DRAW:２４２ “白き神判”　作：人喰い

(242)






〜神星樹内部・美の間〜


過酷を極めるメアリーと瑞希の決闘。
残りライフ100まで追い詰められ、一度は倒れたメアリーだったが、死地より奇跡的に生還し、新たに目覚めたエースモンスターと共に瑞希との“対話”を試みる───




メアリー【LP 100】
(モンスター)
『聖霊獣騎 レイラウタリ』[ATK 3100]
『聖霊獣騎 ノチウドラゴ』[ATK 0]
『霊獣使い レラ』[ATK 600]
『精霊獣 アペライオ』[ATK 2300]
(魔法・罠)
『霊獣の継聖』(永続魔法)
・手札:0
・伏せ:0
・EXデッキ(表):ピリカ
・墓地:連契、コリドー
・除外:ラムペンタ、カンナホーク、ペトルフィン、ウェンディ、新レラ、ウィンダ、騎ペトルフィン、
・既特殊召喚: ラムペンタ、カンナホーク、ペトルフィン、アペライオ、ウェンディ、レラ、新レラ、ウィンダ、ノチウ

瑞希【LP 4300】
(モンスター)
なし
(魔法・罠)
なし
・手札:1
・伏せ:0
・墓地:ブリューナク、ユニコ、ソラス、シュリット、ヌトス、龍グングニール、虹光、神巫、異次元の精霊、降魔鏡、反魂術、万華鏡
・除外:ユニコ、ソラス、ブリューナク、ヴァルキュルス、エリアル、ウィンドペガサス、降魔鏡、反魂術、万華鏡



メアリー「ねえ、瑞希ちゃん───アナタ、雫ちゃんを護るために闘ってるんじゃない？」


核心をつく一撃に、瑞希は一瞬、言葉を失う。

瑞希「───」

メアリーはそれを肯定と受け取り、

メアリー「なら、教えてくれないかな？
雫ちゃんの事を誰よりも大切に思っているアナタが、何故、《終焉の焔》にいるのか───」

更なる追求。変わらず柔らかい口調で。

瑞希「雫を、護る、ため？」

しかし瑞希は、遮るように、冷たい口調で。

瑞希「そんな、簡単な事じゃないよ」

淡々と。続ける。


瑞希「───雫は、私の全てだった」


思い出される光景は、故郷の小さき農村。
そこで暮らす、仲睦まじき家族。
父、母、娘が２人。

瑞希「…雫のためなら、私はどんな犠牲も厭わない」

しかし秘密の小屋へ立ち寄ったのをきっかけに、その幸せが偽りのものであると瑞希は知る事になった。

瑞希「……それが例え、間違った道だとしても」

両親も、村の人間も。
信じられるものは、何も無い。
ただ一人、妹の雫を除いて。

メアリー「雫ちゃんがそれを望むと思う？」

瑞希「………」

メアリー「雫ちゃんは、アナタと一緒に居る事を望んでる…！」

瑞希「………」

メアリー「あの子の成長を側で見守ってあげる事が！！雫ちゃんの為にできる事じゃないの！？」

メアリーの叫びに呼応し、輝竜は飛翔する───

『聖霊獣騎 レイラウタリ』[ATK 3100]

瑞希「───」【LP 4300]


メアリー「『聖霊獣騎 レイラウタリ』の攻撃───ッ」


そして、ありったけの想いを乗せた一撃が、瑞希へ向け放たれた。

メアリー「───〝アイン・ソフ・メタトロニア〟！！！」

瑞希はそれを避けようともせず、防ごうともせず、ただ、無防備に受け入れる。

それは、メアリーの問いに対する瑞希なりの返答でもあった。




瑞希「───ッ」【LP 4300→1200】




激しい爆風が立ち込める中、

瑞希「───そう、だね。それが叶うなら、よかったのに」

瑞希の声だけが戦場に響く。

メアリー「……ッ！」

やがて煙が晴れると、ボディスーツが破れ完全に露わになった瑞希の両腕。

メアリー「…っ……」

その腕は僅かに発光し、異質な模様が指先から肩口までを埋め尽くしていた。
それを目の当たりにし、メアリーは僅かに眉を寄せる。


瑞希「───見ての通り、私は人間じゃ無い」


瑞希は言いながら、右手から直径10センチほどの小さな水泡を放出してみせる。

瑞希「…そしてその妹である雫も───精霊の力を持った人間を生み出す実験によって産まれた異形の存在だ」

メアリー「…！」

予想はしていたものの、いざ明かされた真実にメアリーは目を細め唇を噛む。

鈴華「───ッ」

そして２人の決闘を見守る鈴華は驚きを隠せない様子で目を見開いていた。

瑞希「そんなバケモノが人並の幸せを掴めるほど、この世界は甘くないんだよ」

メアリー「……」

瑞希「けど……雫は…ッ、まだ“この力”の真実を知らない」

この力を持った子を作る為に、父が母にした事を。

瑞希「虫唾が走るほどの、醜い力の正体を…ッ」

雫は知らないのだ。

瑞希「それを知ったら、雫も、私みたいに“もう戻れなくなる”…！！だから───」






「───ふざッッけんじゃないわよ！！！」





遮る一声は、かなり離れたところから。

瑞希「───」

瑞希は目線を移し、目を細める。
目線の先には、這いずりながら美の間の中央───囚われの和泉の元へと進む眼鏡の少女───

鈴華「───結維さん！！！」

鈴華は少女の名を呼び、すぐに駆け寄ろうとするが、中央に囚われた和泉を中心に広がった無数の氷の槍が邪魔をする。

結維「…がは…ッ…げほ…ッ…！！ハァ…ぁ…ァ…ッ…！」

これまでのダメージと先の被弾でほとんど動かない身体を無理矢理動かし、掠れた声で結維は叫ぶ。

結維「何も知らないって言うんなら…ッあんたも同じじゃないの！！？？」

瑞希「───」

先程、瑞希は結維たちに対して、『何も知らないのに勝手な事を言うな』と言った。その時に言い渋った返事を、今ここで結維はぶつける。

結維「確かに私たちはあんたら姉妹の事をなんにも知らない！！話すつもりが無いならそれでも良いわよ！！あんたにとっちゃ雫が一番で、雫の事ならなんだって知ってるのかもしれない！！でも！！だけど！！」

思いの丈を。思いっきり。言葉に乗せる。

結維「あの子が！！───雫が！！1人でどれだけ寂しい思いをしてきたか！！！私たちに出会ってどう変わったのか！！！その全ては！！！あんただって知らないでしょ！！？？」

瑞希「───」

結維「…どんな事があっても！！！アンタだけは！！！」

瑞希「───ッ……」

結維「雫をひとりにするんじゃないわよ……っ！！」

それは───


結維「たった一人の妹なんでしょう！！？？」

───姉と“対話”し和解した結維だから言えた、心からの言葉だった。

結維「それにバケモノって言うんなら……私だって同じ───」

言って伸ばした左腕は、痛々しい火傷の痕が刻まれた───異形の腕。

鈴華「…！！」

しかし幾度も“友”を救ってきた───希望の腕だ。

結維「この腕を見られた時、“バケモノ”って言う子もいた───でも！！ちゃんと話し合えば、分かってくれた子もいる！！その力は…！！正しく使えば誰かを幸せにする事だってできるはずよ！！」

鈴華「…っ…！結維さん……っ」

結維「…だから…っゲホ…ッ…はぁ…ッ…ハァ…ッ！」

瑞希「………もう、限界でしょ。大人しくしてた方がいい」

結維「…嫌よ……ッ…！ぐ…ッ…が…ッ……。あんたには…まだまだ言い足りない…ッ…それに───」

この───瞬間。

結維「…私は……ッ…がほ…っ……ッ和泉を……助けるんだから…ッ……」

苦しみながらも、少しずつ和泉の元へと向かいもがき足掻く結維を見て、瑞希の中で、何かが重なった。

瑞希「───」

それは───姉を救おうとする少女の面影。

瑞希「───必死にもがいても…必死に叫んでも………ッ…その手は！！その声は！！いずみんには届かない！！なんでわかんないかなぁ！？」

ケガだけでなく、和泉が繭になった事で、和泉と感覚を共有できる結維の意識はいつ飛んでもおかしくない。

瑞希「なのに……なんで、なんで…なんで───」

なぜ、彼女は前へと進み続けるのか。


瑞希「なんで───」


───否。


結維「───そんなの！！！！」


そんな事は、瑞希にも分かりきっている。




結維「和泉が───“お姉ちゃん”が大好きだからにッッ決まってんでしょうが！！！！」




瑞希「───」

結維にとっての───ただ一人の家族。

それを思う気持ちただそれだけが、結維を動かしている。

同じ───同じなのだ。

結維も、瑞希も、雫も。


メアリー「…オーケー結維ちゃん、もう、大丈夫。こっから先は……ワタシの役目」

息を荒げる結維をメアリーはふらつきながら制し、

メアリー「…そっちにも諸々事情があってこんなことになってるってのは、わかるワ」

だから、せめて───

メアリー「瑞希ちゃん───アナタがこれまで、どれだけ辛い思いをしてきたか……それを私たちに聞かせてくれない？」


そう、言った。


瑞希「───」


それは、妹と一緒に居たくても居られず、ただ人知れず苦悩を抱え戦い続けてきた瑞希にとって、最も欲しかった言葉であり、最も聞きたくない言葉でもあった。



瑞希「───…ッ…」



再び手を取り合うには、瑞希の手は汚れすぎていた。

瑞希「……おねーさんたち。本当に優しいんだね」

ふと口から出た、本音。

瑞希「───雫が羨ましいな」

しかしすぐに胸にしまい、

瑞希「…わかったよ。おねーさん」

目つきが、変わった。

メアリー「……っ！」

瑞希「このデュエル……一切の容赦なく全てをぶつけて。私も全力で応えるから」

これ以上の会話は───不要。

メアリー「………オーケー」

デュエルが言の葉となって、全てを伝えてくれる。


メアリー「───メインフェイズ2」


◉メインフェイズ2◉


メアリー「───レイラウタリの効果」

(2)：自分の除外状態の「霊獣」カード１枚を対象として発動できる。
そのカードを手札・ＥＸデッキに戻す。
その後、手札の「霊獣」モンスター１体の召喚を行う事ができる。

宣言の直後、彼方より飛んできた精霊が、メアリーの手に宿る。

メアリー「───もう、遅いよ」

集結せしは、3体の精霊。

ウェン「…ごめん。でも、もう大丈夫」

ピリカ「私たちがいるから…！」

ウィンダ「これ以上メアリーを傷つけさせてたまるもんですか！」

ウェン、ピリカ、ウィンダの3体はメアリーを囲うように降り立った。

瑞希「───ッ」

レラ「みんな…っ！」

そしてこれで、メアリーの所持するカードの精霊全てがこの地に集まったことになる。

メアリー「これでワタシも、フルパワーよ！！除外されている『影霊獣使い セフィラウェンディ』を手札に加え───召喚！！」

『影霊獣使い-セフィラウェンディ』[ATK 1500]

瑞希「…ッ…！」

レイラウタリまでもが、終着点ではなく展開の中継点だというのか。
その疑問が思わず口から漏れそうになる。

メアリー「まだまだ…これからよ！『影霊獣使い セフィラウェンディ』の効果！」

《影霊獣使
えいれいじゅうつか
い－セフィラウェンディ/Ritual Beast Tamer Zefrawendi》 †
ペンデュラム・効果モンスター
星３/風属性/サイキック族/攻1500/守1000
【Ｐスケール：青７/赤７】
(1)：自分は「霊獣」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかＰ召喚できない。
この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
自分は「影霊獣使い－セフィラウェンディ」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：このカードが召喚・Ｐ召喚した時に発動できる。
自分のＥＸデッキ（表側）から「影霊獣使い－セフィラウェンディ」以外の「セフィラ」モンスター１体を手札に加える。


メアリー「EXデッキに表側で存在する『英霊獣使い-セフィラムピリカ』を手札に！」[手札 1]

瑞希「後続の確保…っ？いや違う───ッ」

その奥に潜む“何か”を感じ、瑞希は身構える。

メアリー「更に！場の『影霊獣使い セフィラウェンディ』と『精霊獣 アペライオ』を除外！！」

ふたつの魂は天へと昇り、ひとつに重なった。
幾度目か分からぬ猛禽の雷がフィールドを駆け巡る。

メアリー「───Come again！『聖霊獣騎 カンナホーク』！！」[ATK 1400]

更に、とメアリーは続ける。

メアリー「カンナホークの①の効果！それにチェーンしてカンナホークの②の効果！」

チェーン①『聖霊獣騎 カンナホーク』
対象:『霊獣使いレラ』『精霊獣使い レラ』
除外ゾーンの対象のカードを墓地へ戻し、デッキから『霊獣』カード1枚を手札に。

チェーン②『聖霊獣騎 カンナホーク』
対象:『霊獣使い レラ』『精霊獣 ペトルフィン』

メアリー「カンナホークをEXデッキに戻して2体に分離！」

『霊獣使い レラ』[DEF 2000]
『精霊獣 ペトルフィン』[DEF 2000]

メアリー「そして除外されてる『精霊獣使い レラ』を墓地へ戻してデッキから2枚目の『精霊獣使い レラ』を手札に！！」[手札 2]

瑞希「…連契じゃ……無い…ッ…！？」

という事は、まだ、

メアリー「場の『聖霊獣騎 ノチウドラゴ』『霊獣使い レラ』『精霊獣 ペトルフィン』の3体を除外───ッ」

まだ展開を伸ばすとでもいうのか───

メアリー「─── 示せJustice‼︎
星空に輝けし大地の神獣！！正義の名の下に無窮を駆けよ！！」

瑞希「───！！」


メアリー「───Come on！！『聖霊獣騎 ガイアペライオ』！！！」


3つの魂は宙を舞い、極光を放ち混ざり合う。
やがて光の渦より現れしは───雄々しく気高い巨獣。


「ガァアアアァアァアァアアァァアァアア！！！」[DEF 2600]


そして巨獣と巨竜は並び立ち、その間には、それらを従えし少女───レラの姿。


メアリー「───ターンエンド」[手札 2]


ターン終了と共に、精霊獣アペライオの効果が切れ、

『聖霊獣騎 レイラウタリ』[ATK 3100→2600]
『聖霊獣騎 ガイアペライオ』[DEF 2600→2100]

場の霊獣の攻守が元に戻る。そして───



◉TURN:０８◉


迎えた瑞希のターン。

瑞希「───」

盤石。瑞希はそう思っていた。

瑞希「───私のターン」

しかし、いとも容易く盤面を突破された挙句、敵の構えにも隙がない。

瑞希「ドロー」[手札 2]

ここまで追い詰められたのは、瑞希にとっても初めてだった。

瑞希「───！」

引いたカードを横目で確認し、目を細める一方で、墓地より二筋の光が漏れる───

瑞希「私の場にモンスターが存在しないことにより、墓地の降魔鏡、そして反魂術の効果！！」

墓地→除外
『影霊衣の反魂術』
『クラウソラスの影霊衣』
『影霊衣の降魔鏡』
『ブリューナクの影霊衣』

瑞希「墓地から4枚のカードを除外し───デッキより影霊衣の儀式魔法を2枚…！手札に加える！！
私が加えるのは───『影霊衣の反魂術』！『影霊衣の降魔鏡』！」[手札 4]

一気に手札を補充し、ノータイムで、

瑞希「『ブリューナクの影霊衣』の効果」

(1)：このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「ブリューナクの影霊衣」以外の「影霊衣」モンスター１体を手札に加える。

瑞希「私がデッキから手札に加えるのは───『ユニコールの影霊衣』」

圧を、かける。

メアリー「───！」

瑞希「行くよ───『影霊衣の反魂術』、発動」

(1)：レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、
自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、
自分の手札・墓地から「影霊衣」儀式モンスター１体を儀式召喚する。


───これは、囮だ。

しかし分かっていても、止めざるを得ないだけの圧がそのカードにはあった。

メアリー「……ッ！！この瞬間！！『聖霊獣騎 ガイアペライオ』の効果発動ッ！！」

《聖霊獣騎
せいれいじゅうき
ガイアペライオ/Ritual Beast Ulti-Gaiapelio》 †
融合・効果モンスター
星１０/光属性/サイキック族/攻3200/守2100
「聖霊獣騎」モンスター＋「霊獣使い」モンスター＋「精霊獣」モンスター
自分フィールドの上記カードを除外した場合のみ特殊召喚できる。
(1)：この方法で特殊召喚したこのカードは以下の効果を得る。
●モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、
手札から「霊獣」カード１枚を除外して発動できる。
その発動を無効にし破壊する。

メアリー「ワタシは手札の『英霊獣使い セフィラムピリカ』を除外し───『影霊衣の反魂術』を無効にするわ！！」

宣言と同時に、メアリーの背後のピリカが勢いよく飛び上がり、

ピリカ「はぁぁあっっ！！」

杖を構えガイアペライオと共鳴すると、瑞希の発動した反魂術が風の鎖によってその力を失ってしまう───

瑞希「やるじゃん…！けど次はどう！？『影霊衣の降魔鏡』、発動！！」

(1)：レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、
自分の手札・フィールドのモンスターをリリース、
またはリリースの代わりに自分の墓地の「影霊衣」モンスターを除外し、
手札から「影霊衣」儀式モンスター１体を儀式召喚する。


これも囮───しかし、

メアリー「───『聖霊獣騎 ガイアペライオ』の…、効果ッ！！」

ユニコールの影霊衣が見えている以上、ここも通すわけにはいかない。

メアリー「手札の『精霊獣使い レラ』を除外して、『影霊衣の降魔鏡』を除外！！」

今度はレラがガイアペライオに力を分け与え、降魔鏡を封じ込める。

瑞希「ここも止めるよねぇ！流石に！」

これでメアリーの手札は０枚。しかし───

メアリー「…それだけじゃないわ！除外されたレラの効果でデッキから霊獣モンスターを特殊召喚する！！」

希望は、次に繋がる。

メアリー「来て───『精霊獣使い ウィンダ』！！」[DEF 1800]

呼びかけに応じるようにウィンダはメアリーの前に降り立ち、杖を構えた。

瑞希「……！その子は厄介だなァ……でも！これでおねーさんの手札は尽きた…ッ！」

囮の次は───当然、本命が来る。

瑞希「『ユニコールの影霊衣』の効果！」

(1)：このカードを手札から捨て、「ユニコールの影霊衣」以外の
自分の墓地の「影霊衣」カード１枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。

瑞希「このカードを手札から捨て、墓地の『ブリューナクの影霊衣』を手札に！」

メアリー「…！(ここでユニコールを切った…っ！？)」

瑞希「墓地の『影霊衣の万華鏡』の効果！」

墓地→除外
『影霊衣の万華鏡』
『ユニコールの影霊衣』

瑞希「デッキから『影霊衣の万華鏡』を手札に加え───発動ッ！！」

(1)：レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、
自分の手札・フィールドのモンスター１体をリリース、
またはリリースの代わりにＥＸデッキのモンスター１体を墓地へ送り、
手札から「影霊衣」儀式モンスターを任意の数だけ儀式召喚する。

瑞希「EXデッキから、『共鳴の翼 ガルーラ』の魂を贄に───儀式召喚！！」

墓地へ送ったモンスターのレベルは───6。

瑞希「降臨せよ！！『ブリューナクの影霊衣』！！」

メアリー「…！！」

出てきたのはブリューナク1体。
一番に警戒していた、ユニコール+クラウソラスの組み合わせでなかったのは、暁光。
それより、墓地へ送ったカードだ。メアリーにとっては初めて見るカード───『共鳴の翼 ガルーラ』。

瑞希「───墓地へ送られたガルーラの効果！！」

《共命
きょうめい
の翼
つばさ
ガルーラ/Garura, Wings of Resonant Life》 †
融合・効果モンスター
星６/闇属性/鳥獣族/攻1500/守2400
同じ種族・属性でカード名が異なるモンスター×２
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードの戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になる。
(2)：このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
自分は１枚ドローする。


メアリー「…１枚…ドローする効果…！？」

瑞希はそのドローに、全てを賭けるつもりだ。

メアリー「───」

しかしなぜ？

メアリー「……っ…」

それは、見えてない残り１枚の手札が、このデュエルに決着をつける一手にはなり得ないからだ。

瑞希「───」

『影霊衣』儀式魔法の儀式召喚効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない───そして瑞希はこのターンそれを全て使い切った。
このターンに影霊衣儀式モンスターがこれ以上出てくる事は考えなくていい。
ならば───

メアリー「───ッ…」

この場で考えられるのは、まだ見ぬ奥の手。
メアリーも目にしたことのないデッキギミックをまだ隠し持っている可能性が高い。

メアリー「ワタシ…は…っ…」

自分の知識と記憶を総動員して、今はただ、残り100のライフを守り抜くための最前の一手を───

メアリー「…ッ！『聖霊獣騎 レイラウタリ』の効果を発動ッ！！」

(3)：相手ターンに、自分フィールドの「霊獣」カード１枚と相手フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを除外する。

メアリー「ワタシの場の『聖霊獣騎 レイラウタリ』と、アナタの場の『ブリューナクの影霊衣』を───ゲームから除外する！！」

メアリーの出した結論は、負けない為の、一手。

瑞希「……！」

レラもその一手には何の疑問も持たず、力を解放させる。

レラ「───はぁあぁあ！！！」

そして自らの全パワーを使った一撃をブリューナクへとぶつけ、2体は激しい爆発に巻き込まれ、除外された───

瑞希「…ッ…自分の切り札すら、負け筋になるのを避けるために犠牲にするなんて───最高だよ。おねーさん」

メアリー「───そりゃどうも」

軽い口調で礼の言葉を返す。しかしその表情は至って真剣。

瑞希「ガルーラの効果で、私は───1枚ドローッッ！！」

このデュエルの命運を分ける、運命のドロー。

瑞希「───」[手札 2]

これにより、瑞希の手札は２枚。

メアリー「───」

その２枚で、何を為せるのか。
緊張の一瞬にその場の全員が息を飲む。


瑞希「………ふーーーー…っ」


2秒の沈黙の後、瑞希は細く息を吐き───



瑞希「魔法発動───『天底の使徒』」



───瞬間、暗転。


メアリー「───」


視界が“白”に包まれる。














◉◉遊戯王 Ph.X◉◉
──DRAW:２４２──
　　《“白き神判”》















瑞希「私は、EXデッキから『金雲獣-馬龍』を墓地へ送る───」

そう言って淡々と進める瑞希の腕の痣が段々と広がっていく───

メアリー「……っ！」

やがて全身に禍々しい刻印を刻み、瑞希は呻き声を上げ始めた───

瑞希「───ッ…ぐ……ッガァぁ…！！！
そして…墓地へ送ったモンスター以下の攻撃力を持つ『ドラグマ』モンスターを、デッキから手札に加えるッッ！！」

墓地へ送られたモンスターの攻撃力は───2200。

瑞希「デッキから手札に加えるのは───『教導(ドラグマ)の聖女 エクレシア』」

メアリー「ドラ…グマ…？」

見たことも聞いた事もないカードの登場。そしてそのカードを使用した途端身体に異変を来した瑞希。
メアリーは危険を予知するが───

瑞希「───墓地へ送られた『金雲獣-馬龍』の効果」

(2)：このカードが墓地へ送られた場合、相手フィールドの表側表示のカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に戻す。

思考の余地を与えぬ墓地からの一撃がメアリーを攻め立てる。

瑞希「場の『聖霊獣騎 ガイアペライオ』を───EXデッキへ…ッ！！」

メアリー「───！」

金色の光に包まれガイアペライオは天へと昇り、これでメアリーの場には『精霊獣使い ウィンダ』と、永続魔法『霊獣の継承』のみ───

瑞希「まだだよ───『教導の聖女 エクレシア』を通常召喚」

『教導の聖女 エクレシア』[ATK 1500]

瑞希「召喚されたエクレシアの効果───ッ」


《教導
ドラグマ
の聖女
せいじょ
エクレシア/Dogmatika Ecclesia, the Virtuous》 †
効果モンスター
星４/光属性/魔法使い族/攻1500/守1500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：ＥＸデッキから特殊召喚されたモンスターがフィールドに存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「教導の聖女エクレシア」以外の「ドラグマ」カード１枚を手札に加える。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分はＥＸデッキからモンスターを特殊召喚できない。
(3)：このカードはＥＸデッキから特殊召喚されたモンスターとの戦闘では破壊されない。


瑞希「これが私の本気───正真正銘の全力全開！！」

メアリー「…！」

瑞希「私はデッキからこのカードを手札に加え、発動！！
永続魔法───『凶導の聖告(ドラグマトリックス)』！！」


《凶導の聖告
ドラグマトリックス
/Dogmatikamatrix》 †
永続魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：このカードの発動時の効果処理として、以下の効果を適用できる。
●デッキから「ドラグマ」儀式モンスター１体または「ドラグマ」儀式魔法カード１枚を手札に加える。
相手フィールドにモンスターが存在する場合、さらにデッキから「ドラグマ」カード１枚を手札に加える事ができる。
(2)：１ターンに１度、自分フィールドに「ドラグマ」儀式モンスターが存在する場合に発動できる。
自分または相手のＥＸデッキを確認し、その内のモンスター１体を選んで墓地へ送る。


瑞希「…グ…ギ…ぁァァあッ！！
私…はァ！！デッキから…ッ儀式モンスター『凶導(ドラグマ)の白聖骸(アルバスセイント)』と儀式魔法『凶導の福音(ドラグマータ)』の2枚を手札に加える…ッ！！」

禍々しい邪気を纏ったカード２枚が加わり、瑞希に刻まれた刻印も怪しい光を放つ───

瑞希「───儀式魔法ッッ『凶導の福音』…ッ発動！！」


《凶導の福音
ドラグマータ
/Dogmatikalamity》 †
儀式魔法
「ドラグマ」儀式モンスターの降臨に必要。
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように
自分の手札・フィールドのモンスターをリリース、
または儀式召喚するモンスターと同じレベルのモンスター１体をＥＸデッキから墓地へ送り、
手札から「ドラグマ」儀式モンスター１体を儀式召喚する。
このカードの発動後、ターン終了時まで自分はＥＸデッキからモンスターを特殊召喚できない。


メアリー「ッッ…！！『影霊衣』以外の───儀式カード…ッ…！！それにあの刻印……ッ…」

あの姿を、見せるわけにはいかない。
彼女の妹である、雫に。

瑞希「EXデッキから…ッ…『虹光の宣告者』の魂を贄に───降臨せよッ！！」

何としてでも、瑞希はこの場で食い止める。
そう誓うメアリーの前に、無情にも降り立つ───閃光。


瑞希「───『凶導の白聖骸』！！」


やがて光の中より現れたるは、白き衣を纏いし───聖女。

『凶導の白聖骸』[ATK 500→300(霊獣の継聖の効果で200ダウン)]

メアリー「……！」

鈴華「…攻撃力500のモンスターを攻撃表示で…っ！？間違いない…！何かある…！！」

瑞希「───墓地へ送られた『虹光の宣告者』と…ッ特殊召喚された『凶導の白聖骸』の効果ッ！！」

チェーン①
『虹光の宣告者』
デッキから儀式魔法か儀式モンスターを1枚を手札に。

チェーン②
『凶導の白聖骸』
対象:『凶導の白聖骸』『精霊獣使い ウィンダ』


瑞希「白聖骸の効果により、対象となったウィンダの攻撃力1600を───白聖骸へと加える！」

『凶導の白聖骸』[ATK 300→1900]

メアリー「…ッ！」

仮に盤面にレイラウタリを残していたら、この効果でレイラウタリの攻撃力を超えられ負けていた事を考えると、メアリーの選択は正しかったと言えるが、

瑞希「そして虹光の宣告者で手札に加えるのは───『魔神儀(デビリチャル)-カリスライム』のカード！！」

しかし瑞希の手はまだ止まらない。

メアリー「…！！『魔神儀(デビリチャル)』……！確か、雫ちゃんも使っていた───」

瑞希「───カリスライムの効果！！」

《魔神儀
デビリチャル
－カリスライム/Impcantation Chalislime》 †
儀式・効果モンスター
星７/闇属性/水族/攻2500/守1800
「魔神儀の祝誕」により降臨。
このカード名の(1)(2)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
(1)：手札のこのカードを相手に見せて発動できる。
手札を１枚選んで捨て、デッキから「魔神儀」モンスター１体を特殊召喚する。
発動後、このターン中に自分が儀式モンスターの特殊召喚に成功しなかった場合、
エンドフェイズに自分は２５００ＬＰを失う。
(2)：手札及び自分フィールドの表側表示のカードの中から、
「魔神儀」カード１枚を墓地へ送り、相手フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。


瑞希「手札のカリスライムを墓地へ送り───『魔神儀-タリスマンドラ』をデッキから特殊召喚！！」

『魔神儀-タリスマンドラ』

瑞希「ただし、この効果の発動後、儀式モンスターの特殊召喚に成功しなかった場合、私はエンドフェイズに2500ポイントのライフを失う───」

メアリー「…！！」

瑞希の残りライフは───1200。
その状況下で発動したという事は、このターンに更なる儀式召喚を行う意思表示か、それとも、このターンのエンドフェイズは訪れないという処刑宣告か───

瑞希「続けてデッキから特殊召喚されたタリスマンドラの効果により…ッ…私はデッキから儀式モンスターを手札に加える…！！」

言って瑞希は胸に手を当て、

瑞希「トリシューラ……キミの戦いの記憶……それを今…ッ霊衣にして解き放つよ───」

そう、呟く。

メアリー「…！！」

すると、人間界にて竜貴と戦闘中のトリシューラの記憶がカードとなって、瑞希のデッキに新たな力を与え───

瑞希「我が手に来たれ───『アラドヴァルの影霊衣』ッ！！」

そこで瑞希の手札に加わったのは、『影霊衣』の儀式モンスター。

メアリー「…ッ…降魔鏡、反魂術、万華鏡。全て使った…いや、“使わせた”はず…！！もうこのターンに影霊衣儀式モンスターを出す事は───」

瑞希「───できるんだな。それが」

そう言って瑞希が手札から抜き出したのは、このターンのドローフェイズにてドローし、ずっと温めていた“切り札”───

メアリー「───ッ」

逆に言えば、ここまで温めざるを得ない程の使い辛さを持つカードでもある。
それが今、この局面において、究極の輝きを見せた。


瑞希「効果発動───『剣聖の影霊衣 セフィラセイバー』」


メアリー「！！」

鈴華「…！？」

発動されたのは───メアリーの持つピリカ、ウェンディのカードと同じ、『セフィラ』の名を冠するペンデュラムのカード。そしてその効果は───


《剣聖
けんせい
の影霊衣
ネクロス
－セフィラセイバー/Zefrasaber, Swordmaster of the Nekroz》 †
ペンデュラム・効果モンスター
星４/水属性/魔法使い族/攻1500/守 800
【Ｐスケール：青１/赤１】
(1)：自分は「影霊衣」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかＰ召喚できない。
この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
「剣聖の影霊衣－セフィラセイバー」のモンスター効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分の手札・フィールドのこのカードをリリースして発動できる。
レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、
手札から「影霊衣」儀式モンスター１体を儀式召喚する。


瑞希「手札のこのカードをリリースし───『影霊衣』儀式モンスターの儀式召喚を行うッ！！」

ただし、リリースできる素材は手札、フィールドから。儀式召喚も、手札からしか行えない。

メアリー「───ッ！！」

降魔鏡、反魂術、万華鏡、それらにこそ性能が劣るため、それらより優先して使われる事は無いが───故の、“切り札”。


瑞希「私は…ッ！！場のタリスマンドラとエクレシアをリリースッ！！」


レベルの合計は───１０。


瑞希「熱風纏いし竜騎士の力、その身に宿し───覚醒せよッ！！
これが世界を変える究極の力よッッ！！
来て！！『アラドヴァルの影霊衣』ッ！！」


『アラドヴァルの影霊衣』[ATK 3300]


『アラドヴァル』───竜貴の操るドラグニティナイトと同じ名を冠する騎士がフィールドに降り立つと、手に持った槍の放つ熱風と冷気により、周囲の氷が溶けては凍りまた溶けてはまた凍りを繰り返す異質な光景がその場に広がっていた───

メアリー「……ッ…！！」

鈴華「ッ…！メアリーさん！！！」

瑞希「───バトルフェイズッッ！！！」


◉バトルフェイズ◉


メアリーの場には、守備表示のウィンダただ一人。

『精霊獣使い ウィンダ』[DEF 1800]

対する瑞希の場には、

『凶導の白聖骸』[ATK 1900]
『アラドヴァルの影霊衣』[ATK 3100]
(＊メアリーの永続魔法『霊獣の継聖』によりATK200ずつダウン)

2体の儀式モンスターがメアリーにトドメを差すべく武器を構える。

瑞希「『凶導の白聖骸』！！『精霊獣使い ウィンダ』を攻撃！！」

『凶導の白聖骸』
[ATK 1900]
───VS───
[DEF 1800]
『精霊獣使い ウィンダ』

瑞希「〝白き神判〟───その身に刻めッッ！！！」

迸る閃光がウィンダに襲いかかる。

メアリー「まだ…倒れるわけにはいかない…！！」

が、しかし───

メアリー「グングニールの2度目の攻撃を喰らった時…ッ…もうダメかと思った…っ！！死んだかと思った！！でも！！でも───ッッ」

その閃光は───

メアリー「───みんなが」

『精霊獣使い ウィンダ』[DEF 1800]

ウィンダに届く手前で、何かに弾かれた。

メアリー「レラ達が───来てくれた」

瑞希「───ッ」

目を細める瑞希の視線の先には───ウィンダを護り立ち塞がるレラの姿。

レラ「…はァ…ッ…はぁ…！」

ウィンダの前で杖を構えるレラは防御陣を解くとその場に膝をついた。
そう───メアリーが墓地に残しておいた２枚目の『精霊獣使い レラ』には、もうひとつ、効果があったのだ。

メアリー「レラのエフェクトよ…っ…、場の霊獣が破壊される代わりに、墓地のこのカードを除外する…！」

瑞希「…ッッ…！！！まだ……ッッ邪魔するっっての…ッ！！？いいよ！！いいわよ！！それでも構わない！！！全部全部全部全部全部全部壊して進むだけだから！！！」

瑞希は叫び、右手を高く突き上げる。
同時に炎風の鎧を纏いし竜騎士が飛び上がる───

瑞希「───『アラドヴァルの影霊衣』の攻撃！！
〝灼炎風牙・アラ・ド・グレイシャル〟！！！」

『アラドヴァルの影霊衣』
[ATK 3100]
───VS───
[DEF 1800]
『精霊獣使い ウィンダ』

炎と風、そして巨大な氷を纏った槍が投擲される。

メアリー「───っ」

しかし遅いくる一撃に怯む事なく、メアリーは───

メアリー「───負けるもんですか……」

このデュエルに懸ける、自分自身の思いを叫ぶ。

メアリー「…みんなを散々危険な目に合わせた！！ワタシがもっと動けてれば！！もっと上手くやれてれば！！もっともっと強ければ！！！守り抜けたはずなんだ！！！だからだからだからだからだからだから───ッッ」

やがて霊槍は、メアリーを守るため立ち塞がったウィンダの足元で激しく爆散───ウィンダは破壊されてしまうが、

メアリー「───『精霊獣使い ウィンダ』の効果発動ッ！！！」

タダでは倒れない。

メアリー「デッキ・EXデッキから…ッ…！！『霊獣』モンスター1体を───召喚条件を無視して特殊召喚する！！！」

遺された錫杖が、希望を繋ぐため光を放つ───


瑞希「───」


しかし───刹那。


瑞希「───アラドヴァルの効果」

宣言と共に、ウィンダの杖は凍りつき、粉々に砕け散ってしまう。

メアリー「…ッ！？」

瑞希「『教導の白聖骸』の魂を生け贄に───モンスター効果の発動を無効にし、除外する」

《アラドヴァルの影霊衣
ネクロス
/Nekroz of Areadbhair》 †
儀式・効果モンスター
星１０/水属性/戦士族/攻3300/守3200
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
レベル１０以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードを手札から捨てて発動できる。
自分の手札・フィールドの「影霊衣」モンスターを２体までリリースし、
その数だけデッキから「影霊衣」カードを墓地へ送る。
(2)：モンスターの効果が発動した時、
自分の手札・フィールドのモンスター１体をリリースして発動できる。
その発動を無効にし除外する。


メアリー「ッ！！」


ダメ押しの、一手。

メアリー「……」

ただ、これで瑞希は全てを出し切った。

全ての言葉を、吐き切った。


瑞希【LP 1200】
(モンスター)
『アラドヴァルの影霊衣』[ATK 3300]
(魔法・罠)
『凶導の聖告』(永続魔法)
・伏せ:0
・手札:0
・墓地:降魔鏡、万華鏡、反魂術、セフィラセイバー、ブリューナク、エクレシア、白聖骸、カリスライム、タリスマンドラ、異次元の精霊、神巫、虹光x2、Sグングニール、ヌトス、
・除外:降魔鏡x2、万華鏡x2、反魂術x2、ブリューナクx2、ユニコールx2 ソラス、ヴァルキュルス、エリアル、シュリット、ウィンドペガサス、


メアリー【LP 100】
(モンスター)
なし
(魔法・罠)
『霊獣の継聖』(永続魔法)
・手札:0
・伏せ:0
・墓地:相絆、コリドー
・除外:ラムペンタ、カンナホーク、ペトルフィン、アペライオ、ウェンディ、ピリカ、レラ、新レラx2、ウィンダx2、騎ペトルフィン、ノチウドラゴ、レイラウタリ、連契


瑞希のデッキにはもう、墓地の影霊衣魔法カードの効果で加えられるカードも無ければ、他に墓地で発動する効果も無い。
次のターンが来たとして、１枚のドローではきっと何もできないだろう。

瑞希「これが、私の…切り捨ててきたものたちだ」

除外されたカードを眺め、瑞稀は呟いた。

瑞希「これらは、もう、帰ってこない」

けれど、と瑞希は続ける。

瑞希「……おねーさんは、違う」

メアリー「………」

瑞希「おねーさんは、こぼれ落ちたものを拾って拾って、絆に変えていく」

それだけの───差。

瑞希「…凄いな。ホントに楽しいよ。おねーさんみたいに“強い人”とのデュエルは」

でも───

瑞希「───もう、終わらせなきゃ」


瑞希は言って、拳を固く握る。


瑞希「───ターンエンド」

宣言と、同時に。

瑞希「………」

遠くで、何かが弾ける音がした。

瑞希「……三龍の鼓動が……潰えた」

それを聞き、メアリーの口元が僅かに吊り上がる。

───勝ったのだ。各地で氷結界の三龍と闘う決闘者達が。


◉TURN:０９◉


そしてその中には、瑞希の妹───雫もいる。

メアリー「…ワタシのターン！！ドロー！！」[手札 1]

瑞希「───」

決して手加減を命じたつもりはない。

瑞希「───」

目的達成の為に、雫には倒れてもらうつもりだった。

瑞希「───っ…」

だが、雫は勝利した。

瑞希「……強くなったね。雫」

ふと口から溢れた、本音。

瑞希「………」

尚更、負けるわけにはいかなくなった。

メアリー「───『霊獣使い ウェン』を召喚っ！！」

メアリーは引いたカードを即座に召喚させる。

メアリー「『霊獣使い ウェン』の───効果、発動ッ！！」

(1)：このカードが召喚した場合、
自分の除外状態の「霊獣」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。

対象『精霊獣使い レラ』

メアリー「大丈夫。雫ちゃんも、ワタシたちも、絶対にアナタを否定したりなんかしないワ───」

瑞希「…！」

この極限状態において、当然のように理想の引きを見せるメアリーに、瑞希はかつてない笑みを浮かべ、

瑞希「そんなのわかってるよッ！！でも───ッッ」

このターン、瑞希に許されたのは、自分の元に唯一残されたアラドヴァルを生贄として───メアリーの一手を“否定”する事のみ。

瑞希「───アラドヴァルの効果ッ！！！」

(2)：モンスターの効果が発動した時、
自分の手札・フィールドのモンスター１体をリリースして発動できる。
その発動を無効にし除外する。

瑞希「私は…ッ…『アラドヴァルの影霊衣』自身を生贄に───その効果を……おねーさんの最後の希望を無効にし除外する！！！」


竜騎士の命を懸けた一撃にメアリー、そしてウェンは吹き飛ばされ、凍りついた地に倒れ伏す。

メアリー「……がっ…」

鈴華「メアリーさんッ！！！」

叫ぶ鈴華。しかし増え続ける氷柱に阻まれ、ほとんど身動きが取れない。


瑞希「………許してよね。おねーさん。私が“終焉の焔”を裏切ったら…、これまで私が雫の為にやってきた全てと……雫への思いまで……裏切る事になるから───」

メアリー「……ハハ。そっか。それが聞けたなら……この勝負───ワタシの勝ち、カナ」

倒れながらも顔を上げ、メアリーは言う。

瑞希「……何、言ってんの…？」

やっと聞けた、瑞希の本音。

メアリー「…ワタシはこれで、ターン、エンド───」

それを引き出せただけで、メアリーにとっては勝利に値する。

瑞希「…まだ、決着は付いてない！！そんなんで勝手に！！勝負に勝った気になんなよっ！！
……決闘に負けた気になんなよ！！」

対する瑞希は荒い口調で返す。
瑞希の言う通り、まだ、決着は付いていない。

メアリー「…！」

やがて煙が晴れ、瑞希へとターンが移り───

◉TURN:１０◉

互いに手札は0。場のモンスターも伏せカードもなければ、墓地で発動できる効果もない。
更には除外ゾーンすら第二の手札として使い回すメアリーに対し、瑞希には失ったリソースを回復する手段はほとんどない。
どころかデッキのほとんどが儀式関連のカードで固まった瑞希のデッキでは、１枚のドローで僅か100のメアリーの残りライフを削る事すら、難しいだろう。

依然不利なのは───瑞希の方だ。

瑞希「…いい！？この決闘、まだ不利なのは私の方！！でも！！それを覆して！！私は私のやってきた事！！その全てを肯定してやる！！」

瑞希は叫ぶ。ただ、力の限り。


瑞希「間違った道だけど…！！！私が雫の為にした事は！！！決して無駄じゃなかったって！！証明するんだ！！！」

そう言って瑞希は、カードを引いた。





To Be Continued…