Turn003 水を司る彼女は…　作：「勅使河原」が読めぬ

「…そんなこと言っても、アテはあるのか、流星？」
「うん。幸い、ここはスタジアムの密集地だ。近場で固めるとあまりよくないかもしれないけど、探し回るよりはマシだと思うんだ」
「で…誰を狙うんだ？」
「この近くの水属性スタジアムの主・水口鏡花(ミズグチ・キョウカ)」

そして歩くこと10分。

「鏡花！」

スタジアムに着くなり、唐突に流星が鏡花の名前を呼ぶ。

「連れて来たよ」
「もう？　早いんだね～」
「ん？　知り合いなのか？」
「一応、幼なじみって感じかな」

デュエルフィールドから上がって来た鏡花を見るなり、遊騎を感情が支配した。

「カワイイ…」
「水口鏡花です。よろしく！　流星の知り合いなんだよね？」
「…」
「あれ？」
「あ、悪い悪い。俺、炎藤遊騎。よろしくな！」
「うん。よろしくね、遊騎くん！」

鏡花が遊騎の手に触れる。その瞬間、遊騎の顔は炎属性のアイコンよりも赤く染まった。

「…流星から話は聞いてるけど、天下獲りたいんだよね？」
「お、おう！」
「だったら、デュエルしない？　私、遊騎くんのデュエル見ておきたいの！」

流星が遊騎に耳打ちする。

「鏡花は相当強いからね。普段からそんなことはないと思うけど、手は抜かないようにね」
「始めるよ、遊騎くん！」
「おう！」
「デュエル！」
「先攻は俺が行くぜ！　まずは通常魔法、炎熱伝導場を発動！　墓地にラヴァル炎火山の侍女とラヴァルのマグマ砲兵を墓地へ送る！　そしてカードを２枚セットしてターンエンドだ！」
「行くよ、私のターン、ドロー！　じゃあ、最初は手札からブリューナクの影霊衣を墓地へ送って効果発動！　デッキからユニコールの影霊衣を手札に加えるね！　そして儀式魔法、影霊衣の反魂術を発動！　手札の影霊衣の舞姫をリリースして、ユニコールを儀式召喚！」
「儀式召喚か…」
「行くよ！　ユニコールでダイレクトアタック！」
「速攻魔法発動、紅蓮の炎壁！　墓地の２体を除外して、トークンを２体特殊召喚だ！」
「じゃあ、そのうちの１体を破壊ね！　そしてターンエンド！」
「行くぞ、俺のターン、ドロー！」
「あ、そうだ！」
「ん？」
「言い忘れてたけど、ユニコールの効果で、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの効果は無効化されるからねっ」
「何ぃぃ！？」
「ラヴァルはエクストラデッキがメインのカテゴリだから、ちょっと厳しいかもって思うけど、頑張ってね」
「クソっ、どうすれば…」

まじまじと手札を見つめる遊騎。その頭に、電光が走った。

「…そうだ、これだ！　炎熱伝導場を発動！　墓地に送るのはラヴァルロード・ジャッジメントとラヴァル・コアトル！　そしてセットしておいたリビングデッドの呼び声でジャッジメントを特殊召喚！　コアトルを除外して１０００ダメージだ！」
「きゃぁっ！」

ダメージを受け痛がる鏡花を見ながら、遊騎は悪いことをしてしまったような気分に駆られた。

「…まだ行くぜ！　手札からマグマ砲兵を通常召喚！　手札のラヴァル・フロギスを墓地へ送り、５００ダメージを受けてもらうぜ！」
「ま、また～！？」
「そしてフロギスの効果で、マグマ砲兵とジャッジメントの攻撃力を３００アップさせる！　ジャッジメントでアタックだ！」
「もうやめてよ～！」
「残りライフは１８００、マグマ砲兵は攻撃力２０００！　もらったぜ！」

観客席から、大勢の観客の拍手が巻き起こる。

「あ～あ、負けちゃった…強いんだね、遊騎くん」
「いや～、今回はたまたまだって～」
「…照れてるな、遊騎…」
「何か言ったか、流星？」
「い、いや、別に～」
「遊騎くん」

再び、鏡花が遊騎の手を握る。

「これから、よろしくねっ！」

…しかし、遊騎はすでに気を失っていた。好みの子に２回も手を握られたのだ。しかも向こうから。

「…ちょっと、大丈夫、遊騎くん！？」
「だ、誰か救急車～！」

…とにもかくにも、これで水属性使いが仲間となったわけである。