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第2話 極寒の雪女VS紅蓮の竜 作:ター坊
~夏蓮サイド~
とうとう始まっちゃった…。
男山さんは盗られた私のカードのために学園でも数少ないAクラスの実力者の生徒会長・氷杖院詩音さんとデュエルすることに…。
詩音:LP 8000
遊太郎:LP 8000
「ま。Gクラス風情の初心者のためにレクチャーしながらやってあげますわ。先攻はいただきましてよ」
「ああ。構わねぇよ」
「ふん。可愛いげがない。まずは1ターンに1度、モンスターの召喚を行えますわ。私は『氷獄冷嬢(ひょうごくれいじょう)ボタン』を召喚」
雪を纏った風と共に雪女が召喚される。これがデュエルをする上で欠かせないソリッドビジョンシステムだ。
「出ましたわ。氷杖院様のモンスター!」
「優雅ですわ」
生徒会長さんの取り巻きたちが囃し立てる。
「静粛に。さて、モンスターには色々な効果を持つものがいますわ。例えば今召喚したこのボタン。デッキから同名以外の氷獄冷嬢を手札に加えますわ。これで『氷獄冷嬢タマ』を手札に加えます。そして魔法・罠を伏せることもできましてよ。私は1枚伏せてターンエンドですわ」
さすがはAクラス。手札をあまり減らさずに迎撃態勢を整えた。男山さん…大丈夫かな…。
「後攻はドローも攻撃も出来ますわよ?」
「…俺のターン、ドロー。俺は『喧嘩竜(ケンカ・ドラゴン)ドリル・ストレート』を召喚」
男山さんが召喚したのは竜人のような格闘モンスターだ。
「まぁガサツな貴方にはピッタリかしらね」
「さらに俺のフィールドに喧嘩竜がいるとき、手札から『喧嘩竜ライジング・アッパー』特殊召喚できる」
今度は小柄なドラゴンが出てくる。
「なんですの、そのちっぽけなドラゴンは?」
「すぐに分かるさ。ライジング・アッパーでボタンに攻撃」
「ん?フフ…おバカさんですこと!数比べも出来ないのかしら?」
生徒会長さんが嘲る。というのもデータを見ると男山さんのライジング・アッパーは攻撃力1200、一方のボタンは攻撃力1500…これじゃあ……
「そいつはどうかな?」
「え?えっ!」
喧嘩竜ライジング・アッパー ATK 2400 VS 氷獄冷嬢ボタン ATK 1500
ドラゴンのアッパーカットが雪女を空高く上げる。
「そ、そんな!」
「ちょっと!なんでアンタのモンスターの攻撃力が増えてるのよ!インチキよ!」
「そーよ、そーよ!」
取り巻きの女子生徒がヤジを飛ばす。
「ライジング・アッパーは自身のレベルよりも高いレベル・ランクのモンスターに攻撃した場合、ダメージステップの間、攻撃力が倍になる効果があるのさ」
「なっ!」
「テメェ言ったよな?モンスターには色々な効果を持つものがいるってなぁ」
「くっ!ま、まぁ花を持たせてあげたということにしときますわ」
「おっと。俺の攻撃はまだ続くぜ?次はドリルストレートで攻撃」
「そうはさせなくてよ!罠カード『朧吹雪』を発動!これでデッキからレベル4以下の氷獄冷嬢を特殊召喚できますわ!これでデッキから『氷獄冷嬢コシマリ』を特殊召喚しますわ!」
局地的な吹雪が発生し、そこから新たな雪女が召喚される。
「コシマリは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されませんわよ?」
「それでも行くぜ」
「これだからガサツな人は。無駄なことだと理解できませんこと?」
喧嘩竜ドリル・ストレート ATK 2850 VS 氷獄冷嬢コシマリ DEF 1500
「…っ!ダメージが!」
「ドリル・ストレートは守備モンスターに強くてな。貫通効果と守備モンスターに攻撃したら1000アップする効果がある」
「…生意気ですわ」
「それともうひとつ。戦闘ダメージを与えたらデッキから同名以外の喧嘩竜を加えられるぜ。『喧嘩竜クイック・ワンツー』を加えさせてもらう。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
詩音:LP 5750
遊太郎:LP 8000
すごい…。あんまりクラスでデュエルは見ないけど、Gクラスの人がここまでやるとは思わなかった。でも…
「…」
生徒会長さん、すごい怒ってるみたい…。
「まぁ、Gクラスにしては筋が良いですわね。…徹底的に叩き潰してあげますわ!私のターン、ドロー!私は『氷獄冷嬢ミゾレ』を召喚!そしてミゾレは1ターンに1度、墓地から水属性・アンデット族のモンスターを1体特殊召喚できますわ!蘇りなさいボタン!」
短髪の雪女がふぅと息を吹き掛けると氷の結晶が舞い、それが形をなして先程倒されたボタンになった。
「そしてコシマリの効果でフィールド全ての氷獄冷嬢のレベルを1つ上げますわ」
レベル5のモンスターが3体…!もしかして
「私はレベル5のアンデット族のモンスター3体でオーバーレイ!」
生徒会長さんがそう言うとモンスター達は3つの光の玉となって光の渦へと吸い込まれる。
「出ましたわ!氷杖院様のエクシーズ召喚!」
「同じレベルのモンスターを複数体揃えて可能になる召喚方法!」
「それをモンスター効果を用いて整えるなんてさすがは生徒会長!華麗ですぅ!」
「白銀の世界に舞い降りし女帝よ。逆らう愚者に凍てつく氷獄の裁きを下せ!エクシーズ召喚!ランク5!『氷獄女帝シラユキ』!」
光の渦が弾けて、ぶわっと猛吹雪が吹き抜けたと思いきやそこから豪華な着物に袖を通した雪のように真っ白い肌の雪女が姿を現す。
「シラユキの効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手フィールドのモンスター全ての攻撃力・守備力を0にし、モンスターの効果を無効にしますわ!」
「ちっ!」
雪女の吐息で竜人達が氷像と化す。
「バトル!まずはドリル・ストレートを攻撃!」
氷獄女帝シラユキ ATK 3000 VS 喧嘩竜ドリル・ストレート ATK 0
「私のモンスターが戦闘破壊したことで手札から速攻魔法『災厄の猛吹雪』を発動!その戦闘を行ったモンスターにもう一度の攻撃出来る権利とモンスターとのバトルにおける戦闘ダメージを倍にする効果を与えますわ!」
いけない!もし次のバトルが成立したら6000の戦闘ダメージで負けちゃう。
「男山さん!」
私はつい大声で叫んでしまう。
「無駄ですわ。所詮はGクラス。ですがまぁその割には頑張った方と褒めてあげますわ!誇りに思いなさい!シラユキでライジング・アッパーに攻撃!」
あ、もう…ダメ……!
「罠カード『男気の仁王立ち』を発動!これで俺は手札から『喧嘩竜クイック・ワンツー』を攻撃表示で特殊召喚し代わりにバトルを行わせる!この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン戦闘では破壊されない」
凍った小さな竜人の前に細身ながらも屈強な竜人が立ちはだかる。
「姑息な真似を…」
氷獄女帝シラユキ ATK 3000 VS 喧嘩竜クイック・ワンツー ATK 1700
「ふっ…」
「所詮は1ターン凌いだだけですわ!私はカードを1枚伏せてターンエンドですわ」
詩音:LP 5750
遊太郎:LP 2400
なんとかこのターンの負けは無くなったけど…。もう男山さんに勝ち目は…え?
「…」
わ、笑ってる?
「何がおかしいんですの?」
「いや。お前は口はゲスだが、デュエルの腕は上等、と思ってな」
「なんですって?」
「それでこそ喧嘩のし甲斐があるってもんだ」
「あら?まだ勝てると思ってるのかしら?時間の無駄ですからサレンダーして欲しいんですけど」
「まぁ見せてやるぜ、男の勝利をな!ドロー!」
一体何を引いたんだろう…。
「俺は『喧嘩竜フラッシュ・ジャブ』を召喚。コイツは相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターがいる場合、リリースなしで召喚できる」
やや大柄な竜人がファイティングポーズで現れる。
「そして俺のフィールドに喧嘩竜のレベルの合計が4以上の場合、手札からチューナーモンスター『喧嘩竜チビ・キック』を特殊召喚する」
「チュ、チューナー!?」
このデュエルを見ていた私も生徒会長さんの取り巻きの女子生徒達も驚きを隠せなかった。声にこそ出していなかったが生徒会長さんも信じられないといった表情だ。
「チューナーモンスター…。まさか…!」
「そのまさかだ。俺はレベル3のライジング・アッパーとレベル4のクイック・ワンツーに、レベル1のチビ・キックをチューニング!」
チューナーの小さな竜人が1本の大きな炎の輪となり、七つの星の粒となった他のモンスター達を囲む。
「そんな!Gクラスで…」
「喧嘩でたぎる血潮と闘志!紅蓮の拳で理(ことわり)も限界も、全てをぶち抜け!シンクロ召喚!『喧嘩竜グレン・ショウリン』!」
燃え盛る焔から赤い鱗の竜が立ち上がり、咆哮を轟かせる。
チューナーと呼ばれる特殊なモンスターを用いて初めて行える召喚方法、シンクロ召喚。Gクラスのデュエリストではまずあり得ない召喚方法だ。
「たかがGクラスのくせに…シンクロ召喚…!?…いやまさか、貴方……」
「行くぜ。グレン・ショウリンでシラユキを攻撃!」
赤い巨竜は拳を燃やして雪の女帝に突っ込んでいく。
「水属性モンスターへの攻撃に対して罠カード『吹雪のバリア―ブリザードフォース』を発動!これで相手フィールドの攻撃表示のモンスターを全滅させ、その攻撃力の合計の半分のダメージを与えますわ!」
「なら俺もグレン・ショウリンを対象に罠発動!『友情の拳』!俺は対象にしたモンスター以外のモンスターを1体リリースすることで2回攻撃を得る」
「それも無意味ですわ。破壊してしまえば…」
「そいつはどうだか」
「えっ?」
赤い巨竜の真っ赤な拳と白銀に煌めくバリアがぶつかる。けれど
ペキ、ペキペキ…バリィーーン!!
「そんな!私のブリザードフォースが割れた?」
「グレン・ショウリンは俺のライフが4000以下の場合、魔法・罠、モンスターの破壊効果を受けないぜ」
「そんな!ですが攻撃力は…はっ!まさか」
「その通りだ。グレン・ショウリン!強者との戦いでお前の拳を輝かせろ!」
赤い巨竜が吼えるとその赤く燃え盛る拳がさらに輝きを増し、まるで太陽のようだ。
「コイツが自身の攻撃力以上の攻撃力のモンスターとバトルを行う場合、俺の墓地から喧嘩竜を除外することで攻撃力をターン終了時まで倍にする!」
「攻撃力…5000…!」
「コイツのこの手が紅蓮に燃える!アイツに勝てと轟き吼える!必殺!!爆裂グレン・フィンガアアァァ!!」
喧嘩竜グレン・ショウリン ATK 5000 VS 氷獄女帝シラユキ ATK 3000
「…!」
「これでトドメだ!」
喧嘩竜グレン・ショウリン ATK 5000直接攻撃
「きゃあぁぁぁ!!」
ウソ…。勝っちゃった。生徒会長さんの取り巻きの女子生徒達もまさか負けるとは予想だにしなかっただろう。
「そ、そんな…。う、嘘ですわ。嘘じゃないならこれはそう……夢ですわ…」
「おい。とっととカード出せや」
負けた生徒会長さんに男山さんが詰め寄る。
「し、知りませんわ。そんなもの…」
「ふざけるなよ。テメェは負けたんだ。とっととカードを返せって言ってんだよ」
「負けた?Aクラスの私がGクラスの貴方に?」
「テメェ…。頭で解らねぇなら体を痛め付けて教えるしかねぇな」
「ひっ!」
本当にやりかねないような冷たい眼差しだ。
「お、男山さん!暴力はやめてください!」
「そうよ遊太郎ちゃん♪女の子にオイタをしちゃ、メッ、よ?」
え?上から誰かの声がする。それは
「カ、カトリーヌ学園長!」
だった。
「…」
男山さんも降り下ろしそうになった拳を引っ込める。
「何か問題があったみたいね。そーねぇ。確か天宮夏蓮さん、だったかしらん?」
「は、はい!」
「それと生徒会長の氷杖院詩音さん、遊太郎ちゃん。ちょっと学園長室にいらっしゃい」
そう言って学園長の姿は窓から消えた。
それにしても遊太郎ちゃんって…学園長と男山さんって親しいのかなぁ。
学園長直々の呼び出しということで緊張する。初めて来るんだもの。先頭には生徒会長さん、後ろには男山さん。この圧迫感に押し潰されそうだよぉ。
コンコン
「失礼致します。生徒会長、氷杖院詩音及び他二名、入室します」
生徒会長さんが学園長室のドアをノックする。
「開いてるわよーん♪」
学園長の声が応える。私達はゾロゾロと学園長室に入った。
初めて見る学園長室はとても広く壁には色んなトロフィーや賞状が飾られている。学園長先生自身、現役のSクラスのデュエリストで、色んな大会を勝ち抜いてきたんだっけ。
「あのカトリーヌ学園長…そのポーズは一体…?」
あのクールな生徒会長さんも唖然としてしまう。ガチムチマッチョの体には海パンと一昔前の漫才師が付けるような大きい蝶ネクタイしか身に付けていない。
「暇潰しのサイドチェストよん。分からないかしらねぇ?」
「も、申し訳ありませんがそちらの方は疎くて…」
「あら、そう」
学園長先生はちょっぴり残念そうに学園長室に似つかわしい豪華な執務用の机に備え付けられた高級そうな革張りの椅子に腰掛ける。
「それじゃ、本題に入ろうかしらん?まずこれはどういうことかしら?」
そう言って机の上のパソコンを見せられる。
『そうなの…じゃあ頂きますわね』
『そんな!どうして!?』
『だってこんなレアカード、貴方のクラスでは身の丈に合わないんですもの。クラスが低いデュエリストが持ち主なんて、このカードも可哀想ですわ』
『そんな!そんなのって無いと思います!』
『あ、そうそう。他のカードは別に要りませんわ』
あの時のやり取りの映像だ。生徒会長さんの顔色が一気に青ざめる。
「氷杖院さん。これは監視カメラの映像だけど、どういうことかしらねぇ?」
「そ、それはその…悪ふざけが過ぎてしまったと申しましょうか…」
「他人のカードの乱暴に扱うマナー違反は百歩譲って見逃すとしても、他人のカードの窃盗はデュエリストクラスの降格には充分な事由だと思うけどねぇ?」
「ク、クラスの降格は!クラスの降格だけはおやめ下さい!」
「そうねぇ。…天宮さんはどうしたいかしら?」
と、突然ふられた!あ、でも当然と言えば当然か…。
「えっと…。私は…えーっと……ただカードを返していただければそれで良いので、その…処罰などは…」
そう。別にカードが返ってくればそれで良い。1回クラスの降格になってしまえば取り戻すのに何年も掛かってしまう。…お互いに後味悪くなく終わるにはそれが一番だろう。
「なるほど…。優しいわねぇ。氷杖院さん。ならやることは1つよね?」
「…はい」
生徒会長さんはポケットから私のカードを取り出す。
「…この度は大変失礼致しました。貴方のカードを返還致します」
そう言ってカードを私に渡す。
「あ、ありがとうございます」
「…」
うっ!すごい睨んでる。
「…まあ被害者本人がいいって言うなら不問にするけど、以後注意するのよ?」
「はい。気を付けます」
「では氷杖院さん、天宮さん。それぞれ自分の教室に戻りなさい」
「はい。失礼しました」
「し、失礼しました」
そう言って私と生徒会長さんは学園長室を出た。退出した直後、生徒会長さんは物凄い早足で去っていきました。…絶対、生徒会長さんに恨まれたよねぇ。しかも来週からは男山さんも入学するし、私の学園生活、大丈夫かなぁ。
~学園長サイド~
氷杖院さんと天宮さんが出ていったわ。
「ささ、遊太郎ちゃん♪そこのソファーに座るといいわ」
アタシが促すと素直に座ってくれた。大きくなって心も少しは丸くなったみたいねぇ♪
「…伯父さん」
「シャラーーップ!!」
あらやだ。思わず野太い声で叫んじゃったわ♪
「学園ではカトリーヌ学園長とお呼びなさい」
「……学園長」
もう。素直じゃないんだから。
「それにしても急に飛行機のチケットまで使って呼び出すとは。どういう用件だ?」
「早速そこいっちゃうのねん?実は…」
~氷杖院サイド~
私の輝かしい人生においてここまで屈辱的な日はありませんでしたわ。よりにもよって…きぃっーー!思い出しただけで腹が立ちますわ!おのれ男山遊太郎!絶対に許しませんわ!!
…でも……うぅ…認めるのは癪に障りますが、実力はGクラスにしては高すぎますわね。シンクロ召喚も扱えるあたり、とてもデュエリストなりたて初心者のGクラスとは思えませんわ。…ということは……考えられる可能性は1つですわね。アイツの過去、帰ったらデータベースで調べてみましょうか。
とうとう始まっちゃった…。
男山さんは盗られた私のカードのために学園でも数少ないAクラスの実力者の生徒会長・氷杖院詩音さんとデュエルすることに…。
詩音:LP 8000
遊太郎:LP 8000
「ま。Gクラス風情の初心者のためにレクチャーしながらやってあげますわ。先攻はいただきましてよ」
「ああ。構わねぇよ」
「ふん。可愛いげがない。まずは1ターンに1度、モンスターの召喚を行えますわ。私は『氷獄冷嬢(ひょうごくれいじょう)ボタン』を召喚」
雪を纏った風と共に雪女が召喚される。これがデュエルをする上で欠かせないソリッドビジョンシステムだ。
「出ましたわ。氷杖院様のモンスター!」
「優雅ですわ」
生徒会長さんの取り巻きたちが囃し立てる。
「静粛に。さて、モンスターには色々な効果を持つものがいますわ。例えば今召喚したこのボタン。デッキから同名以外の氷獄冷嬢を手札に加えますわ。これで『氷獄冷嬢タマ』を手札に加えます。そして魔法・罠を伏せることもできましてよ。私は1枚伏せてターンエンドですわ」
さすがはAクラス。手札をあまり減らさずに迎撃態勢を整えた。男山さん…大丈夫かな…。
「後攻はドローも攻撃も出来ますわよ?」
「…俺のターン、ドロー。俺は『喧嘩竜(ケンカ・ドラゴン)ドリル・ストレート』を召喚」
男山さんが召喚したのは竜人のような格闘モンスターだ。
「まぁガサツな貴方にはピッタリかしらね」
「さらに俺のフィールドに喧嘩竜がいるとき、手札から『喧嘩竜ライジング・アッパー』特殊召喚できる」
今度は小柄なドラゴンが出てくる。
「なんですの、そのちっぽけなドラゴンは?」
「すぐに分かるさ。ライジング・アッパーでボタンに攻撃」
「ん?フフ…おバカさんですこと!数比べも出来ないのかしら?」
生徒会長さんが嘲る。というのもデータを見ると男山さんのライジング・アッパーは攻撃力1200、一方のボタンは攻撃力1500…これじゃあ……
「そいつはどうかな?」
「え?えっ!」
喧嘩竜ライジング・アッパー ATK 2400 VS 氷獄冷嬢ボタン ATK 1500
ドラゴンのアッパーカットが雪女を空高く上げる。
「そ、そんな!」
「ちょっと!なんでアンタのモンスターの攻撃力が増えてるのよ!インチキよ!」
「そーよ、そーよ!」
取り巻きの女子生徒がヤジを飛ばす。
「ライジング・アッパーは自身のレベルよりも高いレベル・ランクのモンスターに攻撃した場合、ダメージステップの間、攻撃力が倍になる効果があるのさ」
「なっ!」
「テメェ言ったよな?モンスターには色々な効果を持つものがいるってなぁ」
「くっ!ま、まぁ花を持たせてあげたということにしときますわ」
「おっと。俺の攻撃はまだ続くぜ?次はドリルストレートで攻撃」
「そうはさせなくてよ!罠カード『朧吹雪』を発動!これでデッキからレベル4以下の氷獄冷嬢を特殊召喚できますわ!これでデッキから『氷獄冷嬢コシマリ』を特殊召喚しますわ!」
局地的な吹雪が発生し、そこから新たな雪女が召喚される。
「コシマリは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されませんわよ?」
「それでも行くぜ」
「これだからガサツな人は。無駄なことだと理解できませんこと?」
喧嘩竜ドリル・ストレート ATK 2850 VS 氷獄冷嬢コシマリ DEF 1500
「…っ!ダメージが!」
「ドリル・ストレートは守備モンスターに強くてな。貫通効果と守備モンスターに攻撃したら1000アップする効果がある」
「…生意気ですわ」
「それともうひとつ。戦闘ダメージを与えたらデッキから同名以外の喧嘩竜を加えられるぜ。『喧嘩竜クイック・ワンツー』を加えさせてもらう。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
詩音:LP 5750
遊太郎:LP 8000
すごい…。あんまりクラスでデュエルは見ないけど、Gクラスの人がここまでやるとは思わなかった。でも…
「…」
生徒会長さん、すごい怒ってるみたい…。
「まぁ、Gクラスにしては筋が良いですわね。…徹底的に叩き潰してあげますわ!私のターン、ドロー!私は『氷獄冷嬢ミゾレ』を召喚!そしてミゾレは1ターンに1度、墓地から水属性・アンデット族のモンスターを1体特殊召喚できますわ!蘇りなさいボタン!」
短髪の雪女がふぅと息を吹き掛けると氷の結晶が舞い、それが形をなして先程倒されたボタンになった。
「そしてコシマリの効果でフィールド全ての氷獄冷嬢のレベルを1つ上げますわ」
レベル5のモンスターが3体…!もしかして
「私はレベル5のアンデット族のモンスター3体でオーバーレイ!」
生徒会長さんがそう言うとモンスター達は3つの光の玉となって光の渦へと吸い込まれる。
「出ましたわ!氷杖院様のエクシーズ召喚!」
「同じレベルのモンスターを複数体揃えて可能になる召喚方法!」
「それをモンスター効果を用いて整えるなんてさすがは生徒会長!華麗ですぅ!」
「白銀の世界に舞い降りし女帝よ。逆らう愚者に凍てつく氷獄の裁きを下せ!エクシーズ召喚!ランク5!『氷獄女帝シラユキ』!」
光の渦が弾けて、ぶわっと猛吹雪が吹き抜けたと思いきやそこから豪華な着物に袖を通した雪のように真っ白い肌の雪女が姿を現す。
「シラユキの効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手フィールドのモンスター全ての攻撃力・守備力を0にし、モンスターの効果を無効にしますわ!」
「ちっ!」
雪女の吐息で竜人達が氷像と化す。
「バトル!まずはドリル・ストレートを攻撃!」
氷獄女帝シラユキ ATK 3000 VS 喧嘩竜ドリル・ストレート ATK 0
「私のモンスターが戦闘破壊したことで手札から速攻魔法『災厄の猛吹雪』を発動!その戦闘を行ったモンスターにもう一度の攻撃出来る権利とモンスターとのバトルにおける戦闘ダメージを倍にする効果を与えますわ!」
いけない!もし次のバトルが成立したら6000の戦闘ダメージで負けちゃう。
「男山さん!」
私はつい大声で叫んでしまう。
「無駄ですわ。所詮はGクラス。ですがまぁその割には頑張った方と褒めてあげますわ!誇りに思いなさい!シラユキでライジング・アッパーに攻撃!」
あ、もう…ダメ……!
「罠カード『男気の仁王立ち』を発動!これで俺は手札から『喧嘩竜クイック・ワンツー』を攻撃表示で特殊召喚し代わりにバトルを行わせる!この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン戦闘では破壊されない」
凍った小さな竜人の前に細身ながらも屈強な竜人が立ちはだかる。
「姑息な真似を…」
氷獄女帝シラユキ ATK 3000 VS 喧嘩竜クイック・ワンツー ATK 1700
「ふっ…」
「所詮は1ターン凌いだだけですわ!私はカードを1枚伏せてターンエンドですわ」
詩音:LP 5750
遊太郎:LP 2400
なんとかこのターンの負けは無くなったけど…。もう男山さんに勝ち目は…え?
「…」
わ、笑ってる?
「何がおかしいんですの?」
「いや。お前は口はゲスだが、デュエルの腕は上等、と思ってな」
「なんですって?」
「それでこそ喧嘩のし甲斐があるってもんだ」
「あら?まだ勝てると思ってるのかしら?時間の無駄ですからサレンダーして欲しいんですけど」
「まぁ見せてやるぜ、男の勝利をな!ドロー!」
一体何を引いたんだろう…。
「俺は『喧嘩竜フラッシュ・ジャブ』を召喚。コイツは相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターがいる場合、リリースなしで召喚できる」
やや大柄な竜人がファイティングポーズで現れる。
「そして俺のフィールドに喧嘩竜のレベルの合計が4以上の場合、手札からチューナーモンスター『喧嘩竜チビ・キック』を特殊召喚する」
「チュ、チューナー!?」
このデュエルを見ていた私も生徒会長さんの取り巻きの女子生徒達も驚きを隠せなかった。声にこそ出していなかったが生徒会長さんも信じられないといった表情だ。
「チューナーモンスター…。まさか…!」
「そのまさかだ。俺はレベル3のライジング・アッパーとレベル4のクイック・ワンツーに、レベル1のチビ・キックをチューニング!」
チューナーの小さな竜人が1本の大きな炎の輪となり、七つの星の粒となった他のモンスター達を囲む。
「そんな!Gクラスで…」
「喧嘩でたぎる血潮と闘志!紅蓮の拳で理(ことわり)も限界も、全てをぶち抜け!シンクロ召喚!『喧嘩竜グレン・ショウリン』!」
燃え盛る焔から赤い鱗の竜が立ち上がり、咆哮を轟かせる。
チューナーと呼ばれる特殊なモンスターを用いて初めて行える召喚方法、シンクロ召喚。Gクラスのデュエリストではまずあり得ない召喚方法だ。
「たかがGクラスのくせに…シンクロ召喚…!?…いやまさか、貴方……」
「行くぜ。グレン・ショウリンでシラユキを攻撃!」
赤い巨竜は拳を燃やして雪の女帝に突っ込んでいく。
「水属性モンスターへの攻撃に対して罠カード『吹雪のバリア―ブリザードフォース』を発動!これで相手フィールドの攻撃表示のモンスターを全滅させ、その攻撃力の合計の半分のダメージを与えますわ!」
「なら俺もグレン・ショウリンを対象に罠発動!『友情の拳』!俺は対象にしたモンスター以外のモンスターを1体リリースすることで2回攻撃を得る」
「それも無意味ですわ。破壊してしまえば…」
「そいつはどうだか」
「えっ?」
赤い巨竜の真っ赤な拳と白銀に煌めくバリアがぶつかる。けれど
ペキ、ペキペキ…バリィーーン!!
「そんな!私のブリザードフォースが割れた?」
「グレン・ショウリンは俺のライフが4000以下の場合、魔法・罠、モンスターの破壊効果を受けないぜ」
「そんな!ですが攻撃力は…はっ!まさか」
「その通りだ。グレン・ショウリン!強者との戦いでお前の拳を輝かせろ!」
赤い巨竜が吼えるとその赤く燃え盛る拳がさらに輝きを増し、まるで太陽のようだ。
「コイツが自身の攻撃力以上の攻撃力のモンスターとバトルを行う場合、俺の墓地から喧嘩竜を除外することで攻撃力をターン終了時まで倍にする!」
「攻撃力…5000…!」
「コイツのこの手が紅蓮に燃える!アイツに勝てと轟き吼える!必殺!!爆裂グレン・フィンガアアァァ!!」
喧嘩竜グレン・ショウリン ATK 5000 VS 氷獄女帝シラユキ ATK 3000
「…!」
「これでトドメだ!」
喧嘩竜グレン・ショウリン ATK 5000直接攻撃
「きゃあぁぁぁ!!」
ウソ…。勝っちゃった。生徒会長さんの取り巻きの女子生徒達もまさか負けるとは予想だにしなかっただろう。
「そ、そんな…。う、嘘ですわ。嘘じゃないならこれはそう……夢ですわ…」
「おい。とっととカード出せや」
負けた生徒会長さんに男山さんが詰め寄る。
「し、知りませんわ。そんなもの…」
「ふざけるなよ。テメェは負けたんだ。とっととカードを返せって言ってんだよ」
「負けた?Aクラスの私がGクラスの貴方に?」
「テメェ…。頭で解らねぇなら体を痛め付けて教えるしかねぇな」
「ひっ!」
本当にやりかねないような冷たい眼差しだ。
「お、男山さん!暴力はやめてください!」
「そうよ遊太郎ちゃん♪女の子にオイタをしちゃ、メッ、よ?」
え?上から誰かの声がする。それは
「カ、カトリーヌ学園長!」
だった。
「…」
男山さんも降り下ろしそうになった拳を引っ込める。
「何か問題があったみたいね。そーねぇ。確か天宮夏蓮さん、だったかしらん?」
「は、はい!」
「それと生徒会長の氷杖院詩音さん、遊太郎ちゃん。ちょっと学園長室にいらっしゃい」
そう言って学園長の姿は窓から消えた。
それにしても遊太郎ちゃんって…学園長と男山さんって親しいのかなぁ。
学園長直々の呼び出しということで緊張する。初めて来るんだもの。先頭には生徒会長さん、後ろには男山さん。この圧迫感に押し潰されそうだよぉ。
コンコン
「失礼致します。生徒会長、氷杖院詩音及び他二名、入室します」
生徒会長さんが学園長室のドアをノックする。
「開いてるわよーん♪」
学園長の声が応える。私達はゾロゾロと学園長室に入った。
初めて見る学園長室はとても広く壁には色んなトロフィーや賞状が飾られている。学園長先生自身、現役のSクラスのデュエリストで、色んな大会を勝ち抜いてきたんだっけ。
「あのカトリーヌ学園長…そのポーズは一体…?」
あのクールな生徒会長さんも唖然としてしまう。ガチムチマッチョの体には海パンと一昔前の漫才師が付けるような大きい蝶ネクタイしか身に付けていない。
「暇潰しのサイドチェストよん。分からないかしらねぇ?」
「も、申し訳ありませんがそちらの方は疎くて…」
「あら、そう」
学園長先生はちょっぴり残念そうに学園長室に似つかわしい豪華な執務用の机に備え付けられた高級そうな革張りの椅子に腰掛ける。
「それじゃ、本題に入ろうかしらん?まずこれはどういうことかしら?」
そう言って机の上のパソコンを見せられる。
『そうなの…じゃあ頂きますわね』
『そんな!どうして!?』
『だってこんなレアカード、貴方のクラスでは身の丈に合わないんですもの。クラスが低いデュエリストが持ち主なんて、このカードも可哀想ですわ』
『そんな!そんなのって無いと思います!』
『あ、そうそう。他のカードは別に要りませんわ』
あの時のやり取りの映像だ。生徒会長さんの顔色が一気に青ざめる。
「氷杖院さん。これは監視カメラの映像だけど、どういうことかしらねぇ?」
「そ、それはその…悪ふざけが過ぎてしまったと申しましょうか…」
「他人のカードの乱暴に扱うマナー違反は百歩譲って見逃すとしても、他人のカードの窃盗はデュエリストクラスの降格には充分な事由だと思うけどねぇ?」
「ク、クラスの降格は!クラスの降格だけはおやめ下さい!」
「そうねぇ。…天宮さんはどうしたいかしら?」
と、突然ふられた!あ、でも当然と言えば当然か…。
「えっと…。私は…えーっと……ただカードを返していただければそれで良いので、その…処罰などは…」
そう。別にカードが返ってくればそれで良い。1回クラスの降格になってしまえば取り戻すのに何年も掛かってしまう。…お互いに後味悪くなく終わるにはそれが一番だろう。
「なるほど…。優しいわねぇ。氷杖院さん。ならやることは1つよね?」
「…はい」
生徒会長さんはポケットから私のカードを取り出す。
「…この度は大変失礼致しました。貴方のカードを返還致します」
そう言ってカードを私に渡す。
「あ、ありがとうございます」
「…」
うっ!すごい睨んでる。
「…まあ被害者本人がいいって言うなら不問にするけど、以後注意するのよ?」
「はい。気を付けます」
「では氷杖院さん、天宮さん。それぞれ自分の教室に戻りなさい」
「はい。失礼しました」
「し、失礼しました」
そう言って私と生徒会長さんは学園長室を出た。退出した直後、生徒会長さんは物凄い早足で去っていきました。…絶対、生徒会長さんに恨まれたよねぇ。しかも来週からは男山さんも入学するし、私の学園生活、大丈夫かなぁ。
~学園長サイド~
氷杖院さんと天宮さんが出ていったわ。
「ささ、遊太郎ちゃん♪そこのソファーに座るといいわ」
アタシが促すと素直に座ってくれた。大きくなって心も少しは丸くなったみたいねぇ♪
「…伯父さん」
「シャラーーップ!!」
あらやだ。思わず野太い声で叫んじゃったわ♪
「学園ではカトリーヌ学園長とお呼びなさい」
「……学園長」
もう。素直じゃないんだから。
「それにしても急に飛行機のチケットまで使って呼び出すとは。どういう用件だ?」
「早速そこいっちゃうのねん?実は…」
~氷杖院サイド~
私の輝かしい人生においてここまで屈辱的な日はありませんでしたわ。よりにもよって…きぃっーー!思い出しただけで腹が立ちますわ!おのれ男山遊太郎!絶対に許しませんわ!!
…でも……うぅ…認めるのは癪に障りますが、実力はGクラスにしては高すぎますわね。シンクロ召喚も扱えるあたり、とてもデュエリストなりたて初心者のGクラスとは思えませんわ。…ということは……考えられる可能性は1つですわね。アイツの過去、帰ったらデータベースで調べてみましょうか。
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エクシーズやシンクロが珍しがられるというのはARC−Vを彷彿とします。果たして遊太郎はどうやってシンクロ召喚を身につけたのやら……あと学園長のキャラが濃すぎて笑いました。 (2015-11-04 07:16)
ARC-Vでも特殊な召喚方法は塾とかで習っているためGクラスはまだ塾に入ったばかりの新米レベルって感じです。遊太郎の過去がこの学園にやって来た理由にもなりますのでその辺りを踏まえた上で読んでくださると楽しめると思います。
学園長、もとい登場キャラは口調で誰のセリフか一発で分かるくらい濃くするつもりです(学園長のオカマ口調や詩音のお嬢様口調など)。 (2015-11-04 07:29)
何となくGXを思い出すようなクラス間の格差社会・・・今後遊太郎はこの学園でどんな戦い(喧嘩?)をしていくのか、楽しみです! (2015-11-04 07:41)
海パン一丁のゴリマッチョオカマでも聖職者のトップです(大丈夫かなこの学園)。遊太郎の喧嘩はまだまだ始まったばかりなので今後もお楽しみいただけたら幸いです。 (2015-11-04 07:52)
長い召喚口上や必殺技叫んだりするのが遊戯王の伝統だと思うのでこんな感じに(なんだかGガ〇ダムっぽい)。次回もおおよそ1ヶ月後位を予定しています。
遊太郎の過去や今後の動向など気になるところがまだまだ多いと思いますが焦らずお待ちください。 (2015-11-04 22:47)