41.始動　作：くちなし

☆★☆★

突然だが。ボクが今どこにいるのだろう。
周りが真っ白で、ただっぴろい平面上にいるだけ。
、、あたりを見回しても白、白、白。
まるでノートにある黒鉛のひとかけらのようだ。

「、、！」

何かの声がする。人ではない、、

「あれは、、」

レッド・デーモン？いや、それだけではない。

「香織のスターダスト・ドラゴン、、！」

真っ白な翼を広げて啼く竜。

「あれらは、、？」

2体のほかに、3体の竜がいる。
1体は黒い烏のような形に赤黒い羽を携えた竜。
1体は妖精のような水色のからだに蝶のような翼、長い尻尾を携えた竜。
1体は機械でできているのか、右手にはシャベル、左手にはドライバーを、尻尾にはしなるスコップを携えた竜。

「なんなんだ、、」

自分を取り囲むように存在する5体の竜。

「悠里くん、、悠里くん、、？」

誰かが名前を呼ぶ。しかし人らしき影はない。

「あんた、、！はやく、、なさいよ！」

ふぁ、、っ！

「何のんきに寝てんのよ」

、、夢か。
ここは文芸部室。どうやら、ここに来て早々眠りについてしまったらしい。

「いったいなんの夢見てたんだか」

自分が知りたいくらいだ。
なんだったんだ、いったい。

「罰としてジュース奢りなさいっ！」

ーーー

翌日。
その日は最寄りの喫茶店という(と言っても、ボクの最寄り駅の近くなのだが。)静かな場所に集合し、2つの机がくっついた状態で席に着くこととなった。
メンバーはボク、部長さん、有希、瑞穂、氏家さん、安楽木、城ヶ崎の7人。部長さんと瑞穂を
安楽木、城ヶ崎は睨んでいて、瑞穂は硬い表情をしている。なんか重い雰囲気が流れている気がするのは気のせいだろうか？
ちなみに、席の配置は3人と4人に分かれていて、3人席に右から瑞穂、ボク、部長さん。向かい側に右から氏家さん、有希、安楽木、城ヶ崎である。
えー、つまりだ。ボクは睨み合ってる4人(と言っても部長さんは俯いているだけなので2人)と、バットむんむんで機嫌の悪そうな瑞穂の間にいるのである。

「なぜおまえらはそんな不機嫌なんだ」
「そりゃ、この子に『話があるからここにきて』って突拍子に言われたんだもの。有無を言わさずにね」
「またそんなことをなんでもってやったんだ」
「言ってたでしょ。話があるって」
「なんのだ」
「決まってるじゃない！WRGPよ！」
「あー、、」

そういやいつぞやか氏家さんが言ってたな。

「で？その話はいいとして、2人を連れてきたのはなんなんだ？」
「、、手伝ってほしい」
「何をどう手伝えばいいの」
「WRGPに出るんだけど、ベンチに居れるのが誰もいないの。だから、手伝って」
「ベンチって何するんだよ」
「相手チームの詮索とか、考察とか。そういう作戦に基づくものの話し合いとかよ」
「なんでうちらなんや」
「悠里と仲がいいから」
「べ、！別に良くないから！」

グサッ！ボクの精神的LPに5000のバーンダメージ！

「別に、、私はいいわよ。ただし、あくまでサポートとしてだけど」
「理沙が言うんやったらうちもええけど、、」

こうして2人もWRGPの助手として参加することになった。

「んで、せんせーには言ったのかいっ？」
「言ったわよ。条件を付けられたわ」

条件だあ？

「1つ、メンバーは5人以上。1つ、学業に支障をきたさないこと。1つ、やるからには本気でやる事。まあ、こんなもんね」
「なんだ。簡単な事じゃねーか」
「観月はどうかね」

うるさい。やろうと思えばやれるんだ。普段やらないだけでな。

ーーー

翌日。

「やっほーっ！」

氏家さんの声が聞こえたや否や、瑞穂と2人でやってくる。

「作戦会議、始めるわよ！」

作戦も何も、許可は取ったのか

「許可なら1週間も前にあるわよ」

あ、、そうなの、、

「今日は順番決めるわよ！」
「わたしはできれば後半のほうがいいです」
「後半も何も3人だから関係ないわよ」
「え？じゃあ、誰か1人出られないじゃない」
「だから、決勝と予選でメンバーチェンジをするのよ」
「なるほどな」

ま、そんなこんなで1時間くらいで順番は決まった。交代要員は決まっていないが。

「それと、悠里。あんたは香織とサポ2人にデッキチェックを受けときなさい」
「はいはい」

どうやら、サポ2人とは安楽木と城ヶ崎のことらしい。

「本格的に始めるわよ！WRGPの準備を！」

ーーー

「そろそろエントリー締切日だな、、」
「あの子たち、、やっぱり出るんですか？」
「みたいだな」
「そうですか、、」
「心配なのか？砂原」
「それもありますが、、いえ、このことは後日改めて言います、、」

ーーー

文芸部室。部屋の鍵が開いているものの、部長さんの姿はない。

「待ってるか、、」

椅子に座り込む。上履きを脱いで、床に靴下を直につける。

「ん？？」

なんか生ぬるい。
下に顔を覗かせてみると、脱ぎ散らかしてぐしゃぐしゃになった制服(上下の下着含む)と
巫女服があった。

「、、、(なんじゃこりゃ、、)」

その瞬間、鳥肌がさかさまに立つような感覚がした。