Clear Mind？　作：内視鏡

　――気がつくと警官は、
　謎の空間を全裸で高速移動する例のアレみたいな状態になっていた。

警官「‥‥ここは‥‥どこだ？
　俺はもしかして‥‥死んだのか‥‥？」

　「いいえ、貴方はまだ死んだ訳ではありません」

警官「！？‥‥お前は‥‥ブ、ブラック・マジシャン・ガール？」

　「私はこの地を守護する精霊。
　この姿は貴方の認識が見せる幻です。
　
　本来ならば、貴方の様な人間ではこの地に到達し得ない筈なのですが、
　何かの間違いで来てしまったようですね。
　
　ここは精神を極限まで高めたデュエリストのみが訪れる事ができる聖地。
　貴方達の言葉で言う――『クリア・マインド』」

警官「クリア・マインド‥‥そうか、これがあの噂に聞く‥‥」


警官「不思議だ‥‥妙に落ち着いた気分だ。
　なぜだろう‥‥昔の思い出ばかりが蘇ってくる‥‥。
　子供の頃‥‥みんなと楽しくデュエルしていた日々‥‥。
　いつも俺は大好きなモンスター達に囲まれて‥‥。
　格好良くデュエルするアニメキャラの活躍に夢中になっていた‥‥。
　あの頃が人生で一番楽しかったんだ‥‥」

　「ええ、貴方は純粋にデュエルが大好きだった」

警官「こんな事‥‥久しぶりに思い出した‥‥。
　これが走馬灯って奴なのか‥‥？

　いつからだろう‥‥デュエルを楽しむ心を無くしてしまったのは‥‥。
　
　デュエルキングに憧れて 全国大会に出場したものの、
　俺はあっけなく敗れて自分の限界を思い知った‥‥。
　それからだ‥‥デュエルが楽しいと思えなくなったのは‥‥。
　
　デュエルが強ければ就職に有利だからとなった警察官だったが、
　俺を待っていたのは‥‥つまらない交番勤務の毎日。
　退屈を紛らわす為に、権力を利用して賭けデュエルに明け暮れて‥‥。
　気が付いたら俺は、ただの汚職警官になっていた‥‥。
　俺はデュエルを都合の良い道具として使っていたんだ‥‥！
　デュエリスト失格だな‥‥」


　精霊はただ静かに、警官の言葉を聞き続けた。

警官「‥‥君を見ていたら思い出したよ。
　俺、初恋だったんだ‥‥ブラック・マジシャン・ガールが。
　今でも、一番好きなカードなんだ‥‥」

　「‥‥私の役目は、この地を訪れたデュエリストに道を指し示すこと。
　貴方にもその権利がある‥‥もしもその意志が有るのなら‥‥」

警官「――お、教えてくれ、頼む！
　俺は一体どうすればいいんだ！？」

　「‥‥ならば お教えしましょう、貴方が成すべき事を。
　貴方はある１つのカードを探し出さなければならない。
　そのカードの名は、《ブラック・マジシャン・ガール・ＳＢ》」

警官「ブラック・マジシャン・ガール‥‥ＳＢ！」

　「そのカードこそ、貴方を導く運命のカード‥‥」


警官「そうか‥‥そうだったのかっ！！」

　その時、警官は自らの運命を悟った。
　
　なぜ自分は生まれてきたのか、その答えを、ようやく見つけたのである。

　ブラック・マジシャン・ガールとのＳＭプレイ‥‥っ！！
　
　自らが追い求めた理想のデュエルが、そこにあったのだ‥‥！！


警官「‥‥フッ、どうやら俺は、まだ死ぬ訳にはいかないようだな‥‥！！」

　「さあ、お行きなさい。己が運命を突き進むのです‥‥」

警官「うおおおおおぉぉぉぉぉ！！！」


　「‥‥本当にこれで良かったのかしら」


　―　―　―　―　―

　警官の意識は体へと戻っていった。
　ゆっくりとその瞼が開かれてゆく。

警官「――ゴホッゴホッ！」

変態「！？‥‥警官さんっ！！」

女性「け、警官！ あんた大丈夫なの！？」

警官「‥‥ああ、大丈夫だ。意識はハッキリしている」

変態「良かった‥‥本当に良かった‥‥！！
　は、早くデュエル病院に行きましょう！ すぐに救急車を呼びますから！」

警官「‥‥いや、その必要はない。デュエルを続けよう」

女性「はぁ！？ あんた馬鹿！？ やっぱりまだ正気じゃないんでしょ！！」

警官「大丈夫だと言っている。
　ちょっと気を失っただけで、デュエリストがデュエルを放棄できるか」

女性「いや‥‥あんた心肺停止してたわよ‥‥」

警官「‥‥おい、やるぞ変態！」

変態「ほ、本当にいいんですか？」

警官「クドいぞ、さあ、まだお前のターンは終わってなかった筈だ」

変態「は、はい！」

―――　[変態のターン]　―――

変態「では‥‥気を取り直して。
　リリーさんの攻撃が終了した所からですね‥‥。
　ですが、この状況だと何もできそうにない。
　バトルフェイズは終了し、手札から《一時休戦》を発動します」

一時休戦
通常魔法
(1)：お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから１枚ドローする。
次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは０になる。

変態「さらにカードを１枚セットして、ターンエンドです」


警官「‥‥おい、一応言っておくが、俺が倒れたからって手加減するのは許さないぞ」

変態「わ、分かってますよ。僕だってデュエリストですからね！」

警官「もし同じ様に俺がダメージを受ける場面が有ったとしても、躊躇なく攻撃して構わん。
　‥‥おそらくだが、もう俺が倒れる事はないだろう。
　何故だか そんな気がするんだ」

変態「警官さん‥‥あなたはもしや、到達したと言うのですか、我々の境地に！？」

警官「さあな、自分でもよく分からない。
　‥‥１つ聞きたい事があるんだが、
　《ブラック・マジシャン・ガール・ＳＢ》というカードを知っているか？」

変態「‥‥え、ええ。実在するという噂は僕も耳にしてます。
　ただ‥‥あまりにも激しい争奪戦が繰り広げられた結果、
　今ではどこに存在するのかも確かな情報はありません。
　我々の業界では『伝説のカード』と言われていますが‥‥」

警官「‥‥そうか、それだけ聞ければ十分だ。
　行くぞ、俺のターン！！」

【警官】【ＬＰ：１０４００】【手札：１】
【モンスター】
ゴヨウ・ガーディアン
戦士ダイ・グレファー
【魔法・罠】
Ｍの境地

【変態】【ＬＰ：３４００】【手札：２】
【モンスター】
茨のミーネ・ＳＢ
ヂェミナイ・エルフ・ＳＢ
お注射堕天使リリー・ＳＢ
【魔法・罠】
内通者の手引き
セット１枚

―――　[警官のターン]　―――

警官「ドロー！！
　‥‥まずは《サイクロン》で《内通者の手引き》を破壊！」

変態「ふむ、まあいいでしょう」

警官（このターンは一時休戦の効果で相手にダメージを与える事はできない‥‥だが！）

警官「続いて手札から、装備魔法《ゴヨウ・ラリアット》をゴヨウ・ガーディアンに装備！」

ゴヨウ・ラリアット
装備魔法
レベル５以上の「ゴヨウ」モンスターのみ装備可能。
①発動時の効果処理として、装備モンスターの攻撃力は相手フィールドの
一番高い攻撃力のモンスターの攻撃力分アップする。
②装備モンスターは相手モンスター全てに１回ずつ攻撃でき、
自分のバトルフェイズ中に相手の効果を受けない。
③相手は装備モンスター以外の自分フィールドのモンスターを攻撃・効果の対象にできない。

変態「それは‥‥ゴヨウ・ガーディアンの必殺技カード！？」

警官「ゴヨウ・ラリアットの装備時効果！
　相手フィールドで最も攻撃力の高いヂェミナイ・エルフ・ＳＢの攻撃力分、
　ゴヨウ・ガーディアンの攻撃力はアップする！」

　【ゴヨウ・ガーディアンの攻撃力：２８００→４７００】

変態「攻撃力４７００‥‥リリーさんでも届かない！」

警官「バトルフェイズ！！
　装備魔法の効果により、今のゴヨウ・ガーディアンは全体攻撃が可能！
　違法風俗の容疑で、全員ひっ捕らえろ！！」

　【お注射堕天使リリー・ＳＢ：攻撃力３４００】
　【ヂェミナイ・エルフ・ＳＢ：攻撃力１９００】
　【茨のミーネ・ＳＢ：攻撃力１８００】

　『ゴヨウ・ラリアットォ！！』
　
　ゴヨウ・ガーディアンの大立ち回りで変態の場のモンスターは全滅！
　さらに効果で警官のフィールドに特殊召喚！

女性「す、すごい！ ゴヨウ・ガーディアンの効果で
　変態のモンスター全てのコントロールを奪ったわ！」

変態「死にかけた後でもこれ程のデュエルができるとは‥‥。
　一時休戦の効果がなければ僕のライフはゼロになっていました‥‥。
　僕はあなたを見くびっていたようですね、警官さん」

警官「フン、これでこちらの場のモンスターは５体、一方お前のモンスターはゼロだ。
　勝負が見えてきたんじゃないか？
　俺はこれでターンエンドだ」

【警官】【ＬＰ：１０４００】【手札：０】
【モンスター】
ゴヨウ・ガーディアン
戦士ダイ・グレファー
茨のミーネ・ＳＢ
ヂェミナイ・エルフ・ＳＢ
お注射堕天使リリー・ＳＢ
【魔法・罠】
ゴヨウ・ラリアット
Ｍの境地

【変態】【ＬＰ：３４００】【手札：２】
【モンスター】
なし
【魔法・罠】
セット１枚

―――　[変態のターン]　―――

変態「そうですね、状況的にはかなりピンチでしょう。
　ですが、僕は自分のデッキの力を信じていますから‥‥！
　――ドローカード！！」

変態「‥‥よし、手札から《強欲で金満な壺》を発動！
　ＥＸデッキから６枚のカードを裏側除外し、２枚ドローします！」

強欲で金満な壺
通常魔法
(1)：自分メインフェイズ１開始時に、自分のＥＸデッキの
裏側表示のカード３枚または６枚をランダムに裏側表示で除外して発動できる。
除外したカード３枚につき１枚、自分はデッキからドローする。
このカードの発動後、ターン終了時まで自分はカードの効果でドローできない。

変態「‥‥来ました！
　僕は手札から、２枚目の《Ｍの境地》を発動します！」

警官「ちっ、それを引いてきたか」

変態「Ｍの境地の効果！
　デッキから《強制装着型サイバー・ボンテージ》をサーチします！
　さらに被ダメージ１５００！」

　【変態のＬＰ：３４００→１９００】

警官「この状況でまだライフを削ってくるか」

変態「‥‥ええ、それに、ライフ差はこのターンでひっくり返ります！」

警官「ほう？」

変態「僕は今サーチした装備魔法、
　《強制装着型サイバー・ボンテージ》をゴヨウ・ガーディアンに装備します！」

強制装着型サイバー・ボンテージ
装備魔法
「ＳＢ」以外のモンスターのみ装備可能。
①装備モンスターのカード名は名前の最後に「・ＳＢ」が付いているものとして扱う。

警官「俺のゴヨウ・ガーディアンに装備だと！？」

　【ゴヨウ・ガーディアンが卑猥な格好になった！！】

　ゴヨウ「うっふ～ん♥」

警官「おえぇぇ」
女性「おえぇぇ」


変態「おえぇぇ」

女性「お前も吐くのかよっ！」

変態「こ、これはソリッドビジョンの自動描画機能の悲劇ですね‥‥。
　‥‥しかし、これで僕のデッキの最強コンボの準備は整いましたよ！！」

警官「最強コンボ？」

変態「僕は手札から《巨大ネズミ》を召喚します！
　手札からカードを２枚セットし、そしてバトルフェイズに移行！
　行きます！ 巨大ネズミでゴヨウ・ガーディアンに攻撃！」

警官「自爆特攻‥‥いや、ただの自爆特攻ではない！」

変態「そうです！ 今のゴヨウ・ガーディアンはＳＢモンスターに変化している！
　つまり、僕の場の《Ｍの境地》の効果で僕が受けるダメージは回復になります！！」

　【巨大ネズミ：攻撃力１４００】
　【ゴヨウ・ガーディアン：攻撃力４７００】
　【巨大ネズミ：破壊！】
　【変態への３３００のダメージは、回復に変換！】
　【変態のＬＰ：１９００→５２００】

警官「こ、このコンボは‥‥ッ！！」

女性「え、な、なんなの？ 何が起きてるの？」

変態「巨大ネズミが戦闘破壊された事により、効果発動！
　デッキから２体目の巨大ネズミを特殊召喚します！」

巨大ネズミ
効果モンスター
星４/地属性/獣族/攻1400/守1450
(1)：このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
デッキから攻撃力１５００以下の地属性モンスター１体を攻撃表示で特殊召喚する。

警官「‥‥この戦術、リクルーター連続自爆特攻だな！？
　しかも、自爆特攻する度にライフゲインを繰り返すコンボ‥‥！！」

変態「ご明察、警官さんならもうお分かりですね？
　僕のデッキには《巨大ネズミ》《ピラミッド・タートル》《ゾンビーナ》、
　それぞれのモンスターが３枚ずつ入っている。
　これらのモンスターで連続して自爆特攻する事で、
　合計１２回分の自爆特攻が可能になります！」

ピラミッド・タートル
効果モンスター
星４/地属性/アンデット族/攻1200/守1400
(1)：このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
デッキから守備力２０００以下のアンデット族モンスター１体を特殊召喚する。

ゾンビーナ
効果モンスター
星４/地属性/アンデット族/攻1400/守1500
(1)：このカードが相手によって破壊された場合、
「ゾンビーナ」以外の自分の墓地のレベル４以下のモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。

変態「さあ、ここから少しお時間を頂きますよ！
　僕のモンスター達よ、ゴヨウさんに存分に可愛がってもらいなさい！！」

　ネズミ「キシャー！」
　ピラタ「ガメー！」
　ゾンビーナ「ゴヨウサマ　ステキ‥‥(ポッ)」

女性「ああ、もう、何がどうなってんのか分かんないわよ！」

警官「これはマズイ事になったな‥‥」

　変態のモンスターが自爆特攻する度、辺りに変態の奇声が響き渡り、
　そのライフがみるみると上昇していく‥‥。

　【変態のモンスターが自爆特攻で１０回戦闘破壊！】
　【変態のＬＰ：４２００→３９２００！！】

女性「ラ、ライフが‥‥４万近くにッ！？」

警官「いや、おそらくまだ続く‥‥！」

変態「おや、それも気づかれましたか。御見逸れしました。
　最後の巨大ネズミを場に残した状態で、僕はリバースカードを発動させます！
　トラップカード《局地的大ハリケーン》！！」

局地的大ハリケーン
通常罠
自分の手札・墓地に存在するカードを全て持ち主のデッキに戻してシャッフルする。

変態「これで墓地に行ったリクルーターが全てデッキに戻ります！
　再び自爆特攻のループが可能です！」

女性「ひ、ひぇぇ‥‥」

変態「再び１２回の自爆特攻！！」

　【変態のモンスターが自爆特攻で１２回戦闘破壊！】
　【変態のＬＰ：３９２００→７９８００！！】

警官「ライフポイント‥‥７９８００‥‥ッ！！」

女性「こ、こんなのどうしようもないじゃん‥‥」


変態「はぁ‥はぁ‥ゴヨウさんも、意外とイケますね‥‥♥
　どうです？ これが僕の無限快楽デッキの真の力です。
　しかも、ただライフ差が開いただけでは終わりませんよ！」

警官「奴の場には、ハリケーンでデッキに戻さない為に伏せた２枚のカードがある‥‥！」

変態「セットしていた通常魔法、《ＳＢ嬢のお持ち帰り》を発動！！」

ＳＢ嬢のお持ち帰り
通常魔法
①相手フィールドの「ＳＢ」モンスター１体を対象に発動できる。
対象モンスターと、そのモンスターより攻撃力が低い
相手フィールドの表側表示モンスター全てのコントロールを得る。
この効果使用後、ターン終了時まで自分は特殊召喚を行えない。

変態「対象はゴヨウ・ガーディアン・ＳＢ！
　これにより、警官さんのモンスター全てのコントロールを奪い返します！！」

警官「クッ‥‥！」

女性「そんな‥‥せっかく揃えたモンスター達が！」

　ゴヨウ「お持ち帰りヨォ～♥」

【警官】【ＬＰ：１０４００】【手札：０】
【モンスター】
なし
【魔法・罠】
ゴヨウ・ラリアット
Ｍの境地

【変態】【ＬＰ：７９８００】【手札：０】
【モンスター】
ゴヨウ・ガーディアン・ＳＢ
戦士ダイ・グレファー
茨のミーネ・ＳＢ
ヂェミナイ・エルフ・ＳＢ
お注射堕天使リリー・ＳＢ
【魔法・罠】
強制装着型サイバー・ボンテージ
Ｍの境地
セット１枚

警官「‥‥ハッ、まいったね、こりゃ」

変態「まだです！ セットしていた２枚目のカードを発動！
　マジックカード《魔法陣の生成》！」

魔法陣の生成
通常魔法
①デッキから通常魔法カード１枚を手札に加える。
発動後、ターン終了時まで自分は他の魔法カードを発動できない。

変態「この効果で、デッキから《Ｍの昇天》をサーチします！
　サーチしたついでに教えておいて上げましょう、《Ｍの昇天》の効果を！」

Ｍの昇天（マゾヒスティック・アセンション）
通常魔法
①フィールドに「ＳＢ」モンスターが３種類以上存在し、
自分のＬＰが３００００以上の場合、自分はデュエルに勝利する。

女性「と、特殊勝利効果ぁ！？」

警官「どう見てもネタカードだが、条件は完璧に満たしている‥‥。
　次のターンで対応できなければ、敗北確定だな‥‥」

変態「自分のライフを最高潮にまで高め、昇天する！！
　それがこのデッキの黄金勝利パターンなのです！！
　さあ、これを打ち破れますか、警官さん！？」