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遊戯王REVIVE~不滅の炎眼~/降り注ぐ涙雨・3 作:ガーベージ・ドーロ





 永炎眼の転生竜の攻撃によって、遊宇のティアドロップ・フラッドラゴンが水が蒸発するかのように消滅する。そしてその攻撃の余波は遊宇に容赦なく襲い掛かる。

(あ、負けたんだ)

 自身のライフが尽きた瞬間、遊宇はどこかあっさりとしたような、他人事のような反応しかできなかった。大きく吹き飛ばされ、五体が地面に叩きつけられた衝撃を受けたと共に初めて「自分が負けた」ということを噛み締める。

「負けた……? そんな、だめ、私は―――」

 途切れ行く意識の中、最後に脳裏に浮かんだのは最愛の妹の顔だった。




―――お姉ちゃん、今日もデュエルに勝ったよ!




―――ウェイブレット・ネットワークなら、私はいつまでもすごいデュエリストでいれるんだ。



―――このままずっと、ネットの世界にいれれば、私はずっと……




「遊華!!」

 目覚めた遊宇は思い切り起き上がったからか、どこかに頭をぶつける。その痛みと周囲の光景から、自分が今ウェイブレット・ネットワークではなく、現実の世界にいることに気がついた。
 あの後なにが起きたかはわからなかったが、Sunsetとのデュエルに敗れた後、意識を失ったことは覚えている。以前Sunsetは遊宇を強制的にウェイブレット・ネットワークからログアウトさせようとしていた。きっと彼によって半ば強制的にウェイブレット・ネットワークから追い出されてしまったのだろう。

「……歯が立たなかった。せめて遊華の半分くらいデュエリストとしての腕があれば……」

 閉鎖されたウェイブレット・ネットワークに立ち入ることができるほどのデュエリストである。恐らくSunsetは現実では腕利きのハッカーなのかもしれないが、さすがに特定の個人を永久ログイン停止にできるまでのものではないだろう。遊宇は再度ウェイブレット・ネットワークへのログインを試みた。

「おい」
「きゃっ!?」

 PCのスリープモードを解除し、ウェイブレット・ネットワークを立ち上げようとした瞬間である。画面にはSunsetの顔面のアップがでかでかと映し出された。

「な、なんで私のPCに……」
「技術があればこれくらいは容易だ。少なくともウェイブレット・ネットワークにログインするよりかは楽だった」
「……っ、まさか私のことを調べて」
「調べはした。だが、お前が誰であろうとどうでもいい。これは最後通牒だ。ウェイブレット・ネットワークには立ち入るな!!」

 PCの画面から現実の遊宇を睨みつけるSunset。もしかしなくても、これはSunsetなりの遊宇に対する気遣いなのかもしれない。それでも遊宇は引き下がるつもりなど毛頭ない。

「嫌。私はこれからもウェイブレット・ネットワークに入り続ける」
「……お前は自分が飛び込もうとしている世界を理解していないのか。あの世界は危険だ。お前のような力のないデュエリストなどリーパーたちの餌食になるのが関の山だ」
「それでも……私は、どうしてもあそこに行かなきゃいけないの。私のことを待っている人がいるかもしれないから」

 遊宇の決意の籠った声を聴いたSunsetは大きくため息をついた。こいつには何を言っても無駄。その溜息は彼のそんな内心を表していた。

「……そうまでしてお前を掻き立てる。一体そいつは何者だ」
「……私の妹。あの子はウェイブレット・ネットワークに入ってから今の今まで戻って来ないの。あの子はウェイブレット・ネットワークでは有名なデュエリストだった。あの世界にいる時、あの子は、自分の置かれている現実を忘れることができた。あの世界ならあの子は苦しまなかった。それなのに!」

 遊華は未だ、ウェイブレット・ネットワークのどこかにいる。現実の世界に戻れず、牢獄のような世界で囚われの身となっている。

「……だから、私が迎えにいかなきゃいけないの。私は、あの子のお姉ちゃんだから」
「……そういうことか。ふん、下らない。ミイラ取りがミイラになろうとして何になるというんだ」
「っ!!」
「……だが、俺はお前のその決意を否定することはできない。俺もまた、ミイラ取りだからな」
「えっ」

 そう言ってSunsetの姿が遊宇のPCから消える。Sunsetのその言葉を聞いた遊宇はなんとかして彼をその場に留めようとしたが、既に彼は回線を通じてネットワークの海に姿を隠した後だった。

(どういうこと、俺もまた、ミイラ取りって……)









「……警告のつもりであのような低スペックのPCに潜り込んだというのに。あれではあいつはまた潜ってくるんだろうな」

 そこはPCのドライブ音だけが響く真っ暗な部屋だった。ヘッドギアのようなものを外し、少年はその炎のような赤い髪を揺らす。彼の視線の先、PCのホーム画面には一枚のスクリーンショットが表示されていた。そこでは少し照れ臭そうにするSunsetと眩しい笑顔を浮かべる白髪の美少女が肩を寄せ合っていた。

「Snowdrop……お前と同じ境遇にある奴が他にいて、そしてそれを命を捨ててまで探し続ける奴がいる。本当に、世の中はバカな奴ばかりだ」

 少年はカーテンを開ける。シトシトと、雨は降り続いていた。







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