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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第十三話 城之内死す

第十三話 城之内死す 作:サクラ

「《ヘルポエマー》を破壊してくれてありがとうなぁ城之内ぃ!これで貴様にはもっと恐ろしいコンボを見せてやるよ!」
「恐ろしいコンボだと!?」
「だが安心しろ、このコンボは貴様のバトルフェイズ終了時に発動される。それまで精々足掻きな!」
「くっ!馬鹿にしやがって!いいぜ、ぶっ飛ばせ!《蒼炎の剣士》でダイレクトアタック!」

蒼炎の剣士がマリクに向かって飛びかかる。しかし、マリクは余裕の表情を崩さない。自分自身のデュエルディスクのボタンを押すと伏せられたカードが起き上がってくる。

「調子に乗るのもそこまでだ!リバース・マジック!《闇の護封壁》」
「何!?」

マリクの周りに闇が包み込む。蒼炎の剣士の攻撃はマリクには届かず、闇の護封壁に阻まれてしまった。

「マリクが闇に紛れて姿を隠した!?」
「モンスターの攻撃は通らないのか!」
「そんな!」

観客席で本田、遊戯、遊香が声をあげる。マリクは高笑いをする。

「これで貴様のバトルフェイズは終了だな……。ではお待ちかねの《地獄詩人ヘルポエマー》を戦闘で破壊した事で、恐るべき特殊能力が発動する!『地獄の詩』!《ヘルポエマー》の効果により、毎ターンお前のバトルフェイズ終了時に手札を一枚ランダムにハンデスしていく……。ハハハ!」
「な、何!?」

城之内の墓地から不気味な腕が出てくると城之内の手札を一枚抜き取り墓地に戻って行った。

「くっ!俺のモンスターが……!」
「まだまだこんなもんじゃないぜ?今、俺は貴様に与える罰ゲームを考えている。俺に与えたダメージを倍返しにし、貴様に苦痛を与えるためのね……。クハハ!俺のターンだ!ドロー!」

マリクはドローしたカードを見ると、口を歪ませる。城之内を抹殺する為のカードとなったようだ。

「俺は手札からこのモンスターを召喚する。《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》」
「攻撃力3000のレベル8のモンスターをリリース無しで召喚だと!?」
「だが、このカードは俺のフィールドには召喚されない。貴様のモンスター2体をリリースして貴様の場に召喚されるのさ!」

すると、城之内の場のサイコショッカーと蒼炎の剣士が溶岩に呑まれていき消えると、溶岩でできた怪物が現れた。そして城之内はラヴァ・ゴーレムの檻の中に閉じ込められた。

「何じゃこりゃあ!!」
「喜べよ……攻撃力3000のモンスターを貴様が操る事が出来るんだぜ?まぁもっとも、そいつは毎ターン貴様のスタンバイフェイズに灼熱の身体を溶かしながらプレイヤーに1000ポイントのダメージを受けなければならない、少々厄介なモンスターだがなぁ?更に永続魔法を発動……《悪夢の拷問部屋》!これで貴様がダメージを受けた時、300のダメージを追加で受ける!」

城之内はラヴァ・ゴーレムを見上げる。ドロドロに溶けたその顔からは今にも溶岩が落ちて来てもおかしくなかった。マリクはカードを伏せる。

「《サイコショッカー》が消えたからな……心置きなく罠を張らせてもらうぜ?まぁもっとも、攻撃力300以上のモンスターを引き当てて《ラヴァ・ゴーレム》と一緒にダイレクトアタックを決めれば貴様の勝ちになるけどなぁ!ハハハ!!」

あからさまに攻撃を誘導してこようと誘導するマリク。城之内は冷静に状況を分析する。この場面、マリクの場には悪夢の拷問部屋と伏せカードが2枚。モンスターはおらず、手札も無くなった。対して城之内の場には攻撃力3000のラヴァ・ゴーレムと羊トークンが3体、手札は1枚のみだ。

「ターン終了」
「俺のターン!ドロー!」
「この瞬間!《ラヴァ・ゴーレム》の効果発動!1000ダメージだ!そして、《悪夢の拷問部屋》の効果で300の追加ダメージも受けな!」

ラヴァ・ゴーレムの口から涎のような溶岩が少し落ちた。城之内の体には触れなかったが、凄まじい熱さに発狂する。

「あちぃ!!」
「ハハハ!!まだまだこんなもんじゃ終わらないぞ?罠カード《強化蘇生》!復活しろ!《プラズマイール》!今度は壁モンスターとしての《プラズマイール》の恐ろしさを見せてやるよぉ!」

マリク LP3400
城之内 LP2000

城之内は引いたカードを確認する。

(これは!?もしかしたら一発逆転の為のキーカードになるかも!)

「俺は魔法《強欲で貪欲な壺》を発動!デッキから10枚のカードをゲームから取り除き、カードを2枚引く!(頼む!俺のデッキ!俺に答えてくれ!)」

城之内は目を瞑りながらカードを2枚引く。

「ハハハ!どうした?びびってドローしたカードを目視することも出来ないのか?お前のターンは俺の勝利への消化ターンでしかないんだ。精々足掻いて俺を楽しませてくれよなぁ!クハハハハハ!!」
「くっ!この野郎……。やってやるぜ。こんなサイテー野郎をぶっ倒してやる!」

城之内は勢いよくドローした2枚のカードを確認する。そして彼は心の中でガッツポーズした。

「へっ!マリクちゃんよぉ!どうやらここからは、お前が俺の勝利への消化ターンになるぜ!」
「何?」
「まずは下準備の《おろかな埋葬》だ!デッキから、《女王の影武者》を墓地に送る!そして見せてやるぜ!魔法カード《トークン生誕祭》」
「《トークン生誕祭》だと!?」
「こいつは同じレベルのトークンを2体以上リリースして、リリースしたトークンと同じレベルのモンスターを、リリースしたトークンの数まで効果を無効にして自分の墓地から選択して特殊召喚する事が出来るぜ!羊トークン2体リリースして蘇れ!《女王の影武者》!《ものマネ幻想師》!」

城之内の場に3体のモンスターが揃った。しかし、城之内のデッキには神は入っていない。何をするつもりなのだろうか?マリクは余裕の表情を崩し、冷や汗をかく。

(もしや、野崎遊香のように奴も神のカードのコピーを持っているのか!?いや、野崎遊香は千年ピアスがあったからこそ神の怒りを受けなかった。こんな奴が千年アイテムが渡っているとも考えにくい。一体何をするつもりだ?)

城之内は残り1枚の手札を天高く上げる。

「行くぜマリク!こいつがお前を追い詰める俺の最後のレアカードだ!俺の3体のモンスターをリリースしてアドバンス召喚!出でよ!《ギルフォード・ザ・ライトニング》!」
「《ギルフォード・ザ・ライトニング》だと!?」

暗雲から雷が落ちて来ると、そこから一人の剣士が現れた。剣士は背中の剣を引き抜くと、天に剣先を向ける。すると、再び天から雷が落ちて今度はプラズマイールに直撃した。プラズマイールはショートしたように煙を上げて砕け散った。

「馬鹿な!戦闘では無敵なハズの《プラズマイール》が破壊されただと!?」
「戦闘じゃねぇ、特殊効果だ!」

城之内は自慢気に言う。

「《ギルフォード・ザ・ライトニング》はモンスター3体をリリースしてアドバンス召喚されると、相手モンスターを全て破壊することができる。城之内君!」
「この攻撃が通れば、マリクのライフポイントは一気に2800の大ダメージだよ!」
「城之内!やっちゃいな!マリクを倒して神のカードを手に入れるんだよ!」
「いっけぇ!城之内!」
「お兄ちゃん……」
「城之内……」
「城之内君」

遊戯、遊香、舞、本田、静香、杏子、御伽は各々の城之内を応援する。件の城之内も顔を綻ばせている。

「これでリーチだ!行け!《ギルフォード・ザ・ライトニング》!『ライトニング・クラッシュ・ソード』!」

ギルフォード・ザ・ライトニングがマリクの腹部を貫く。マリクは貫かれたあまりの痛みと衝撃で膝をついて倒れ込む。片手を地面につき、もう片手で自分の口を抑える。

「バトルフェイズ終了時の《ヘルポエマー》のハンデス効果があるが、生憎俺の手札は0だ。よってハンデスはされない!どうだ!マリク!これが俺たちの怒りだ!絆の力だ!」
「……ハァ……ハァ」

マリクの呼吸は荒い。少しすると、マリクは立ち上がる。

「まったく、予想外の展開になったよ……城之内。まさかテメェなんかにこの俺がここまで追い詰められるなんてなぁ……」

そう言ってマリクはカードをドローする。マリクはニタリと笑うとそのカードを発動した。

「城之内……まぁ、テメェはよくやったと褒めてやる。でもテメェじゃあ俺は倒せねぇ事を教えてやるよぉ!今度は俺の番だ!魔法カード《強欲で貪欲な壺》発動!デッキの10枚を除外し2枚のカードをドロー!伏せカード発動《無謀な欲張り》を使って更に2枚ドロー!そして魔法カード《ご隠居の猛毒薬》によって俺のライフを1200回復!城之内。テメェには特別に神でトドメを刺してやる。俺の持つ本物の神のカード、《ラーの翼神竜》の一撃でなぁ!」
「神のカード……!!」
「魔法カード《左腕の代償》!他2枚のカードをゲームから取り除き、『ある魔法カード』をデッキから手札に加える!」

マリク LP1800
城之内 LP2000

マリクはデッキを抜き取り、カードを一枚取り出す。

「《死者蘇生》だ!そして発動!天を舞え!《ラーの翼神竜》!!」

マリクの上空に死者蘇生のマークが現れる。そして、そこからラーの翼神竜の翼が現れると、だんだんとその姿を現していく。
遊香のフィールドに現れたのと同じ姿、しかし観戦している時より対峙している今の方が圧倒的に威圧感が違った。まるで潰れてしまうんじゃないかと思うぐらいの衝撃に、少しでも気を抜けば腰が抜けそうだった。

「これが本物の《ラーの翼神竜》だ!そしてその第三の効果を発動!」
「第三の効果だと!?」

城之内は驚きながら身構える。観客席の遊戯たちは表情に緊張が走る。
するとラーの翼神竜は自らが吐き出した炎を纏い始めた。

「な、何が起きようとしているんだ!?」
「教えてやるよ……ラーの翼神竜の第三の効果。それは俺のライフポイントを1000払い、フィールドのモンスターを焼き払う。その名も『ゴッド・フェニックス』」
「『ゴッド・フェニックス』!?でも、モンスターが効果でやられても俺のライフは無傷な筈だ!それじゃあ俺には勝てないぜ!」
「忘れたのか?このゲームは闇のゲームだ。モンスターの苦しみはプレイヤーにも与えられる。ふふふ、テメェはこれから地獄のような苦しみを味わい死ぬ。精神力は焼き払われ、再起不能になるのさ!ハハハ!!」

マリクは観客席を見ると言い放つ。

「遊戯!海馬!そして野崎遊香よ!城之内のおかげで、《ラーの翼神竜》の最終形態が拝めたんだ。それを評して最後に拍手喝采でもしてやったらどうだ?」

遊戯も海馬も遊香も返事を返さない。

「ふ、まぁいい。これでこいつは終わりだ。やれ!《ラーの翼神竜》!『ゴッド・フェニックス』!!」

炎を纏い、不死鳥の姿となったラーの翼神竜は城之内のギルフォード・ザ・ライトニングに向かって突撃していく。

(ふざけんな……俺が負けちまったら、遊戯も、遊香も、舞との約束が……遠退いちまうだろうがあああ!!!)

「ぐわぁあああぁぁぁあぁ!!!!」

ギルフォード・ザ・ライトニングと同じ苦しみを受ける城之内。焼き尽くされるような煉獄地獄に発狂する。

「ハハハハハハ!!!燃やし尽くせ!命という名の燃料を全て使い果たせ!!」

マリクは愉快そうに笑い続ける。

「マリクのやつ、やり過ぎだぜ……このままじゃあ城之内の奴、本当に死んじゃうよ!」
「《ラー》の第三の能力、しかと受け取ったぞ。城之内……貴様を最後にデュエリストとして認めてやるぞ!」

モクバは心配そうに言う、それとは逆に海馬は賞賛の声をかける。

「ダメだ……このままじゃあ本当に城之内君の精神は……!」
「そんな!城之内君!」

遊戯と遊香も城之内が無事な事を祈る。

「十分だ。舞い戻れ不死鳥よ!」

ラーの翼神竜は再びマリクの墓地に戻っていく。城之内のいた場所はゴッド・フェニックスの残炎の煙に包まれていて、現状が分からない。

「ふん、奴の魂が……一筋の煙となって天に消えていくのが見える……」

だんだんと煙が晴れていく。そこには、『立っている城之内』の姿があった。

「何!?」
「城之内君!!」
「城之内!!」

城之内は立ち尽くしたまま動かない。遊戯達は喜びに満ち溢れていた。

「バ、バカな……奴は死んだハズ……まさか、神の攻撃を奴の精神力が上回ったとでもいうのか……ありえない」

マリクの顔は先程までの余裕の表情は消え去り、驚愕と恐怖に塗り固められていた。







一方城之内は視界がハッキリとせず一面真っ白になっていた。すると城之内の目の前に人影が見える。

『遊戯……』

そこに居たのは遊戯だった。

『俺だけじゃないぜ!』
『え……?』

遊戯の後ろからもう一人の姿が現れる。

『城之内君』
『遊香……?何で……?』
『バトルシティの決勝戦はバトルロイヤルになったのさ。勝ち上がった私たちは今ここにいる』
『そうだ。城之内君、君はマリクのラーの攻撃を受けきり、次のターンに《ギア・フリード》を召喚してマリクに勝ったんだ』
『マリクに勝った……。ああ……。ああ!遊戯!遊香!あの時の誓いを果たす時だ!!』
『そうだね城之内君』
『デュエルだ!城之内くん!』











そして現実の世界では

「マリクの場に神は消えた!マリクに攻撃すれば城之内くんの勝ちだ!」
「やっちゃえ城之内!」
「お兄ちゃん……!」

マリクのターンは終了し、手札にはカードはなく場にもモンスターはいない。城之内のターンに回った。

「俺の……ターン……ドロー」

意識が朦朧としている中、城之内がドローしたカードは《鉄の騎士 ギア・フリード》だった。

「…………へ、へへ……《ギア・フリード》の……攻……げk……」
(遊戯……遊香……俺は……勝ったぜ……)

そして、城之内のギア・フリードへの攻撃命令が届くことは永遠に無かった。
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ター坊
タイトルからの熱いネタバレ!
歴史が改変しても城之内の最期は変わらなかったよ(泣) さて、これで残るは海馬VS舞ですね。舞の新規ハーピィは炸裂するのか? (2018-11-13 21:33)
サクラ
城之内君!!
まぁ伝統芸はやんないとダメかなと笑 (2018-11-14 16:06)

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