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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第十一話 恋する乙女の大奮闘 VSレイ

第十一話 恋する乙女の大奮闘 VSレイ 作:鈴木颯手

 闇夜の巨人デュエリストの騒動が解決し、平穏が戻ったアカデミアだがそれからもイベントは発生していた。まず、購買部で販売されている何が入っているのか分からないドローパンのあたりである黄金の卵パンが盗まれる事件やデュエルキングの武藤遊戯のデッキが盗まれる事件などが発生していたが龍吾はそもそもパンを食べない、デッキが盗まれたときは寝ていた事でノータッチで終わっていた。

「……ん?」

 そして、一番近いイベントであるノース校との対抗デュエルが近づいている中、龍吾はブルー寮の外で珍しい人物を見かけた。彼自身がここに来る事は無く、更には寮も違う十代が隠れうようにして移動していたのだ。

「十代、何をしている」
「うぉ!? ……って、龍吾か。いや、実はさ……」

 突如として龍吾に話しかけられた十代は訳を説明する。それは昨日の夜にレッド寮に編入生が入ってきた事から始まった。その人物、早乙女レイは女の子のような容姿をした小柄な少年だが風呂に入るのを嫌がったり丸藤亮の方を見ていたりした上にブルー寮に向かって走っていった事から何かあるんじゃないかとついてきたというのだった。

「……理由は分かったがレッドの生徒であるお前がここにいるのは不味いんじゃないか?」
「そりゃそうだけどさ」

 ブルーにはエリート意識が強い者が多く、ラーイエローならともかくレッドの生徒が近くにいるだけでどんないちゃもんをつけてくるのか分からなかった。それは十代も理解しているがそれでもレイの事も心配だったために引くことも出来ない。そんな十代に龍吾はため息をついた。

「……分かった。俺も用事はないからな。手伝ってやる」
「本当か!?」
「他の生徒が何か言ってきても俺が用事を頼んできてもらったと言えばある程度は問題ないだろう」

 これまでにブルーの生徒を相手に無双し続けた龍吾の関係者というだけで十代はブルー寮でかなり自由に動く事が出来る。十代は感謝しつつ龍吾と一緒に後を追った。

「……あいつ、何してんだ?」
「……ここは丸藤先輩の部屋だ」
「え!? ……ってあいつ何してんだ!?」

 レイの後を追って木を登り二階のベランダに降りた二人はそこで亮のデッキに頬ずりをするレイの姿を見てしまう。

「おい、何をしている」
「っ!」
「レイ、お前まさかカイザーのデッキを盗もうと……!」
「そ、そんなんじゃ……っ!?」

 突如として現れた二人に警戒するレイだが部屋の外から話し声が近づいてくるのを聞き慌てて逃げ出そうとした。

「きゃっ!?」
「っ!」
「え? 大丈夫、か……」

 しかし、慌てていた為に躓いてしまったレイを龍吾が抱き留めたがその際にかぶっていた帽子が外れ中でしていた髪留めが外れてしまう。結果、レイの帽子の中から現れたのは長い髪。それを見た龍吾も十代も目を見開き驚いた。

「レイ、お前女の子だったのか!?」
「っ!」
「あ! ちょ!」

 髪を見られた事で固まったレイだがすぐに龍吾の腕の中から抜け出すとそのままベランダを飛び降りて逃げてしまった。そして、部屋の扉が開くのはその直後だった。

「っ! お前は黒木龍吾! それと遊城十代!」
「ここで何をしている! ここはカイザー亮の部屋だぞ!」
「そ、それは亮のデッキ! お前らデッキを盗もうとしていたのか!」

 亮の取り巻きか友人らしき三人が入ってきて二人に詰め寄った。流石の龍吾も不法侵入という点ではやらかしている為に盗みに入ったわけではないとしか言いようがない。十代も同じようで必死に違うんだ~! と言っているが三人には効果はなかったが亮が部屋の隅に落ちていたレイの髪留めを拾って声をかけた。

「二人はデッキ泥棒ではない。そんなことをする二人じゃないからな。だが勝手に部屋に入るのは犯罪だ。今回は見逃すが次からしないように」
「は、はい!」
「すみませんでした」

 二人はきちんと謝罪をして部屋を出ていく。ブルー寮の前までくると改めてレイについて話をする。

「あれ、どうみても女の子だったよな?」
「……髪が長い少年という線もある」
「でも女の子だったのなら今までの事に説明がつくんだよな~」

 風呂に入らなかった理由も亮を見ていた事や部屋に侵入した事にも。それだけになんで女子として編入しなかったのかが謎である。別に男性しか編入試験が行われていないわけではないし亮がブルーの生徒である以上レッド寮に男子として入るよりも近づきやすいはずなのだ。

「考えても仕方ないだろう。改めて事情を聞くしかない。流石にあんなことを今後も続けられては大変だしそもそも女子という事を隠していていいものか……」
「そうだよなぁ。んじゃそこは夜に話を聞いてみるから龍吾も来ないか? 巻き込んだ形になって悪いとは思うけど」
「乗り掛かった舟だ、問題ない。結末くらいは把握しておきたいからな」

 こうして、改めて夜にレイと話をする事にした二人は食事と風呂を終えるとレッド寮がある崖下でレイと話をする事にした。

「……そいつは?」
「黒木龍吾。ブルーの生徒でめちゃくちゃ強いんだぜ! なんてたってあのカイザーに勝利したくらいだからな!」
「亮様に!? ……ふーん」

 何やら目を細めて睨むような視線を龍吾に向けるが当の本人はどこ吹く風といった様子だった。

「……なんで僕の話さなかった?」
「女の子だったって事か? 態々こんなところまで男のふりまでしてきてるから何かわけありなんだろうなぁと思って」
「俺も同じだ。さらに言えば態々いう事の事でもないだろう」
「……昼間の事は誰も言うなよ」

 レイとしてはそのことが気がかりなのだろう。さらに言えばその視線は龍吾の方に向けられている。十代は何となくの性格が理解できているが龍吾はそうではない。だからばらすんじゃないかと心配になっていた。

「だったらまずは事情を話したらどうだ? 一方的に我を通す事は難しい。何かしらの納得のいく条件が必要だ」
「理由は……、言えない」

 龍吾は何となく察しはついているがそれを言う事は無い。言ったところでどうしようもないし、何より彼としては今後どうするのかさえ聞ければそれだけでいいと思っていたがそうではない人物が一名いた。

「んじゃデュエルしようぜ」
「……は? なんでそうなる」
「言葉にして無理な事はデュエルをすれば解決するもんさ」

 そう言って十代はデュエルディスクをリュックから取り出すがレイは呆れたような視線を向けている。

「……ならここは俺が相手をする」
「え? お間が?」
「お前が勝てば丸藤先輩と会わせる、とまではいかないがブルー寮に入る手助けをしてやる。今日みたいに不法侵入するのでは周りに迷惑をかけるからな」
「……僕が負けたら事情を説明しろって事ね?」
「そうだ。十代、悪いがここは譲ってくれ」
「んー、俺としても巻き込んじまったって感じてるし良いぜ! 面白いデュエルにしてくれよ」

 十代は二人にデュエルディスクを渡すと少し離れた場所に座る。そんな三人の様子を崖の上から眺める4人の姿があった。レイと十代の様子がおかしいと様子を見に来た翔と隼人に不法侵入された亮、先ほどまで相談を受けていた明日香だった。
 そんな5人の観戦者がいる中二人はデッキをセットし、デュエルディスクを起動した。

「デュエル!」
「……デュエル」
「僕の先行! ドロー!」

早乙女レイ
手札5枚→6枚

「僕は“恋する乙女”を召喚する!」

恋する乙女(光/魔法使い族 星2)
ATK400 DEF300

「更にカードを2枚伏せてターンエンド!」

 レイが呼び出したのは少女漫画に出てきそうな見た目の少女だった。龍吾も初めて見るモンスターであり、低スペックのモンスターだが警戒を怠ることなく自分のターンを迎える。

「俺のターン、ドロー」

黒木龍吾
手札5枚→6枚

「……俺は“蛟龍”を召喚する」

蛟龍(闇/ドラゴン族 星3)
ATK1300 DEF0

「バトル。“蛟龍”で“恋する乙女”に攻撃」
「リバースカードオープン! “ガード・ブロック”! このカードの効果により僕が受けるダメージは0になり1枚ドローする! だけどそれにチェーンして“神の恵み”を発動するよ! これで僕がカードをドローするたびにライフを500回復出来るようになった」
「……だがこれでモンスターは破壊される」
「そんなわけないでしょ。“恋する乙女”は戦闘では破壊されないよ。そして攻撃を受けた事で君の“蛟龍”に乙女カウンターを乗せる」

早乙女レイ
手札3枚→4枚
LP4000→4500

蛟龍
乙女0→1

「……俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」


早乙女レイ LP4500
手札4枚
モンスター
恋する乙女
魔法・罠
神の恵み(永続罠)

黒木龍吾 LP4000
手札3枚
モンスター
蛟龍
魔法・罠
セット
セット


「僕のターン! ドロー!」

早乙女レイ
手札4枚→5枚
LP4500→5000

「僕は装備魔法“キューピット・キス”を“恋する乙女”に装備する! そして恋する乙女で“蛟龍”を攻撃!」
「攻撃力が低いにも関わらず攻撃だと?」

 あまりにも不可解な攻撃に龍吾はいぶかしむが“恋する乙女”の攻撃を“蛟龍”は返り討ちにした。

早乙女レイ
LP5000→4100

「そしてこの瞬間“キューピット・キス”の効果を発動する。乙女カウンターを乗せたモンスターを装備モンスターが攻撃した時、そのモンスターのコントロールを得る!」
「……何?」

 龍吾はここでようやくレイのデッキについて理解した。そして同時に早期に決着をつけないと自分のモンスターが奪われていく事にも。

「“蛟龍”を奪ったのは僕のバトルフェイズ中だから攻撃あまだ出来るよ。僕は“蛟龍”で直接攻撃!」
「……ちっ」

黒木龍吾
LP4000→2700

 龍吾はこのデュエルアカデミアに来て初めての大ダメージをうけた。しかもそれが自分のモンスターによってであり龍吾の表情は少し歪んだ。

「メインフェイズ2に入り僕は“一時休戦”を発動する。これで君のターン終了時までお互いに受けるダメージは0になるよ。そしてお互いに1枚ドローする」

早乙女レイ
手札3枚→4枚
LP4100→4600

黒木龍吾
手札3枚→4枚

「僕はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
「……俺のターン、ドロー」

黒木龍吾
手札4枚→5枚

「……俺は手札の“バイス・ドラゴン”の効果を発動する。自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在する場合手札から特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚された“バイス・ドラゴン”の攻撃力・守備力は半分になる」

バイス・ドラゴン(闇/ドラゴン族 星5)
ATK2000→1000
DEF2400→1200

「更に“ダークワイバーン”を召喚する」

ダークワイバーン(闇/ドラゴン族 星4)
ATK1600 DEF1300

「更に手札から漆黒の戴冠式を発動する。“ダークワイバーン”をリリースする事で手札・墓地・デッキから闇属性ドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから“カンカナカムイ”を特殊召喚する」

カンカナカムイ(闇/ドラゴン族 星7)
ATK2600 DEF2300

「攻撃力2600……。そんなモンスターを召喚できるなんてインチキじゃないか!」
「無論デメリットは存在する。手札・墓地・デッキそれぞれデメリットが規定されている。俺は“カンカナカムイ”の効果を発動する。“カンカナカムイ”は自分フィールドのカードを除外する事でその種類に適応した効果を発動できる。俺は“バイス・ドラゴン”をゲームから除外する事で相手フィールドの魔法・罠カード全てを手札に戻す効果を発動する」
「え!? それって……」
「これでお前にとられた“蛟龍”は戻ってくる」

 “カンカナカムイ”が翼をはためかせてフィールドの魔法・罠カードを吹き飛ばしていく。強風がレイを襲ったことで被っていた帽子は飛ばされ女の子らしい容姿があらわとなった。

「だけど“一時休戦”の効果で僕が受けるダメージは0だよ」
「知っている。俺は手札から“神秘の中華鍋”を発動する。“カンカナカムイ”をリリースする事で元々の攻撃力分ライフを回復する」

黒木龍吾
LP2700→5300

「“漆黒の戴冠式”の効果でデッキから特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズに破壊されその攻撃力分のダメージを受けてしまう。ゆえに対処させてもらった。そして俺は墓地にいった“カンカナカムイ”の効果を発動する。“蛟龍”をリリースする事で墓地より特殊召喚する」

 今度は自身の効果で復活したために“漆黒の戴冠式”のデメリットを受ける事は無い。事実上デッキからノーリスクで特殊召喚したに等しかった。

「更に“蛟龍”のリリース効果によりデッキから1枚ドローする。……更に俺は今引いた“闇黒の魔王ディアボロス”を相手に見せる事でもう1枚ドローする」

黒木龍吾
手札1枚→2枚→3枚

「俺はこれでターンエンドだ」


早乙女レイ LP4600
手札6枚
モンスター
恋する乙女
魔法・罠カード
なし

黒木龍吾 LP5300
手札3枚
モンスター
カンカナカムイ
魔法・罠カード
セット
セット


 翻弄するかのような龍吾のプレイにレイは悔しそうにしつつ自分のターンを迎えた。

「まだ、僕は負けるわけにはいかないんだ! 僕のターン! ドロー!」

早乙女レイ
手札6枚→7枚

「……僕は手札から“乙女の投げキッス”を発動する! これにより1000ライフを払う事で“カンカナカムイ”に乙女カウンターを一つ乗せる!」
「何?」

 乙女カウンターを乗せるには“恋する乙女”が攻撃を受けないといけないがこれは1000のライフと引き換えに出来るカードだった。龍吾はそのカードの効果に眉を潜めた。

早乙女レイ
LP4600→3600

カンカナカムイ
乙女0→1

「そしてもう一度“キューピット・キス”を“恋する乙女”に装備する! さらに永続魔法“恋のメインストリート”を発動する! これで乙女カウンターが乗った相手モンスターとの戦闘で発生するダメージは半分になる。僕は“恋する乙女”で“カンカナカムイ”に攻撃!」
「リバースカードオープン! “崩壊の守護竜”! このカードの効果により“カンカナカムイ”をリリースしてお前の場の“恋する乙女”と“恋のメインストリート”を破壊する!」
「そんな!?」

 肉体が崩壊する中“カンカナカムイ”はレイのフィールドに突撃して大爆発を起こす。その爆発に巻き込まれて“恋する乙女”は悲鳴を上げながた燃えつきていった。
 自らのキーカードを破壊されたレイだがまだ龍吾の効果は続いていた。

「……そして手札の“闇黒の魔王ディアボロス”の効果発動。このカードは自分フィールドのモンスターがリリースされたときに手札・墓地から特殊召喚出来る。“闇黒の魔王ディアボロス”を特殊召喚」

闇黒の魔王ディアボロス(闇/ドラゴン族 星8)
ATK3000 DEF2000

「……僕はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー」

黒木龍吾
手札2枚→3枚

「……墓地の“ダークワイバーン”の効果を発動する。このカードは自分フィールドにレベル8以上のドラゴン族モンスターが存在する場合に特殊召喚する。甦れ、“ダークワイバーン”」

 再びよみがえる漆黒の飛竜。これですべてのモンスターのダメージが通ればレイを倒すことが出来るが龍吾はここまでの動きから油断はせずに確実に倒すためにプレイを続ける。

「俺は手札から“飢餓龍トラップ・イーター”を召喚する」

飢餓龍トラップ・イーター(闇/ドラゴン族 星3)
ATK? DEF?

「バトル。“闇黒の魔王ディアボロス”で直接攻撃」
「リバースカードオープン! “銀幕のミラーウォール”! このカードの効果により“闇黒の魔王ディアボロス”の攻撃力は半分になる!」
「無駄だ。俺は“飢餓龍トラップ・イーター”の効果を発動する。手札1枚をコストに“銀幕のミラーウォール”の発動を無効にして再びフィールドにセットする」
「なっ!?」
「そしてこのカードの効果で罠カードを無効にする度に“飢餓龍トラップ・イーター”の攻撃力・守備力は500ずつ上昇していく」

黒木龍吾
手札1枚→0枚

飢餓龍トラップ・イーター
ATK?→500
DEF?→500

「ならばもう1枚のリバースカードを発動する! “ドレインシールド”! これで“闇黒の魔王ディアボロス”の攻撃を無効にしてその攻撃力分僕のライフを回復する!」

早乙女レイ
LP3600→6600

「だがこれで防ぐ手段はなくなった。残りの伏せカードは“神の恵み”だと分かっているからな。俺は“ダークワイバーン”と“飢餓龍トラップ・イーター”で直接攻撃」
「くぅ!」

早乙女レイ
LP6600→5000→4500

「俺はこれでターンエンドだ」
「ならエンドフェイズに“神の恵み”を発動させてもらうよ」


早乙女レイ LP4500
手札1枚
モンスター
なし
魔法・罠カード
神の恵み(永続罠)
セット

黒木龍吾 LP5300
手札0枚
モンスター
闇黒の魔王ディアボロス
ダークワイバーン
飢餓龍トラップ・イーター
魔法・罠
セット


 デュエルが始まり6ターン目が経過した。龍吾がここまで長くデュエルをした事は見たことがなく、十代達は改めてレイの実力を思い知った。

「僕のターン、ドロー!」

早乙女レイ
手札1枚→2枚
LP4500→5000

「僕は手札から“救魔の標”を発動する! この効果により墓地の“恋する乙女”を手札に戻して守備表示で召喚する!」

 再び厄介なモンスターが蘇ったがこの時点でレイに勝てる可能性はなくなっていた。いくら戦闘破壊されないとはいえたかだか攻撃力400の“恋する乙女”では龍吾のフィールドに並んだモンスターを倒す事は難しかった。

「……僕は手札を1枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!」

黒木龍吾
手札0枚→1枚

「……俺はこのままバトルフェイズに入り“闇黒の魔王ディアボロス”で“恋する乙女”を攻撃する!」
「馬鹿な!? “恋する乙女”は戦闘では破壊されないし今は守備表示。そんな無駄な攻撃を……」
「リバースカードオープン! “竜の逆鱗”を発動する。このカードは自分フィールドのドラゴン族モンスターが戦闘で相手の守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を超えていればその数値分戦闘ダメージを与えられるカードだ」
「っ! そんな……!」

 ここにきての守りを崩す一手にレイは目を見開き驚愕する。そんなレイに構わずに“闇黒の魔王ディアボロス”は容赦なく攻撃を行った。

「うわぁぁぁぁっ!!」

早乙女レイ
LP5000→2300

「続けて“ダークワイバーン”で攻撃!」
「くぅっ!!!」

早乙女レイ
LP2300→1100

「そして“飢餓龍トラップ・イーター”で攻撃!」
「……!」

早乙女レイ
LP1100→900

 一気に4100ものライフを削られたが辛うじて900だけ残りレイは耐える事に成功した。そしてこれによりフィールドの3体には乙女カウンターが乗り、次のターンで“恋する乙女”で攻撃すればそのモンスターのコントロールを得る事が出来、場合によっては逆転する事も出来る。レイはそう考えたが龍吾は次のターンを回すほど甘くはなかった。

「速攻魔法“黒のトンネル-タイムスリップ”を発動する! 自分フィールドのモンスター1体をリリースし、そのモンスターと同じレベルの闇属性モンスター1体を特殊召喚する。
俺は“闇黒の魔王ディアボロス”をリリースし、再び“闇黒の魔王ディアボロス”を特殊召喚する!」
「これは……!」
「そう、速攻魔法の発動はバトルフェイズ中の事だ。つまり、特殊召喚された“闇黒の魔王ディアボロス”は再び攻撃が出来る。これで止めだ。“闇黒の魔王ディアボロス”で“恋する乙女”を攻撃!」
「う、うわぁぁぁぁっ!!!!!」

早乙女レイ
LP900→0

 容赦のない攻撃が炸裂し、レイは吹き飛ばされた。レイのライフが0になったことでデュエルは終了し、モンスター達は消えていった。それを確認した十代が若干ドン引きしながら二人に近寄る。

「り、龍吾お前容赦ないな……」
「ターンを渡したくはなかったからな」

 レイのデッキは速攻で勝負を決めなければ自分が不利に陥っていくデッキだ。ましてや龍吾は大ダメージを与えるために乙女カウンターが乗る事を承知で攻撃している。あそこで決めていなければまたモンスターが奪われていただろう。

「そんな……。僕は……」
「……そこから先はずっと見ていた奴に言ってくれ」
「え?」

 龍吾の言葉にレイが振り返れば崖上で見ていた4人がいつの間にか下に降りてきていた。その中の一人にレイのお目当ての人物である亮がいたことでレイの頬は赤く染まった。

「亮様……」
「ほら、出番よ」
「……」

 明日香にも背中を押され亮は困った顔をしながらレイの前に立った。

「ごめんなさい、亮様。昼間寮に忍び込んだのは僕だったんだ。十代と……龍吾さん?はそれを止めようとしただけだったんだ」
「……分かっている」
「亮様がデュエルアカデミアに進学なさってから会いたくて会いたくて、やっとここまでやってきたの」

 そう言うレイの顔はまさに乙女と呼ぶにふさわしく、何よりそんなレイの思いに残りの見学者である翔と隼人は感心し、十代はその執念に素直に関心し、龍吾は行動力の塊だと考えていた。

「龍吾、さんとのデュエルには負けたけど亮様への思いは誰にも負けない! 乙女の一途な思いを受け止めて!」

 レイは腕を広げながらそう言った。龍吾はその背中に“恋する乙女”を幻視し、十代はタジタジな亮を珍しそうに見ている。

「あなたの思いは素晴らしいけど相手が本当に思っていないとそれは好意の押し付けになってしまうわ。デュエルと同じように思いと思いが通じ合っていないと……」

 明日香はタジタジな様子の亮に変わりフォローするがこの中で唯一の女性の発言でレイの視線は鋭くなった。

「あなた、亮様の何なの!? まさか恋のライバル!?」
「え、えぇ? 違うわよ」
「落ち着け」

 うなりながらとびかかりそうになるレイを龍吾は頭を抑えつけて留める。明日香は困惑しつつやんわりと否定する。そんな様子のレイたちについに亮は解答をした。

「レイ、お前の気持ちは嬉しいが今の俺にはデュエルがすべてなんだ」
「亮様……」

 亮はそう言ってレイをフルと部屋に落ちていたレイの髪留めを渡した。

「レイ、故郷に帰るんだ」

 振られた事のショックで涙目になるレイに亮は非常とも取れる言葉で突き放すように言った。

「な!? そこまでする事はないだろう!?」
「そうだな。ここまでの腕があればアカデミアに在学する事は出来る。女子だからブルーの女子寮になるがな」

 十代と龍吾はフォローするが亮の次の言葉で理由が判明した。

「レイはまだ小学5年だ」
「……は?」
「小学……」
「5年……?」
「「「ええぇぇぇぇっ!??」」」

 まさかの年齢に事情を聞かされていた明日香以外の全員が驚愕した。レイも年齢を偽っていた事でアハハ、と苦笑いを浮かべている。

「小学、5年……。俺は、小学生に苦戦、してたのか……」

 そして、そんなレイとデュエルを行った龍吾はそれなりのショックを受けたようで普段無表情がデフォルトの龍吾が目を見開いて驚いており、珍しい光景となっていた。とは言え実際初の1000以上のダメージに8ターンまでデュエルが長引いたことなど龍吾がこのデュエルアカデミアに来てから初めての体験をした相手が小学生だと分かれば衝撃は大きいだろう。

「ごめんね。でも楽しいデュエルだったよ」
「……そうだな。俺も久しぶりに熱くなれた」

 そう言って龍吾は小さく笑った。それはどこか諦めや二度と戻らない喪失したものを思うような感情が込められていたが向けられたレイ以外でそれに気づく事は無かった。

「とりあえず今日はもう遅いし寝ようぜ。レッド寮は……、流石に無理だから明日香、悪いけど部屋に止めてくれるか?」
「十代達が部屋を渡して外で寝るという手もあるぞ」
「そ、それは勘弁……」

 龍吾の切り返しに十代は苦笑いを浮かべた。






 翌日、デュエルアカデミアと日本本土との間に出ている定期船にレイは乗っていた。そこには事情を知っていてなお送り出したある意味ではヤバいレイの両親も乗っており、迷惑をかけたことをお詫びしてレイを回収していた。

「来年小学校を卒業したら、また試験を受けて入りなおすからねー!」

 レイは手を振りながら見送りに来た龍吾たちにそう言っていた。そしてその相手が亮だと思っていたが当の本人は今年で卒業するためか気楽な様子だった。

「来年入学して丸藤先輩が卒業したと知ったらその先についていきそうだな」
「違いない。きっと最年少でプロデュエリストになりそうだよな!」

 今回の一連の流れでレイの行動力を知った龍吾と十代はそう言っているが次の一言で他人事ではなくなった。……龍吾が。

「待っててねー! 龍吾さまー!」
「……俺か?」
「あら、きっと龍吾のデュエルに惚れたんでしょ。だってあんなに苛烈にアタックしてたじゃない」
「それもそうだな。俺ですら容赦ないなって思ったし」
「女の子相手によくやるっスよ」
「しっかりと責任を取らないといけないんだな」
「俺は帰るがしっかりと見送ってやれ。泳いで戻ってこられても困るからな」

 気づけば標的となっていた龍吾は話についていけていない様子で困惑するがそんな彼を置いてみんな帰ってしまう。龍吾は終始困惑したままレイが乗った船が見えなくなるまで見送るのだった。
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