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ep1『序章』 作:イツとき
静かに発車を告げるベルの音が駅に響いた。乗り込んだ電車の扉が閉まり、ゆるやかに動き出す。肩にかけた荷物と共に席に腰を下ろし、窓越しに流れる景色をぼんやりと眺めていた。
瞳に映る景色は、未来的でありながらも古きを捨て去れないような独特の景観を持っている。高層ビル群が立ち並ぶ都市部や人工的な海上施設、それらをつないで海上を渡る懸垂式モノレールような革新的なインフラとわずかに残る自然や古い様式の家屋が共存する姿は災害後の発展の象徴なのだという。
日本ががかつてない災害を乗り越えてからすでに二十有余年。
かつての震源不明の大地震とそれに伴う大災害は、一瞬でこの国を飲み込んだ。巨大な津波、隆起する大地、燃え盛る炎――大都市が崩れ、海岸線が変わり、多くの人々が命を、あるいは行き場を失った。その様子はまるで映画や小説などのフィクションのようで、しかしゆるぎない現実だ。
以前、望月の家でかつての日本の地図を見たことがある。この国にあとどのくらい残っているだろう蔵の中で、記憶に蓋をするようにしまわれたそれには海に囲まれたいくつかの島国が描かれており、大地を割くような海岸線も陸地をつなぐように点在する人工島もない緑の多き姿だった。聞き覚えのない地名たちは俺に、この国から失われたものをまざまざと見せつけるようで幼い俺が盗み見たのはその時が最後だった。
当時の政府は強く企業と手を組み、"完全復興"を合言葉にこの国をかつての状態よりもさらに豊かにしようと動いた。民の生活をいち早く取り戻すためでもあったのだろうが、世界各国にも波及した災害の影響が収まり干渉を受ける前に国を立て直したかったというのが本音だったのだろう。結果としてこの国は驚くべきスピードで復興を遂げ、災害前よりもさらに活気に満た社会へと進化していた。
電車はゆっくりと海上モノレールの路線に入った。窓の外にはどこまでも広がる青い海と、それを渡る橋が目に飛び込んでくる。吊り型のモノレールは、まるで空中を滑るような感覚を与える。
新東京から出発しそろそろ東陽州に入るようだ、目的地の仙羽市まではようやく半分といったところか。
ほどよく混み合う車内では、スーツ姿のビジネスマンが旅行鞄から取り出した資料に目を通し、家族連れがスーツケースを傍らに談笑している。俺の隣の席に置かれた鞄の中には詰め込まれたいくつかの生活用品と数冊の本。これが家から持ち出したすべてだ。
「寮生活、か……」
ポツリとつぶやき大きく伸びをする。大きな変化を期待しているわけでも、生活に不安を感じるわけでもないが、望月の家を出られたことの実感が湧いてきたのかきたのか少し肩が軽くなる。
新しい日常。
日本が復興の最中、世界中である"異変"が観測される。
"異変"の象徴となったのが、人々の手に突然現れる"カード"だった。
前触れなく起こるその現象の解明に世界中が奔走したが、未だにその本質を掴むには至っていない。ただ一つ明らかなのは、この異変が災害のあとから生まれたということ。そしてその異変がもはや日常の一部となったということ。災害を乗り越えた人々はこの力を"新たな可能性"として受け入れ、文化や技術に組み込んでいったのだ。
景色の流れが次第に緩やかになる。中継地点である海上施設の途中駅で停車すると、一部乗客が乗り替わりまた少し車内が混雑する。
発車直前に唐突に声がする。
「ここ、いいですか?」
20代前半だろうか長く白い髪を揺らして若い女性が少し息の上がった透き通った声で尋ねる。
清潔感のある薄緑のワンピースが印象的で少し違和感を感じた。
俺は急いで鞄を足元によけるとどうぞと隣の席へ彼女を促す。
軽やかな足取りで隣の席に腰を下ろした彼女は短く感謝を告げると俺の顔を不思議そうに眺めると
「もしかして鉾星高校?」
ふいに話しかけられた。彼女は穏やかに少しうれしそうな笑顔を浮かべている。
「ええ、まあ……今年から。寮に入るので少し早めに」
彼女はうれしそうに目を輝かせ胸の前で手を合わせる
「まあ、そうなんですね!」
その様は先ほどまでの印象より幾分幼く見えた。
「あらごめんなさい、実は私も星章の卒業生なんです。なんだかうれしくて」
戸惑いが顔に出ていたのか、彼女は慌てて言葉を紡ぐ。
「初めまして私は白瀬四葉といいます」
そういって彼女―白瀬四葉は微笑む。
「イツキです、初めまして先輩」
先輩という言葉にどうやら気分を良くした様子だ。
意外な繋がりに少し驚きながらも、不思議と会話は続き四葉さんが通っていた当時のことをいろいろと聞かせてもらった。四葉さんは以外にも学生時代はやんちゃだったようでよく門限を破って寮から逃げ出していたそうだ。たまに帰りが見つかり説教を受けたこともあるが、抜け出す時に使っていたルートは終ぞバレなかったのだという。
時間は思ったより早く過ぎ電車は次の駅に到着しようとしていた。俺はかねてよりの違和感の正体について尋ねる。
「そういえば、四葉さんはどうしてここに?」
わかりやすく首をかしげる四葉さんをみて言葉を続ける
「四葉さんが乗ってきたのはさっきの駅ですよね、正直その恰好とは結びつかない場所じゃないですか?」
ちょうどつい先ほど出発した駅は海上モノレールの中継地点である海上施設に設置された駅だ。詳しくは知らないが併設されているのは発電所や航海管理のための管制室、関連企業の支社など出入りするにも入館証の要求されるような施設ばかりだ。おおよそ四葉さんのような女性がワンピースでふらっと出入りするような場所があるとは思えない。
四葉さんは少し心外そうな表情を作るとすぐのまた笑みを浮かべる
「そんなに意外かな?私こう見えてもそっち方面では結構すごいんだけど」
本当に意外だった。しかし様子を見るに嘘をついているようにも見えない。
「なぁにそのリアクション、さすがにちょっと傷つくよ!」
俺はよほど驚いた顔でもしていたのか、四葉さんは悲しそうに抗議の目を向ける。
「すいません……でもまさか―」
その時、不意に車内の明かりが消え、電車が急停止する。咄嗟に衝撃に備え姿勢を低くする。
電車が完全に停止したことを確認すると周囲を確認しながら四葉さんに声をかける。どうやら四葉さんも無事なようだ。車内には混乱する声が充満する。窓の外を見るに駅の中にはすでに到着しているようだったが駅構内も停電しているようで真っ暗だった。かろうじて見て取れる様子では停車予定のホームまではまだ少しあるくらいの位置で停車しているらしい。
「停電……?」
四葉さんが眉をひそめる。おかしいそろそろ非常灯なりアナウンスなりがあるべきだが一向にその気配がない、乗客たちのざわめきがだんだんと大きくなる
「イツキ君、ちょっと待ってて」
四葉が席を立とうとしたその時だった。車両のドアが勢いよく開き、数人の黒服の男たちが乗り込んできた。
「全員動くな、おとなしくしていれば危害は加えない」
1人が冷酷な声で言い放つ。
車内にどよめきが満ちる
「何者だ……?」
姿勢を低く、たまま四葉の背に隠すように前に出て座席の陰から様子を伺う。
数は三人、おそらく暗視ゴーグルだろうものをしてあたりを見回しながら何かしゃべっている。
俺の肩に四葉さんが手をかけわずかな声で囁く
「私が次肩をたたいたら目をつぶって反対のドアに走って」
いきなり何をと思いはしたが、尋常でない様子に小さく頷く。
肩に置かれた四葉さんの手に感覚を集中しその瞬間を待った。
!
男たちの視線がすべてこちらから外れた瞬間肩が叩かれる。
何かが転がる音とともに四葉さんの手を引き俺は後方へ走り出す。
数瞬の後に背後で閃光とともに悲鳴が響いた。
電車の連結部分からホームに降り立つ。駅構内にはわずかな人の気配もなく、窓もすべてにシャッターが下りていた。異様な空間に不気味な緊張感が走る。
「こっちに。」
四葉は冷静な口調で言いながら、手でイツキを促す。彼女の足取りは軽やかで迷いがない。
「…この状況でなんでそんなに、そもそもさっきのは」
俺は肩に下げた荷物を背負い直し、四葉を追いながら問いかけた。
「巻き込んでしまってごめんなさい……でも今は少しでも離れないと」
四葉さんの言葉に、俺はわずかに眉をひそめた。
構内の階段を駆け上がり、薄明かりに照らされる連絡通路へと逃げ込む。停電の影響で動いていないエスカレーターや、ひっそりと静まり返る売店のシャッターが、普段の賑やかな駅とはまるで別世界のようだ。
「奴らが何者か知ってるんですか」
イツキは後ろを警戒しながら問いかける。
「知ってる」
短く切った四葉さんの言葉にはどこか覚悟がにじむ。
「これからどうしますか?」
知っていて隠すということは、この状況で知ったところで意味はないということだろう。なら今は必要なことだけ考えろ、思考を冷静に保て。
自分に言い聞かせ頭を切り替える。
「時間さえ稼げればいずれ警察とか外から助けが来るはずだから、彼らも逃げるしかなくなるはずだけど……」
四葉さんの言葉が詰まる、すぐに俺もその意味に気づいた。
「四葉さん、今回みたなことは初めてではないんですよね」
俺の問いに四葉さんはうなずく。
駅の中には停車した車両内の乗客を除けば黒服のやつらと俺たちしかいない、状況を見るにこれは確実だろう。なら奴らは今の状況のまま電車が来るのを待ち構えていたことになる。外部から助けが来た時点で終わりな奴らにそんなことが可能なのか。可能だとしてこんな大掛かりな事件だ、すでに助けがきてしかるべきじゃないか。
四葉さんと顔を見合わせる。結論は同じようだ。先に俺が口を開く
「おそらく、助けは来ない……」
「えぇ、私たちで脱出するしかないみたい」
遠くから不規則な足音が近づく、四葉さん靴を脱ぎ慎重に歩みを進める。俺もそれに倣い後を追った。
エントランスホールは非常灯の薄明かりに包まれ、重たい静けさが漂っていた。立体構造のモノレール駅から外に出るなら確実にここを通らなければならない。それは待ち伏せていた奴らの方がわかっているだろう。上層階から様子を伺う。
「そろそろ観念してもらおう、白瀬四葉」
冷たく鋭い声が響く。エントランス中央の時計台の前に黒服の男姿を現す。
「お前ももうわかっているだろう。逃げても無駄ださっさと姿を見せろ」
どうやら男は俺たちの場所まではわかっていないようだ。ならまだ勝機はある。だが俺の考えを裏切るように四葉さんは立ち上がり階段に向かって歩き出す。
「四葉さん、何を……!」
呼び止めようとしたが、彼女は振り返らなかった。彼女は自らその姿を男にさらす。
「そのようね……まさか、私の力なしにそこまで再現できるとは思わなかったわ。」
苦し気な顔浮かべた四葉さんの言葉は不快感と後悔が滲んでいた。
「四葉、俺と来い……目的のためにはお前が必要だ」
男の言葉に四葉さんの顔が曇る
「あなた達は、まだ罪を重ねると……!」
「その罪に報いるためだ」
「報いる……?それが贖罪になるとでもいうつもり!」
熱を帯びてゆく四葉さんの声とは対称的に男は冷たい声で続ける
「だったら、お前はどうだ。そうやって罪から逃げ続けることが、お前の贖罪だとでも言うつもりか」
その言葉に四葉さんが声を詰まらせる。
「なら今ここで……!」
四葉さんがデッキを掲げる
「できると思っているのか……今のお前に」
「!……それでも――!」
「待て」
俺は四葉さんの前に立ちはだかった。
四葉さんが驚いたように俺を見つめる。
「邪魔だ、部外者は引っ込んでいろ」
冷たく突き刺さるような男の言葉に屈することなく、一歩ずつ確かな足取りで階段を下りる。
「聞こえなかったか……用があるのはその女だけだ、お前には関係のないことだろう」
「ああ、お前の言う罪や目的なんて、俺には関係もなければ聞く気もない。」
そう、ただ巻き込まれただけの、ただの部外者の俺にはこんなことをする必要も、責任もない。
それでも――
胸の奥で何かが熱く燃え上がる。
握りしめたデッキから微かに熱を帯びる感覚がした。
「それでも――俺は、今ここにいる。」
男の冷たい瞳が微かに揺らいで見えた。
「いいだろう……ならお前から相手をしてやる」
男がカードを構えた瞬間、光が床に集まりエントランスの中央にデュエルフィールドが展開される。
「来い。その覚悟がどれほどのもか、俺に見せてみろ」
男が無機質な冷たい声とともに、デュエルディスクが作動する音が響いた。
「イツキ君、どうして……」
駆け寄ってきた四葉さんが不安げな声で訊いた。
「勝手なことをしてすみません。それでも……きっと、俺がここにいることには意味があると思うんです。だから……」
俺は正面から、覚悟を伝えるように四葉さんの瞳を見つめる。
四葉さんは小さく頷き、俺にデュエルディスクを手渡す。
男の方へ向き直ると深く息を吸い込み、俺もディスクを構えた。
「行くぞ」
二人のライフポイントが表示され、エントランスの静けさは一瞬で熱気に包まれた。
「デュエル!!」
DUEL START
Unknown VS Itsuki
TURN1:Unknown
「先攻はこちらだ。俺はD.Nightmare(デッドリーナイトメア)マリスを召喚、その効果により俺のフィールドにD.Nightmareトークンを特殊召喚。」
黒い霧があふれ出す中から、丸みを帯びた黒い瘴気の塊が姿を現す。それは灰色の外套をまとい、亡霊のような不気味な存在感を放っている。顔の部分には白い仮面がつけられ、仮面には目のような二つの穴がぽっかりと空いているだけだ。
マリスと呼ばれたその亡霊が、静かに地面に手を潜り込ませると、灰色の麻布に鎖を巻き付けてしばりつけられた、自身と同等の大きさの塊をゆっくりと引き抜く。
D.Nightmareマリス
闇・星4 アンデット族 ATK800
D.Nightmareトークン
闇・星2 アンデット族 ATK500
「さらにD.Nightmareグリーフの効果、フィールドにD.Nightmareトークンが存在する場合、手札のこのカードを特殊召喚する。」
黒い霧がたちこめ再び亡霊が姿を現す。今度の亡霊は紫色の仮面をつけており、仮面には下弦の半月を模したペイントが施され、それがまるで冷笑を浮かべているかのような表情を形作っている。
D.Nightmareグリーフ
闇・星4 アンデット族 ATK500
「続けてD.Nightmareドレッドの効果。フィールドのD.Nightmareをリリースし手札・墓地から特殊召喚できる。」
D.Nightmareトークンの影がじわじわと広がり、その中から牙の生えた巨大な口が現れる。その口は、不気味に開いて目の前のトークンを飲み込むと、徐々に姿へと形を変えていく。新たに現れた亡霊は黒く染まった仮面をつけており、仮面の口元には血の滴る穴だけが開いている。
D.Nightmareドレッド
闇・星4 アンデット族 ATK700
「D.Nightmareトークンはフィールドを離れたとき相手に300ポイントのダメージを与える。」
Itsuki
LP4000→3700
飲み込まれたトークンが霊魂へと姿を変え、薄紫色の輝きを放ちながら俺の体を貫いて通り抜けていく。
「ぐっ……!」
うめき声が漏れる、なんだこの痛みは。
「それこそが俺たちの......そこの女の罪の代償だ」
男は四葉さんを睨みつけ吐き捨てるように言う
「罪だと......?」
俺の言葉に男は答えない。
「レベル4、D.Nightmareマリス・グリーフ・ドレッドの3体でエクシーズ召喚......現れろD.Nightmareイドラ・フォーリ」
三体の亡霊が黒い霧の中で溶け合い、一つの異形の体を形成する。その姿はねじれたパーツが絡み合い、不気味な存在を形作っている。
頭部に目はなく、紫色の輝きを放つ巨大な紋章が浮かび上がり、脈動しながら威圧感を漂わせる。
胴体には裂け目のような模様が走り、そこから無数の黒い影が手の形を取って揺れ動いている。それらは命を持つかのように蠢き、見る者を誘うような不気味な動きを見せる。
D.Nightmareイドラ・フォーリ
闇・ランク4 アンデット族 ATK2300
「イドラ・フォーリの効果発動。X素材を1つ使い、デッキの上からカードを2枚墓地に送る。」
→D.Nightmareソロウ、悪夢再び
「モンスターが送られたことによって俺のフィールドに新たに2体、D.Nightmareトークンが生まれる。」
イドラ・フォーリはその体からトークンを抜き出し、丁寧に並べる。
D.Nightmareトークン
DEF0
「続けて魔法が送られた際の効果だ、墓地のD.Nightmareを手札に加える。
加えるのはイドラ・フォーリの吐き出したマリスだ。」
男が手を伸ばすとイドラ・フォーリは無数の腕の一本を伸ばし恭しくカードを手渡す。
「さらに墓地のソロウの効果。D.Nightmareの効果で墓地に送られたことにより、フィールドのD.Nightmareをリリースしデッキからナイトメア魔法を手札に加える。リリースするのはD.Nightmareトークン、ダメージも受けてもらう。」
トークンが崩れ再び霊魂が俺の体を貫く
Itsuki
LP3700→3400
「ナイトメア・スケア・クローを手札に加え、カードを1枚伏せターンエンドだ。」
TURN2:Itsuki
「俺のターン、ドロー。俺は征従士ブランシェを召喚。」
光の輪から剣と拳銃を携えた軽装の銃士が降り立つ。柔らかな輝きを放つ銀髪は丸みを帯びた髪型で、聡明な印象を与える青年だ。
征従士 ブランシェ
炎・星4 戦士族 ATK1500
「召喚時の効果により手札を1枚墓地に送りデッキから魔法カード、征戦哨戒(コンクエスタ・リコン)を手札に加え、
さらに効果発動、1ターンに1度メインフェイズに手札の征銃士モンスターを召喚できる。
来い、征銃士 シャルル」
ブランシェが剣を胸の前に掲げると、炎が立ち上り、その炎を切り裂いて銃士が現れる。無造作に整えられたワインレッドの長髪が風に揺れ、真紅のマントが華やかに靡く。
翼の意匠が施された剣は炎の中できらめき、肩に担がれたマスケット銃がその戦士の姿を際立たせる。自信に満ちた笑みを浮かべた青年の瞳には力強い意思が宿る。
征銃士 シャルル
炎・星4 戦士族 ATK1800
「シャルルの効果、手札を1枚捨てデッキから征十字砲火(コンクエスタ・クロスファイア)を手札に加える。
そして征戦哨戒発動、自分フィールドに征銃士または征銃士モンスターのカード名の記されたモンスターがいる時、相手の魔法・罠カード1枚を選んで破壊する。」
ブランシェが銃を構え男の場の伏せカードを打ち抜く。
破壊された通常罠ナイトメア・パラソムニアが墓地へ送られる
「行くぞ、バトルフェイズ
征銃士シャルルでイドラ・フォーリを攻撃」
シャルルがイドラ・フォーリに迫る。イドラ・フォーリの無数の手が襲うがそれを掻い潜り懐へと迫る。
「この瞬間シャルルの効果発動、自信が攻撃した相手モンスターの攻撃力を600ダウンする。」
シャルルが銃を放つと銃弾が突き刺さりイドラ・フォーリが一瞬ひるむ。
D.Nightmareイドラ・フォーリ
ATK2300→1700
「これで攻撃力はこちらが上だ」
シャルルは素早く飛び上がり、空中で旋回するように姿勢を整え、一閃。剣の刃が頭部の紋章に突き刺さりイドラ・フォーリの体が爆ぜる。
Unknown
LP4000→3900
「続けてブランシェでトークンを攻撃」
Itsuki
LP3400→3100
「痛みを覚悟で破壊したか。」
「お前のターンになればどうせ同じことだ、わざわざ残してやるほど甘くはないさ。
それにこの程度の痛み、わかってさえいれば大したものじゃない」
男は一瞬顔をゆがませ俺に問う。
「お前は......そうまでしてなぜ戦う。」
四葉さんに視線を動かし続ける
「その痛みは本来そこの女が背負うべき代償だ。それをたまたま居合わせただけのお前が」
「理由なら言ったはずだ。」
男の言葉を断ち切る。
「カードを1枚伏せターンエンド」
TURN3:Unknown
「あくまで戦うというのなら、切り伏せるだけだ。
俺のターン、ドロー。D.Nightmareマリスを召喚し効果でD.Nightmareトークンを特殊召喚。」
D.Nightmareマリス
ATK800
D.Nightmareトークン
ATK500
「墓地のD.Nightmareドレッドの効果によりD.Nightmareトークンをリリースし、自身を特殊召喚する。」
D.Nightmareドレッド
ATK700
Itsuki
LP3100→2800
1ターン目の光景が繰り返される。
「この瞬間自分フィールドのD.Nightmareがリリースされたことで手札のD.Nightmareレイジの効果発動、このカードを特殊召喚。」
霧の中から、これまでよりも少し大きな亡霊が現れる。その仮面には血のように赤い色が塗られ、鬼の形相が力強く描かれている
D.Nightmareレイジ
星4・闇 アンデット族 ATK1000
これで男の場にまた三体のD.Nightmareが揃った......
「D.Nightmareレイジ・マリス・ドレッドの3体でエクシーズ召喚
現れろ、D.Nightmare イドラ・トリプス」
亡霊たちがまた新たな姿を形成する。その姿は黒騎士のようで、漆黒の馬に跨り手には大剣を携える。蹄の音が空気を震わせるたびに周囲の霧が揺れ、刃の先端には闇の気配が漂う。
顔を覆うには無数の目のような紋様が浮かび、見る者を圧倒する視線を送る。
D.Nightmareイドラ・トリプス
闇・ランク4 アンデット族 ATK2700
「手札より永続魔法ナイトメア・スケア・クローを発動。さらに墓地のナイトメア・パラソムニアの効果、このカードと墓地のD.Nightmareグリーフをゲームから除外し、自分フィールドにD.Nightmareトークン2体を特殊召喚する。」
D.Nightmareトークン
DEF0
新たに特殊召喚されたトークンたちは十字架につるされるように縛り付けられていた。
「ナイトメア・スケア・クローの効果によって、D.Nightmareトークンが存在する限りそのトークンと同じ縦列の魔法・罠の効果は無効となる。」
当然D.Nightmareトークンの内1体は伏せられた征十字砲火の正面に特殊召喚されている。
「次はこちらから行くぞ。D.Nightmareイドラ・トリプス、征銃士シャルルに攻撃」
馬を駆る異形の黒騎士は剣を構えるとそのまま力任せに振り下ろす。
剣を受けたシャルルは霧に包まれ姿を消す。
イドラ・トリプスが剣払うと黒い瘴気が俺の襲った。
Itsuki
LP2800→1900
「ぐぁっ......!」
先ほどまでとは比較にならない衝撃が襲う。
数値の大小ではない、明確な意志を持った力。その痛みだった。
「征従士ブランシェの効果......発動!」
痛みを抑えながら吐き出した俺の言葉を男は無慈悲に切り裂く
「無駄だ。イドラ・トリプスの効果発動。素材からマリスを取り除きD.Nightmareトークン1体をリリースする。そしてリリースした数まで相手の場のモンスターを対象にその効果を無効にする......俺は征従士ブランシェを選択する」
イドラ・トリプスがトークンの1体を切捨てるとその剣に瘴気が巻き付く。
銃を宙に掲げたブランシェに向けて剣を振るうと、瘴気はブランシェを取り巻き膝をつかせる。
「この効果はイドラ・トリプスが存在する限り消えることはない。そしてリリースされたD.Nightmareトークンのダメージだ」
Itsuki
LP1900→1600
「っ……」
とどめを刺すように襲ってきた痛みに俺は片膝をついた。
「ターンエンドだ」
TURN4:Itsuki
身体が思うように動かない、こんなの大した痛みじゃないはずだ。
「痛みで立ち上がれないか」
立て、カードを引け
男の声は淡々と流れ続ける。
「お前は十分やった」
身体に流れる血が熱い
「サレンダーしろ」
うまく息が吸えない
「これ以上傷つくことに何の意味がある」
思考が乱れる
「その女には守られるほどの――」
「......うるさい」
力の入らない腕が糸にひかれる様にデッキへとのびる
「守らなきゃ......いけないんだ」
勝手に口が言葉を紡ぐ、ふれたカードが熱い
「俺のターン、ドロー!!」
引き抜いたカードに記された名前は――
「墓地の征戦哨戒を除外して効果発動、墓地から征銃士シャルルを手札に加え、召喚!」
征銃士シャルル
ATK1800
「そして、手札から魔法カード発動――”カース・マキナ”!!」
発動と同時に俺の右腕から突き破るようにして何輪かの花が咲く、それは血を吸い上げたかのような深紅の彼岸花だった。
場の空気が一瞬、凍り付いたのがわかった。それ破ったのは男の声。
表情のなかった男がまるでおぞましいものを見るかのような目で叫ぶ、その視線の先は。
「白瀬四葉!!」
男は声を荒げる、およそこれまでの男の印象からは想像しえないように。
「何を考えている、どうしてそんなことができる!貴様はまた、そうやって巻き込むというのか!」
四葉さんは答えない。ただ居心地の悪そうに腕を抱いて目をそらすだけだった。
「カース・マキナの効果!」
四葉さんに注がれていた男の視線が向き直る
「ライフを半分支払い、自分フィールドのモンスターを墓地に送る。俺が墓地に送るのは征銃士シャルル」
Itsuki
LP1600→800
腕の彼岸花が赤い粒子となって飛んで行きシャルルを包む。
その体が赤い光の柱となって上方へと伸び、その先で大きな光の環を形成した。
環のから光があふれ、そして円盤状の巨大な機械が光の中から降りてくる。
「これが、マキナ......」
完全に姿を現した神々しいその機械に男が畏怖の声をもらした。
継ぎ目の見えない巨大な円盤の中央は何かのゲートのようなもで固く閉ざされている。
「マキナの効果により墓地に送ったモンスターの攻撃力の合計以下の、攻撃力を持つシンクロモンスターをエクストラデッキからシンクロ召喚する」
俺の言葉に反応するようにマキナとよばれたその機械のゲートがゆっくりと音を立て開く――
しかしそれは不快な音とともに動きを止めわずかな隙間を作るにとどまった。
そのわずかな隙間から黒い泥のようなものがあふれ出し、地面に音を立てて落ちると大きな泥濘を作り出す。
「現れよ――ディアリクシア―アシェス・アルマ」
泥の中から腕が這い出す。鋭い爪と固い鱗に覆われた腕だ。
這い出た腕が地面に爪を突き立てると、泥の中からゆっくりとその本体が姿を現す。
赤褐色の鱗に覆われた大小二対四つ腕の蜥蜴のような竜のような怪物だった。
怪物が雄たけびを上げると、その腕は燃焼した炭のように内側から発光し周囲を熱風が吹き抜けた。
ディアリクシア―アシェス・アルマ
炎・星9 爬虫類族 ATK1200
俺は知らない。こんなモンスターもカース・マキナなんてカードも。
だがそんな俺の思考をよそに、体は言葉を紡ぎ続ける。
「アシェス・アルマの効果発動!このカードのシンクロ召喚成功時自分のライフを4000まで回復し、その分このカードの攻撃力を上昇する。」
Itsuki
LP800→4000
ディアリクシア―アシェス・アルマ
ATK1200→4600
「アシェス・アルマでイドラ・トリプスを攻撃!」
アシェス・アルマがその四つ腕を地面に突き立てるとその巨体を大きくのけぞらせる。
胸から首掛けてが眩く赤熱する。周囲を温度が急激に上昇した。
「無駄だ。イドラ・トリプスの効果、D.Nightmareトークン1体をリリースしアシェス・アルマの効果を無効にする」
ディアリクシア―アシェス・アルマ
ATK4600→1200
Itsuki
LP4000→3700
アシェス・アルマの攻撃は止まらない、ため込んだ熱をイドラ・トリプスめがけて吐き出す。
イドラ・トリプスは真っ向からその剣で受け止め、アシェス・アルマの首へと駆ける。
「消え失せろ、マキナの傀儡」
瞬間、思考が晴れた。宙を漂っていたようだった俺の意識が引き戻される。
「この瞬間罠カード発動!征十字砲火」
熱線の陰からブランシェが姿を現しイドラ・トリプスに斬りかかる。
「このカードは自分フィールドの炎属性モンスターが相手モンスターと戦闘行う場合に発動できる。このターンの間その相手モンスター攻撃力を自分の他のモンスター1体の攻撃力分だけダウンする!」
D.Nightmareイドラ・トリプス
ATK2700→1200
ブランシェの剣を受けたイドラ・トリプスは態勢が崩れ熱線の直撃を食らうが、寸前まで迫っていたアシェス・アルマの首に大剣で横からの一撃を浴びせる。
熱線の途切れたアシェス・アルマはそのままイドラ・トリプスに食らいつき、イドラ・トリプスもまたその首に剣を突き立て2体が同時に爆ぜる。
「墓地のイドラ・フォーリの効果、D.Nightmareエクシーズが破壊されたときそのモンスターを素材として蘇る」
D.Nightmareイドラ・フォーリ
ATK2300
「こちらもイドラ・トリプスの消滅により、復活したブランシェの効果!自分フィールドの炎属性モンスターが戦闘・効果で破壊された場合、手札・墓地から征銃士シャルルを特殊召喚する。」
ブランシェがその拳銃を宙へ放つと炎が降り注ぐ。
「来てくれシャルル!」
炎の中より颯爽とシャルルが現れる。
征銃士シャルル
ATK1800
「どこかで見た光景だな」
対峙するシャルルとイドラ・フォーリ。2ターン目の同じこのカードがこの勝負決める。
「シャルルでイドラ・フォーリを攻撃!」
銃を放ち一気に距離を詰める
D.Nightmareイドラ・フォーリ
ATK2300→1700
「さらに墓地の征十字砲火の効果発動!このカードをゲームから除外し征銃士1体は、このターンの間戦闘で破壊し墓地へ送ったモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える効果を持つ」
シャルルはイドラ・フォーリを切り伏せ、そのまま銃を男に向ける
Unknown
LP3900→3800
「今までお返しだ」
シャルルの銃が火を噴き男を襲う
Unknown
LP3800→1500
「っ......!」
さしもの男も後方へと数歩よろけて片膝をつく
「これで終わりだ......ブランシェでダイレクトアタック!」
男を見下ろすブランシェにシャルルが頷きその剣を振り下ろす
彼なりの意地かそれとも罪への贖罪なのだろうか、男は声を上げなかった。
Unknown
LP1500→0
男のライフが0を刻むと同時にデュエルフィールドを形成していた光が霧散していく。
「立て、お前に聞きたいことが山ほどある」
四葉さんを追う理由、デュエル中の痛み、罪、そして――
俺は手元のカードを見つめる。
カース・マキナ
いつの間にか俺のデッキにあった謎のカード。このカード見た途端に男の態度が急変した。
「そうやって巻き込むというのか」
男の言葉を反芻する。
これが得体のしれないものなのは間違いないだろう。このカードを引く直前、俺に起きたことからもそれは明らかだ。
四葉さんにも聞かなければならないことがあるが......デュエル中のあの態度が気がかりだ。真正面から聞いたところで正直に答えるとは思えない。
なら、まずはこの男から情報を引き出す。
「こた、えて......やっても、いいが」
息も絶え絶えながら男はよろよろと立ち上がる。
「悪いが......そんな時間は、はぁ......ないようだ」
視界が歪む。
いや、歪んでいるのは駅の方だ。
「なにが......」
「その女を捕らえるために、あの電車の乗客だけを別の空間に隔離していた。だが俺の敗北をきっかけにその崩壊が始まっている」
口を挟もうとした俺を男が手で制す。
「安心しろ、空間が崩れればお前らは勝手に元に戻る。
それより時間がない、一つだけ忠告しといてやる。」
男は俺の手元を指さす。
「そのカードのことは決して他言するな。お前の身を守るためだ」
その言葉に不思議と敵意や害意は感じなかった。
空間が一度大きく揺れた。景色が次第に色を失くしていく。
どうやらこの空間が終わるようだ。
「イツキ君、とりあえずここを離れましょう。人目につかない場所に移動しないと」
四葉さんと走り出そうとしたところで、俺は崩れ落ちる。
デュエルのダメージか、マキナとかいうカードを使った反動か体に力が入らない。四葉さんが心配そうに呼びかける声が遠くに聞こえる中、俺の意識は闇に閉ざされていく。
次に目を開けると、そこは人々であふれる駅構内だった。
人のざわめき、警察無線の声、遠くで聞こえる電車のアナウンスが耳に飛び込んでくる。
俺はゆっくりと身を起こし、額を押さえる。そこに警察官が声をかけてきた。
「君、大丈夫か?倒れているところを見つけたんだが……何があったか覚えてる?」
俺は答えようとしてふと周囲を見回す。
「……若い女性が、いなかったですか?一緒に、白い髪の」
警察官は首をかしげる。
「いや、見当たらなかったが……君は、階段の下でひとり倒れているところを見つけて」
その言葉を聞いた俺は思わず息を飲む。
「そう、ですか」
おそらく四葉さんは俺を運んで、誰にも気づかれないように姿をくらました。
「とりあえず意識ははっきりしてそうでよかったよ。でも一応さ、検査しとかないとだから一度近くの病院まで送らせてよ。それでそこでちょっと話を聞きたいんだ」
警察の案内に従い、俺は駅を後にした。
幸いにも検査の結果に異常はなく、入院の必要はないとのことだった。
そののちに警察から事情聴取を受けたが、あの空間であったことを話す気にはなれず、どう説明するべきかもわからなかった俺は適当に話を合わせ解放された。
だいぶ時間をとられてしまったが急げば夜までには仙羽市に入れるだろう。
俺は頭の中をめぐる問いを振り払うように道を急いだ。
瞳に映る景色は、未来的でありながらも古きを捨て去れないような独特の景観を持っている。高層ビル群が立ち並ぶ都市部や人工的な海上施設、それらをつないで海上を渡る懸垂式モノレールような革新的なインフラとわずかに残る自然や古い様式の家屋が共存する姿は災害後の発展の象徴なのだという。
日本ががかつてない災害を乗り越えてからすでに二十有余年。
かつての震源不明の大地震とそれに伴う大災害は、一瞬でこの国を飲み込んだ。巨大な津波、隆起する大地、燃え盛る炎――大都市が崩れ、海岸線が変わり、多くの人々が命を、あるいは行き場を失った。その様子はまるで映画や小説などのフィクションのようで、しかしゆるぎない現実だ。
以前、望月の家でかつての日本の地図を見たことがある。この国にあとどのくらい残っているだろう蔵の中で、記憶に蓋をするようにしまわれたそれには海に囲まれたいくつかの島国が描かれており、大地を割くような海岸線も陸地をつなぐように点在する人工島もない緑の多き姿だった。聞き覚えのない地名たちは俺に、この国から失われたものをまざまざと見せつけるようで幼い俺が盗み見たのはその時が最後だった。
当時の政府は強く企業と手を組み、"完全復興"を合言葉にこの国をかつての状態よりもさらに豊かにしようと動いた。民の生活をいち早く取り戻すためでもあったのだろうが、世界各国にも波及した災害の影響が収まり干渉を受ける前に国を立て直したかったというのが本音だったのだろう。結果としてこの国は驚くべきスピードで復興を遂げ、災害前よりもさらに活気に満た社会へと進化していた。
電車はゆっくりと海上モノレールの路線に入った。窓の外にはどこまでも広がる青い海と、それを渡る橋が目に飛び込んでくる。吊り型のモノレールは、まるで空中を滑るような感覚を与える。
新東京から出発しそろそろ東陽州に入るようだ、目的地の仙羽市まではようやく半分といったところか。
ほどよく混み合う車内では、スーツ姿のビジネスマンが旅行鞄から取り出した資料に目を通し、家族連れがスーツケースを傍らに談笑している。俺の隣の席に置かれた鞄の中には詰め込まれたいくつかの生活用品と数冊の本。これが家から持ち出したすべてだ。
「寮生活、か……」
ポツリとつぶやき大きく伸びをする。大きな変化を期待しているわけでも、生活に不安を感じるわけでもないが、望月の家を出られたことの実感が湧いてきたのかきたのか少し肩が軽くなる。
新しい日常。
日本が復興の最中、世界中である"異変"が観測される。
"異変"の象徴となったのが、人々の手に突然現れる"カード"だった。
前触れなく起こるその現象の解明に世界中が奔走したが、未だにその本質を掴むには至っていない。ただ一つ明らかなのは、この異変が災害のあとから生まれたということ。そしてその異変がもはや日常の一部となったということ。災害を乗り越えた人々はこの力を"新たな可能性"として受け入れ、文化や技術に組み込んでいったのだ。
景色の流れが次第に緩やかになる。中継地点である海上施設の途中駅で停車すると、一部乗客が乗り替わりまた少し車内が混雑する。
発車直前に唐突に声がする。
「ここ、いいですか?」
20代前半だろうか長く白い髪を揺らして若い女性が少し息の上がった透き通った声で尋ねる。
清潔感のある薄緑のワンピースが印象的で少し違和感を感じた。
俺は急いで鞄を足元によけるとどうぞと隣の席へ彼女を促す。
軽やかな足取りで隣の席に腰を下ろした彼女は短く感謝を告げると俺の顔を不思議そうに眺めると
「もしかして鉾星高校?」
ふいに話しかけられた。彼女は穏やかに少しうれしそうな笑顔を浮かべている。
「ええ、まあ……今年から。寮に入るので少し早めに」
彼女はうれしそうに目を輝かせ胸の前で手を合わせる
「まあ、そうなんですね!」
その様は先ほどまでの印象より幾分幼く見えた。
「あらごめんなさい、実は私も星章の卒業生なんです。なんだかうれしくて」
戸惑いが顔に出ていたのか、彼女は慌てて言葉を紡ぐ。
「初めまして私は白瀬四葉といいます」
そういって彼女―白瀬四葉は微笑む。
「イツキです、初めまして先輩」
先輩という言葉にどうやら気分を良くした様子だ。
意外な繋がりに少し驚きながらも、不思議と会話は続き四葉さんが通っていた当時のことをいろいろと聞かせてもらった。四葉さんは以外にも学生時代はやんちゃだったようでよく門限を破って寮から逃げ出していたそうだ。たまに帰りが見つかり説教を受けたこともあるが、抜け出す時に使っていたルートは終ぞバレなかったのだという。
時間は思ったより早く過ぎ電車は次の駅に到着しようとしていた。俺はかねてよりの違和感の正体について尋ねる。
「そういえば、四葉さんはどうしてここに?」
わかりやすく首をかしげる四葉さんをみて言葉を続ける
「四葉さんが乗ってきたのはさっきの駅ですよね、正直その恰好とは結びつかない場所じゃないですか?」
ちょうどつい先ほど出発した駅は海上モノレールの中継地点である海上施設に設置された駅だ。詳しくは知らないが併設されているのは発電所や航海管理のための管制室、関連企業の支社など出入りするにも入館証の要求されるような施設ばかりだ。おおよそ四葉さんのような女性がワンピースでふらっと出入りするような場所があるとは思えない。
四葉さんは少し心外そうな表情を作るとすぐのまた笑みを浮かべる
「そんなに意外かな?私こう見えてもそっち方面では結構すごいんだけど」
本当に意外だった。しかし様子を見るに嘘をついているようにも見えない。
「なぁにそのリアクション、さすがにちょっと傷つくよ!」
俺はよほど驚いた顔でもしていたのか、四葉さんは悲しそうに抗議の目を向ける。
「すいません……でもまさか―」
その時、不意に車内の明かりが消え、電車が急停止する。咄嗟に衝撃に備え姿勢を低くする。
電車が完全に停止したことを確認すると周囲を確認しながら四葉さんに声をかける。どうやら四葉さんも無事なようだ。車内には混乱する声が充満する。窓の外を見るに駅の中にはすでに到着しているようだったが駅構内も停電しているようで真っ暗だった。かろうじて見て取れる様子では停車予定のホームまではまだ少しあるくらいの位置で停車しているらしい。
「停電……?」
四葉さんが眉をひそめる。おかしいそろそろ非常灯なりアナウンスなりがあるべきだが一向にその気配がない、乗客たちのざわめきがだんだんと大きくなる
「イツキ君、ちょっと待ってて」
四葉が席を立とうとしたその時だった。車両のドアが勢いよく開き、数人の黒服の男たちが乗り込んできた。
「全員動くな、おとなしくしていれば危害は加えない」
1人が冷酷な声で言い放つ。
車内にどよめきが満ちる
「何者だ……?」
姿勢を低く、たまま四葉の背に隠すように前に出て座席の陰から様子を伺う。
数は三人、おそらく暗視ゴーグルだろうものをしてあたりを見回しながら何かしゃべっている。
俺の肩に四葉さんが手をかけわずかな声で囁く
「私が次肩をたたいたら目をつぶって反対のドアに走って」
いきなり何をと思いはしたが、尋常でない様子に小さく頷く。
肩に置かれた四葉さんの手に感覚を集中しその瞬間を待った。
!
男たちの視線がすべてこちらから外れた瞬間肩が叩かれる。
何かが転がる音とともに四葉さんの手を引き俺は後方へ走り出す。
数瞬の後に背後で閃光とともに悲鳴が響いた。
電車の連結部分からホームに降り立つ。駅構内にはわずかな人の気配もなく、窓もすべてにシャッターが下りていた。異様な空間に不気味な緊張感が走る。
「こっちに。」
四葉は冷静な口調で言いながら、手でイツキを促す。彼女の足取りは軽やかで迷いがない。
「…この状況でなんでそんなに、そもそもさっきのは」
俺は肩に下げた荷物を背負い直し、四葉を追いながら問いかけた。
「巻き込んでしまってごめんなさい……でも今は少しでも離れないと」
四葉さんの言葉に、俺はわずかに眉をひそめた。
構内の階段を駆け上がり、薄明かりに照らされる連絡通路へと逃げ込む。停電の影響で動いていないエスカレーターや、ひっそりと静まり返る売店のシャッターが、普段の賑やかな駅とはまるで別世界のようだ。
「奴らが何者か知ってるんですか」
イツキは後ろを警戒しながら問いかける。
「知ってる」
短く切った四葉さんの言葉にはどこか覚悟がにじむ。
「これからどうしますか?」
知っていて隠すということは、この状況で知ったところで意味はないということだろう。なら今は必要なことだけ考えろ、思考を冷静に保て。
自分に言い聞かせ頭を切り替える。
「時間さえ稼げればいずれ警察とか外から助けが来るはずだから、彼らも逃げるしかなくなるはずだけど……」
四葉さんの言葉が詰まる、すぐに俺もその意味に気づいた。
「四葉さん、今回みたなことは初めてではないんですよね」
俺の問いに四葉さんはうなずく。
駅の中には停車した車両内の乗客を除けば黒服のやつらと俺たちしかいない、状況を見るにこれは確実だろう。なら奴らは今の状況のまま電車が来るのを待ち構えていたことになる。外部から助けが来た時点で終わりな奴らにそんなことが可能なのか。可能だとしてこんな大掛かりな事件だ、すでに助けがきてしかるべきじゃないか。
四葉さんと顔を見合わせる。結論は同じようだ。先に俺が口を開く
「おそらく、助けは来ない……」
「えぇ、私たちで脱出するしかないみたい」
遠くから不規則な足音が近づく、四葉さん靴を脱ぎ慎重に歩みを進める。俺もそれに倣い後を追った。
エントランスホールは非常灯の薄明かりに包まれ、重たい静けさが漂っていた。立体構造のモノレール駅から外に出るなら確実にここを通らなければならない。それは待ち伏せていた奴らの方がわかっているだろう。上層階から様子を伺う。
「そろそろ観念してもらおう、白瀬四葉」
冷たく鋭い声が響く。エントランス中央の時計台の前に黒服の男姿を現す。
「お前ももうわかっているだろう。逃げても無駄ださっさと姿を見せろ」
どうやら男は俺たちの場所まではわかっていないようだ。ならまだ勝機はある。だが俺の考えを裏切るように四葉さんは立ち上がり階段に向かって歩き出す。
「四葉さん、何を……!」
呼び止めようとしたが、彼女は振り返らなかった。彼女は自らその姿を男にさらす。
「そのようね……まさか、私の力なしにそこまで再現できるとは思わなかったわ。」
苦し気な顔浮かべた四葉さんの言葉は不快感と後悔が滲んでいた。
「四葉、俺と来い……目的のためにはお前が必要だ」
男の言葉に四葉さんの顔が曇る
「あなた達は、まだ罪を重ねると……!」
「その罪に報いるためだ」
「報いる……?それが贖罪になるとでもいうつもり!」
熱を帯びてゆく四葉さんの声とは対称的に男は冷たい声で続ける
「だったら、お前はどうだ。そうやって罪から逃げ続けることが、お前の贖罪だとでも言うつもりか」
その言葉に四葉さんが声を詰まらせる。
「なら今ここで……!」
四葉さんがデッキを掲げる
「できると思っているのか……今のお前に」
「!……それでも――!」
「待て」
俺は四葉さんの前に立ちはだかった。
四葉さんが驚いたように俺を見つめる。
「邪魔だ、部外者は引っ込んでいろ」
冷たく突き刺さるような男の言葉に屈することなく、一歩ずつ確かな足取りで階段を下りる。
「聞こえなかったか……用があるのはその女だけだ、お前には関係のないことだろう」
「ああ、お前の言う罪や目的なんて、俺には関係もなければ聞く気もない。」
そう、ただ巻き込まれただけの、ただの部外者の俺にはこんなことをする必要も、責任もない。
それでも――
胸の奥で何かが熱く燃え上がる。
握りしめたデッキから微かに熱を帯びる感覚がした。
「それでも――俺は、今ここにいる。」
男の冷たい瞳が微かに揺らいで見えた。
「いいだろう……ならお前から相手をしてやる」
男がカードを構えた瞬間、光が床に集まりエントランスの中央にデュエルフィールドが展開される。
「来い。その覚悟がどれほどのもか、俺に見せてみろ」
男が無機質な冷たい声とともに、デュエルディスクが作動する音が響いた。
「イツキ君、どうして……」
駆け寄ってきた四葉さんが不安げな声で訊いた。
「勝手なことをしてすみません。それでも……きっと、俺がここにいることには意味があると思うんです。だから……」
俺は正面から、覚悟を伝えるように四葉さんの瞳を見つめる。
四葉さんは小さく頷き、俺にデュエルディスクを手渡す。
男の方へ向き直ると深く息を吸い込み、俺もディスクを構えた。
「行くぞ」
二人のライフポイントが表示され、エントランスの静けさは一瞬で熱気に包まれた。
「デュエル!!」
DUEL START
Unknown VS Itsuki
TURN1:Unknown
「先攻はこちらだ。俺はD.Nightmare(デッドリーナイトメア)マリスを召喚、その効果により俺のフィールドにD.Nightmareトークンを特殊召喚。」
黒い霧があふれ出す中から、丸みを帯びた黒い瘴気の塊が姿を現す。それは灰色の外套をまとい、亡霊のような不気味な存在感を放っている。顔の部分には白い仮面がつけられ、仮面には目のような二つの穴がぽっかりと空いているだけだ。
マリスと呼ばれたその亡霊が、静かに地面に手を潜り込ませると、灰色の麻布に鎖を巻き付けてしばりつけられた、自身と同等の大きさの塊をゆっくりと引き抜く。
D.Nightmareマリス
闇・星4 アンデット族 ATK800
D.Nightmareトークン
闇・星2 アンデット族 ATK500
「さらにD.Nightmareグリーフの効果、フィールドにD.Nightmareトークンが存在する場合、手札のこのカードを特殊召喚する。」
黒い霧がたちこめ再び亡霊が姿を現す。今度の亡霊は紫色の仮面をつけており、仮面には下弦の半月を模したペイントが施され、それがまるで冷笑を浮かべているかのような表情を形作っている。
D.Nightmareグリーフ
闇・星4 アンデット族 ATK500
「続けてD.Nightmareドレッドの効果。フィールドのD.Nightmareをリリースし手札・墓地から特殊召喚できる。」
D.Nightmareトークンの影がじわじわと広がり、その中から牙の生えた巨大な口が現れる。その口は、不気味に開いて目の前のトークンを飲み込むと、徐々に姿へと形を変えていく。新たに現れた亡霊は黒く染まった仮面をつけており、仮面の口元には血の滴る穴だけが開いている。
D.Nightmareドレッド
闇・星4 アンデット族 ATK700
「D.Nightmareトークンはフィールドを離れたとき相手に300ポイントのダメージを与える。」
Itsuki
LP4000→3700
飲み込まれたトークンが霊魂へと姿を変え、薄紫色の輝きを放ちながら俺の体を貫いて通り抜けていく。
「ぐっ……!」
うめき声が漏れる、なんだこの痛みは。
「それこそが俺たちの......そこの女の罪の代償だ」
男は四葉さんを睨みつけ吐き捨てるように言う
「罪だと......?」
俺の言葉に男は答えない。
「レベル4、D.Nightmareマリス・グリーフ・ドレッドの3体でエクシーズ召喚......現れろD.Nightmareイドラ・フォーリ」
三体の亡霊が黒い霧の中で溶け合い、一つの異形の体を形成する。その姿はねじれたパーツが絡み合い、不気味な存在を形作っている。
頭部に目はなく、紫色の輝きを放つ巨大な紋章が浮かび上がり、脈動しながら威圧感を漂わせる。
胴体には裂け目のような模様が走り、そこから無数の黒い影が手の形を取って揺れ動いている。それらは命を持つかのように蠢き、見る者を誘うような不気味な動きを見せる。
D.Nightmareイドラ・フォーリ
闇・ランク4 アンデット族 ATK2300
「イドラ・フォーリの効果発動。X素材を1つ使い、デッキの上からカードを2枚墓地に送る。」
→D.Nightmareソロウ、悪夢再び
「モンスターが送られたことによって俺のフィールドに新たに2体、D.Nightmareトークンが生まれる。」
イドラ・フォーリはその体からトークンを抜き出し、丁寧に並べる。
D.Nightmareトークン
DEF0
「続けて魔法が送られた際の効果だ、墓地のD.Nightmareを手札に加える。
加えるのはイドラ・フォーリの吐き出したマリスだ。」
男が手を伸ばすとイドラ・フォーリは無数の腕の一本を伸ばし恭しくカードを手渡す。
「さらに墓地のソロウの効果。D.Nightmareの効果で墓地に送られたことにより、フィールドのD.Nightmareをリリースしデッキからナイトメア魔法を手札に加える。リリースするのはD.Nightmareトークン、ダメージも受けてもらう。」
トークンが崩れ再び霊魂が俺の体を貫く
Itsuki
LP3700→3400
「ナイトメア・スケア・クローを手札に加え、カードを1枚伏せターンエンドだ。」
TURN2:Itsuki
「俺のターン、ドロー。俺は征従士ブランシェを召喚。」
光の輪から剣と拳銃を携えた軽装の銃士が降り立つ。柔らかな輝きを放つ銀髪は丸みを帯びた髪型で、聡明な印象を与える青年だ。
征従士 ブランシェ
炎・星4 戦士族 ATK1500
「召喚時の効果により手札を1枚墓地に送りデッキから魔法カード、征戦哨戒(コンクエスタ・リコン)を手札に加え、
さらに効果発動、1ターンに1度メインフェイズに手札の征銃士モンスターを召喚できる。
来い、征銃士 シャルル」
ブランシェが剣を胸の前に掲げると、炎が立ち上り、その炎を切り裂いて銃士が現れる。無造作に整えられたワインレッドの長髪が風に揺れ、真紅のマントが華やかに靡く。
翼の意匠が施された剣は炎の中できらめき、肩に担がれたマスケット銃がその戦士の姿を際立たせる。自信に満ちた笑みを浮かべた青年の瞳には力強い意思が宿る。
征銃士 シャルル
炎・星4 戦士族 ATK1800
「シャルルの効果、手札を1枚捨てデッキから征十字砲火(コンクエスタ・クロスファイア)を手札に加える。
そして征戦哨戒発動、自分フィールドに征銃士または征銃士モンスターのカード名の記されたモンスターがいる時、相手の魔法・罠カード1枚を選んで破壊する。」
ブランシェが銃を構え男の場の伏せカードを打ち抜く。
破壊された通常罠ナイトメア・パラソムニアが墓地へ送られる
「行くぞ、バトルフェイズ
征銃士シャルルでイドラ・フォーリを攻撃」
シャルルがイドラ・フォーリに迫る。イドラ・フォーリの無数の手が襲うがそれを掻い潜り懐へと迫る。
「この瞬間シャルルの効果発動、自信が攻撃した相手モンスターの攻撃力を600ダウンする。」
シャルルが銃を放つと銃弾が突き刺さりイドラ・フォーリが一瞬ひるむ。
D.Nightmareイドラ・フォーリ
ATK2300→1700
「これで攻撃力はこちらが上だ」
シャルルは素早く飛び上がり、空中で旋回するように姿勢を整え、一閃。剣の刃が頭部の紋章に突き刺さりイドラ・フォーリの体が爆ぜる。
Unknown
LP4000→3900
「続けてブランシェでトークンを攻撃」
Itsuki
LP3400→3100
「痛みを覚悟で破壊したか。」
「お前のターンになればどうせ同じことだ、わざわざ残してやるほど甘くはないさ。
それにこの程度の痛み、わかってさえいれば大したものじゃない」
男は一瞬顔をゆがませ俺に問う。
「お前は......そうまでしてなぜ戦う。」
四葉さんに視線を動かし続ける
「その痛みは本来そこの女が背負うべき代償だ。それをたまたま居合わせただけのお前が」
「理由なら言ったはずだ。」
男の言葉を断ち切る。
「カードを1枚伏せターンエンド」
TURN3:Unknown
「あくまで戦うというのなら、切り伏せるだけだ。
俺のターン、ドロー。D.Nightmareマリスを召喚し効果でD.Nightmareトークンを特殊召喚。」
D.Nightmareマリス
ATK800
D.Nightmareトークン
ATK500
「墓地のD.Nightmareドレッドの効果によりD.Nightmareトークンをリリースし、自身を特殊召喚する。」
D.Nightmareドレッド
ATK700
Itsuki
LP3100→2800
1ターン目の光景が繰り返される。
「この瞬間自分フィールドのD.Nightmareがリリースされたことで手札のD.Nightmareレイジの効果発動、このカードを特殊召喚。」
霧の中から、これまでよりも少し大きな亡霊が現れる。その仮面には血のように赤い色が塗られ、鬼の形相が力強く描かれている
D.Nightmareレイジ
星4・闇 アンデット族 ATK1000
これで男の場にまた三体のD.Nightmareが揃った......
「D.Nightmareレイジ・マリス・ドレッドの3体でエクシーズ召喚
現れろ、D.Nightmare イドラ・トリプス」
亡霊たちがまた新たな姿を形成する。その姿は黒騎士のようで、漆黒の馬に跨り手には大剣を携える。蹄の音が空気を震わせるたびに周囲の霧が揺れ、刃の先端には闇の気配が漂う。
顔を覆うには無数の目のような紋様が浮かび、見る者を圧倒する視線を送る。
D.Nightmareイドラ・トリプス
闇・ランク4 アンデット族 ATK2700
「手札より永続魔法ナイトメア・スケア・クローを発動。さらに墓地のナイトメア・パラソムニアの効果、このカードと墓地のD.Nightmareグリーフをゲームから除外し、自分フィールドにD.Nightmareトークン2体を特殊召喚する。」
D.Nightmareトークン
DEF0
新たに特殊召喚されたトークンたちは十字架につるされるように縛り付けられていた。
「ナイトメア・スケア・クローの効果によって、D.Nightmareトークンが存在する限りそのトークンと同じ縦列の魔法・罠の効果は無効となる。」
当然D.Nightmareトークンの内1体は伏せられた征十字砲火の正面に特殊召喚されている。
「次はこちらから行くぞ。D.Nightmareイドラ・トリプス、征銃士シャルルに攻撃」
馬を駆る異形の黒騎士は剣を構えるとそのまま力任せに振り下ろす。
剣を受けたシャルルは霧に包まれ姿を消す。
イドラ・トリプスが剣払うと黒い瘴気が俺の襲った。
Itsuki
LP2800→1900
「ぐぁっ......!」
先ほどまでとは比較にならない衝撃が襲う。
数値の大小ではない、明確な意志を持った力。その痛みだった。
「征従士ブランシェの効果......発動!」
痛みを抑えながら吐き出した俺の言葉を男は無慈悲に切り裂く
「無駄だ。イドラ・トリプスの効果発動。素材からマリスを取り除きD.Nightmareトークン1体をリリースする。そしてリリースした数まで相手の場のモンスターを対象にその効果を無効にする......俺は征従士ブランシェを選択する」
イドラ・トリプスがトークンの1体を切捨てるとその剣に瘴気が巻き付く。
銃を宙に掲げたブランシェに向けて剣を振るうと、瘴気はブランシェを取り巻き膝をつかせる。
「この効果はイドラ・トリプスが存在する限り消えることはない。そしてリリースされたD.Nightmareトークンのダメージだ」
Itsuki
LP1900→1600
「っ……」
とどめを刺すように襲ってきた痛みに俺は片膝をついた。
「ターンエンドだ」
TURN4:Itsuki
身体が思うように動かない、こんなの大した痛みじゃないはずだ。
「痛みで立ち上がれないか」
立て、カードを引け
男の声は淡々と流れ続ける。
「お前は十分やった」
身体に流れる血が熱い
「サレンダーしろ」
うまく息が吸えない
「これ以上傷つくことに何の意味がある」
思考が乱れる
「その女には守られるほどの――」
「......うるさい」
力の入らない腕が糸にひかれる様にデッキへとのびる
「守らなきゃ......いけないんだ」
勝手に口が言葉を紡ぐ、ふれたカードが熱い
「俺のターン、ドロー!!」
引き抜いたカードに記された名前は――
「墓地の征戦哨戒を除外して効果発動、墓地から征銃士シャルルを手札に加え、召喚!」
征銃士シャルル
ATK1800
「そして、手札から魔法カード発動――”カース・マキナ”!!」
発動と同時に俺の右腕から突き破るようにして何輪かの花が咲く、それは血を吸い上げたかのような深紅の彼岸花だった。
場の空気が一瞬、凍り付いたのがわかった。それ破ったのは男の声。
表情のなかった男がまるでおぞましいものを見るかのような目で叫ぶ、その視線の先は。
「白瀬四葉!!」
男は声を荒げる、およそこれまでの男の印象からは想像しえないように。
「何を考えている、どうしてそんなことができる!貴様はまた、そうやって巻き込むというのか!」
四葉さんは答えない。ただ居心地の悪そうに腕を抱いて目をそらすだけだった。
「カース・マキナの効果!」
四葉さんに注がれていた男の視線が向き直る
「ライフを半分支払い、自分フィールドのモンスターを墓地に送る。俺が墓地に送るのは征銃士シャルル」
Itsuki
LP1600→800
腕の彼岸花が赤い粒子となって飛んで行きシャルルを包む。
その体が赤い光の柱となって上方へと伸び、その先で大きな光の環を形成した。
環のから光があふれ、そして円盤状の巨大な機械が光の中から降りてくる。
「これが、マキナ......」
完全に姿を現した神々しいその機械に男が畏怖の声をもらした。
継ぎ目の見えない巨大な円盤の中央は何かのゲートのようなもで固く閉ざされている。
「マキナの効果により墓地に送ったモンスターの攻撃力の合計以下の、攻撃力を持つシンクロモンスターをエクストラデッキからシンクロ召喚する」
俺の言葉に反応するようにマキナとよばれたその機械のゲートがゆっくりと音を立て開く――
しかしそれは不快な音とともに動きを止めわずかな隙間を作るにとどまった。
そのわずかな隙間から黒い泥のようなものがあふれ出し、地面に音を立てて落ちると大きな泥濘を作り出す。
「現れよ――ディアリクシア―アシェス・アルマ」
泥の中から腕が這い出す。鋭い爪と固い鱗に覆われた腕だ。
這い出た腕が地面に爪を突き立てると、泥の中からゆっくりとその本体が姿を現す。
赤褐色の鱗に覆われた大小二対四つ腕の蜥蜴のような竜のような怪物だった。
怪物が雄たけびを上げると、その腕は燃焼した炭のように内側から発光し周囲を熱風が吹き抜けた。
ディアリクシア―アシェス・アルマ
炎・星9 爬虫類族 ATK1200
俺は知らない。こんなモンスターもカース・マキナなんてカードも。
だがそんな俺の思考をよそに、体は言葉を紡ぎ続ける。
「アシェス・アルマの効果発動!このカードのシンクロ召喚成功時自分のライフを4000まで回復し、その分このカードの攻撃力を上昇する。」
Itsuki
LP800→4000
ディアリクシア―アシェス・アルマ
ATK1200→4600
「アシェス・アルマでイドラ・トリプスを攻撃!」
アシェス・アルマがその四つ腕を地面に突き立てるとその巨体を大きくのけぞらせる。
胸から首掛けてが眩く赤熱する。周囲を温度が急激に上昇した。
「無駄だ。イドラ・トリプスの効果、D.Nightmareトークン1体をリリースしアシェス・アルマの効果を無効にする」
ディアリクシア―アシェス・アルマ
ATK4600→1200
Itsuki
LP4000→3700
アシェス・アルマの攻撃は止まらない、ため込んだ熱をイドラ・トリプスめがけて吐き出す。
イドラ・トリプスは真っ向からその剣で受け止め、アシェス・アルマの首へと駆ける。
「消え失せろ、マキナの傀儡」
瞬間、思考が晴れた。宙を漂っていたようだった俺の意識が引き戻される。
「この瞬間罠カード発動!征十字砲火」
熱線の陰からブランシェが姿を現しイドラ・トリプスに斬りかかる。
「このカードは自分フィールドの炎属性モンスターが相手モンスターと戦闘行う場合に発動できる。このターンの間その相手モンスター攻撃力を自分の他のモンスター1体の攻撃力分だけダウンする!」
D.Nightmareイドラ・トリプス
ATK2700→1200
ブランシェの剣を受けたイドラ・トリプスは態勢が崩れ熱線の直撃を食らうが、寸前まで迫っていたアシェス・アルマの首に大剣で横からの一撃を浴びせる。
熱線の途切れたアシェス・アルマはそのままイドラ・トリプスに食らいつき、イドラ・トリプスもまたその首に剣を突き立て2体が同時に爆ぜる。
「墓地のイドラ・フォーリの効果、D.Nightmareエクシーズが破壊されたときそのモンスターを素材として蘇る」
D.Nightmareイドラ・フォーリ
ATK2300
「こちらもイドラ・トリプスの消滅により、復活したブランシェの効果!自分フィールドの炎属性モンスターが戦闘・効果で破壊された場合、手札・墓地から征銃士シャルルを特殊召喚する。」
ブランシェがその拳銃を宙へ放つと炎が降り注ぐ。
「来てくれシャルル!」
炎の中より颯爽とシャルルが現れる。
征銃士シャルル
ATK1800
「どこかで見た光景だな」
対峙するシャルルとイドラ・フォーリ。2ターン目の同じこのカードがこの勝負決める。
「シャルルでイドラ・フォーリを攻撃!」
銃を放ち一気に距離を詰める
D.Nightmareイドラ・フォーリ
ATK2300→1700
「さらに墓地の征十字砲火の効果発動!このカードをゲームから除外し征銃士1体は、このターンの間戦闘で破壊し墓地へ送ったモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える効果を持つ」
シャルルはイドラ・フォーリを切り伏せ、そのまま銃を男に向ける
Unknown
LP3900→3800
「今までお返しだ」
シャルルの銃が火を噴き男を襲う
Unknown
LP3800→1500
「っ......!」
さしもの男も後方へと数歩よろけて片膝をつく
「これで終わりだ......ブランシェでダイレクトアタック!」
男を見下ろすブランシェにシャルルが頷きその剣を振り下ろす
彼なりの意地かそれとも罪への贖罪なのだろうか、男は声を上げなかった。
Unknown
LP1500→0
男のライフが0を刻むと同時にデュエルフィールドを形成していた光が霧散していく。
「立て、お前に聞きたいことが山ほどある」
四葉さんを追う理由、デュエル中の痛み、罪、そして――
俺は手元のカードを見つめる。
カース・マキナ
いつの間にか俺のデッキにあった謎のカード。このカード見た途端に男の態度が急変した。
「そうやって巻き込むというのか」
男の言葉を反芻する。
これが得体のしれないものなのは間違いないだろう。このカードを引く直前、俺に起きたことからもそれは明らかだ。
四葉さんにも聞かなければならないことがあるが......デュエル中のあの態度が気がかりだ。真正面から聞いたところで正直に答えるとは思えない。
なら、まずはこの男から情報を引き出す。
「こた、えて......やっても、いいが」
息も絶え絶えながら男はよろよろと立ち上がる。
「悪いが......そんな時間は、はぁ......ないようだ」
視界が歪む。
いや、歪んでいるのは駅の方だ。
「なにが......」
「その女を捕らえるために、あの電車の乗客だけを別の空間に隔離していた。だが俺の敗北をきっかけにその崩壊が始まっている」
口を挟もうとした俺を男が手で制す。
「安心しろ、空間が崩れればお前らは勝手に元に戻る。
それより時間がない、一つだけ忠告しといてやる。」
男は俺の手元を指さす。
「そのカードのことは決して他言するな。お前の身を守るためだ」
その言葉に不思議と敵意や害意は感じなかった。
空間が一度大きく揺れた。景色が次第に色を失くしていく。
どうやらこの空間が終わるようだ。
「イツキ君、とりあえずここを離れましょう。人目につかない場所に移動しないと」
四葉さんと走り出そうとしたところで、俺は崩れ落ちる。
デュエルのダメージか、マキナとかいうカードを使った反動か体に力が入らない。四葉さんが心配そうに呼びかける声が遠くに聞こえる中、俺の意識は闇に閉ざされていく。
次に目を開けると、そこは人々であふれる駅構内だった。
人のざわめき、警察無線の声、遠くで聞こえる電車のアナウンスが耳に飛び込んでくる。
俺はゆっくりと身を起こし、額を押さえる。そこに警察官が声をかけてきた。
「君、大丈夫か?倒れているところを見つけたんだが……何があったか覚えてる?」
俺は答えようとしてふと周囲を見回す。
「……若い女性が、いなかったですか?一緒に、白い髪の」
警察官は首をかしげる。
「いや、見当たらなかったが……君は、階段の下でひとり倒れているところを見つけて」
その言葉を聞いた俺は思わず息を飲む。
「そう、ですか」
おそらく四葉さんは俺を運んで、誰にも気づかれないように姿をくらました。
「とりあえず意識ははっきりしてそうでよかったよ。でも一応さ、検査しとかないとだから一度近くの病院まで送らせてよ。それでそこでちょっと話を聞きたいんだ」
警察の案内に従い、俺は駅を後にした。
幸いにも検査の結果に異常はなく、入院の必要はないとのことだった。
そののちに警察から事情聴取を受けたが、あの空間であったことを話す気にはなれず、どう説明するべきかもわからなかった俺は適当に話を合わせ解放された。
だいぶ時間をとられてしまったが急げば夜までには仙羽市に入れるだろう。
俺は頭の中をめぐる問いを振り払うように道を急いだ。
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