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『いいヤツ』 作:お野菜のデーモン


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中央総合病院、その一室に数人の男がいた。そのうち、ベッドに寝ている者名は『阿笠遊理』。寝ている、とは言っても上半身は起きており、今すぐにも立ち上がりそうだが……その目に光は灯っておらず、虚ろ。

「……ストレス、でしょうね」

「へー」

「恐らく重度のストレスを抱えていながらそれを上手く解消出来ず、結果このような極端な精神の異常をもたらしてしまっているのかと」

「ほー」

「……その、なんと言うか……随分軽いというか…」

「だって、全部俺の聞きたいことじゃねーし」

その傍に立つタンクトップ姿の男、彼の名は『阿笠遊一郎』。何を隠そう阿笠遊理の実の父親だ。

「で、どーなん」

「と、言いますと……?」

「起きんの、コレ」

「……恐らくは。ですがいつ覚醒するかまでは……」

「ふーん」

バンッ、と大きな音を立て病室の扉が開かれる。入ってくるのはスーツを身にまとった数人の男。

「失礼します、阿笠君のお父様ですか」

「そーだよ」

「本当に申し訳ございませんっ、私達がしっかりカバー出来ていれば……!」

「あー、いいっていいって」

先頭の男……メジャーリーグの教官は必死に頭を下げる。それに対する遊一郎の反応は一見寛容な物だが…

「多分、アンタらがどーしよーとコイツは遅かれ早かれこーなってたよ。だってコイツ、馬鹿だし」

「なんでかってーとな、極端なんだよ昔っから。いわゆる中庸ってのになれない。だから、他人のどんな悪意も善意も分別せずそのまんま受け取って、許容量を超えたら自分の分を押し退けてでも溜め込もうとする。だから下手なんよ、自分を優先するってのが。少しでも楽に生きようって考えを持つのが」

「で、こーやって潰れちまったと。こういうのをなんて言うかって?『自業自得』だ。プロとして最低限のメンタリティも覚悟も持たず、不用意に『そっち側』に上がり込んだコイツの完全な自業自得。だろ?」

「そ、それは……「ただまぁ」 ……!?」

「お前らがそれ以上遊理に近づいたら、俺は自分でも何するかわからねぇ」

……遊一郎が彼らに向けたその目は、子を守る為ならなんだってする獣と全く同じ威圧感を放っていた。

「帰ってくれ」

「……失礼、します……」

その気迫に押されたリーグの関係者は去り、いたたまれなくなった医者もそっとその場を後にした……
────────────────────────
(……なぁ、遊理よ)

二人きりになった病室で、物言わぬ骸も同然なわが子を見つめ、思う。

(お前は、本っっっっ当にバカだ。
いつまで経っても、お前は自分の気持ちを優先できてない。他人の思想、行動に沿った『都合のいい』生き方を選んじまう)

余程の運がない限り、今の世の中じゃあそんな生き方は逆の生き方をするようなやつらにボロ雑巾になるまで絞り取られて、そこで終わり。くだらない偽善に生きて、偽善に死ぬしょうもない人生。

(もしもそうなることを予想せず、成り行きだけでプロになったというなら、お前は正真正銘史上最大の大バカ野郎だ)

……

「だがな、遊理。俺は、お前のそんな生き方を心の底から立派だと思ってるんだよ」

遊理の手を握り、続ける。

「俺含め、世の大半の人間は自分さえよけりゃ他は何だって良くて。誰かを傷付けても飯食う頃にゃもう忘れちまう。そのくせ攻撃されりゃ痛えだ何だと一丁前に喚き散らして、相手を逆に悪人にして影じゃヘラヘラ笑ってる」

「だけどお前は違う。どれだけそんな奴らに傷付けられようと、どれだけ酷い目に合わされてもただの一度もやり返さなかった。絶対に相手を傷付けなかった」

「それは簡単なようでとても難しい。本当に立派で、凄い事なんだ。……だからさ、もういいんだよ遊理。文句を言うようなヤツらは、俺が皆黙らせてやる。だから、もういい。お前は他人のためじゃない、自分のためだけの人生を生きてもいいんだよ」

……ここに来て初めて、遊理が動く姿を見た。あいつは首だけ動かして、俺をじっと見つめる。

「………違う、違うよ……そんな大それた物じゃない。僕はいつだって、僕が傷つかない為に……」

「お前がプロになったのも、自分が傷つかないためなのか?」

ぴくん、と遊理の肩が跳ねる。

「言い出しっぺはたしかにお前だったかもな。でも一番は、俺がお前にデュエルを教えた日々を、無駄にしたくなかったんだろ?」

またまた遊理の肩が跳ねる。わかりやすいヤツ……

「ば~~~~か。……いいか俺はな、何もお前に上手くなって欲しくて、本当にプロになって欲しくてデュエルを教えてたんじゃない……デュエルをしている時のお前が、どうしても楽しそうだったからだよ」

「……父、さん」

「だからさ、これ以上自分を不幸にして、俺を悲しませんなよ」

そうだけ言って、俺も病室を後にした……
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………二ヶ月後。

──プロに戻るのか

─うん。またマイナーリーグからだけど……

──俺は戻って欲しくない。お前をあんな風にするまで追い詰めた場所に、俺は行って欲しくない

─……僕も、実を言えば。でも、もしここで逃げたらもっと大切なものを、僕は見失う気がする

──……親に楯突くたぁな、クソガキ

─ひ、酷い……

──世間はもっと酷いんだ。気張ってけ、バカ息子

─……うん
────────────────────────
阿笠遊理の過去編はこれで終わりです。
本編のどっかで絡ませようと思ってたけど、そもそこまで続かなそうなので。
この後彼は紆余曲折を経て大成し、そして八年後、彼と運命の出会いを果たすわけです。


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