Case23 時代遅れの　作：トマトところてん

　遊戯王の環境の歴史。多くのデュエリストが環境デッキを握り戦ってきたその歴史。その歴史に加われなかった者たちの、人間の弱さの物語。環境デッキに対する解答や問題に向き合うことなく逃げてきた者たち。
　けして環境を追うことだけが遊戯王をやってきた者たちではない。コレクションにゲートボールも。どこか自分が本当に真面目に取り組んでいるのかと後ろめたさのようなものを感じている。流行を追わないものも遊戯王の一部。デュエリストの端くれなのに。
　罪滅ぼし。贖罪に私は環境を語っているのだろうか。生まれ育った地元への愛のように子供の頃に触れたものには愛があるのだから。環境を観測していた。やたらと環境を語りたがるのにもわけがあるはずだ。

本編

　勝ちでしか輝けない選手に価値はない。相手を傷つけるお笑いはしない。
　(凄くストイックハゥフ。冷笑する奴だっているんじゃないか？)
　ティアラメンツハゥフニスはルルカロスの家のたたみの部屋でラジオを聴いていた。エニアクラフトというテーマが出て裏側表示にスポットライトが当たってお気に入りのキャラスリーブのみせあいっこから始まり自作のトークンカード、二つのEXモンスターゾーンの間に置くカード、先攻後攻マーカー、効果の使用済みマーカー、サイコロ、コイン、どのフェイズなのか示すフェイズマーカーに昔スマホが普及してなかった時の計算機や電卓などのアナログなものがルルカロスの家には揃っていた。
　(ルルカロスおばさんも昔は遊戯王してたのかな？　なつかしい。知らないのに。新しい。なんかカッコいい。不思議な感覚ハゥフ)
　よくわからないが魅力のようなものだった。平成レトロだとかの。
　シェイレーンとメイルゥがやってきた。シェイレーンは自身のラジオ番組のウィンタースペシャルウィークの企画を考えていた。おおよその企画はこうだ。視聴者プレゼントと高レアオークションごっこだ。五百円のクオカードを渡す感じで当選者の発表は発送をもって代えさせていただくというプレゼント企画と買い値をシェイレーンメイルゥハゥフニスの三人で競争して誰がプリシクをいくらまで出すかオークションごっこをする企画。お題に答えてメールフォームに送ってくれた人に遊戯王カードプレゼント。
　景品を何にするか、お題を何にするか考えていた。
　まずはお題ね。みんなにワクワクして楽しんで欲しいから、これを聞いたらワクワクするぞって言葉を募集しようかしら。今晩はカレーだよ。とか、宝くじ買ってきたぜ。とか、シェイレーンのプリシク当たったよ。とかね。みんなに募集してもらってみんなでワクワクしよう
　と、シェイレーン。メイルゥは、
　逆にかっこ良さそうにみえてダサい台詞はどうメルゥ？　俺のガンマンラインは300だ。とか、無敵の男(何も失うものがない)とかメルゥ
　ハゥフニスもそれに加わって
　自分の好きなもの三つ。あなたの三種の神器募集なんてどうハゥフ？
　三種の神器。焼きそばと遊戯王とスマホ。この作品だいたいこの三パターンしかない。ちなみに三種の神器とは剣と鏡とマガタマ。そして白黒テレビと冷蔵庫と洗濯機。3Cはカラーテレビ、クーラー、車カー。3Kはキツい汚い危険。今の時代に通用するかどうか。
　お題に答えた人への景品はシェイレーンとメイルゥとハゥフニスがそれぞれ選んだカードを限定カードセットでプレゼントすることになった。シェイレーンたちは悩んだ。ここでの限定アイテムが強すぎるのはあまりよくない。ということでシェイレーンは　月の書　。ハゥフニスは　神の警告　。メイルゥは　幽鬼うさぎ　を選んだ。
　長くなったが要はシェイレーンのラジオ番組にこれを聞いたらワクワクする言葉かかっこ良さそうにみえてダサい台詞か自分にとっての三種の神器を書いて番組にお便りを送るとシェイレーンたちが選んだ三枚が貰えるという企画になった。限定カードセットは透明なプラスチックのフィルムに包まれて大量にどっさりとダンボール箱に入っていた。ドヒャーとぶちまけて中身を確認するとバラバラになった束をまとめて片付けた。オークション企画ではシェイレーンのプリシクが出品となった。
　そして番組放送当日が訪れて、
　生放送でお送りしていますティアラメンツブルースタイル。スペシャルウィークプレゼント大放出。君のこれ聞いたらワクワクする言葉、かっこよく見えてダサい台詞、君にとっての三種の神器を教えて、どれかに答えて応募すると番組特製限定カードセットが貰えるかも。どしどし応募してね
　と伝えたところでオークションのコーナーが始まった。
　ハゥフニス、メイルゥの登場です
　とシェイレーンがマイクに向かって話すと
　よろしくメルゥ。
　よろしくハゥフ。
　と二人が出てきた。
　今回は私シェイレーンのプリシク一点にどれだけ買い値を出せるか三人で競います。お魚のせりやバナナのたたき売りのアレです。早い者勝ちです。では、よーいスタート
　とシェイレーンが合図を出すとオークションが始まった。まずメイルゥが人指し指を一本立てながら右手を挙げる。ディレクターの丁荒屋一平が進行役だ。
　おっメイルゥ、まずは千円からか？　それとも一万円か？
　と一平が聞くとメイルゥは宣言した。
　いや、一円メルゥ。
　おっ一円か。厳しいな。俺にはプリシクの価値が分からないからこのくらいか？
　んなわけないでしょ
　とシェイレーンは突っ込む。
　(ウソ。わたしのプリシク安すぎ)
　ハゥフニスが続けて二本の指を立ててピースして右手を挙げると一平はまた
　おっハゥフニスもしかして二円か？
　いや、かわいそうだから二千円にしといてやるハゥフ。
　おっそうか。さあこの二人をさしおいてシェイレーンは一体いくら出すのか？
　と一平が煽るがシェイレーンは
　じゃあまずは六千円で。
　と言うとそれを聞いたメイルゥはハッキリと宣言した。
　決まったメルゥ。僕はもう降りるメルゥ。
　メイルゥが残念そうに下を向いているのでシェイレーンは
　オークションを舐めないでよね。一円で落札しようと思ってたの？
　ここは潔く退くメルゥ。
　私もハゥフ。
　てやんでい決着だな。六千円勝者シェイレーンでい！
　と一平は宣言するがシェイレーンはつぶやく。
　いや、もっと欲しいって切実に必死になってくれないかしら。盛り上がらないじゃん。なんか私ダサい
　とシェイレーンが落ち込んでいると
　ま、プリシクレトロはどんどん価値が上がるハゥフ。新しいものはいつでも手に入るけど古いものは手に入らないハゥフ。気にするなハゥフ。
　作者がプリシクに興味がないんでしょ
　そうして
　ではエンディングです。ここまでのお相手はティアラメンツブルースタイル、シェイレーンとメイルゥとハゥフニスと一平でした。ばいばい

続く


　念願のゼンマイシャークを手に入れたぞ！

　ころしてでもうばいとる

　第一話Case1　と反対な事を書いてますがまあいいでしょう。環境を追って新しいもので遊ぶのもレトロで遊ぶのも良いでしょう