63.懐古追想　作：くちなし

☆★☆★

翌日。

「おーい！」
「氏家さん？どうしたのよ」
「昨日の試合が新聞に載ってるっさ！」

どれどれ、、？

「うわぁ、、」
「結構きれいな写真ね」
「、、、」
「ほんとだ、、」
「悠里さ～ん！」

名前を呼んだのはアンドレ。後ろには詩音と蒼羽もいる。

「見てください！私たち、載ってますよ！」
「ああ、見たよ」
「結構大きい欄に乗ってますね」
「、、な、、よ、、」
「瑞穂ちゃん、、？どないしたん、、？」
「んあー！何横の記事っ！！あんたのことばっかりじゃない！！」
「それ、ボクのせいじゃないから！」
「ちょっと観月悠里！あんたのせいよ！何とかしなさい！」

詩音が見せつけた一面には、悠里の写真が数枚映っている。
あとは決闘中に出てきたモンスターの写真とか。
でも、そんなこと言われてもどうにもできることじゃないだろう。

「まあ、デッキがデッキだからしょうがないけどね」
「ん？どういうことだ？」
「え、？いや、何でもないわよ」
「余計に気になるんだが」
「、、あまり見かけないデッキだからよ」
「なんだ、そんなことか。ンな事いちいち隠さんでいいだろ」
「それより、蒼羽たちはこれからどうするんだ？」
「ああ。それを言いにここに来たのもあるんだけど、、」

蒼羽が話を切り出す。

「私たちは、協力したいと思ってるわ」
「協力、、？何に？」
「だから、あんたたちのチームに私たちが手を貸そうって言ってんのよ」
「。。！」
「、、」
「へえ、、」

瑞穂の口元がにんまりと曲がる。

「その考えはありだけど、断るわ」
「は、、？なによ、せっかくこっちから言ってあげてるのに！！」
「詩音、、言い方には気を付けないとダメよ？まあ、断るならそれ相応の理由があるんだよね？」
「確かにその提案は有難いわ。けど、協力して何かメリットはある？今回の大会でチーム絡みで
協力することは何もなかったはずよ。一応これでも、あたしはデュエル検定3級だから、細かい
ルールに関しての補足はあたしが言うから別に必要ないし、Dホイールの調達や改良は既に手配
済み。タッグデュエルに関してはその時だけ手を結べばいいじゃない。当人の承諾すればの話
だけど」
「。。この段階で持ち出してくるのは、なにかそれなりのいきさつがあったんですか。。？」
「、、、あまり深く聞かないほうがいいと思う」
「、、それは私言います、、確かに、今の説明だと、不足ありますものね」
「ちょ、、、！」

何か言いたげな詩音を蒼羽が止める。アンドレの顔色を窺って、詩音は落ち着きを取り戻した。

「、、前もって言っておきますけど、私の【セフィラ天使】は、仮のデッキです。もっと大切な使ってたデッキあったんです」
「、、もっと大事な、、？」
「私たち、『天使の音響』の一番の目的は、そのデッキを取り戻すことなのよ」
「、、蒼羽！？、どういうことよ！」
「私フランスにいた頃、大切なデッキを奪われたんです、、」
「デッキを。。奪われた。。。？？」
「来日して、詩音さんと同じクラス編入して、最初に仲良くしてくれた2人ならWRGPを楽しめるし、大切なデッキ見つける手掛かりあるかもと思って、蒼羽さんに言ったんです」

静まり返る空間に、詩音が言及する。

「、、なんで、、？」
「詩音ちゃん、、」
「なんで私には教えてくれなかったのよ！！なんで同じチームの蒼羽には教えて、私にだけ、、なんで私には教えてくれなかったの、、！？」
「、、詩音さん、ごめんなさい。このことは私の力でやりたかったのです」
「。。瑞穂さん？決断を。。」
「当たり前じゃない。協力してあげる。でも！そのデッキ、絶対取り返しなさいよね。んで、
取り戻したら決闘なさい！それが条件よ」
「、、瑞穂、、」
「新たな友情の芽吹きっさね～」
「なによ、、」
「天草、、」

背を向けてどこかへ立ち去っていく。

「どこ行くんだ、、」
「一人にさせて」
「詩音さん、、」
「一人にさせて！！」
「、、、」

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観客席から様子を見ていた桜花。試合が終わって、悠里に一言と、周辺を歩いていた。

「、、結構広いのね。悠里はどこにいるのかしら？」

うろうろと、誰もいない道を歩く。

「あそこかしら、、？」

聖堂みたいな建物。外壁は白く、ステンドガラスはセロハンみたいな模様をしている。
中に入ると、中央に吹き抜けがあり、広々としている。

「あの女の子、、どうしたのかしら、、？」

柱の裏から泣き声がする。静かに歩み寄ると、柱に背中を預けて泣いている少女がいた。

「どうしたのかしら？」

声をかけると、びっくりした表情で顔をあげ、涙を拭う。

「どうしたのかしら？」
「仲間たちとちょっとあったのよ、、」

もう一度問うと、その少女は少しばかり裏返った声で答える。

「ふぅん、、そんなことがあったのね、、」
「なら、デュエルして、一旦落ち着きましょ？泣いてたら折角の可愛い顔が台無しよ？」
「、、敗けて後悔しても知らないわよ」
「、、あら、元気がいいのね。さっきまで泣いてたのに」
「それ、言わないでよ」
「じゃあ、私も時間がないし、、早く始めちゃおうかしら。天草詩音、、さん？」

☆★☆★

「詩音さんには悪いことしちゃいましたね、、」
「、、天草はどこ行ったんだ、、ちょっと探して来る」
「、、私もいく、、」
「いや、いい。確かにここは広いから人は多いほうがいいだろうが、ちょっとあいつに話したいことがあってな。出来れば2人で」
「、、そう」
「。。きをつけてくださいね～！」
「ああ」

その様子を瑞穂はじっと見つめていた。

(『2人きりではなしたいこと』って何かしら、、あたしたちに聞かれたら困る事、、？)

☆★☆★

『決闘！！』　(桜花LP8000 VS 詩音LP8000)

「先攻は私がもらうわよ」

Turn01　TP 詩音　手札5

「手札からオスティナートを発動するわ」

オスティナート　通常魔法
①自分の場にモンスターが存在しない場合に発動できる。自分の手札・デッキから、
「幻奏」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスター２体を墓地へ送り、
その融合モンスター１体をEXデッキから融合召喚する。
このターンのエンドフェイズに、この効果で融合召喚したモンスターを破壊し、その融合素材
モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を特殊召喚できる。

「デッキから、幻奏の音女アリアと幻奏の音女エレジーを墓地に送るわ」

≪乙女たちよ、流れる旋律で新たなる響きを！≫

【融合召喚！奏でなさい！幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト！】

幻奏の音姫マインスタイン・シューベルト　ATK2400

「カードを1枚伏せてターンエンド、この時、融合召喚したマインスタイン・シューベルトは、オスティナートの効果で破壊されるわ。そして、その融合素材にした
モンスターを特殊召喚できるわ！墓地より、幻奏の音女エレジー、幻奏の音女アリアを特殊召喚！」

幻奏の音女エレジー　☆5　DEF1200
幻奏の音女アリア　☆4　DEF1200


Turn02　TP 桜花　手札5→6

「、、あらら、これでは戦闘でも効果でも破壊できなくて、効果の対象にも取れないわ～」
「そうよ！これが私の【幻奏】デッキの鉄壁布陣よ！」
「そうね、、じゃあ、私はこのカードを破壊剣士の伴竜を召喚するわ」

破壊剣士の伴竜　☆1　ATK400

「1枚伏せてターンエンドよ」


Turn03　TP 詩音　手札3→4

「エレジーを攻撃表示に変更するわ。バトル！エレジーで破壊剣士の伴竜を攻撃！自身の効果で攻撃力は300アップするわ！」

幻奏の音女エレジー　ATK2000→2300

「1900のダメージを受けなさい！」
「、、！」

桜花LP8000→6100

「バトルは終了よ。私はターンエンド、、」
「この時に罠カード、破壊剣士の揺籃を発動するわ！」


破壊剣士の揺籃　通常罠
「破壊剣士の揺籃」はターンに1枚しか発動できない。
①デッキから「破壊剣士の揺籃」以外の「破壊剣」カード1枚と、「バスター・ブレイダー」
モンスターを1体ずつ墓地へ送って発動できる。自分のEXデッキ・墓地から
「破戒蛮竜－バスター・ドラゴン」1体を選んで特殊召喚する。この効果で特殊召喚した
モンスターは次のターンのエンドフェイズに破壊される。
②墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分の場の「破壊剣」カードは
戦闘・効果では破壊されない。


「デッキから破壊剣の追憶と、バスター・ブレイダーを墓地に送って効果を発動！」
「デッキから2枚を墓地に、、！これがコストだなんて、、！」
「コストとして墓地に送った破壊剣の追憶の効果も発動するわよ」


破壊剣の追憶　通常罠
①手札から「破壊剣」カード1枚を捨てて発動できる。デッキから「バスター・ブレイダー」
モンスター1体を特殊召喚する。
②墓地のこのカードを除外して発動できる。「竜破壊の剣士－バスター・ブレイダー」によって
決められた融合素材モンスターを自分の墓地から除外し、対象のモンスター1体をEXデッキから
融合召喚する。


「このタイミングで融合召喚、、！？」
「そうよ。私は破壊剣士の伴竜と、バスター・ブレイダーを除外するわ」

≪龍を絶つ剣士よ、その魂を剣に乗せ、その一閃で敵を討ちなさい！≫

【融合召喚！来なさい！竜破壊の剣士ーバスター・ブレイダー！】

竜破壊の剣士ーバスター・ブレイダー　☆8　ATK2800

「次に、破壊剣士の揺籃の効果で、EXデッキからこのカードを特殊召喚するわ！」

≪主に仕えし獰猛なる竜よ、古の力を解き放って、その翼をひろげなさい！≫

【啼きなさい！破戒蛮竜ーバスター・ドラゴン！】

破壊蛮竜ーバスター・ドラゴン　☆8　DEF3000

「私のエンドフェイズでSモンスターと融合モンスターを、、」
「それだけじゃないわ」

詩音のモンスターの右腕に竜の顔が浮かび上がり、跪いていく。

「私のモンスターが怯えている、、？」
「バスター・ドラゴンの効果で、相手の場と墓地のモンスターはすべてドラゴン族になって、竜を絶つ剣士の前では相手モンスターは守備に徹するわ」
「すべて、、！？」
「それだけじゃないわ。竜を絶つ剣士は互いの場、墓地のドラゴン族モンスターの数×1000、
ステータスが上がるわ」
「なんですって、、！？」

今、フィールドにモンスターは4体。そのすべてがドラゴン族となっている。

竜破壊の剣士ーバスター・ブレイダー　ATK2800→6800


Turn04　TP 桜花　手札4→5

「残念だけど、このターンで終わらせてもいいかしら、、？」
「終わらせる、、っ！」
「私は今ドローした、D・D・Rを発動するわ」


D・D・R(ディファレント・ディメンション・リバイバル)
①手札を1枚捨て、除外されている自分のモンスター1体を対象として発動できる。
対象のモンスターを攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが場から離れた時にそのモンスターは破壊される。


「除外したバスター・ブレイダーを特殊召喚するわ」

バスター・ブレイダー　ATK2600

「バスター・ブレイダーも、相手の場、墓地のドラゴン族モンスターの数×500、ステータスが
上がるわ」

バスター・ブレイダー　ATK2600→5100
竜破壊の剣士ーバスター・ブレイダー　ATK6800→7800

「バスター・ドラゴンを攻撃表示に変更に変更するわ」

破壊蛮竜ーバスター・ドラゴン　ATK2500

「バトル！竜破壊の剣士ーバスター・ブレイダーで、幻奏の音女アリアを攻撃！破壊閃刹斬！」

幻奏の音女アリア　DEF1200

詩音のモンスターは「きゃあぁぁ！！」という悲鳴をあげ、姿を消していく。

「きゃああ！！！」

詩音LP8000→1400

「なんでアリアが、、！？それにこのダメージ、、！」
「竜破壊の剣士ーバスター・ブレイダーは守備モンスターの攻撃に対して貫通ダメージを与える
わ。そして、相手の場のドラゴン族モンスターは効果を発動できないわよ」
「そ、そんな、、、」
「バスター・ブレイダーで幻奏の音女エレジーを攻撃！」

バスター・ブレイダー　ATK5100
幻奏の音女エレジー　DEF1200

「きゃああ！！！」

詩音LP1200→0


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観月悠里だ。
天草、いきなり立ち去ってどこ行っちまったんだ？
きっとあいつは何か誤解をしてるはずだ。その誤解を紐解いてやる！
そんで、話をつけて、自分の話したいことも話してやる、、！

次回！第64話　「伝えたい言葉」

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