15　無慈悲な者達　作：19

大会が終わった日の夜。黒く、肌に吸い付くようなスーツを着ている者達が、闇夜の陰に潜み、デュエリストを狙う。

　？「モンスターでダイレクトアタック！」
　デュエリスト「うあああ！」

デュエリスト　ライフ１２００→０

　？「ふふふ…、このカードは貰っていくぞ」
　デュエリスト「か、返してくれ！それは大事なカードなんだ！」
　？「知ってるよ。精霊のカードだろ？お前が見えてるって事は、お前も短命なのか」
　デュエリスト「そうだ！だから返してくれ！頼む！」
　？「残念だなぁ…俺も精霊が見えるんだ。返すに返せないなぁ」
　デュエリスト「そんな…返してくれよ！返してくれよぉ！！」
必死になって男に掴みかかったデュエリストの青年は、カードを奪い返そうとするが腹に膝蹴りを受け、怯んだ隙に顔に強烈なパンチを食らう。
　デュエリスト「うぐぁ…、か、返して…くれ…」
　？「しょうがない…しつこいから餌にしよう。よかったな、もう精霊にすがる必要もないぞ」
そう言った男の背後から、巨大な影が現れ、青年を飲み込んでいった。

　
　？「何枚集まった？」
　？２「２枚、二人組から奪った」
　？「そうか、俺は１枚だ」
　？２「１枚ねぇ、それも見た限り、弱そうな精霊じゃないか」
　？「そうなだな。せいぜい半年分って所か」
　？２「本選まで時間はある…存分に楽しもうや」

　
　オピス「…。本選、気を付けろよ」
　縁「？…それはもちろんわかってるわ。油断なんてしないわよ」
　オピス「そうじゃない。精霊狩りの奴らだ。それらしい奴を何人か見かけた」
　縁「どう見分けてるの？」
　オピス「明らかに、ソイツが持ってる精霊カードから悲しみの感情が伝わって来る。奪われた時…精霊が発する－に近いオーラだ」
　縁「つまり、どういう事？」
　オピス「大会でソイツらに当たった時、万が一お前が負けたら…俺は奴らに奪われるだろう。こころしてかかれよ」
　縁「…えぇ。わかったわ」


その晩、二人の男は行動に出ていた。
　デュエリスト２「うぐぁ！」
　？２「はっはっは、カードは貰ったぜ」
　デュエリスト「か、返せ！」
　？２「あぁ…やっぱりそう言うよね？だよな？邪魔だぜ」
　デュエリスト２「！？う、うわあああ！」

　キャスター「ここ数日、遊戯王の大会が開かれているこの街で若者が夜な夜な失踪するという事件が多発しています。警察はこれに対し、人数を増やして調査を進めています」

　縁「物騒ねぇ…」
　オピス「お前も人の心配をする暇があったら自分の心配をするんだな。消えたのは若いやつらだけ…」
　縁「精霊が見える可能性が高いって事よね」
　メル「大会があったせいかな。デュエリスト達が集まってる今が絶好のチャンスってことだろうね」
　オピス「人間ってのは怖いもんだな。自分の為に何よりも必死になれる…」


　？「そろそろ、これだけ集めればいいか」
　？２「ああ、精霊カード３０枚…そうとう集まったぜ。これで寿命５０年分はあるか」
　？「精霊が見える人間は寿命が短い…しかし、精霊のカードさえ集めればいくらでも寿命を延ばせるのもまた事実」
　？２「世界を制したボスと俺たちだけが知ってるんだったよな」
　？「まあな。とにかく、あと１０体は集める。俺は隣町まで行ってくるから、お前は反対側の街でも探してな」

　メル「…本選か。デッキの調整しとかないとな」
　縁「そうね。オピス、そういえばこのデッキってサイドデッキみたいなのってあるの？」
　オピス「おう、結構使いどころ難しいと思って入れてなかったが…てか、サイドデッキだけじゃなくて、結構別のカードとかもあるぞ。俺特製のカードがな」
　縁「オピス特製のカードって、何か怪しいわね」
　オピス「お前に協力するために貸してるデッキなのに酷い言われようだな。ま、いいや。好きなカード選んでな」