DRAW:１８６ 命を懸けた決闘　作：人喰い

(186)




〜YAGAMI本社ビル45階・神託の間〜



【Side 火群】



八神「ーーーーーワタシと決闘だ。マイン。
…闘争の果てに、お前が真に望む未来は無いーーーー」


火群「…待っーーーーー！」

慌てて足に力を込めるが、突如現れた機械の防壁に、俺とシルバさん、メアリーさんの３人は閉じ込められてしまう。



シルバ「…ッ……」


メアリー「…！！」




火群「ーーーー！！」



八神「…“クリフォート”を《具象化》させたその防壁の中にいれば、安全だ。
ーーーーー全てワタシに任せたまえ」


自信満々に言い切る社長を見て、なぜかどうしようもない不安感に襲われる。

このままじゃいけない。そんな気がしたんだーーーーー


火群「待ってくれッ…！！ 俺だって戦えるッ！！ 俺がマインをぶっ倒すッッ！！
ーーーーこの壁をどけてくれぇ！！」


一歩詰め寄って叫ぶ俺の肩を、シルバさんが強く掴む。

火群「…！！」


シルバ「……市瀬火群。
俺にも、社長がなぜこの様な行動に移ったのかは理解できない。
しかし、俺は信じたいーーーーー１度は世界を裏切った男が懸ける………世界の為の“決闘”をーーーーー」


シルバさんの銀色の眼に気圧され、俺は乗り出しかけた身を落とした。


火群「ーーーーわかり……ました…っ…」



メアリー「……っ…。（社長……この場所でマインを倒す未来が視えているのなら、どうして不死鳥くん達の事を『マインを倒すことのできる最後の希望』なんて言ったの……っ…！？）」


シルバ「……。（ーーーーー八神社長……貴方には、一体どんな未来が視えているというのだ……ッ……）」





それぞれの思惑が揺れる中、決闘盤から立体映像が展開されるーーーーー




八神【LP 8000】


マイン【LP 8000】






「「ーーーーー決闘ッッ！！！」」















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１８６ーーー
《命を懸けた決闘》















◉TURN:０１◉


八神「ワタシの先攻だ」[手札 5]


先手は八神社長。配られた手札を軽く眺めると、すぐに１枚のカードに手をかける。

八神「………」

そしてそのカードを魔法罠ゾーンの右端に発動させた。


八神「ワタシは、『クリフォート・ツール』をペンデュラムゾーンにセットするーーーーー」[スケール 9]


《クリフォート・ツール/Qliphort Scout》 †
ペンデュラム・通常モンスター
星５/地属性/機械族/攻1000/守2800
【Ｐスケール：青９/赤９】
(1)：自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2)：１ターンに１度、８００ＬＰを払って発動できる。
デッキから「クリフォート・ツール」以外の「クリフォート」カード１枚を手札に加える。


社長の右手側に黄色の光を放つクリフォートが現れる。


火群「…なんだあのカード…！！
魔法罠ゾーンに……モンスター…っ！？」

初めて目にする異質なカードに思わず目を疑う。


八神「ーーーーこのカードは『ペンデュラムモンスター』。魔法カードとしての性質を持ったモンスターだ。
魔法罠ゾーンの両端にセットする事で、永続魔法のように効果を発揮する事ができる」

火群「……そんなモンスターが…！
あれ……っ…あのモンスターの黄色い光…、どこかでーーーーー」






ーーーーー



『ーーーー第６のクリファ[カイツール]
『醜悪』な悪魔『ベルフェゴル』！！』



ーーーーー




火群「……ッ…！！」


ふと脳裏によぎる、反帝アリーナでのマインとの決闘ーーーーマインが『ティエラ』降臨の為に生贄にした、レベル６の『インフェルノイド』ーーーーー



八神「ーーーーライフを８００払う事で、クリフォート・ツール』のP効果を発動」【LP 8000→7200】


火群「……っ…（八神社長は、クリフォートからインフェルノイドが産まれたって言っていた……）」


八神「…デッキから『クリフォート・アーカイブ』を手札に加えるーーーー」[手札 5]


つまりあの発光体に対応した存在が同じ数だけ存在するという事かーーーー


八神「ーーーー続けて手札から、『竜剣士ラスターP』をPゾーンにセット」[スケール 5]


《竜剣士
りゅうけんし
ラスターＰ
ペンデュラム
/Luster Pendulum, the Dracoslayer》 †
ペンデュラム・チューナー・効果モンスター（制限カード）
星４/光属性/ドラゴン族/攻1850/守 0
【Ｐスケール：青５/赤５】
(1)：１ターンに１度、もう片方の自分のＰゾーンにカードが存在する場合に発動できる。
そのカードを破壊し、そのカードの同名カード１枚をデッキから手札に加える。
【モンスター効果】
このカードを素材として、「竜剣士」モンスター以外の
融合・Ｓ・Ｘモンスターを特殊召喚する事はできない。


八神「ラスターPの効果を発動ーーーー！」


発動の宣言と共に、もう片方のPゾーンに存在するクリフォート・ツールの外装にヒビが入る。


火群「……！」

八神「ーーーーその効果によりワタシはPゾーンのクリフォート・ツールを破壊。
そして破壊したカードと同名のカードを手札に加える」[手札 5]


ツールが破壊されたと同時にもう１枚のツールが社長の手札に加わる。
更にそれだけではなく、破壊されたはずのツールが装甲を修復しながらEXデッキへと送られるーーーー


火群「あれはーーーー！」

八神「…Pモンスターはフィールドで破壊される場合、墓地へは送られずEXデッキに表側で送られるーーーーー君の『ライズモンスターと同じだ」


火群「！！」

俺の……ガルド・イモータルと…同じ…ッ…！！


八神「ーーーーワタシは再び、クリフォート・ツールをペンデュラムゾーンにセットし、効果を発動する…！」【LP 7200→6400】


火群「…なるほど…！ これで無駄なく、1ターンに1度のサーチ効果を使い回せるのか…っ…！」


八神「……800のライフと引き換えに、ワタシはデッキから『機殻の要塞』を手札に加えるーーー」[手札 5]


社長は手札を減らさずに次々とサーチを行なってゆく。


マイン「…ククク…ッ……！

そしてマインはその様子を見て不気味に喉を鳴らす。
…マインは一体何を考えているんだーーーー


八神「ーーーー次だ。ワタシは今手札に加えたフィールド魔法『機殻の要塞』を発動……ッ」



《機殻の要塞
クリフォートレス
/Laser Qlip》 †
フィールド魔法
(1)：このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
自分は通常召喚に加えて１度だけ、
自分メインフェイズに「クリフォート」モンスター１体を召喚できる。
(2)：このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
「クリフォート」モンスターの召喚は無効化されない。



そのカードの発動によって大地が激しく揺れ、社長の足元から地を割って新たなクリフォートが現れる。


八神「…この要塞が存在する限り、クリフォートの召喚を無効にする事は出来ないーーーーー『クリフォート・アーカイブ』を召喚ッ！」[ATK 1800]☆4



《クリフォート・アーカイブ/Qliphort Carrier》 †
ペンデュラム・効果モンスター
星６/地属性/機械族/攻2400/守1000
【Ｐスケール：青１/赤１】
(1)：自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2)：自分フィールドの「クリフォート」モンスターの攻撃力は３００アップする。
【モンスター効果】
(1)：このカードはリリースなしで召喚できる。
(2)：特殊召喚またはリリースなしで召喚した
このカードのレベルは４になり、元々の攻撃力は１８００になる。
(3)：通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも
元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。
(4)：このカードがリリースされた場合、
フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。


八神「…このカードのレベルは6だが、妥協召喚が可能……そして妥協召喚した場合のレベルは４となり、攻撃力は1800となるーーーー」


マイン「…！」

八神「……更にこのターン、『機殻の要塞』のもう一つの効果により、通常召喚に加えて一度だけクリフォートモンスターを召喚する事ができる……！
現れよ、『クリフォート・ゲノム』！！」[ATK 1800]☆4


《クリフォート・ゲノム/Qliphort Helix》 †
ペンデュラム・効果モンスター
星６/地属性/機械族/攻2400/守1000
【Ｐスケール：青９/赤９】
(1)：自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。
この効果は無効化されない。
(2)：相手フィールドのモンスターの攻撃力は３００ダウンする。
【モンスター効果】
(1)：このカードはリリースなしで召喚できる。
(2)：特殊召喚またはリリースなしで召喚した
このカードのレベルは４になり、元々の攻撃力は１８００になる。
(3)：通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも
元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。
(4)：このカードがリリースされた場合、
フィールドの魔法・罠カード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


メアリー「…あのモンスターも妥協召喚が可能なモンスターネ…！」

火群「…けど、攻撃力は下級相当だ…。これでマインの攻撃を耐え切れるのか……っ…？」


シルバ「…八神社長……、まさかーーーーー」




八神「ーーーー更にワタシは、カードを１枚セット」


火群「……！」

カードを伏せた……。
という事は、このままターンを終了するつもりなのかーーーー？

そう思った直後、八神社長は残り１枚の手札に指をかけた。



八神「………これがワタシの出した回答だ。マイン」



そしてその１枚を勢いよく抜き出し、魔法罠ゾーンへと差し込んだーーーーー




八神「魔法発動…ッーーーーーー
ーーー『命削りの宝札』…ッッ！！





《命削
いのちけず
りの宝札
ほうさつ
/Card of Demise》 †
通常魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できず、
このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。
(1)：自分は手札が３枚になるようにデッキからドローする。
このカードの発動後、ターン終了時まで相手が受ける全てのダメージは０になる。
このターンのエンドフェイズに、自分の手札を全て墓地へ送る。





ーーーーー命削りの宝札。

発動されたそのカードからは邪悪な瘴気が溢れ出ていて、それが正常なものではない事はすぐに分かった。


火群「……なんだよ…あれ…っ…！？」

思わず疑問が口をつく。

しかしそれより、口元を吊り上げ邪悪に嗤うマインの表情が目から離れなかった。



マイン「…禁忌の……カード…ッ……！！」


火群「…！」


…禁忌の…、カード。


確か、その強力な効果故に、精霊王の鏡の中に封印されているっていう９枚のカードの事だ…っ…！
その内の３枚をマインが盗み出したとは聞いていたけど、残りの６枚のうち１枚を社長が持っていたなんてーーーーー


シルバ「……八神社長ッッ！！！」

突如、シルバさんが珍しく声を荒げる。


シルバ「…社長………そのカードを使うとは……ッ……。
ーーーー死ぬ……おつもりですか……ッ……！？」



八神「………」


社長は問いに答えず、デッキの上に指を乗せる。


火群「……っ……！」

…禁忌のカードには、強力な効果と引き換えに、“代償”が必要だとシルバさんは話していた…。


八神「……ワタシはこの効果により、手札が３枚になるようにデッキからカードをドローするーーーーー」[手札 0]


メアリー「…社長の手札は０枚……！！ という事は、一気に３枚のカードをドローできる……！！」

火群「…！」


社長は勢いよく３枚のカードを引き抜く。


八神「……ッ！！」[手札 3]



マイン「……ククク…ッ…！ それが父上の答えか………ッ…ククキフハァッッ！！
…変わらない…変わらない変わらない変わらない…ッ…！！
………何も変わらないなァ！！！
……そしてわかっているはずだ…ッ、強力なカードには、代償が伴うーーーーー！！」


社長はマインの言葉に対し、乾いた笑いで返す。

八神「……フッ…。
このターン特殊召喚を行えず、相手への全てのダメージが０になるだけだ。
……大した事は無い」


そう言う社長の様子が、どこかおかしい。


火群「………っ…」

会って少ししか経ってないけど、今のが明らかに作り笑いってことくらい……俺にもわかる……っ……！





八神「………さぁ、続けるぞ」




八神（……保って後１５分と言ったところか……。

ワタシの身体が朽ち果てるまでに、マイン…。
貴様への……、そして、世界へのーーーーー



ーーーーー懺悔を、済ませるとしよう）











To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１８７ -infernoid-






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙