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HOME > 遊戯王SS一覧 > Story 3 予感

Story 3 予感 作:YK_Yosthy

 うぃーん……。

エレベーターの上昇する音と共に、僕の気も高まっている。初めてのデュエルへ向かう僕の姿は、一体どのように見えているのだろうか。
「随分と気合十分みてえだな。知り合い相手でも容赦しねえってか? え?」
「うん、そんな感じ。で、ルミンはどうしてついてきたのさ?」
 ルミンとの受け答えも上々。やる気も十分である。ルミンの質問に対して、ルミンはこう答えた。
「何、って。あんたの助けになろうかなーって思ってな」
「いやいや、何助けって。第一、それ失格にならないの?」
「いやいやいやいや、大丈夫だって。ちょっとディスク貸してみい?」
 言われるままに機械、じゃなかった、デュエルディスクを取り出す。と、すぐにルミンの様子が……。
「あ、あれ? なんか光ってる?」
「おらよ、ちょっと黙ってろッ!」
 そういうとすぐに光状の球になり、デュエルディスクのパッド部分にダイブした。
「……え? ふぁ? はぁぁぁぁ!?!?」
 そして、1枚のカードが出てきた。
「『輝心の鎖(ブライトハート・チェーン)・ルミン』……」
「にししっ。俺だよ」
 どこからともなく声がする。厳密にいえば、僕の心に、脳内にダイレクトに響いてきている。今までの悪態からは感じ取れないような、温かみのある光が僕の魂を包み込む。
「よし、とにかくやってみる」
「おうよ、その意気だぜ相棒。ここでだ、少々デュエルについてアドバイスをくれてやろうか?」
「へ? あどばいす?」
「おうよ。まずはデュエルを楽しむこと。次に、思いっきり楽しむこと。最後に、最終ターンまで諦めないこと」
「……できるかな、僕に」
「できるさ。心配したら駄目だぜ。さ、そろそろつくみたいだ」
 エレベーターの電子表示が会場のある階を示す。そしてそのドアが開く。金属製のはずなのに重々しく開いたような気がしない。どうしてなのだろう。それ程、いやきっと、そういうことなんだろうな。

「さあ游くん。ある意味身内だからと言って手ぇ抜かないで本気でかかってきなさい!」
 広いスタジアムの対面から、相変わらずハイテンションな声がする。ホントやかましい。だからそれに負けじとこっちもどでかく返してやる。
「うーーるさぁぁぁぁぁい! 始めから本気でやるわーい」
「はーなの……えーでは、両プレイヤー、デュエルディスクをセットしてください!」
 下々の争いがごとく応酬する僕たちを制止するように、審判担当のスタッフさんが高らかに宣言する。言われるままに持っていたディスクを指定のとこにはめ込む。
――Sistem START UP……Complete――
「わ、何今の?」
「何って、起動音だよ、バカ」
「両者、デッキをシャッフルしてセットしなさい」
「あ、はいぃ!」
 試合なもんだからとかく指示通りに動いた。だって早くデュエルをやりたかったものだから。言われるままに準備して1分。僕と千秋さんの準備が終わり、いよいよデュエルが始まろうとしていた。
「……では、コイントスシステムを用いて先攻後攻を決めさせていただきます。では、行きますよ?」
 あ、はい。たしかデュエルって、正真正銘先攻有利だったはず。だからこそ、できれば2分の1を引き当てたかったのだがそう簡単にうまくいくものではない。出されたコインの目により千秋さんが先後の選択権を得て、そのまま千秋さんが先攻を取った。そして両プレイヤーはカードを5枚引きデュエルの準備が整った。
「さあ、いくよ」
「うん!」
「では、デュエル開始!」

DUEL START
先攻:郷崎 千秋 LP8000 手札5枚
後攻:定木 游我 LP8000 手札5枚

「私のターン! フィールド魔法、『ガンガール・キャリーベース』を展開するわ!」
 いきなりフィールド魔法を展開してきた。ガシャンガシャンと大きな音を立てて、そのキャリーベースとやらが展開されていく。いくらスタジアム内といえど、こんな感じの演出のせいで何らかの不具合が出てもおかしくないのに大丈夫なのかな。
「恐らくだが、彼女の使うカテゴリーは『ガンガール』って奴だな。しかし、俺もそのテーマ名を聞くのは初めてだ。何してくるかわかんねえが、油断だけはするなよ」
 ルミンが僕の脳内に直接こう語りかけてくる。ルミン自身も知らないカテゴリだなんて、一体どう戦えばいいのだろう。
「1ターンに1度、手札の『ガンガール』カード1枚をデッキに戻して『ガンガール・キャリーベース』の効果を発動! デッキに戻したのとは異なる名称の『ガンガール』カードを手札に加えさせてもらうよ」
 なるほど、そのフィールド魔法は手札交換の効果を持つのか。でも表記上は『手札に加える』だから、この効果が通ってくれる。
「だったら、手札から『灰流うらら』を墓地に送って効果発動。その手札に加える効果を無効にする!」
 いわば必須級の手札誘発とかいうやつ。デッキから手札に加える効果、墓地に送る効果、特殊召喚する効果を、こいつを墓地に送るだけでその効果を無効にできる。
「ううう、その効果は通しておくわ」
 どうやら上手くいったみたいだ。最初に手札交換効果を使ったってことは、多分初動のカードがないってことだよね。だからこれで止まってくれるはず。
「でもそう簡単には止まらないよ!」
「なんだって?」
「『GG(ガンガール)・ミリタリー・サク』を通常召喚!」
 その甲高い声と合わさるように機械装甲に身を包んだ人型のモンスターが、VRビジョンで表示されたカードから出てきた。本物と見違えてしまうほど細かいところまで念入りに映し出されている。レベル3のチューナーで攻撃力1200。
「『ミリタリー・サク』の召喚・特殊召喚成功時効果発動!  デッキから『ガンガール』魔法・罠カード1枚を手札に加えるよ」
 どうやら別の初動札を引いていたらしく、展開は止まってくれなかった。
「私はこの効果で通常魔法『ガンガール・スタンバイ』を手札に加え、そのまま『ガンガール・スタンバイ』発動。1ターンに1度、デッキからレベル4以下の『ガンガール』モンスターを手札に加える。フィールドに『ミリタリー・サク』がいる場合、それ以外のモンスターを代わりに守備表示で特殊召喚できる!」
「指定モンスターがいることでデッキから特殊召喚できるのか……いかに軸カードを処理できるかどうかだが……」
 ルミンが再びこうつぶやいた。声色から察するに、恐らく眉間にしわを寄せているのがすぐにわかった。
「『GG(ガンガール)・スプレッド・バレッタ』を特殊召喚!」
 千秋さんがそう宣言すると、今度はレベル4のガンガールを守備表示で特殊召喚してきた。攻撃力1600、守備力1700。先ほどの『ミリタリー・サク』よりも少し年上な感じの、でも少しあどけないような……。
「1ターンに1度、このコが魔法カードの効果で特殊召喚に成功したとき、デッキから『アタッチメント』装備魔法、今回は『アタッチメント・サイトスコープ』を手札に加えるよ」
 たった1枚のカードからこんなに行けるなんて。ここまでの様子を見て、僕の心の中に、こんなんで果たして僕は勝てるのだろうか、と心の中に一滴の不安が零れ落ちる。
「現れよ、奇跡撃ち抜く光の導!」
 今度は何を宣言したのかと思えば、天へ貫く光の柱が出てきた。
「レベル4の『スプレッド・バレッタ』に、レベル3の『ミリタリー・サク』をチューニング! 光の導よ、その力で私たちに奇跡をもたらせ! シンクロ召喚!」
「えっ、女の子同士で合体しちゃうの!?」
「おいッ、言葉を慎めよ……」
 ポロリと出てしまった言葉に、これはまずいと思ったのか、ルミンが僕に耳打ちした。ごめん、決して他意はないんだ、決して!
 そんなやり取りをするのもつかの間、『ミリタリー・サク』が3つの光の環となり、それらの環は『スプレッド・バレッタ』を包み込む。さらにそこに光の柱が重なり、その光は一瞬にして広がっていく。
「シンクロ・レベル7! 『SGG(ショットガンガール)・スプレッド・ブラスト』!」
 光の柱が解き放たれるとともに、これまたメカメカしいのが出てきた。といっても、見た目はさっきの『ミリタリー・サク』にショットガンを含む装甲をつけたような感じで、あどけなさも残っている。攻撃力2600、守備力1800。
「『スプレッド・ブラスト』のシンクロ召喚成功時の効果!  デッキからカードを1枚ドローする。さらに表側表示のフィールド魔法があり、このターン装備魔法を発動・装備していない場合、このターン装備魔法を発動・装備できない制約をつけて、デッキから『アタッチメント』装備魔法を自身に装備する! この効果で『アタッチメント・バレットマガジン』を装備するよ!」
 すごい、としか言いようがなかった。たった1枚からここまで展開できるなんて、と。普段は仲が良くても今はあくまで対戦相手だ。それなのに、感心してしまう。それは千秋さんにとっては、火薬の詰まった爆薬に火をつけると爆発するくらい、曲芸師が軽々とフレイム・リングを潜り抜けるくらい、そんなごくごく当たり前のことなのかもしれない。けれど、その当たり前のことが僕にとっては初めてのことであり、それこそエンターテイメントみたいなものだった。

   ◎   ◎

 一方数分前、『サンフラワースタジアム』のロビー内にて。とある青年が受付のカウンターに寄りかかっていた。
「試合観戦。今やってるところはどこかあるか」
 サファイア色の波のようにさざめく青の瞳は大きく、また猛禽類のように鋭く、その短髪は波のように流れている。青単色のシャツとズボンの上にベージュの単色のやや緩い上着を着ている、やや細身のその姿はまさに大人びた雰囲気そのものであった。
「はい。こちらのパッドで示されてあるスタジアムで現在デュエルが行われています」
「わかった、ちょっと見させてくれ」
 その青年は、受付の人が渡したパッドを丁寧に受け取ると、どの試合を観ようかと独り言をつぶやきながら、骨の関節が少しばかり浮かび上がっている指で画面をスライドする。
「……郷崎 千秋……。あいつ、今日来てんだ。で、その相手が……定木? って、誰?」
 青年がポロリとつぶやいた疑問に対し、受付の人が今日デュエリスト登録した新人だということを伝える。青年はそれを聞くと、鋭い目を細め、顎に画面をスライドしていた指を触れさせる。そして頷き、パッドを受付の人に返し、こう続ける。
「1番のスタジアムの試合観戦で頼む。席は空いてるか?」
「ええ、空いています。1番スタジアムの場所は把握していますか?」
「大丈夫だ、心配はいらない」
 青年はそうクールに言い放つと、両手を上着のポケットに突っ込み、No.1スタジアムへと向かった。

 観客席に着き、青年はそこに腰を下ろし、試合を見守り始めた。その目線は游我に向けられる。
「游我か……確か、ここ最近向日市で話題になってる路上エンターテイナーが何故ここに。まさか千秋、游我を勧誘したっていうのか」
「多分、そうだろうね」
 青年のとは異なる優し気な声がする。それと同時に、青年の隣に小さな竜が現れた。形大きさはルミンそっくりだが、その体色は透き通る海の青で、その羽はひれのようで、その尾は魚のようであった。
「そうか」
「……やっぱり、彼女のことが心配なの?」
「別に。なんだっていいだろ」
「そう、変わってないね。そういう意地っ張りなとこ」
「――るっせ……」
「はあ……」
 そんなやりとりをしながら青年は目線をデュエルフィールドに向ける。暖かくも冷たい目線。試合はちょうど、千秋が『スプレッド・ブラスト』のシンクロ召喚時効果を発動した時だった。青年はそれを見て、テンションが上がっている游我とは真逆の、冷静な様子で小さな竜に問う。
「なあ、このデュエル、どっちが勝つと思う?」
「『スプレッド・ブラスト』が出せているし、次のターンにさらに展開できそうでもあるし、今のところ千秋さんのほうが有利だと思う。けど……」
「なんだ」
「游我さんの方から、なんかすごい力を感じるんだ。観客席の方まで、感じるくらい凄い何かを……」
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