68.隠心欲楽　作：くちなし

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Turn11　TP レアー　手札7

「あなたは何のためにここにいるの？」

レアーは飴玉を口に放り込む。

(、、理由、、無い、、肯定も否定も何も、、)

何も言葉を発しない有希。なぜなら、理由を持っていないからである。
瑞穂の突発的な言葉に肯定も否定もせず、ここに立っているのである。

「な、なにそれ、、それじゃあ、ただ私の邪魔してるだけじゃん」
「そう、、」
「なにその反応、、そんな、自分の感情押し殺して何かいいことでもあるの、、？」
「、、」

有希が感情を表に出さない理由、、悠里と距離が離れた魔女狩り事件もきっかけの一つだが、それ以上に、両親のことも理由にあった。


ーーー回想　始

金城有希。小学生のある日のことである。
当時、有希の父親は大企業の研究員、母親はエリートの道を突き進むキャリアウーマン。休みの日には遊園地に行ったりなど、遊びにも行っていた。
しかし、何も始めから無表情なわけではない。ある日を境に仕事が忙しくなり、家に帰ってこない日も出始めた。父親は海外へ出張することが増え、母親は会議で帰りが遅くなった。
そして、両親が出張で海外へ出かけていた日の夕方。有希は隣の小母さんに預けられていた。そこで少女有希は、信じられないことを耳にする。

「、、有希ちゃん、よく聞いて。。お父さんたちの乗ってた飛行機が墜ちて、、」


ーーーパパとママが、、死んだ、、？


「う、、ウソだよね、、？なんでウソつくの、、？」

信じられなくて、真実を理解できず、ただ問う有希。病院で連れられた一室に、両親は寝ていた。

「なんで、、なんで、、」

2つのベッドが並んでいて、2人の人間が全身包帯にまかれて横になっていた。何も言わず、ただそこに横たわっていた。

「、、あまりにも出血がひどく、、」

その場で泣き出す有希。大声で泣き、大粒の涙をこぼす有希。
金城有希、小学4年生の晩夏。もうすぐお彼岸の季節が迫る中、有希は家族を失うことになったのである。

その後、有希は親戚の家で、姉として迎え入れられ、弟ができたが、優先順位は一番下。お風呂も、娯楽も、寝室も。しかし、有希は黙々と学業に励む毎日を送った。しかし、どんな試験で結果を出しても、褒めてもらうどころか、労いの言葉もない。わたしは何のためにいるのだろうか。そんなことを考え始めるようになった。

有希が中学2年生になったなる晩春の休日。家族で出かけていたある日。母親と、弟が手をつなぎ、その隣に有希がいた。
すると、トラックが居眠り運転でこちらへ向かってくる。時速は70kmくらいか。
思わず頭に手を当て、うずくまった。その直後に大きな音がした。
怖気着いた状態で目を開けると、トラックがすぐ近くの信号機に衝突して、倒れていた。あたりを見回すと、有希は思わず言葉が出ないような状況を目にする。
少し離れたところで、養母が弟を守るように覆いかぶさり、その上を養父が覆いかぶさっていた。つまりは、有希の周りには誰もいなかったのだ。周りにあったのは、信号機のLED電球と、トラックの破片。

有希は悟る。「これはどうしようもないことなんだ」、と。所詮私は養子。直接血は繋がってないし、本当の家族ではない。つまりは、私は「家族の絆」なるものに含まれていないんだ。私を引き取った家族は、「家族ではなかったんだ」と。そう思うようになった。

ーーー回想　終


それ以降、有希はほとんどの感情を見せなくなった。それは、家族だけでなく、ほかの誰にも。悠里も例外ではない。
有希は考えた。絆を持たなければ喜びも、悲しみも、憐れむことも、気に病むこともなくなる。絆から離れるために取った方法、それが「感情を消すこと」なのだった。

「感情を消したのは絆を断ち切るため、、、絆がなければ一喜一憂に気を病むこともないもの、、」
「、、そんなので楽しいの？」
「、、楽しいわけないじゃない、、！何をしても得るものがないんだもの。。感謝も、興味も。人望も、、！敢えて言うなら「実力」だけ、、でも、その実力のせいで、、私は、、私の周りからは人が離れていった、、もう私にはなにも無いのよ、、そんな空虚で憂鬱な日々が楽しいわけないじゃない！」
「、、、」

激高して思わず声を張る有希。しかし、口にした後は冷静に戻る。

「、、あなた、感情あるじゃない」
「え、、」
「、、こうやって怒ったり、ここでデュエルしてるのも、あんたの意志でしょ、、！そう「思った」からでしょ、、！実力がない？甘ったれてんじゃないわよ！」
「、、」
「、、昔起こした魔女狩り事件、それはあなたの実力が起こしたコトでしょ？何があったかは知らないけどね。同級生相手に全戦無敗で実力がないわけないでしょ！あなたはね！「実力がない」んじゃないの。使い方が間違っているのよ！」
「実力の、、使い方、、」
「、、カードは、目の前の相手を倒すためにあるんじゃないの。デュエルは怒りや叱責のためにやるんじゃないの。大事なのは、、「ここにあるなにか」なのよ！でも、それは人それぞれ。あなたの「なにか」は知らない。だけど、あなたがそんな単調な理由でカードを握っているなら、私はあなたを容赦なく、本気で倒すわよ！」

レアーの放った言葉は、有希の中の「なにか」を突き動かした。

「あなたにいまあるもの、、あなたを必要としてる人がいるはず。そして、あなた自身も、何かしらの感情を抱いているはずよ」
「私の、、なにか、、」
「ほら。そこにいるでしょ？」

ピットを指さす。顔を向けると、そこには瑞穂や理沙、海清、氏家さんがいる。そして、準備を進める悠里。眠る香織と、看病する火憐。自分を理解してくれるヒトがいる。。
見た目は感情を押し殺して、表情を隠している有希。しかし、必要とされてる仲間がいた。そしてなぜだろう。今までのデュエルが楽しかった、という感情が急に溢れてくる。

「、、そうね。ここにいる理由、、見つけたわ」
「、、なにかしら、、？」

有希が編み出した一つの答え。それは、このデュエルを、、みんなと参加したこのデュエルをココロから、、楽しいと思いたい。それが有希が見つけた答え。欲望なのである。

「、、いい答えじゃない。なら、行くよ、、！愚かな埋葬を発動し、デッキから、ドラグニティ－ファランクスを墓地に送る。そして、サイバー・ダーク・キールを召喚！」

サイバー・ダーク・キール　ATK800

「ドラグニティ、、なるほどね、、」
「効果でファランクスを装備。攻撃力が上昇」

サイバー・ダーク・キール　ATK800→1500

「そして、ファランクスは装備されている状態から特殊召喚できる」

ドラグニティ－ファランクス　DEF1100

「竜の霊廟を発動し、デッキからドラグニティアームズ－レヴァテインを墓地に送っておく。そして、簡易融合を発動。デッキから☆5以下の融合モンスターを特殊召喚する。☆4のマブラスを特殊召喚」

レアー　LP4500→3500

マブラス　☆4　DEF900

「鳥、、」

かなり初期のころに出た融合モンスター。橙っぽい身体に、このカードを含め、簡易融合で特殊召喚できる鳥獣族の融合モンスターは2体しかいない。

「☆4のマブラスに、☆2のファランクスをチューニング、、！！」

≪小さき魂よ！疾風を翔け巡り、竜騎士となりて姿を見せよ！≫

【S召喚！☆6、ドラグニティ－ヴァジュランダ！！】

ドラグニティ－ヴァジュランダ　☆6　ATK1900

「ヴァジュランダの効果はS召喚成功時に、☆3以下の【ドラグニティ】モンスターを装備できる。ファランクスを再び装備し、特殊召喚。☆6のヴァジュランダに、☆2のファランクスをチューニング、、！！」

≪風に佇む竜騎士よ、疾風をその身に纏い、あらたな力へと昇華せよ！≫

【S召喚！☆8、クリムゾン・ブレーダー！！】

クリムゾン・ブレーダー　ATK2800

「まだよ。手札から、オーバーロード・フュージョンを発動。場のキール、エッジ、墓地のカノン2体とキール。5体のサイバー・ダークを除外するわ」

≪闇に染まりし黒き影、、その骸ひとつにして、その姿を見せよ！！≫

【S召喚！鎧獄竜－サイバー・ダークネス・ドラゴン！！】

鎧獄竜－サイバー・ダークネス・ドラゴン　ATK2000


【フィールド】
有希　LP6500　手札1
捕食植物キメラフレシア　ATK2500
伏せカード1枚

レアー　LP4500　手札2
鎧獄竜－サイバー・ダークネス・ドラゴン　ATK2000


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次回予告！
レアーの叱責により、自分自身を見つめ直した有希は、自分にできる最高のデュエルをしようと試みる。
2人の想いが激しくぶつかるとき、その軍配はどちらに上がるのか、、！

次回！第69話「骸華激対」

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