違うね。星向鳥の効果だよ」
「何!?」
「星向鳥は召喚する位置によってレベルが一定数上がる効果を持っているんだよ」
「何だと!?そんな馬鹿なっ」
「左側モンスターゾーンに召喚したから星向鳥のレベルは4つ上がって8になっているからフォースターブレイクの効果を受けずに済んだ」
「粘ってくれるな…だが2200のライフは頂いた」
ハリーLP7750→9950
「カードを伏せてターンエンド」
「ははははははっ!それだけか!結局俺のライフは1も減らせてないじゃないか!ライフも50対9950じゃ勝負は決まったようなもんだな!」
「確かにね。でも私は賭けてみたい。可能性が少しでもあるならそれに」
「キュアバーン相手にライフ50でよく言うぜ。ま、せいぜい足掻いてな俺のターン」
(50対9950じゃ確かに私の勝利は見えないかもしれない。けど、《あのカード》なら…)
「バーンカードは引けなかったか…まあいい、こいつを召喚だ、来い《重力龍》」
ATK900
「重力龍の効果だ、自分のライフが5000以上ある場合、このカードの攻撃力はターン終了まで倍になり相手魔法カードの効果を受けない!」
ATK900→1800
「バトル!重力龍で星向鳥に攻撃!今度こそ終わりだ!重力龍は戦闘でモンスターを攻撃した時に相手の守備力を超えていればその数値分ダメージを与える!」
「カウンター罠《攻撃の無力化》相手の攻撃を無効にしバトルフェイズを終了させる!」
「ちっ、まあいい。このままターンエンドだ!エンド時に重力龍の攻撃力は元に戻るが、どうせお前に可能性なんか残されていないんだからな!」
ATK1800→900
「私のターン…これが最後のチャンス。私にあのカードを…ドロー!」
「来た…」
「何が来たって言うんだ」
「貴方がこれまでにここまでライフ差をつけてくれたおかげでこのカードが逆転の切り札へと変わった!」
「たった1枚のカードで何が逆転だ!ふざけているのか!」
「《ハンディ・ギャロップ》を召喚!」
ATK0
「このままバトル!星向鳥で重力龍に攻撃!」
「うおっ!?」
ハリーLP9950→9850
「ハンディ・ギャロップで直接攻撃!」
「とうとうおかしくなったか!?攻撃力0の子馬で攻撃したって痛くも痒くもねーよ!まさかこれが逆転の切り札なんて言わねーよなぁ?」
「私は正常だよ。ハンディ・ギャロップの攻撃力をよく見てみて」
「見るも何も攻撃力0じゃないかよ!」
ATK9900
「な、何故だ!?何故攻撃力が9900に!?」
「ハンディ・ギャロップは互いのライフポイントの差によって攻撃力が決まる。私のライフと貴方のライフの差は9900。だからこの子の攻撃力は9900になる!」
「嘘だろおおお!!」
ハリーLP9850→0
「やった…勝っ…た…!」
「く、くそおっ!この屈辱は絶対に忘れないからな!」
ハリーはリチャードと肩を並べてリムジンに乗るやいなやエンジンをつけてすぐに車を勢い良く飛ばして去って行ってしまった
亜美は呆然としながらも見えなくなってしまうまでリムジンを目で追いながら見送った。デュエルに勝利したものの何も知ることは出来ず亜美の表情は少し残念そうに見えた。
ひとまず海馬に連絡を入れようとしたものの、携帯がなく連絡のしようがなかった。
そして今いる場所も童美野シティに越して来たばかりの亜美には分からない。
「どうすればいいの…?ここがどこかも分からないよ…」
亜美は暫く埠頭周辺を明かりもない中ただ1人彷徨っていた。
それから少し歩いていくうちに1つの看板が見えてきた。亜美は看板の近くに立つと目を細めて書いてある文字のしたがその看板は磯の匂いと海藻が腐敗したような匂いを発しており近くには長くいられそうにもなく、すぐさま看板から身を離した。
「海竜神橋建設予定地…大きな橋でも立つのかな…」
すると後ろから男性2人の声が聞こえたかのような気がした亜美が声のする方に体を向けるとそこには海馬の部下である磯野と20代と思わしき青年が亜美の方へ走ってくるのが分かった。
「亜美様〜!無事でしたか!?」
「磯野、あれが兄サマの言っていた亜美って子?」
「はい!」
「磯野さん!?ああ良かった」
走ってくる磯野の姿を見た瞬間亜美から安堵の溜息が零れ、亜美も釣られるように2人に向かって駆けていった。
「無事でなりよりです亜美様。あっ、まだ亜美様はこの方をご存知では無かったですね。こちらの方は瀬人様の弟で副社長のモクバ様です」
「前から兄サマに話は聞いててずっと会いたいと思ってたんだ」
モクバは嬉しそうににっと笑いながら亜美右手を差し出しだし、それを見亜美は少し照れ臭そうに右手を出しモクバと握手を交わした。
「改めて海馬瀬人の弟のモクバです。よろしくだぜい」
「小鳥遊亜美です。こちらこそよろしくお願いします!」
握手を終えるとモクバの表情が一変。緩い笑顔から真剣な表情へと変わっていった。
「引っ越して早々にこんな事になって色々とこんがらがっていると思うけど、俺たちについて来てくれ。」
「えっ?」
「これから車に乗って会社に戻るんだけど、その途中で今童美野シティと海馬コーポレーションに起こった出来事を教えるよ」
「今起こっていること?何か変だとは思っていましたけど、やっぱりなにかあるんですね?」
「うん、じゃあ、時間も惜しいし行こうか」
3人は車へ乗り込み海馬コーポレーションへと戻っていくのであった。
しかし乗り始めて数分立たないうちに異変は起こる。
「シュレイダー社が海馬コーポレーションを襲撃!?どうしてそんなこと…えっ!?」
突然銃声と共ににモクバ達を乗せた車の窓を弾丸が襲った。
「磯野、亜美、伏せろ!奴らだ!河豚田!スピードを上げろ!」
「はっ、しかしこの道路の法定速度は60kmこれ以上は」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!急げ!」
「はっ!」
「くそっ…シュレイダー社の奴ら、童美野シティで好き勝手しやがって」
海馬「待たせたな。今回紹介するカードは《エネミーコントローラー》だ!!磯野、カードを持って来い!」
磯野「はっ、こちらになります」
海馬「このカードは簡単言うと攻めにも守りにも使える万能札だ!」
磯野「例えばどのような部分が万能と言えるのでしょう?」
海馬「相手の攻撃モンスターを守備表示に変えて場を凌いだり、自分のモンスターを生贄に相手の強いモンスターを奪い一気にたたみかける事ができるところだ!」
磯野「しかも速攻魔法。これは強力ですね!」
海馬「当たり前だ!このカードだけでなく俺の使うカードはすべて強力なカードなのだ!ワハハハハ!」
夜空の下青に煌めく鉄のジャングル童美野シティ。
その埠頭付近に一台の黒塗りのリムジンが停車した。
車から降りて来た1人の金髪の黒服は海を眺めながら電話をとり通話を始める。
停車されたリムジンは青く輝く街の風景を自身の車体全体に映していた。
「おぉお前か。今童美野埠頭に着いたところだ。ああ、ぐっすり寝てるよ。…了解。
羽田空港までだな」
通話が終わると、黒服はふーっとため息をついた。
少ししてリムジンから黒髪の黒服が降りてきた。
「あのよ」
「あ?どうした?」
「社長って馬鹿だと思わねえか?」
「奇遇だなリチャード。俺も同じ事を考えていたよ」
黒髪の黒服はそう言い終えると金髪の黒服もといリチャードに一本の煙草を二本の指で挟みピンっと弾くように投げ渡した。
リチャードは「おいおい、カッコつけて投げてんなよてか、普通に渡せよな」とほんの少しだけ怒ったかのようにそう言ってあたふたしながら宙に舞う煙草を手中におさめた。
「ったく。しかし社長にはまいったぜ。自分の私怨で俺たちに海馬コーポレーションを襲わせてしかも女の子を誘拐させるんだもんな」
リチャードはたばこをふかしながら空を見上げそう呟いた。
舞い上がった煙が儚く夜の空に溶けていく。
「さてどうするハリー?一回様子を見てみるか?」
「そうだな」
リチャードとハリーはリムジンへと戻り、ハッチを開けた。
そこには飼い猫のように安心しきった表情で眠る亜美の姿があった。
「よく寝ているなぁ…まあそれもそうか。寝ているところをそーっと運んだからな。さて、気は進まないが、そろそろ羽田空港に行かなくては。ハリー、エンジンをかけてくれ」
「あいよ」
リチャードがハッチを閉めようとしたその時、亜美の体が一瞬眩しく光り輝いた。
そしてその頃海馬コーポレーションでは、海馬とジークのデュエルが続いていた。
「これが俺のデッキの力だ。俺には分かる。このデュエルで貴様に勝利が訪れることは無い」
「何故そう言い切れる?ライフが尽きるまでデュエルは分からない。優勢だからっていい気になるなよ」
ジークは少し苛立ちながら海馬を睨みつけ
海馬はジークの睨みを見てフッと軽く笑って返す。
「教えてやる。俺は7年前に最強の決闘王の称号を持つ男を完膚なきまでに叩きのめし、全ての頂点に立っているからだ!こんなデュエル初めから勝敗など分かっていたわ!」
「最強の決闘王…?《あの男》のことか…!?」
「そうだ。俺はその男をも超え全ての頂点に立っている。貴様は頂に立つものに喧嘩を売ったということになるわけだ」
「馬鹿な…!」
「さあ、これを聞いてまだ無駄な足掻きを続けるか?それとも潔く負けを認め亜美を返し退くか?選ばせてやる」
ジークに二択の選択を与えたのちに1枚のカードを伏せた。
そしてジークの返答を黙って待つ。
「私はヨーロッパの無敵の貴公子と呼ばれる男だ。日本のチャンピオンを超えたくらいで虚勢をはる男などに負けるわけにはいかないのだ!君を倒して会社を乗っ取りシュレイダー社が世界1位の企業になる!私のターン!」
「呆れて言葉も出ぬな」
「私は永続魔法《ワルキューレの聖域》を発動!このカードがある限りレベル5以上のワルキューレモンスターをリリース無しで召喚することが出来る!来い!《ワルキューレ・ツヴァイト》」
ATK1900
「さらにツヴァイトの効果発動!このカードが召喚に成功した時、相手フィールドのカード1枚を破壊できる!私が破壊するのはカオスエンペラーだ。」
ツヴァイトは自身の持つ剣に光を宿しカオスエンペラーの腹部にその剣を突き立て、引き抜いた。
その後カオスエンペラーの腹部から亀裂が入り、カオスエンペラーは粉々になって気化していった。
だが、それを予測していたかのように海馬は何一つ表情を変えることはなかった。
「フッ、バトルだ海馬。ツヴァイトでレイド・ワイバーンを攻撃!そして聖域のもうひとつの効果!戦闘を行うワルキューレは1度だけ戦闘では破壊されず、ワルキューレが戦闘でモンスターを破壊した時、攻撃力を300下げて続けて攻撃が出来る!ツヴァイトで海馬にダイレクトアタック!」
「甘いぞ!罠発動!《影からの強襲》このカードの効果で墓地、または除外されているレベル3以下の闇属性モンスター1体を元々の攻撃力を3倍にして特殊召喚しバトルを行う!」
「何!?」
「来い!《闇・道化師のサギー》」
「ケケケケケケ…」
ATK1800
「聖域による戦闘耐性付与は1ターンに1度のみ!サギー、敵を粉砕せよ!《ダーク・グライド》」
「ぐっ!」
ジーク
LP4100→3900
「海馬…!くそっ、ターンエンドだ…」
「万策尽きたようだな。所詮は井の中の蛙…俺のターン!ジーク、貴様は終わりだ」
「くっ…ヨーロッパ無敵無敗の私が…なぜこんな奴に…!」
「俺は手札から《闇・エネルギー》を発動。サギーの攻撃力を3倍にする」
ATK1800→5400
「ワハハハハ!終わりだ!サギーの攻撃!《ダーク・グライド》!!」
「はああぁぁぁぁぁぁ!!!」
ジークLP3900→0
「身の程を弁えろ、雑魚が」
……あれ
……ここは?
視界が霞みがかっていて目の前がどうなっているかが分からない。何故だか高そうな香水の匂いが鼻をくすぐり冷たい風が肌を突いてくる。そして同時に目が少しずつ覚めて行く。
黒い服を着た人が2人?ますます頭がこんがらがって行く。一体何がおきている?そんな事を考えていると突然黒い服の人達が私の腕を掴んできた。
そこで私の目が完全に覚めた。そして少しだけ状況を理解する。
よくわからないけど誘拐された!?そして今私は押さえ込まれている
「おい、まずいぞハリー!こいつ目覚めやがった!」
「睡眠剤を取ってくるからそれまで押さえ込んでろ!」
男の押さえつける力が少しずつ強くなっていく。
何が理由でこんな事になっているのか寝ていた亜美には当然分かるはずもなくその分からない事に対してと亜美を押さえつける謎の男に対して亜美は苛立っていった。
まずは押さえつけられている腕をなんとかしようと亜美は身体全体を使って振りほどこうとした。
「一体なんなの!?っ離してよ!意味っ分からないよっ!」
「こら、暴れるな!おい、まだか!?」
最初は混乱してただ暴れていて気づかなかったが、片方の腕は自由に動かせる事に気付き、動かせる方の腕に力を込め、リチャードの腕に思い切りパンチを入れた。
「っぎゃあああっ!いだぁっ!?」
リチャードは殴られた方の腕を抑えながら嘆き倒れた。
リチャードの悲鳴を聞いたハリーがリチャードの元へ駆け寄る。
その隙に亜美はリムジンか飛ぶように降りた。
「リチャード大丈夫か!?いけない子だなあ。ちゃんとおねんねしてないと…!?」
困った顔をしながらハリーが亜美の元へ歩み寄ったが亜美は素早く間合いを詰めハリーの右の頬を強く殴った。
「があっ…!こいつ、強い!」
「一体誰なの貴方達は?どうして私を?」
「く…そ…デュエルだ!デュエルに勝ったら教えてやるよ!」
ハリーは殴られた頬を抑えながらディスクを構えた。
しかし亜美は今ディスクもカードも持ってはいなかった。当然といえば当然なのだが、これではデュエルができない。
「受けて立ちたいけどディスクもカードも無いからできない」
「ちゃんと俺が持ってきておいたぜ。車ん中にある」
ハリーはよろよろとリムジンへと戻り亜美のディスクとカードを取ってきたのちそれを亜美に手渡した。
それを受けとった亜美の目つきが一瞬鋭くなる。
「安心してくれ。デッキをいじったりはしてないからよ」
「いいから始めよう。」
「デュエル!先攻は俺だ、ドロー」
ハリーLP4000
亜美LP4000
「俺はカードを伏せて、《重力操士》を守備表示で召喚!」
DEF1800
「重力操士の効果発動!1ターンに1度、相手に400ダメージを与える!そしてターンエンドだ」
「うっ…!」
亜美LP4000→3600
「私のターン」
「ドローフェイズ時リバースカードオープン!《ライフ補給装置》!このカードが場にある限り相手のライフが減るたび減った数値分自分のライフを回復する!」
「私は隅烏賊を守備表示で召喚してターンエンド」
DEF1800
「攻めてこないのか。ならば俺のターン!重力操士の効果発動!更にライフ補給装置の効果も発動だ!」
「ぐっ…」
亜美LP3600→3200
ハリーLP4000→4400
「そして手札から《ご隠居の猛毒薬》を2枚発動!俺のライフを2400回復!」
ハリーLP4400→6800
「更に重力操士をリリース、《パワーグラビテーダー》を召喚だ!」
ATK1900
「攻撃力1900…けどそんなに高くない」
「だがこいつには強い効果がついてるぜ!こいつは召喚時、相手にこのカードの攻撃力の半分のダメージを与えることができる!」
「えっ…」
「くらえ!」
「うわあああっ!」
亜美LP3200→2250
「そして俺のライフは補給装置で更に回復だ」
ハリーLP6800→7750
「バトル!行け、パワーグラビテーダー!」
「隅烏賊の効果発動!隅烏賊をモンスターゾーンの左側に移動させ、イカスミトークン1体を特殊召喚する!そしてイカスミトークンは相手の戦闘モンスターの攻撃力と同じになる!」
ATK1900
「ちっ、めんどくせえ。バトル続行だ。パワーグラビテーダーで隅烏賊を攻撃だ」
「くっ、ごめん…隅烏賊」
「カードを伏せてターンエンドだ、おまえにはまだまだライフを提供してもらうぜ」
(この数ターンでここまでライフの差をつけられるなんて…厳しいけどどうにかしなくちゃ)
「私のターン!私は星向鳥を左側モンスターゾーンに召喚!」
DEF1500
「相手のモンスター召喚時、罠発動!《フォースターブレイク》!自分フィールドのモンスター1体をリリースし相手のレベル4以下のモンスターを全て破壊し破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
「そんなっ!?」
「イカスミトークンと星向鳥を破壊だ!そしてフィールドから離れたパワーグラビテーダーの効果!相手に300ダメージを与える!これで3200のダメージで俺の勝ちだ!」
「わあああああっ!!」
「やっぱキュアバーンデッキは最高だぜ…な、何!?」
「ハァ…ハァ…」
亜美LP2250→50
「何故ライフと星向鳥が残っている!?おまえのライフは残り2250で星向鳥のレベルは4だったはずだ!」
「確かに私のライフは2250で星向鳥の元々のレベルは4だったよ…」
「ならデュエルディスクの故障か?」
「違うね。星向鳥の効果だよ」
「何!?」
「星向鳥は召喚する位置によってレベルが一定数上がる効果を持っているんだよ」
「何だと!?そんな馬鹿なっ」
「左側モンスターゾーンに召喚したから星向鳥のレベルは4つ上がって8になっているからフォースターブレイクの効果を受けずに済んだ」
「粘ってくれるな…だが2200のライフは頂いた」
ハリーLP7750→9950
「カードを伏せてターンエンド」
「ははははははっ!それだけか!結局俺のライフは1も減らせてないじゃないか!ライフも50対9950じゃ勝負は決まったようなもんだな!」
「確かにね。でも私は賭けてみたい。可能性が少しでもあるならそれに」
「キュアバーン相手にライフ50でよく言うぜ。ま、せいぜい足掻いてな俺のターン」
(50対9950じゃ確かに私の勝利は見えないかもしれない。けど、《あのカード》なら…)
「バーンカードは引けなかったか…まあいい、こいつを召喚だ、来い《重力龍》」
ATK900
「重力龍の効果だ、自分のライフが5000以上ある場合、このカードの攻撃力はターン終了まで倍になり相手魔法カードの効果を受けない!」
ATK900→1800
「バトル!重力龍で星向鳥に攻撃!今度こそ終わりだ!重力龍は戦闘でモンスターを攻撃した時に相手の守備力を超えていればその数値分ダメージを与える!」
「カウンター罠《攻撃の無力化》相手の攻撃を無効にしバトルフェイズを終了させる!」
「ちっ、まあいい。このままターンエンドだ!エンド時に重力龍の攻撃力は元に戻るが、どうせお前に可能性なんか残されていないんだからな!」
ATK1800→900
「私のターン…これが最後のチャンス。私にあのカードを…ドロー!」
「来た…」
「何が来たって言うんだ」
「貴方がこれまでにここまでライフ差をつけてくれたおかげでこのカードが逆転の切り札へと変わった!」
「たった1枚のカードで何が逆転だ!ふざけているのか!」
「《ハンディ・ギャロップ》を召喚!」
ATK0
「このままバトル!星向鳥で重力龍に攻撃!」
「うおっ!?」
ハリーLP9950→9850
「ハンディ・ギャロップで直接攻撃!」
「とうとうおかしくなったか!?攻撃力0の子馬で攻撃したって痛くも痒くもねーよ!まさかこれが逆転の切り札なんて言わねーよなぁ?」
「私は正常だよ。ハンディ・ギャロップの攻撃力をよく見てみて」
「見るも何も攻撃力0じゃないかよ!」
ATK9900
「な、何故だ!?何故攻撃力が9900に!?」
「ハンディ・ギャロップは互いのライフポイントの差によって攻撃力が決まる。私のライフと貴方のライフの差は9900。だからこの子の攻撃力は9900になる!」
「嘘だろおおお!!」
ハリーLP9850→0
「やった…勝っ…た…!」
「く、くそおっ!この屈辱は絶対に忘れないからな!」
ハリーはリチャードと肩を並べてリムジンに乗るやいなやエンジンをつけてすぐに車を勢い良く飛ばして去って行ってしまった
亜美は呆然としながらも見えなくなってしまうまでリムジンを目で追いながら見送った。デュエルに勝利したものの何も知ることは出来ず亜美の表情は少し残念そうに見えた。
ひとまず海馬に連絡を入れようとしたものの、携帯がなく連絡のしようがなかった。
そして今いる場所も童美野シティに越して来たばかりの亜美には分からない。
「どうすればいいの…?ここがどこかも分からないよ…」
亜美は暫く埠頭周辺を明かりもない中ただ1人彷徨っていた。
それから少し歩いていくうちに1つの看板が見えてきた。亜美は看板の近くに立つと目を細めて書いてある文字のしたがその看板は磯の匂いと海藻が腐敗したような匂いを発しており近くには長くいられそうにもなく、すぐさま看板から身を離した。
「海竜神橋建設予定地…大きな橋でも立つのかな…」
すると後ろから男性2人の声が聞こえたかのような気がした亜美が声のする方に体を向けるとそこには海馬の部下である磯野と20代と思わしき青年が亜美の方へ走ってくるのが分かった。
「亜美様〜!無事でしたか!?」
「磯野、あれが兄サマの言っていた亜美って子?」
「はい!」
「磯野さん!?ああ良かった」
走ってくる磯野の姿を見た瞬間亜美から安堵の溜息が零れ、亜美も釣られるように2人に向かって駆けていった。
「無事でなりよりです亜美様。あっ、まだ亜美様はこの方をご存知では無かったですね。こちらの方は瀬人様の弟で副社長のモクバ様です」
「前から兄サマに話は聞いててずっと会いたいと思ってたんだ」
モクバは嬉しそうににっと笑いながら亜美右手を差し出しだし、それを見亜美は少し照れ臭そうに右手を出しモクバと握手を交わした。
「改めて海馬瀬人の弟のモクバです。よろしくだぜい」
「小鳥遊亜美です。こちらこそよろしくお願いします!」
握手を終えるとモクバの表情が一変。緩い笑顔から真剣な表情へと変わっていった。
「引っ越して早々にこんな事になって色々とこんがらがっていると思うけど、俺たちについて来てくれ。」
「えっ?」
「これから車に乗って会社に戻るんだけど、その途中で今童美野シティと海馬コーポレーションに起こった出来事を教えるよ」
「今起こっていること?何か変だとは思っていましたけど、やっぱりなにかあるんですね?」
「うん、じゃあ、時間も惜しいし行こうか」
3人は車へ乗り込み海馬コーポレーションへと戻っていくのであった。
しかし乗り始めて数分立たないうちに異変は起こる。
「シュレイダー社が海馬コーポレーションを襲撃!?どうしてそんなこと…えっ!?」
突然銃声と共ににモクバ達を乗せた車の窓を弾丸が襲った。
「磯野、亜美、伏せろ!奴らだ!河豚田!スピードを上げろ!」
「はっ、しかしこの道路の法定速度は60kmこれ以上は」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!急げ!」
「はっ!」
「くそっ…シュレイダー社の奴ら、童美野シティで好き勝手しやがって」
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