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第七話 働くモンスター 作:ぬる
塔まで、直線距離にして数キロほどの地点に達した。俺はポーチから双眼鏡を取り出し、様子を探る。
リュウガ「……こりゃあ一大事業だな」
塔の周囲には、姿かたち、種族や属性も異なる様々なモンスターたちがひしめき合っていた。彼らは皆一様にレンガを積んだ荷車やアスファルトを入れていると思しき容器を携え、塔へと向かっていた。
更に、塔ではモンスターたちがレンガを積み上げ、アスファルトで塗装を行っている最中だった。
リュウガ「……どうなっているんだ、これ」
クリボー「クリクリー?」
確実にわかったことは一つ。数多のモンスターが労働力として塔に集まっており、ただ今絶賛仕事中だということだ。
もう少し、双眼鏡で様子を探る。
塔の外周には所々関所のようなものが設けられおり、モンスターたちはそこを通ってから塔へ向かっているようだった。
リュウガ「外からの労働者もやって来ているってことか……」
だが一体、何のために彼らはこのようなものを作るのか。そもそも、どうしてこのように様々なモンスターが協力し合い、建設を行っているのか。その疑問は晴れない。
リュウガ「ま、そこはおいおい確かめるしかないか」
リュウガは双眼鏡をポーチにしまいこむ。この間、アズハは遥か眼前の様子に集中し、その切迫した表情を崩さなかった。
リュウガ「大丈夫か、アズハ?」
アズハ「……こんなことになっちゃったのは、わたしに関係があるんだよね」
リュウガ「…………」
アズハ「なら、わたしがなんとかしないと……」
リュウガ「……俺たちで、だ。な?」
ハネクリボー「クリ!」
アズハ「……うん。それで、これからどうするの?」
リュウガ「ああ。ちょうど今、いい案が思いついた」
リュウガは通信端末を操作し、バックアップ班に連絡を取る。まだここでは通信は可能らしい。
リュウガ「至急、用意してもらいたいものがあるんだ。――――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
塔へ向かう、モンスターの一行。どうやら彼らも、バベルの塔の建設事業を手伝いにやってきたようだ。
全身タイツのオレンジ色の人型とピンク色の髪の少女が荷車を曳いている。少女の右肩には狐がちょこんと乗っている。荷車にはレンガが積まれており、その上には布が被せられている。その頂点には、トゥーン・クリボーが座っており、どうやら荷車を曳く二人(?)を鼓舞しているようだった。
火霊使いヒータ「ねえ……ほんとに大丈夫かな?」
ドイツ「まあ、見た目だけなら大丈夫だ。……それにしても似合ってるな」
火霊使いヒータ「えへ、ありがとう、りゅ――ドイツさん」
きつね火「クリっ! クリクリー!」
ドイツ「……わかってる。わかってるよそんなこと……」
クリボー「クリ!」
ゆっくりと関所に近づく。そこには番兵として、攻撃力の高そうな二体の兵士が置かれていた。
ドドドウォリアー「ドド! ドドド?(特別意訳:止まってもらおう! お前たち、一体何用で来た?)」
クリボー「クリ、クリクリー、クリ! クリックリ! (特別意訳:ボクたちも、塔の建設を手伝う為にはるばるやってきたんだ! レンガも持ってきた!)」
ドドドバスター「ドドドー!(特別意訳:それはありがたい!)」
きつね火「……クーリ」
ドドドウォリアー「ドドド! ……ドドー?(特別意訳:いや待て! ……お前怪しいな?)」
ドイツ「ど、ドイツ?」
ドドドウォーリアー「ド、ド! (特別意訳:お前だ、お前!)」
火霊使いヒータ「……ゴクリ」
ドドドバスター「ドー……ドドド(特別意訳:確かに……気持ち悪いタイツ野郎だ)」
ドイツ「ドイツ! ドイツ!!」(迫真の表情で無実を訴えるドイツ)
ドドドウォリアー「ドドド!(特別意訳:脱いでみろ!)」スポ
リュウガ「ドイツ――!」
火霊使いヒータ「…………」
クリボー「…………」
ドドドウォリアー「…………」
ドドドバスター「…………」
しばし訪れる、静寂の時間。番兵から発せられる凍てつくような鋭い視線。リュウガは最悪の状況も覚悟した。しかし――
ドドドウォリアー「ドドドー! (特別意訳:いやあ悪かった!)」
ドドドバスター「ドド、ドド! (特別意訳:どんな奴かと思ったが、気の良さそうなアンちゃんじゃないか!)」
ドドドウォリアー「ドド、ドドドー! (特別意訳:これに懲りたら、そのタイツは止めとくんだな!)」
リュウガ「……ドイツ」
どうやら、九死に一生を得たらしい。
クリボ「クリクリー(特別意訳:仕事頑張ってねー)」
ドドドウォリアー「ドドドー!」
???「…………」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
関所を抜け、更に塔へと接近する。
バーバリアン1号・2号「……!」エッサッホイサッ
ワイトキング「……」アーダコーダ
ワイト「……」ハイ、ワカリマシタ
ドリアード「C区画36班の皆さん! 休憩に入ってください!」
はにわ「……」プルプル、ポテッ
クリッター「またはにわが倒れたー!」
ディアン・ケト「無理するなって言ったのに……。さあどいて、ケガ人が通るわよ」
ドンドンカンカンワチャワチャザワザワ
リュウガ「なんていうか……賑やかで、騒がしいな」
火霊使いヒータ改めアズハ「うん……凄いね」
きつね火改めハネクリボー「クリー……」
???「……」スー
リュウガ「ん?」
カードガンナー「ピポパピポポ?」
クリボー「クリクリ!」
カードガンナー「ピポピポ!」スー
リュウガ「……後を追えばいいのか?」
クリボー「クリ!」
リュウガ「って、塔の中に入っていくけど……」
アズハ「とりあえず、ついて行ってみよ?」
リュウガ「ああ。わかった」
塔建設の喧騒を後にして、一行は塔の中に入っていった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
塔の内側は既に完成されているようであり、実に煌びやかだった。壁は光を弾くまでに磨き上げられ、装飾がいたる箇所に施されていた。
リュウガ「まるで王様でもいそうな場所だ――待てよ」
リュウガは自らの発した言葉を再確認する。その言葉は比喩でもなんでもなく、実際に王にあたる人物がいるのではないか、と。
そう考えると、辻褄が合った。
これだけ多種多様なモンスターは、一体なぜ一つの集団として成立しているのか。彼らはなんのために塔を建設しているのか。
その答え。王が彼らをまとめ上げ、その目的のために彼らを動かしている――それで説明はつく。
そんな思考を巡らせているうちに、どうやら着いていたようだ。
相対するは、黄金の玉座。そして――
???「よく来たな。待っていたぞ、名もなきファラオ。そして、懸け橋の名を継ぐ者よ」
黄金の玉座から立ち上がり、こちらを見下ろす男。そこには、何者であろうとも平伏してしまいそうな圧倒的なカリスマと、神にすら立ち向かおうとする不遜な傲慢無礼の性質があった。
アズハ「……あなたは?」
???「我の名? ――そうだな、今まではただ単純に王と呼ばれていたが、それではつまらん。名の王、シェムとでも」
リュウガ「……シェム」
シェム「では早速だが、名もなきファラオよ……我と婚姻を結ぼうではないか」
アズハ「……え?」
リュウガ「あの王様何言ってるんだ……!?」
シェム「――我の妻となれと言っているのだ!!」
・・・・・・
クリボー、ハネクリボー「「クリーーー!!?」
★ ☆ ★ ☆ ★
次回予告!
なっ、なっ、なっ、なにあの王さま! 急に妻だなんて言い出して――
シェム「よい! 貴様はとてもよいぞ! 名もなきファラオよ!!」
アズハ「ちょっと! 次回予告にまで入ってこないでよ!」
シェム「よいではないか、よいではないか――」
アズハ「たっ、助けてクリボー」
ハネクリボー「クリクリー……」
シェム「フ、フフ、フハハハハハ!!
次回、「神の門」!!
――楽しみにしているがよいぞ」
アズハ「……お楽しみに」
リュウガ「……こりゃあ一大事業だな」
塔の周囲には、姿かたち、種族や属性も異なる様々なモンスターたちがひしめき合っていた。彼らは皆一様にレンガを積んだ荷車やアスファルトを入れていると思しき容器を携え、塔へと向かっていた。
更に、塔ではモンスターたちがレンガを積み上げ、アスファルトで塗装を行っている最中だった。
リュウガ「……どうなっているんだ、これ」
クリボー「クリクリー?」
確実にわかったことは一つ。数多のモンスターが労働力として塔に集まっており、ただ今絶賛仕事中だということだ。
もう少し、双眼鏡で様子を探る。
塔の外周には所々関所のようなものが設けられおり、モンスターたちはそこを通ってから塔へ向かっているようだった。
リュウガ「外からの労働者もやって来ているってことか……」
だが一体、何のために彼らはこのようなものを作るのか。そもそも、どうしてこのように様々なモンスターが協力し合い、建設を行っているのか。その疑問は晴れない。
リュウガ「ま、そこはおいおい確かめるしかないか」
リュウガは双眼鏡をポーチにしまいこむ。この間、アズハは遥か眼前の様子に集中し、その切迫した表情を崩さなかった。
リュウガ「大丈夫か、アズハ?」
アズハ「……こんなことになっちゃったのは、わたしに関係があるんだよね」
リュウガ「…………」
アズハ「なら、わたしがなんとかしないと……」
リュウガ「……俺たちで、だ。な?」
ハネクリボー「クリ!」
アズハ「……うん。それで、これからどうするの?」
リュウガ「ああ。ちょうど今、いい案が思いついた」
リュウガは通信端末を操作し、バックアップ班に連絡を取る。まだここでは通信は可能らしい。
リュウガ「至急、用意してもらいたいものがあるんだ。――――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
塔へ向かう、モンスターの一行。どうやら彼らも、バベルの塔の建設事業を手伝いにやってきたようだ。
全身タイツのオレンジ色の人型とピンク色の髪の少女が荷車を曳いている。少女の右肩には狐がちょこんと乗っている。荷車にはレンガが積まれており、その上には布が被せられている。その頂点には、トゥーン・クリボーが座っており、どうやら荷車を曳く二人(?)を鼓舞しているようだった。
火霊使いヒータ「ねえ……ほんとに大丈夫かな?」
ドイツ「まあ、見た目だけなら大丈夫だ。……それにしても似合ってるな」
火霊使いヒータ「えへ、ありがとう、りゅ――ドイツさん」
きつね火「クリっ! クリクリー!」
ドイツ「……わかってる。わかってるよそんなこと……」
クリボー「クリ!」
ゆっくりと関所に近づく。そこには番兵として、攻撃力の高そうな二体の兵士が置かれていた。
ドドドウォリアー「ドド! ドドド?(特別意訳:止まってもらおう! お前たち、一体何用で来た?)」
クリボー「クリ、クリクリー、クリ! クリックリ! (特別意訳:ボクたちも、塔の建設を手伝う為にはるばるやってきたんだ! レンガも持ってきた!)」
ドドドバスター「ドドドー!(特別意訳:それはありがたい!)」
きつね火「……クーリ」
ドドドウォリアー「ドドド! ……ドドー?(特別意訳:いや待て! ……お前怪しいな?)」
ドイツ「ど、ドイツ?」
ドドドウォーリアー「ド、ド! (特別意訳:お前だ、お前!)」
火霊使いヒータ「……ゴクリ」
ドドドバスター「ドー……ドドド(特別意訳:確かに……気持ち悪いタイツ野郎だ)」
ドイツ「ドイツ! ドイツ!!」(迫真の表情で無実を訴えるドイツ)
ドドドウォリアー「ドドド!(特別意訳:脱いでみろ!)」スポ
リュウガ「ドイツ――!」
火霊使いヒータ「…………」
クリボー「…………」
ドドドウォリアー「…………」
ドドドバスター「…………」
しばし訪れる、静寂の時間。番兵から発せられる凍てつくような鋭い視線。リュウガは最悪の状況も覚悟した。しかし――
ドドドウォリアー「ドドドー! (特別意訳:いやあ悪かった!)」
ドドドバスター「ドド、ドド! (特別意訳:どんな奴かと思ったが、気の良さそうなアンちゃんじゃないか!)」
ドドドウォリアー「ドド、ドドドー! (特別意訳:これに懲りたら、そのタイツは止めとくんだな!)」
リュウガ「……ドイツ」
どうやら、九死に一生を得たらしい。
クリボ「クリクリー(特別意訳:仕事頑張ってねー)」
ドドドウォリアー「ドドドー!」
???「…………」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
関所を抜け、更に塔へと接近する。
バーバリアン1号・2号「……!」エッサッホイサッ
ワイトキング「……」アーダコーダ
ワイト「……」ハイ、ワカリマシタ
ドリアード「C区画36班の皆さん! 休憩に入ってください!」
はにわ「……」プルプル、ポテッ
クリッター「またはにわが倒れたー!」
ディアン・ケト「無理するなって言ったのに……。さあどいて、ケガ人が通るわよ」
ドンドンカンカンワチャワチャザワザワ
リュウガ「なんていうか……賑やかで、騒がしいな」
火霊使いヒータ改めアズハ「うん……凄いね」
きつね火改めハネクリボー「クリー……」
???「……」スー
リュウガ「ん?」
カードガンナー「ピポパピポポ?」
クリボー「クリクリ!」
カードガンナー「ピポピポ!」スー
リュウガ「……後を追えばいいのか?」
クリボー「クリ!」
リュウガ「って、塔の中に入っていくけど……」
アズハ「とりあえず、ついて行ってみよ?」
リュウガ「ああ。わかった」
塔建設の喧騒を後にして、一行は塔の中に入っていった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
塔の内側は既に完成されているようであり、実に煌びやかだった。壁は光を弾くまでに磨き上げられ、装飾がいたる箇所に施されていた。
リュウガ「まるで王様でもいそうな場所だ――待てよ」
リュウガは自らの発した言葉を再確認する。その言葉は比喩でもなんでもなく、実際に王にあたる人物がいるのではないか、と。
そう考えると、辻褄が合った。
これだけ多種多様なモンスターは、一体なぜ一つの集団として成立しているのか。彼らはなんのために塔を建設しているのか。
その答え。王が彼らをまとめ上げ、その目的のために彼らを動かしている――それで説明はつく。
そんな思考を巡らせているうちに、どうやら着いていたようだ。
相対するは、黄金の玉座。そして――
???「よく来たな。待っていたぞ、名もなきファラオ。そして、懸け橋の名を継ぐ者よ」
黄金の玉座から立ち上がり、こちらを見下ろす男。そこには、何者であろうとも平伏してしまいそうな圧倒的なカリスマと、神にすら立ち向かおうとする不遜な傲慢無礼の性質があった。
アズハ「……あなたは?」
???「我の名? ――そうだな、今まではただ単純に王と呼ばれていたが、それではつまらん。名の王、シェムとでも」
リュウガ「……シェム」
シェム「では早速だが、名もなきファラオよ……我と婚姻を結ぼうではないか」
アズハ「……え?」
リュウガ「あの王様何言ってるんだ……!?」
シェム「――我の妻となれと言っているのだ!!」
・・・・・・
クリボー、ハネクリボー「「クリーーー!!?」
★ ☆ ★ ☆ ★
次回予告!
なっ、なっ、なっ、なにあの王さま! 急に妻だなんて言い出して――
シェム「よい! 貴様はとてもよいぞ! 名もなきファラオよ!!」
アズハ「ちょっと! 次回予告にまで入ってこないでよ!」
シェム「よいではないか、よいではないか――」
アズハ「たっ、助けてクリボー」
ハネクリボー「クリクリー……」
シェム「フ、フフ、フハハハハハ!!
次回、「神の門」!!
――楽しみにしているがよいぞ」
アズハ「……お楽しみに」
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