EP:10 宮廷騎士団 その①　作：暁

カツアゲ犯にユーリイットが絡まれていると、その間に妙に体のラインが出る細い鎧を身に纏った少女が颯爽と現れた。
黒髪のショートカット、しなやかな細い体つき、幼さが残りながらも精一杯威圧するように細められた猫目、綺麗な青い瞳と、一見しただけで惚れそうなほどの美少女だった。
突如邪魔が入った男は怪訝そうに少女を睨むが、胸元のペンダントを見ると目の色を変えた、かと思えば今度はあの奴隷商人たちのような下卑た笑みを浮かべた。

「あ…あんた宮廷騎士団の研修兵だな？」
「いかにも！私は宮廷騎士団研修兵、『アウェーリティア』だ！他人から金銭を巻き上げるなど言語道断！成敗してくれる！」

少女は声を張り上げ、ビシッと男を指差し睨みつける。可愛い。

（それにしても…『アウェーリティア』ってどっかで聞いた気がするな…）

たった今名乗った研修兵少女の名前に何か引っかかりを感じるが、思い出せない。
そんなことよりこの状況だ、と考えを改め前に目を向ける。
少女に指を指された男はニチャッとした気持ち悪い笑いを深くし、懐からディスクを構える。

「ああ、いいだろう。そいつは見逃す。俺とのデュエルに勝ったらの話だがな！」
「…いいだろう、受けて立ってやる！」

威勢良く声を張り上げだ彼女は鞘から剣を抜き、構える。デュエルディスクには様々な形状があるものだと今更思った。
しかし、こんな幼気な少女に助けてもらわなければいけないほど弱くはないし、何より負かした時に男は碌でもない要求をしてくるだろう、と考えたユーリイットは少女に声をかける。

「あの、何も僕のために戦わなくても…」
「…？心配してくれてるのかい？大丈夫さ、これはお姉さんの仕事なんだから。こんな奴に負けはしない。」

と言い、微笑んで優しく頭を撫でてきた。
その手から鎧越しに伝わる温もりは、妙に安心する心地よい温もりだった。
その温もりを感じると、何故だかこの人なら大丈夫だ、と思えてしまった。

「は…はい、では、気をつけて下さい。」
「ああ、ありがとう。」

頭から手を離され、少し名残惜しかった。
だが、思考を切り替え彼女の勝利を願うこととした。

「くく…準備はできたか？負けたらどうなるか分かってるよな？」
「ああ、覚悟の上だ。」

両者が向き合い、空気が固まる。
そして、戦いの火蓋が切って落とされた。

『決闘！』

カツアゲ犯
LP:8000 D:35 EX:15 H:5 墓:0 除:0 場:無し
アウェーリティア
LP:8000 D:35 EX:15 H:5 墓:0 除:0 場:無し

「先攻は俺が貰うぞ！フィールド魔法、《歯車街》！そして魔法カード、《古代の機械射出機》を発動！歯車街を破壊し、デッキから召喚条件を無視して《アンティーク・ギア》を特殊召喚する！現れろ、《古代の機械巨人》！そして破壊された歯車街の効果発動！デッキから《古代の機械熱核竜》を特殊召喚！そして《古代の機械飛竜》を召喚！効果で《古代の機械箱》を手札に加える。そして手札に加わった箱の効果で、デッキから《古代の歯車機械》を手札に加える！そして《古代の機械要塞》を発動し、ターンエンド！」

カツアゲ犯のデッキは《アンティーク・ギア》だ。
かなり前のカテゴリだが、何度も強化が施され、現在では融合召喚を軸にした最上級モンスターの大量展開からの攻撃中の魔法・罠発動制限などで妨害を縛る、超火力が持ち味のテーマだ。
幸い《古代の機械融合》は引いていなかったようだが、それでも攻撃力3000超えが2体、さらに《古代の機械要塞》によるチェーン制限と、中々に強力な布陣となっている。
崩すのはまだ容易だが、これが最高の盤面ではないと考えると背筋が凍る。と言ってもユーリイットの《青眼》なら《古代の機械混沌巨人》以外は《ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン》の攻撃力でねじ伏せられるが。

アウェーリティアも至って動揺する様子は見えない。となると、彼女もこの程度の盤面を崩せる程度の力はあるのだろう。

カツアゲ犯
LP:8000 D:31 EX:15 H:3 墓:2 除:0 場:《古代の機械巨人》 《古代の機械熱核竜》 《古代の機械飛竜》 《古代の機械要塞》

「私のターン、ドロー！魔法カード、《デステニー・ドロー》！《D-HEROディスクガイ》を捨て二枚ドロー！そして《フュージョン・デステニー》を発動！《D-HEROディアボリックガイ》と《E-HEROシャドー・ミスト》をデッキから墓地に送り、融合召喚！現れろ、《D-HEROデッドリーガイ》！」

アウェーリティアのデッキは《D-HERO》だ。
使ったことはないのであまり知らないが、下級D-HEROの効果でドローや展開などの補助からの《D-HERO Bloo－D》の召喚、《D-HEROドミネイトガイ》などの融合モンスターの展開など展開は多岐に渡る。
最大の強みは他の《HERO》テーマと組み合わせられるところだろう。
先程融合素材になったシャドー・ミストは《E-HERO》だが、HEROのサーチ効果を持つため融合軸のD-HEROに難なく組み込めるし、他にも《E-HEROソリッドマン》の展開補助、《E-HEROエアーマン》のサーチ、《V・HEROヴァイオン》の融合サポートなど、様々なHEROのいいとこ取りが出来るため、元が融合テーマで無くとも難なく融合を軸と出来る。
使いこなすのは難しいが、アウェーリティアはどうだろうか。

戦いはまだ続く。