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遊☆戯☆王Twin Deaths/第9話:遊良の覚悟 作:とうかいりん

~前回のあらすじ~
誘拐事件の首謀者が悪霊だと突き止め、亜利沙は死神を総動員した一網打尽計画を打ち立てる。しかし、遊良と亜利沙は悪霊の罠に嵌ってしまい、亜空間に閉じ込められた。
遊良はCompassとのデュエルで退治を試みるが、効果ダメージを生業とする【トリックスター】の華麗なコンボに追い詰められる。残りライフ350の状況に立たされ、遊良は亜利沙から譲り受けたリンクモンスター『憎悪の勇者ランスロット・リヴォルト』に最後の望みを託したのだった。




「さて。Bloodの方は退治したが、少年はどうなっている……?」


 宣言通りにBloodを短時間で退治した亜利沙は、その流れで遊良の様子を確認しに行った。遊良のライフが350に対し、Compassのライフは5000。しかし、この絶望的な状況をこのターンで覆せるモンスターが遊良のフィールドには残されていた。



「ランスロット・リヴォルトの効果発動!墓地に存在するレベル5以上の戦士族・闇属性モンスター1体を特殊召喚する。蘇れ、『憎悪の勇者ランスロット』!」
「ハッ!折角ご大層なモンスターを呼び出しておいてそれだけか!!」
「更に、この効果でランスロットを特殊召喚した場合、お前に1250ポイントのダメージを与える!!」
「何ッ!?」
Compass→LP:3750



 ランスロット・リヴォルトの効果は、墓地から特定のモンスターを蘇生させること。加えてそれが『憎悪の勇者ランスロット』であれば、追加で1250ダメージを与えることができる。特殊召喚したランスロットと合わせて合計で2500もの効果ダメージを見込める強力な効果だが、遊良のライフは残り350。このまま効果を使えば自滅の一途を辿る。
 しかし彼のフィールドには前のターンで絶体絶命の危機を救ってくれた永続罠『湖の乙女の祝福』が残っている。折角リンク召喚したランスロット・リヴォルトをリリースする形にはなったが、Compassの墓地から『トリックスター・フォクシーウィッチ』を蘇生し、遊良のライフを2000ポイント回復させつつ800のダメージを与えてみせた。


「速攻魔法『ヘイトレッドハート・ラッシュ』を発動!フォクシーウィッチの攻撃力はターン終了時まで、ランスロットのレベル×200ポイント、つまり1400ポイントアップする。更にランスロットの効果発動!このカードをリリースし、フォクシーウィッチの攻撃力を1250ポイントアップする。その後、お互いは1250ポイントのダメージを受ける。だけど俺は『エレインの加護』の効果によって、受けるダメージは半減される」
弓弦→LP:1625
Compass→LP:1700



 速攻魔法『ヘイトレッドハート・ラッシュ』は自分フィールドのモンスターのレベルの合計×200ダメージを与える効果と、自分フィールドのモンスター1体に自軍のモンスターのレベルの合計×200の攻撃力を付与する効果から1つを選択して発動できる。ここで効果ダメージを与える効果を使ったとしても、フォクシーウィッチの攻撃力では相手のライフを100残してしまう。攻撃力を底上げするために2体のランスロットをリリースしたが、それによって得られた4850もの攻撃力は、このデュエルを終わらせるには充分だった。


「バトル!フォクシーウィッチで、ホーリーエンジェルを攻撃!!」
「俺様が、こんな雑魚にィィィィィ!!!!」
Compass→LP:0








 デュエル終了後、『悪夢の拷問部屋』に仕込まれた細工によって体力がすり減った遊良も倒れてしまった。しかし悪霊を2体とも退治したことで亜空間は崩壊し、死神2人と誘拐された学生達は全員、最後に亜利沙達がいた曲がり角に戻ってきたのだった。






「っ…!ここは……」
「私の部屋だ。気が付いたか、少年」
「誘拐された学生達、どうなりました……?」
「何とか全員、自宅の前まで送り届けた。少年が倒れたせいで負担は倍増だったぞ」
「うっ…」
「少年。今回は止められなかった私にも責任があるとはいえ、無茶な行動はあまりしないでくれ。万が一にでも敗北してしまえば、この事件は迷宮入りだったのだからな」
「はい……。すみませんでした」
「だが、【トリックスター】相手によく勝利を掴み取ったな。最高のグレードアップを迎えられたと、私は思うぞ」


 午前3時半。亜利沙の介抱もあって大事には至らず、無事に「一人前階級」にグレードアップすることができた。しかし今回の一件では、遊良が無茶な行動を起こしたせいで亜利沙にも多大な迷惑をかけてしまったことは否めない。遊良もその点については深く反省していたが、グレードアップの喜びからか立ち直りも早かった。


「さて少年。今回の悪霊退治で吉報と凶報の両方を入手した。どちらから聞きたい?」
「じゃあ、吉報で」
「三明神の内の1体が、現世にあることが分かった。そして凶報は、その具体的な在処だ」
「……何処、なんですか?」
「お前のクラスメートに四阿みづき、とやらがいるだろう。そいつの家に祀られているらしい」
「えっ」


 四阿家は代々、巫女としての活動を受け継いでおり、みづきは15歳にしてその正当な継承者だ。本来ならその役目は姉のいつきが継ぐことになっていたのだが、「霊感が強すぎるからこそ、これ以上姉を危険な目に遭わせたくない」というみづきの懇願によって彼女が受け継いだ。そのおかげで、いつきは4月から始まった大学生としての生活を謳歌できている。
 霊感が強い彼女とはいずれ関わる日が来るとは思っていたが、その時期が予想以上に早く、加えて「未極の希望」とも呼ばれている三明神を巡ってとは完全に不意を突かれた。しかしクラスメートの海神 侑としてならともかく、今は漣 弓弦という1人の死神として使命は全うしなければならない。



「午前4時。タイムリミットはせいぜい30分だが、それだけあれば充分だ。行くぞ」
「押忍」


 普通の泥棒ないし空き巣なら、家に忍び込むために幾つもの準備が必要になるが、死神ならば世界最高峰の防犯カメラだろうと決してその姿を捉えられない。何も恐れず堂々と正面から入ればよい……はずだったが、敷地内に入ってから僅か10歩でシェパードに吠えられた。まるで見えないはずの遊良と亜利沙の存在に気付いているかのように、明確な敵意を持って。


「うわっ!ビックリしたー……」
「まさかこの犬、私達が見えているとでもいうのか?」
「え?そんなまさか」
「少年、犬といえど侮るな。この世には狛犬というものがあるだろう」


 狛犬、といっても犬によく似た空想上の生物だが、神社および寺院を守るための存在として広く知られている。その由来には諸説あるが、中には「魔除け」として用いられたことから「拒魔(こま)犬」と呼ばれたという説も存在する。狛犬とは程遠い外見だが、その説が正しいと思わせられる位に威嚇し、魔除けの役割を立派に果たしている。並大抵の泥棒なら噛みつかれて即撤退するだろうが、死神が相手になればそうはいかなかった。


「コマ助ー!どうしたのー!?」


 コマ助、と呼ばれたその犬は威嚇をやめ、飼い主の声がする方向へと一目散に走って行った。その声の主は生前の遊良のクラスメート、四阿いつき本人だった。何故この時間に彼女が起きていたのか問い質したところ、大学で出されたレポートの提出期限が迫っていたらしく、睡眠時間を削っていたという話だ。その証拠に、彼女の目の下には少し隈ができていた。


「この前の死神さん……ですよね?先日は助けてくれて、どうもありがとうございました」
「あ、いえ……」
「大丈夫ですよ!あの件は誰にも言ってませんから!神に誓って!!」


 以前会った時とは異なり、いつきはよそよそしく振る舞っていた。亜利沙に半ば脅されたこともあって死神への苦手意識が芽生えたのだろうか、或いは目の前にいる死神の少年を遊良だと勘違いしてしまったことへの罪悪感か。結果的に彼女を騙す形になってしまい、遊良もかつての同級生に他人行儀で接している。


「それで、一体何の用ですか?」
「単刀直入に言う。お前の家に祀られている明神、暫く私達に預からせてはくれないだろうか?」
「えーっと……ごめんなさい。祭祀に関しては、妹に聞かないと分からないので」
「なら今すぐ呼び出してくれ。早急に話をつけたい」
「ちょ、ホヅミ先輩。今真夜中ですよ?」
「黙ってろ!これは私の問題だ!」


 400年という気が遠くなりそうな時間の中で見つけた、自分自身の運命に決着をつけられる機会。それを逃したくないという強い気持ちが先走り、亜利沙は珍しく声を荒げた。近所迷惑になることはないにしろ、遊良といつきはあまりの怒声に身体が震えた。みづきも同様に霊の存在を感じ取れるため、今の声で起こしてしまったのではないかと案じたが、いつき曰く「みづきは一度寝たら朝6時まで絶対に起きない」体質だったらしく、その件については事なきを得た。
 ただし、みづきが起きる時間帯は死神の活動時間から外れているため、遊良達にとっても好都合とは言えなかった。相手の同意無しで御神体を持っていくことは亜利沙の信念に反するため、目的達成はまた次の機会に持ち越しとなった。








「今朝はみっともない所を見せてしまったな。またとない機会を見つけて、冷静ではいられなくなった」
「いえ……。でも400年って、俺が考えてるよりずっと長い時間なんですよね。あの状況で冷静さを保てる人なんていないですよ」


 昼休み。遊良と亜利沙はいつものように屋上で昼食を摂りつつ、臨時の死神会議を開いていた。全国の死神を退治したことで未極には様々な情報が舞い込み、「閻魔の遣い」が2人であること、そしてそのメンバーが輪廻の他に「百鬼 条(なきり じょう)」だということが判明した。地獄に「鬼殺し」の肩書きを持つ者がいるという情報は半年前から持っていたが、それが輪廻と同じ部隊に所属していたことは亜利沙も初耳だった。


「先輩。百鬼とは俺が戦います」
「正気か?相手は鬼殺しだ。輪廻と同等の実力者かもしれんのだぞ」
「先輩だけに過酷な戦いを背負わせるつもり、ないですから」
「……お前だって両親の問題があるだろう」


 遊良の両親も輪廻や条と同様、地獄にいる。その問題は遊良が死神でいられる間に片付けなければならないが、それと併行して閻魔の遣いとも戦うのはあまりにも過酷だ。しかし遊良は、亜利沙が輪廻を倒すことを考え生きてきたことを知っているからこそ、その障害になり得る「鬼殺し」の標的を自分に向けさせることで余計な重荷を背負わせたくなかったのだ。
 遊良の優しさを汲み取ったところで臨時会議を一旦終え、亜利沙が爆弾を投下してきた。


「ところで少年、さっきから偶にボーッとしているが……。さては四阿家で会った女のことでも考えているのか?」
「な!?何で分かったんですか?」
「顔を見れば分かる。生前、お前があの女に友人以上の感情を抱いていたこと位はな」
「う……」


 生前の遊良は病気がちで、事ある毎に入院と退院を繰り返しながら学校に通っていた。半ば病院が自宅ともいえる彼の生命に終わりを迎える原因となった病は「白血病」。現代医学では治療可能な部類だが、遊良の家庭は両親がギャンブルに有り金全てを投資していたためあまり裕福とはいえず、預けられている祖父母の年金だけでは足りていなかった。しかし、そんな彼に救いの手を差し伸べたのが他ならぬ四阿いつきであり、結果的に治療を受けることができた。しかし、その助けも叶わず遊良は15歳という若さで他界してしまった。
 人間は短時間とはいえど、心臓が止まっても聴覚だけは機能しているという報告がある。その真偽は定かではないが、遊良の場合、側でいつきの咽び泣く声が聞こえていた。この時になってようやく、彼女の気持ちに気付くことができたのだが、時既に遅し。結果的に死神として現世で活動できるようになったが、今も尚、彼女に感謝の気持ちを伝えきれなかったことが1つの未練となっている。


「覚えておけ。一時の感情の迷いで自らの正体を明かしたことで、あの女がお前との繋がりを持っていることがバレたら、間違いなく閻魔の遣いの標的にされ続ける。お前が死神として存在し続ける限りな」
「そんな……」
「本来なら初めて再会した時に『自分は凪 遊良ではない』とハッキリ言うべきだったんだ」


 自分の正体を打ち明けて未練から解放したい。かといってそんなエゴを押し通してまで、無関係ないつきを戦いの渦中に巻き込みたくない。しかし真逆の選択をすれば、生前の彼女の恩を仇で返すことになってしまう。こういう時、亜利沙のように死神として長く活動していれば自分の存在すらも偽ることは容易いのだろうが、遊良はまだキャリアが浅く、死神としてまだ優しすぎる。そもそも15歳の男子は、好きな女子がいる世界で嘘を貫き通せるほど成熟した人間ではないのだ。


「少年、私は野暮用で明日から1週間ほど外遊する。その間、死神としての活動も休みだ」
「……」
「決めるなら今夜中だ。良い答えを待っているぞ」


 今夜中に決断を下さなければならない。その事実が遊良の心に一層の焦りを生み、昼休み終了を告げる鐘の音さえも彼の耳から吹き抜けていった。





「四阿さん、少し話したいことがあるんだけどいいかな?」
「どうしたの?海神くんから話しかけてくるなんて珍しいじゃない」
「四阿さんって、お姉さんいるよね?」
「ええ。でもあなたに話したことあったかしら?」
「実は昔、お姉さんには大変お世話になりまして……」


 授業が終わってすぐ、遊良はいつきに最も近しい存在であるみづきに声をかけた。流石に昔の同級生だったとは口が裂けても言わなかったが、知りたかった情報、即ち自分が他界してからの3年間に関する事柄は把握できた。話の途中でストーカー疑惑をかけられたが、いくら温厚な姉でもストーカーを笑って許すわけないと説得し事なきを得た。
 みづきとの会話の中で如何に姉を慕っているのかが節々に伝わってきたからこそ、いつきを騙し続けられる覚悟は崩壊しつつあった。



「肉まん1つください」
「150円です」


 放課後、生前行きつけだったコンビニで好物の肉まんを買い食いし、みづきから聞き出した情報を基に、遊良は自分の遺骨が納められている墓へ向かっていた。気持ちの整理をつけるためにこれ以上うってつけな場所はないと思っての事だったが、その道中で遊良は昔の自分を思い返していた。






───生前の記憶───

「凪?あぁ、あの白血くん?」
「まだ学校来てるの?マジ有り得ないんですけど」
「病気が移るから一生引き籠もってろよ」


 白血病を患った。それだけの理由で大半のクラスメートから腫れ物扱いを受けた中学時代。遊良は教室で満足に授業を受けることもできず、1年の2学期が始まる頃には保健室登校を始めていた。彼の病気や両親のいない家庭状況を理解している別クラスの友達が昼休みに保健室に顔を出してくれるとはいえ、それだけでは心の支えとして不十分な程、遊良への虐げはエスカレートしていった。
 2年生になると病気も悪化し、学校と病院の往復が続く生活が始まった。教室に顔を出す機会が殆どなかったため虐めを直接受けることはなかったが、周りの目が「そう」語っているのは明らかだった。そして丁度その時期からだっただろうか。同じクラスで、会話したのも指折りでしかなかった普通の女子、四阿いつきが積極的に関わってくるようになったのは。


「凪くんってさ、偉いよね」
「偉い……?何で?」
「だってさ、病気で色々大変なのにちゃんと学校にも通ってるじゃない。普通は体調悪いときは休むんだよ?」
「……何時この病気が治るか分からないから、闘うことしかできないんだ」
「……そっか。でも、カッコいいよ」


 病人を何故「カッコいい」と言うのか。あまりに予想外で返す言葉が見つからなかった事は記憶に新しかった。そしてこの時から、少しだけ彼女を意識するようになった。
 2年の2学期に入ってからは定期的に入院と退院を繰り返す生活が始まり、重くのしかかる身体への負担のせいで学校に行く機会が殆どなくなってしまった。授業に復帰した時のため、という口実でいつきが毎週ノートのコピーを渡しに自宅に来てくれたこともあり勉強には困らなかったが、その一方で「いつきが遊良のことを好きではないか」という根も葉もない噂が2人の知らない所で飛び交うようになっていたのだった。




 3年生にもなると入院生活が本格的に開始し、それに伴いいつきが学校終わりに毎日顔を出すようになった。蒸し暑さと降雨が続く梅雨に突入したというのに、彼女は嫌な顔一つ見せず、それどころか初めて話した時よりも元気な素振りで学校の話をしていた。


「凪くん!明日からプール開きなんだ!」
「……四阿さん、今日も来たの?」
「もしかして嫌だった?私が来るの」
「そうじゃないけど……。勉強とか色々あるのに、大丈夫なのかなって」


 中学3年生の夏、それは大半の生徒が部活動を引退し、受験勉強に励む時期。遊良もたまの気分転換に模試は受けているのだが、既に余命は半年を切っていた。それ故、何に対しても本気で向き合えず、いつきとも虚ろな瞳で話していた。


「凪くんさ、明日が来なければいいとか思ったことある?」
「……ずっと思ってる。今すぐにでも死んで楽になりたい」
「今の発言聞いたらお婆ちゃん悲しむよ?」
「そういう四阿さんは?無さそうだけど」
「私も、あるよ」
「えっ」
「ほら、この時期だとお母さんが勉強しろってうるさくって。この前の模試の結果がちょっと良くなかったからって怒鳴り散らすし」
「あー……」
「でもさ、今日までの経験が明日の自分に繋がるって考えたらさ、ちょっとだけ頑張ってみようかなって思えるんだ」


 結果的に病に打ち勝つことはできなかったが、いつきの励ましがあったからこそ当初の余命よりも3ヶ月だけ長く生きられた。「ちょっとだけ頑張る」ことの大切さを生前に教わったからこそ、遊良は未練を残しながらも第二の人生を過ごし、死神として悪霊退治も続けていられる。あの時いつきから貰ったものは、今でも遊良の中にちゃんとあった。


───生前の記憶、終───





「……やっぱりちゃんと話そう。でなきゃ、前に進めない」


 遊良の覚悟は決まった。しかし自分がいつきに正体を打ち明け、このまま普通に現世での生活を続ければ、「生ける亡霊」として嫌でも自分のことを認知してしまう。生前の遊良であれば、誰かを苦しませないためには自分が消えてしまえばいいという結論に迷い無く行き着いたのだが、今の遊良は戦いが終わるまでこの身を消すわけにはいかない。
 正体を明かした上で彼女を生涯苦しませず、自分たちの戦いに巻き込まない。あまりにも都合が良すぎる話だが、今の遊良は「死神」、つまりこの世界の理から脱した存在である。過去を変えるといった自然摂理に触れるような改変は行えないが、1人の人間に干渉することなら───。







 同日19時。わたぬき荘に戻った遊良は亜利沙の部屋にあがり、自身の覚悟を打ち明けた。反対される覚悟は出来ていたが、意外にも亜利沙はその意志を見せなかった。それどころか、自分が同じ状況に立たされたら間違いなく亜利沙自身もそうすると完全な形で同意を得られた。始めに正体を明かさないよう念押ししていたのは彼女の演技であり、「この程度で根負けするようでは閻魔の遣いとは戦えない」と遊良を試していたのだった。
 それを聞いて安堵した遊良は大きく溜息を吐き、改まって真剣な眼差しを向けた。


「それで、ホヅミ先輩にお願いがあります」
「何だ?」
「実は……」


 耳打ちで告げた「お願い」の内容は、遊良と彼女の関係性に気付いた亜利沙が目を見開くようなものだったが、彼なりの「覚悟」だと分かるのに時間は要らなかった。しかし、それは数ある選択肢の中で最も辛いもの。一時の感情に身を任せてまで選ぶべきものではないと思ったが、「凪 遊良が残した未練」を汲み取れば、亜利沙にそれを止める資格はなかった。


「確かにその位なら可能だが……いいのか?」
「はい。他にやりようはあったかもしれませんけど、これが最善策なんです」
「そうか」
「そういえば、ホヅミ先輩はこれから何処に行くんですか?そんな大荷物で……」
「神樹の地、とでも言えばいいか。輪廻を倒すための切り札を手に入れてくる」


 2人とも、互いの運命に1つの区切りをつけるための準備が整った。来たる決戦の夜、遊良には悪霊よりも手強い試練が待ち受けているが、果たして。






キャラ紹介
○百鬼 条(Jo Nakiri)(閻魔の遣い)
輪廻の右腕。地獄で得た圧倒的な強さから「鬼殺しの条」の肩書きを持つ。亜利沙の想像では「屈強な大男」らしいが、実際は不明。
*個人情報
・生年月日:1627年9月14日
・没年月日:1643年2月3日(享年15)
・性別:男
・身長:不明
・体重:不明
・血液型:不明
・使用デッキ:不明




亜利沙の一言追伸
ところで、飛行機に乗るのは初めてなのだが……墜落しないのか?
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