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ライーヌの日常ードタバタ女神の暴走劇 作:名無しのゴーレム
『……ただいまを以って、本日のショーは終了しました。お帰りの際は係りの方の誘導に従って、ゆっくりと……』
「……ねぇ、何なの最後のあれ! あんなの予定になかったよね!?」
「ライーヌがそれを言うの!? ライーヌのせいで私が突然他の団員に猛獣をけしかける危ない女みたいに思われたじゃない!? あのくだり、段取り表にもちゃんと書いてあったわよね!?…もしかしてライーヌ、この前渡した修正版の段取り表見てなかったの!?」
「え? ……み、見てるに決まってるじゃん……」
「……見てないのね。これで何度目よ! 司会がそんなのじゃ私たちが、特にカトレアちゃんなんかが苦労するんだからかね! ねぇカトレアちゃん!」
「え、えぇ〜!! ……すみません、お客様の誘導に行ってきます!」
「あ、逃げた。」
「……ハァ、まあいいわ。とにかくライーヌ、あなたはもっと……」
「わ、私もカトレアちゃんと一緒に行ってくる〜〜!!」
「こら! 逃げるな、待ちなさい!!」
「……ふぅ〜、何とか終わったね。カトレアちゃん、さっきはナイスアシスト! おかげでフィアスのお説教から逃げられたよ!」
「いや、別にライーヌさんのアシストをしたつもりは……」
「またまた〜、お礼に何か甘い物でも食べに行こうよ! 私が奢るからさ!」
「え、本当ですか!? ありがとうございます!」
「よ〜し、……あ、ロール、それにスワン! 今から一緒に出掛けない? スイーツ食べに行くんだけど!」
「え!? 行きたいです、ライーヌさん……」
「駄目よロール。すみませんライーヌさん、私たちこれからスニックさんと合同のパフォーマンスの練習がありまして……」
「あ、そうだったっけ。残念です〜……」
「そうなんだ。……仕方ないか、なら2人だけで……」
「すみませんライーヌさん、パフォーマンスの練習なら私も準備の打ち合わせとかがあると思うので、今日のところは……」
「……えぇ!? ウソでしょ!? あ、ちょっ、待ってよ〜!!」
「……ってことがあってさ〜。最近皆、私に対してなんか冷たくない? クランはどう思う?」
「ん〜、そうだね〜、フィアスが怒るのは当然だとして〜、他のみんなはたまたま予定が合わなかっただけだし〜、別にライーヌが嫌いってことは無いと思うけどね〜。」
「そうかな〜? 前はもっと一緒に出掛けてたような気がするんだけど……」
「それはさ〜、きっとおいらたちの評判が上がって忙しくなってるからだよ〜。実際〜、今日もすごく盛り上がってたでしょ〜?」
「……まあ、そうだけどさ……ずっと思ってたんだけどさ、クランってそんな間延びした喋り方してすごくおっとりしてるのにショーの時には一回も失敗しないよね? なんかコツでもあるの?」
「んーとね〜、コツか〜、……いっぱい練習することかな〜?」
「練習か〜。でも司会の練習って何するの? うちの場合、別に台本とかがある訳でも無いし、基本はアドリブでしょ?」
「おいらはライーヌは今のままでいいと思うけどね〜。お客さんたちもライーヌの司会が一番面白いって言ってたよ〜。」
「本当!? いやー、そう言われるとちょっと恥ずかしいかな〜。でも、ならこれからもこの調子でいけば……」
「ずっとフィアスに怒られっぱなしになるね〜。そのうちあのライオンのエサにされるかも〜。」
「えっ!? そんなことされたら死んじゃうよ! お願いクラン、何とかして〜!」
「おいらに言われてもな〜、ちゃんと段取り表を見とけばいいんじゃない〜?」
「それは分かってるんだけどさ、なんか偶然に偶然が重なって見そびれると言うか……ハッ、まさか神様が私に試練を!?」
「アハハ〜、神様は女神様にも試練を与えるの〜? ……ん〜?」
「何だろ、さっきの音? あっちからだったよね?」
「そーだと思うよ〜。たぶん……」
「ちょっと見てくるね! 分かったらクランにも教えてあげるから!」
「あれは〜……あ〜、行っちゃったか〜。」
「……こんな感じでいいですか?」
「ああ、文句の付け所が無いな。さすがエンジ君だ、いつも僕たちの期待を上回る装置を作ってくれるね。」
「ねえねえ、今の音って……何それ!?」
「……あ、ライーヌさん。お疲れ様です。」
「あ、お疲れ〜…じゃなくて! これは!? まさかエンジ君が作ったの!?」
「そうですよ。これはショーの開始をお知らせする大砲ですが……皆さん知っているはずでは?」
「え!? いやいや知らないって! スニック、私のところにだけ連絡し忘れんじゃないの?」
「いや、僕のせいにされても……こういう連絡はカトレアちゃんに任せているはずでは? ……と言うか、ライーヌさんが聞きそびれただけなのでは?」
「私のせいだって言うの!? 失礼な、私が連絡を聞き損なうなんてことある訳……あったんだった。」
「あるんですか……いや、次のショーには間に合わせたかったので、エンジ君には頑張ってもらいましたよ。何たって次の場所は……」
「あ〜、確か……イヴェール、だったっけ?カトレアちゃんの故郷なんだよね?」
「らしいですね。その準備もありますから、しばらくは忙しいことになりそうです。」
「そうなんだ。頑張ってね〜。」
「……なんで他人事みたいな言い方を? …おっと、スワンとロールを待たせていたんでした。それではまた……」
「……行っちゃった。エンジ君、その大砲ってさっきみたいな大きな音を出すだけのやつなの?」
「はい。そのつもりですが……」
「なんか飛ばせたりしないの?」
「……何か、とは?」
「例えば……人とか!」
「……死にますよ?」
「……だよね〜。にしてもすごいよね〜、こんな大砲まで作っちゃうなんてさ。どこで教わったの?」
「……故郷の国で。あそこはこういう技術がとても進んでいますから。」
「へぇ〜、そうなんだ。」
「……あ、そうだ。パラギアさんがライーヌさんを探してましたよ。さっきのショーのラストで怪我してないか心配だって言って……」
「え!? ……今まで誰も心配してくれなかったのに…やっぱりパラギアは良い子だよ! 会いに行ってくる!」
「あ……ライーヌさん、場所、知らないよな?」
「……あ、リュー! パラギア見なかった?」
「……ライーヌ様、その呼び方は止めていただけませんか? 私に名などありません、ましてやあだ名など……」
「え〜、でも名前が無かったら不便じゃん! それとも『リュー』が嫌なの?」
「いや、その名が気に入らないのではなくてですね……そのままイリュージョニストと呼んでくださればいいんです。」
「いや、さすがにそれは長いって〜! だってさ〜……」
『えー、連絡です。リューさん、お客様が来ていますので、至急裏口に来てください。』
「…………」
「ほら、もう浸透してるよ? ねえ、次からショーのときもこの呼び方でいい?」
「よくありませんよ。……とにかく、呼び出されたので私は向かいます。それでは。」
「あ、うん……ん? 今のってパラギアの声だよね? …よし、行ってみよう!」
「……ふぅ。それにしてもライーヌさん、どこに居るんだろう……」
「パラギア〜!! 心配してくれてありがとう〜!!」
「え、わわっ!! ライーヌさん、一体何ですか!?」
「照れなくていいんだよパラギア! エンジ君から私の体の心配をしてくれているって聞いたんだから! いや〜、私もいい後輩を持ったもんだよ!」
「そ、そこまで言われるとちょっと照れちゃうな……それで、体には何もありませんか?」
「うん! この通り、元気いっぱいだよ!そうだパラギア、一緒に外に出かけない? ショーも終わったんだからいいでしょ?」
「はい! 今から準備を……」
「……2人とも、ここにいたか。悪いが来てくれないか?」
「あ、ブライトさん。何かありましたか?」
「え〜、ブライト、私たち今から出かけるんだけど〜。」
「そうだったか、だがこちらも大事な用なんだ。何たって新しい団員候補が来ているんだからな。」
「え……?」
「なになに、団員が増えるの!? どんな人なの?」
「それを見てもらいたいんだ。団長の俺、それとお前たちから見てどうか、それで採用するかを決定するつもりだ。どうだ?」
「やるやる! 面接試験ってやつだよね! 『当社への志望理由は?』とか聞いちゃおうかな?」
「ライーヌさん、うちは会社じゃないですよ……分かりました。精一杯努めさせてもらいます。」
「パラギアは固すぎだって! そんなんじゃ向こうも緊張しちゃうよ! さあ、レッツゴー!」
「ライーヌ、そっちじゃないぞ。」
「えぇ!? ブライト、早く行ってよ〜!」
「ライーヌが聞かなかったんだろ。……ライーヌ、お前には本当に感謝してるよ。」
「な、何をいきなり。頭でも打った?」
「茶化さないでくれよ。……俺たちがここまで来れたのも、すべてお前のおかげだからな。たまにはこうやって言葉にしておこうと思ってさ。」
「……ん? ってことは今日はブライトの奢りで打ち上げかな?」
「なっ!? 何でそうなるんだ!?」
「よーし、ならさっそく皆に言って来なくちゃ! ほら、パラギアも一緒に!」
「え、えぇ!? ま、待って下さ〜い!!」
「お、おい! ふざけんな! ……やっぱり前言撤回だ、この無茶苦茶女神が〜!!」
「あの、よかったんですか?」
「大丈夫大丈夫! ブライトはああ見えて周りに流されやすいから、先に周りを固めちゃえば期待に応えざるをえなくなっちゃうんだよ!」
「いや、そっちじゃなくて……今から面接ですよね?」
「……あ。大変だ! パラギア、急ごう!」
「え!? ライーヌさん、どこに行くんですか〜!?」
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