84.受翼絶絆　作：くちなし

☆★☆★

「んで、そういうタイプにするんだったら、こうしたほうが回転率は上がるな」
「でも、なるべくカードをキープしたまま変えたいのよ。あまりごちゃごちゃにしたらわかんなくなるし」
「それなら、これ入れとけ。これが場から離れたらシフトチェンジすればいいさ」
「なるほど。あんたにしてはいい案出すじゃない」
「あーいたいた！瑞穂っちー！ちょっちいいかい？」

デッキ作成案を悠里と練っていた瑞穂を、氏家さんが呼び出す。そこには、凛華も一緒にいて、手を振っている。掛けた言葉は軽いものの、2人の表情は何やら堅い。

「、、何かしら？」
「、、この前、クルト兄の話したでしょ？そのことなんだけど、、」
「、、」

瑞穂の表情が曇る。一方、話す側の凛華は、話すのをためらうような表情を見せる。

「、、なに？どうしたの？」
「、、このWRGPに、クルト兄さんの妹がいるみたいなの」
「、、それが、、？」
「うーん、それってつまり、その妹ちゃんは、瑞穂が亡き者にしたと勘違いして怨んじゃってるってことっさ？」
「ふーん、、でも、それだけじゃあそんな暗い顔にはならないわよね」
「瑞穂っち宛てにこれが来てるっさ」
「、、今時”果たし状”なんて出してくる人なんかいるのね」

”果たし状”と墨で書かれた白い封筒。中には楷書で「決勝戦、先鋒にて待つ」と書いてあった。

「いいじゃない！売られた喧嘩、買ってやろうじゃない！」
「決勝戦にクルト兄さんの妹が出てたのは意外だったわ、、決勝戦、見に行ってもいい？」
「別にいいわよ」

☆★☆★

「よし、みんな！準備はいいわね！！」
「ばっちしさっ！」
「。。はい！」
「、、、」

まさか決勝戦まで来れるとは思わなかったな。瑞穂もあいつなりに頑張ってきたんだろう。最初はどうなるかと思っていたが、あいつがほんとに楽しそうにやってるのは表情で分かる。ここまで来たら、最後まで付き合ってやるか。

「いくわよ！！」
『おー！！』

ーーー

「裏を画いて攻めるわよ。先鋒はあたし、次鋒は有希、大将は、、あんたいきなさい」
「はいはい、、」
「理沙と火憐、高嶺くんは、何か異変があったらすぐに知らせること！」
「わかったやんね！」
「氏家さんは、状況分析の後、有希と悠里に的確な指示をお願い」
「了解っさ！」
「じゃあ、いってくるわ！」

ーーー

〈さあ、今日は、一週間の間を開けて行われる決勝戦～！！おーっと？先に出てきたのは、チーム『エイトスターズ』の稲垣瑞穂だー！！〉

(、、出てきてやったわよ。さあ、姿を現しなさい、、！)

火憐の話を思い出す。あの話が本当なら、クルトの妹は相当な実力者と言える。まあ、そんなことはここにいる時点で言うまでもないけれど。

「、、出てきたわね！稲垣瑞穂！」
「、、ずいぶん見ないうちに変わったわね、、性格以外は」
「、、あんたのその口調もね！」
「、、あたしに何のうらみがあるか知らないけど、さっさと始めるわよ！」

『決闘！！』　瑞穂 LP8000 VS Enemy LP8000

「なんであいつら、仲悪いんだよ、、」
「昔っからそーなんだよー。いっつも喧嘩してたよー？クルト兄の取り合いで」
「、、あほか。。」
「まあ、あの時は(今も)幼なかったし、瑞穂もクレアも、お互いに行けん譲らなかったしねー」
「ありえるな、、」

「先攻はこっちがもらうわ！！」

Turn01　TP クレア　手札5

「カードを2枚伏せて、モンスターをセット！ターンエンドよ！」


Turn02　TP 瑞穂　手札5→6

「相手の場のみにモンスターが存在するとき、”BF-朧影のゴウフウ”は特殊召喚できるわ！」

BF－朧影のゴウフウ　☆5　DEF0

「そして、”BF－逆風のガスト”を召喚！」

BF－逆風のガスト　☆2　ATK900

「☆2のガストに、☆5のゴウフウをチューニング！」


≪漆黒の鎧纏った戦士よ！黒き翼携えて、空を舞いなさい！≫

【S召喚！☆7、BF－アーマード・ウィング！】

BF－アーマード・ウィング　ATK2500

「アーマード・ウィングでモンスターに攻撃！」
「こっちのセットカードは、、”マシュマロン”よ！戦闘では破壊されず、相手に1000のダメージを与えるわ！」

瑞穂　LP8000→1000

「相変わらずこのデッキなのね、、カードを2枚伏せてターンエンドよ！」


Turn03　TP クレア　手札3→4

「”クリバンデット”を召喚し、エンドフェイズにその効果を発動。デッキを5枚めくり、その中から1枚手札に加える。加えるのは”一時休戦”よ」


Turn04　TP 瑞穂　手札2→3

「、、リバース発動！”強化蘇生”！墓地のモンスターをレベルを1つ、攻守を100ずつ上げて特殊召喚する！”BF－逆風のガスト”を特殊召喚！」

BF－逆風のガスト　☆2→3　ATK900→1000

「そして、自身の効果で、”BF－上弦のピナーカ”は特殊召喚できる！」

BF－上弦のピナーカ　☆3　ATK1200

「☆3のガストに、☆3のピナーカをチューニング！」

≪黒き翼その身に宿し、刃向かう敵を両断せよ！≫

【S召喚！☆6、BF－アームズ・ウィング！！】

BF－アームズ・ウィング　☆6　ATK2300

「”アームズ・ウィング”、、確か貫通効果を持ってたよね、、？」
「バトル！アームズ・ウィングでマシュマロンを攻撃！」
「罠発動！”魔法の筒”！モンスターの攻撃を無効にし、攻撃力分のダメージを反射する！」

瑞穂　LP7000→4700

「ターンエンド、、！この時、ピナーカの効果で、デッキから”BF－極北のブリザード”を手札に加えるわ」


【フィールド】
クレア　LP8000　手札4
マシュマロン　DEF1000
伏せカード2枚

瑞穂　LP4700　手札3
BF－アームズ・ウィング　ATK2300
BF－アーマード・ウィング　ATK2500
伏せカード


Turn05　TP クレア　手札4→5

「へへ、、いくら貫通を持っていても、ダメージが通らなけりゃ意味はないのよ！あたしはさらにカードを3枚伏せてターンエンド！！」


Turn06　TP 瑞穂　手札3→4

クレアの声が漏れる。

「、、なんで、、なんで私じゃなくて、、あなたがそのデッキを使ってるのよ、、」
「、、」
「なんで、、私じゃなくて、、」
「、、クルト兄があんたにデッキを託すんだったら、もっと早く渡してたわよ。だって、、このデッキは、クルト兄の大事なものだから、、」
「意味が分かんない、、全然わかんない！あんたはクルト兄の何でもないじゃない、、！デッキも使いこなせてないくせに、、」

”使いこなせてない”という言葉に、瑞穂の何かが切れた。しかし、必死にいうのを抑える。ここで言ってしまったら、今までの何かがなくなってしまう気がしたからだ。

「あのねぇ、、はぁ、、分かったわよ！ちゃんと見てなさい！！」
「、、！」

瑞穂はドローしたカードをじっと見つめて、何かを考えている。

「”海亀壊獣ガメシエル”を特殊召喚！」

そのモンスターは瑞穂の場ではなく、クレアの場に出現した。

「、、！こっちの場に、、！？」
「相手の場のモンスターをリリースして、特殊召喚できるわ。攻撃力は2200よ」

「あれは。。！」
「貸した」
「はあ。。」

壊獣、、翼のモンスターである。

「そして、”BF－極北のブリザード”を召喚し、墓地の”BF－逆風のガスト”を蘇生！」

BF－極北のブリザード　☆2　DEF200
BF－逆風のガスト　☆2　DEF900

(☆8、、瑞穂、”クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン”を出す気、、)

「、、クレア！あんたが何考えてるか知らないけど、あたしはクルト兄のデッキを託された一人の人間として、チームを引っ張る人間としてあんたを越えていく！」
「、、！」

現れた緑の輪、、シンクロ召喚をするときのアクションである。





☆6の”BF－アームズ・ウィング”に、☆2の”BF－極北のブリザード”をチューニング！















≪風を纏いし大いなる姿翻し、黒き翼で疾風より推参せよ！！≫















「、、！！」
「刻印が、、！」

瑞穂、有希、香織の刻印が赤く輝く。

「、瑞穂ちゃんも。。”保持者”なの。。！？」
「、、みたいだな」
「、、さて、どんなドラゴンなのかしら、、？」
「、、期待、、」



【S召喚！！☆8、ブラックフェザー・ドラゴン！！】


黒く輝く翼を携えたドラゴンが、大きく啼いた。

「、、これがクルト兄の、、クルト兄の映し身よ！！」

ブラックフェザー・ドラゴン　☆8　ATK2800

「、、あたしはね、、昔は勝つためだけにデュエルをしてたけど、今は違うのよ。少なくともこのデュエルは、、みんなの思いを背負ってるの。だから、この一撃に賭けるわ！」
「、、！」
「手札から”死者蘇生”発動！墓地の”BF－アームズ・ウィング”を特殊召喚！！」

BF－アームズ・ウィング　☆6　ATK2300

「さらに、リバース発動！”ブラック・リターン”！ガメシエルを手札に戻し、その数値分だけライフを回復！」

瑞穂　LP4700→6900

「バトル！”ブラックフェザー・ドラゴン”で攻撃！”ブラック・ブライト・ハリケーン”！！」

ブラックフェザー・ドラゴン。。クルト兄の現身、、クレアの中で何かが目まぐるしく動く。

「そんなの、、そんなの嫌だ、、そんなものはなくなればいい、、！5枚リバースオープン！！」

魔法の筒　2800
自業自得　2500
破壊輪(対象ブラックフェザー・ドラゴン)　　2800
仕込みマシンガン　1500
仕込み爆弾　1000

「5枚ものダメージカード、、！？」
「、、総ダメージは10600」
「10000。。！そんな。。瑞穂ちゃん。。！」

「、、クレア。あんたは覚えてるはずよ。クルト兄がどんな人だったか、、」
「、、」

クルト、、クレアの兄で、優しく、いつも尊敬する対象に当たる。何かがあると、いつもかばってくれる、、そんな人だった。。

「ブラックフェザー・ドラゴンも同じなのよ！”ブラックフェザー・ドラゴン”の効果発動！！」

ブラックフェザー・ドラゴンの両翼が、下から一段ずつ、黒から赤に染まる。

「これは、、」
「そう、すべてのダメージは、ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力を400下げることで無効にする！！

ブラックフェザー・ドラゴン　ATK2800→2400→2000→1600→1200→800→400→0

「そして、同時に効果の発動回数分だけ、黒羽カウンターを置く！」

黒羽カウンター　0→4

瑞穂　LP6900→4100

「まだまだ！アームズ・ウィング、アーマード・ウィングで攻撃！！」

クレア　LP8000→5700→3200

「、、！！」

瑞穂が異変に気付く。

「、、クレア！！」

Dホイールがかすかに傾く。

「、、！」

瑞穂が後ろへ引き返す。クレアがぐったりしているのがわかる。
そこをすかさず瑞穂が抱える。Dホイールは何とかして路肩に弾き飛ばした。

「お前、、私を助けるために退きを選ぶのか」
「はぁ、、あんたバカ、、？人命救助に理由はいらないわよ。ましてや、あんただったらね」
「、、おろせ。自分で戻れる」

地べたに足をつかせ、倒れたDホイールに再びまたがると、ピットへと去っていく。

「あーあ、、やっちゃったなぁ、、」

ため息まじりに呟いた。

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次回予告！
決勝戦の戦法戦は両者引き分け。有希は瑞穂の残した”ブラックフェザー・ドラゴン”を引き継いで戦うが、次鋒戦の相手は何やら有希の顔見知りのようで、、？

次回！第85話「悲壮懐々」