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跳躍の兎竜 作:匙川
「我がターン、ドロー!」
風圧が発生するほどの勢いのドロー。
宇崎は引いたカードを確認するや否や、魔法&罠ゾーンに繰り出す。
「我は手札より永続魔法、ムーン・ライスケーキを発動!」
フィールドが夜に変わり、満月が昇る。
月には兎が餅つきをするシルエットがコミカルに描かれていたが、気にする者はいない。
「このカードは1ターンに1度、我のフィールドのモンスター1体を守備表示にし、それが守備力2050以上の通常モンスターだった場合に1枚のドローを可能とする!」
ラビードラゴンは守備力2900の通常モンスター。
ドローの条件を満たしている。
「我は限界兎羽の効果でラビードラゴンを攻撃表示で特殊召喚! ムーン・ライスケーキの効果により、ラビードラゴンを守備表示にし、1枚ドロー!」
ドローカードを確認した宇崎は、硬い表情を僅かに崩して喜色を示した。
「装備魔法、大脱兎! このカードは装備したラビードラゴンに、直接攻撃を可能とする!」
「だが、このターンはラビードラゴンを攻撃表示には……」
「ムーン・ライスケーキ第2の効果! ラビードラゴンの守備力を攻撃力として扱い、守備表示のままで攻撃を可能とする!」
「何!?」
「行け、ラビードラゴン! ムーンライトストリーム!」
跳躍によって敵陣モンスターをすり抜け、兎竜の蹴撃が挑戦者を襲う。
「ぐああああ!」
ユーイチ LP:4000→1100
「くっ、だが次のターンでラビードラゴンを破壊すれば装備魔法は……」
「いや、そうはならない。大脱兎は装備モンスターが破壊されることによって墓地へ送られた場合、手札に戻すことができる」
「それじゃ、このターンでどうにかしないと負けかよ……」
突きつけられた敗北への道筋。
ギャラリーも冷めた反応へと変わる。
「あーあ、終わったな」
「やっぱり新人がいきなりランキング82位に挑戦なんて無理無理」
「この街のシステムじゃ、下剋上なんてあり得ないって」
「ユーイチ君……」
トモヒサだけが、ユーイチを心配そうに見つめていた。
「我はターンエンドだ。……サレンダーを恥とは思わぬ。敗北を自らの糧とし、成長するためならばな。さあ、どうする?」
「冗談」
ユーイチは一瞬トモヒサと目を合わせると、ふっと微笑んだ。
「こんなに楽しいデュエル、頼まれたって止めてやらないね」
「……そうか。その意気や良し! ならば全力で、我が牙城に食らいついてみせよ!」
TURN CHANGE
「俺のターン……ドロー!」
劣勢を感じさせない、力強いドロー。
引き込んだカードは。
「来た来た来たぁ! 魔法カード、愛反機装甲弾《リーベ・リオン・アーマーパージ》! 俺のフィールドのEXデッキから特殊召喚された「愛反機」モンスター1体と、相手フィールドのカード2枚を破壊する!」
「ぬっ、我のフィールドは全滅してしまうか……」
「俺はⅡナイグングと……ムーン・ライスケーキ、そして大脱兎を破壊だ!」
「ラビードラゴンを残した!?」
「破壊されたⅡナイグングの効果で、墓地からアッフェットを手札に戻すぜ」
再び観客がざわめく。
ユーイチのプレイングへの疑問によってだ。
「確かにこれで大脱兎は戻らないが……」
「消極的すぎやしないか?」
「結局、次のターンを耐えられないんじゃ……」
その中で、一人だけ意図を読み取った者が居た。
「違う、ユーイチ君は……勝つためにラビードラゴンを残したんだ!」
「アッフェット、3度目の特殊召喚! そして……今度はこいつだ! 愛反機 アタッカメント!」
攻撃力 1000
「再びレベル4のモンスターが2体……来るか!」
「その前に……墓地のもう1体のアッフェットの効果。このカードを除外して、ⅡナイグングをEXデッキに戻す!」
「あくまでエースにこだわるか! 面白い!」
フィールドのモンスター2体が、跳び上がり交差する。
何が出てくるかなど、考えるまでもない。
「さあ、再出撃だ! 愛反機 Ⅱナイグング!」
先程よりも強く炎を吹き上げ、巨大な機体がフィールドに君臨する。
「バトルだ! Ⅱナイグングで、ラビードラゴンを攻撃! 効果により、攻撃力を8500までアップ!」
「来るか! だがラビードラゴンは守備表示、我に負けはない!」
「素材として取り除かれた、アタッカメントの効果!」
墓地のアタッカメントが光り、フィールドのⅡナイグングに力を与えていく。
「このカードが墓地へ送られたターン、俺の「愛反機」モンスター全てに、貫通効果を与える!」
「何だと!? それでは……」
「ラビードラゴンの守備力2900を超えた分、5600のダメージを受けてもらうぜ!」
兎竜と機械がぶつかり合う。
跳躍した竜を、炎を噴射し追いかける機体。
拳を振り下ろし、上空の竜を地に落とす。
その落ちる先は、持ち主たるプレイヤーの元だ。
「ぐっ……うわああああ!!」
宇崎 LP:4000→0
「や……やったぁー!」
トモヒサが自分のことのように喜んでいる中、周囲は大きく騒いでいた。
「マジかよ、未登録の新人がランキング100位内に勝ちやがった……!」
「すげぇ! あいつ何位からスタートだ!?」
「この街の歴史が変わるぞ!」
そんな中、ユーイチは何も変わらぬ様子で、宇崎に手を差し伸べていた。
「へへっ、あんたとのデュエル、ずっげぇ楽しかったぜ!」
「……ああ。我もまだ、未熟であったということか……」
その手を掴み、立ち上がる宇崎。
健闘を讃え合う二人に、場の盛り上がりは最高潮になって行く。
「ちくしょー! 俺もデュエルしたくなって来たー!」
「この街に来てから、義務感でばっかデュエルしてたけど……本当は俺、デュエルが好きで仕方なかったんだよ!」
「思い出させてくれてありがとうー!」
そして、立ち去ろうとするユーイチ。
トモヒサが思わず声をかける。
「待ってください、どこへ行くんです!」
「次のデュエルさ、こんなところで止まってられない。なんてったって俺の目的は、ランキング10位内だからな!」
「じゅ、10位内ぃ!?」
立ち去る二人の背を見て、ラビット宇崎が寂しげに呟く。
「ふっ、我とはそもそもの器が違ったか……だが、そうだな。きっとあの少年なら、やり遂げてしまうのだろう」
こうして、物語は始まった。
これは一人の少年が、挑戦し、邁進し、切磋琢磨し……一つの街を変えるまでの物語。
風圧が発生するほどの勢いのドロー。
宇崎は引いたカードを確認するや否や、魔法&罠ゾーンに繰り出す。
「我は手札より永続魔法、ムーン・ライスケーキを発動!」
フィールドが夜に変わり、満月が昇る。
月には兎が餅つきをするシルエットがコミカルに描かれていたが、気にする者はいない。
「このカードは1ターンに1度、我のフィールドのモンスター1体を守備表示にし、それが守備力2050以上の通常モンスターだった場合に1枚のドローを可能とする!」
ラビードラゴンは守備力2900の通常モンスター。
ドローの条件を満たしている。
「我は限界兎羽の効果でラビードラゴンを攻撃表示で特殊召喚! ムーン・ライスケーキの効果により、ラビードラゴンを守備表示にし、1枚ドロー!」
ドローカードを確認した宇崎は、硬い表情を僅かに崩して喜色を示した。
「装備魔法、大脱兎! このカードは装備したラビードラゴンに、直接攻撃を可能とする!」
「だが、このターンはラビードラゴンを攻撃表示には……」
「ムーン・ライスケーキ第2の効果! ラビードラゴンの守備力を攻撃力として扱い、守備表示のままで攻撃を可能とする!」
「何!?」
「行け、ラビードラゴン! ムーンライトストリーム!」
跳躍によって敵陣モンスターをすり抜け、兎竜の蹴撃が挑戦者を襲う。
「ぐああああ!」
ユーイチ LP:4000→1100
「くっ、だが次のターンでラビードラゴンを破壊すれば装備魔法は……」
「いや、そうはならない。大脱兎は装備モンスターが破壊されることによって墓地へ送られた場合、手札に戻すことができる」
「それじゃ、このターンでどうにかしないと負けかよ……」
突きつけられた敗北への道筋。
ギャラリーも冷めた反応へと変わる。
「あーあ、終わったな」
「やっぱり新人がいきなりランキング82位に挑戦なんて無理無理」
「この街のシステムじゃ、下剋上なんてあり得ないって」
「ユーイチ君……」
トモヒサだけが、ユーイチを心配そうに見つめていた。
「我はターンエンドだ。……サレンダーを恥とは思わぬ。敗北を自らの糧とし、成長するためならばな。さあ、どうする?」
「冗談」
ユーイチは一瞬トモヒサと目を合わせると、ふっと微笑んだ。
「こんなに楽しいデュエル、頼まれたって止めてやらないね」
「……そうか。その意気や良し! ならば全力で、我が牙城に食らいついてみせよ!」
TURN CHANGE
「俺のターン……ドロー!」
劣勢を感じさせない、力強いドロー。
引き込んだカードは。
「来た来た来たぁ! 魔法カード、愛反機装甲弾《リーベ・リオン・アーマーパージ》! 俺のフィールドのEXデッキから特殊召喚された「愛反機」モンスター1体と、相手フィールドのカード2枚を破壊する!」
「ぬっ、我のフィールドは全滅してしまうか……」
「俺はⅡナイグングと……ムーン・ライスケーキ、そして大脱兎を破壊だ!」
「ラビードラゴンを残した!?」
「破壊されたⅡナイグングの効果で、墓地からアッフェットを手札に戻すぜ」
再び観客がざわめく。
ユーイチのプレイングへの疑問によってだ。
「確かにこれで大脱兎は戻らないが……」
「消極的すぎやしないか?」
「結局、次のターンを耐えられないんじゃ……」
その中で、一人だけ意図を読み取った者が居た。
「違う、ユーイチ君は……勝つためにラビードラゴンを残したんだ!」
「アッフェット、3度目の特殊召喚! そして……今度はこいつだ! 愛反機 アタッカメント!」
攻撃力 1000
「再びレベル4のモンスターが2体……来るか!」
「その前に……墓地のもう1体のアッフェットの効果。このカードを除外して、ⅡナイグングをEXデッキに戻す!」
「あくまでエースにこだわるか! 面白い!」
フィールドのモンスター2体が、跳び上がり交差する。
何が出てくるかなど、考えるまでもない。
「さあ、再出撃だ! 愛反機 Ⅱナイグング!」
先程よりも強く炎を吹き上げ、巨大な機体がフィールドに君臨する。
「バトルだ! Ⅱナイグングで、ラビードラゴンを攻撃! 効果により、攻撃力を8500までアップ!」
「来るか! だがラビードラゴンは守備表示、我に負けはない!」
「素材として取り除かれた、アタッカメントの効果!」
墓地のアタッカメントが光り、フィールドのⅡナイグングに力を与えていく。
「このカードが墓地へ送られたターン、俺の「愛反機」モンスター全てに、貫通効果を与える!」
「何だと!? それでは……」
「ラビードラゴンの守備力2900を超えた分、5600のダメージを受けてもらうぜ!」
兎竜と機械がぶつかり合う。
跳躍した竜を、炎を噴射し追いかける機体。
拳を振り下ろし、上空の竜を地に落とす。
その落ちる先は、持ち主たるプレイヤーの元だ。
「ぐっ……うわああああ!!」
宇崎 LP:4000→0
「や……やったぁー!」
トモヒサが自分のことのように喜んでいる中、周囲は大きく騒いでいた。
「マジかよ、未登録の新人がランキング100位内に勝ちやがった……!」
「すげぇ! あいつ何位からスタートだ!?」
「この街の歴史が変わるぞ!」
そんな中、ユーイチは何も変わらぬ様子で、宇崎に手を差し伸べていた。
「へへっ、あんたとのデュエル、ずっげぇ楽しかったぜ!」
「……ああ。我もまだ、未熟であったということか……」
その手を掴み、立ち上がる宇崎。
健闘を讃え合う二人に、場の盛り上がりは最高潮になって行く。
「ちくしょー! 俺もデュエルしたくなって来たー!」
「この街に来てから、義務感でばっかデュエルしてたけど……本当は俺、デュエルが好きで仕方なかったんだよ!」
「思い出させてくれてありがとうー!」
そして、立ち去ろうとするユーイチ。
トモヒサが思わず声をかける。
「待ってください、どこへ行くんです!」
「次のデュエルさ、こんなところで止まってられない。なんてったって俺の目的は、ランキング10位内だからな!」
「じゅ、10位内ぃ!?」
立ち去る二人の背を見て、ラビット宇崎が寂しげに呟く。
「ふっ、我とはそもそもの器が違ったか……だが、そうだな。きっとあの少年なら、やり遂げてしまうのだろう」
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