DRAW:０５ 平穏という名の蜃気楼　作：人喰い

剛田とのデュエルの翌朝ーーー。

？？？（おい、朝だぞ。起きろ火群…！
………起きぬのなら、貴様の身体にあんなことやこんなことを……」

火群「……是非お願いします」

？？？「いいから起きろッ！！」

メキッ！

嫌な音がした。

火群「痛ーーッ！！」

俺が目を覚ますと、伸ばした俺の両足に跨るようにして、一人の美少女がしかめっ面でこちらを見つめていた。
薄手の華やかな和服に、金髪ポニーテール。そしてたわわに実った胸の果実。少なくとも、俺の知る女性では無い事は確かだった。

？？？「ようやく起きたか……ねぼすけめ」

火群「……え〜っと。どちら様でしょうか？」

俺は冷静に対応するが、言っている間にも、謎の美少女の和服が少し緩んで果実がこぼれそうだった。
だが、俺は貧乳趣味の為、こんな状況で興奮はしても欲情はしない。

？？？「何だわからんのか。私だ。『ガルドニクス』だ」

火群「な〜んだ。ガルドニクスだったのか〜………っておい！？」

ニクス「……二人きりの時はニクスと呼べと言っただろう。馬鹿者め」

火群「いや聞いてないぞ！？」

ニクス「……全く。朝から騒々しいやつだ」

火群「あのなぁ……まずお前は何でここにいるんだ？ というか何で擬人化してるんだ？」

ニクス「…ふむ。疑問に思うのも仕方ない……答えてやろう。
まず、私のこの姿は、今から約600年前の私の生前の姿だ」

火群「へ〜……何か遊戯王っぽくなってきたな（って、納得してる場合じゃないんだろうけどな）」

ニクス「で、わたしが何故ここにいるのか……だったな。
本来私は、貴様の持っている『炎王神獣 ガルドニクス』のカードの中に封じ込まれているのだが、貴様の身体の血液エネルギーの集中に応じて、貴様のイメージの中に出てきたり、私の意思によってはこうして現実に存在することもできる。もっとも、現実に居られるのは十五分程度の短かい時間だがな」

火群「そうか、昨日のデュエルの時は指先に血液が集中してたから、少しだけだがイメージの中でお前に会えたんだな」

ニクス「そういうことだ」

火群「……ん？ でもあれ？ 今はデュエルしてる訳でもないし、特に何も……」

ニクス「……馬鹿者め…。年頃の男子というものは、朝は皆こうなのか……？ こんなところに血液が集中しているぞ……」

火群「………？ あっ……！？ ば、馬鹿っ…！ 見るなぁーーッ！」


ニクス「………で、火群。再び私たちを封印するのか？」

急すぎる話の転換だ。

火群「………」

俺は少し黙りこみ、そして答えた。

火群「いや、俺はもう、そんな無責任な事はしない。 何であの時、お前が俺の元に来たのかは、教えてくれそうにないからまだあえて聞かないが、過去に怯えず、俺はお前とーーー俺自身のデッキと、これからもちゃんと向き合っていくよ」

ニクス「……フッ。そうか。……それより火群。この股間の『バーニングブラッド』はいつになったら収まるんだ……？」

火群「………ほ、ほっとけ///」




ー黒髭中学ー

俺は校門から入ろうとするが、校門の脇にいた人物に気付き、自然と足を止めてしまう。

火群「……！！ お前…昨日の……！」

戒「俺の名前は『斬波 戒（ざんば かい）』だ。覚えておけーーー市瀬 火群」

火群「斬波……戒、か」

戒「そういえば、昨日のお前からの質問にまだ答えていなかったな………俺が何故、お前の事を知っているか」

火群「……お前まさか、俺のストーカーか……？」

戒「……違う。 これを見ろ」

戒が鞄から取り出した資料を広げてみせる。

火群「え〜…なになに……？
『黒髭町デュエル大会・小学生の部、優勝者はーーー市瀬 火群』！？ これって……」

戒「数少ないお前のデータの一つだ」

火群「何でお前がこんなデータ持ってるんだよ！？ やっぱストーカーか！？」

戒「……疑うのも無理はないか。俺の父様は、かの有名な『海馬コーポレーション』、『インダストリアル・イリュージョン社』には劣るが、それらに名を連ねる程の一流企業『３８(サーティエイト)グループ・クロスナイツカンパニー』の社長だ。息子の俺ならこれ位のデータ、手に入れる事は容易い」

火群「ま、マジかよ……（クロスナイツカンパニーだあ？？ そんな会社聞いた事ねぇぞ…）。でも何のために俺のデータなんか…」

戒「………俺もその大会に出ていたんだ。そしてお前と闘ったーーー決勝でな」

火群「何ッ……！？」

戒「お前は完全に忘れているだろうが、俺はあの時よりも絶対なる力を付けた。もう俺に斬り伏せられない奴は、この町にはいない。
それを証明するためにお前を斬り伏せる！」

火群「斬り伏せる……か」

戒「そうだ。……ある伝説のデュエリストがこう言ったーーー『カードは剣、デュエルディスクは盾』……と」

火群「……へっ。面白れぇ」

戒「……フッ。いい表情だ（…思えば、俺はあの時あの表情に負けたんだったな……）。……市瀬、これを受け取れ」

戒は再び鞄の中から何かを取り出して俺に向かって軽く投げる。
渡されたのはデュエルディスクだった。

火群「これは…デュエルディスクか。ってことは……」

戒「……今日の放課後、この学校の屋上で待ってるぜ………そこで決着を付ける」

戒はそう言い、この場を後にした。

火群「………行ったか。萌えてきたぜ……！」


ニクス（…字が違うぞ。字が）

火群「……なんだ居たのか、ガ……ニクス」

ニクス（まあ一応カードの精霊だし。でも今は霊体だから貴様は私に触れないがな。ばーかばーか）

火群「………イラッ☆」

ニクス（どうしたのかな〜？ 火群きゅ〜ん？）

火群「……至極ムカつくが可愛いから許してやる。というか、早く校舎に入ろうぜ……」

学校の校門前で立ち止まって独り言は流石にイタい。
もっとも、デュエルで技名やら効果名を高らかに叫んでいた時点で、俺はもう十分に痛々しいがな。
そんなこと言ったら、某王様や某社長に失礼か……。


ー黒髭中学・２－１ー

明日人「おぉ、火群。おはよう」

火群「おはよう。クラース」

ニクス（へぇ。こいつが火群の唯一の友人か……唯一の）

火群（二回も言うなぁ！ 二回も！）

俺は心の中で叫んだ。

ニクス（なんだ貴様？ まさか『友達をつくると人間強度が下がる』とかぬかすつもりか？）

火群（……ただ単にコミュ障なだけだよっ！(泣)）

明日人「……？ どうした火群、寝不足か？」

火群「ま、まあ……大方そんなところだな」


キーンコーンカーンコーン


火群「…おっと、時間結構ギリギリだったんだな」

明日人「今日の数学は昨日の小テストが返されるらしいな」

火群「マジかぁ〜」


〜放課後〜

火群「お、終わった……」

明日人「…朝よりも沈んでるな」

火群「クソッ…とにかくテストが難しいんだよ……国数英が特にムズい」

明日人「そ、そうだな」

ニクス（おい火群、あのツンデレ少年とのデュエルの約束はいいのか？）

火群「（……あ。そうだったな。屋上に行かないと）…じゃあ、クラース。俺は今日は用事があるから、またな！」

明日人「…あからさまに怪しすぎるぞ……」



ー黒髭中学・屋上ー


戒「……来たか。市瀬 火群」

火群「あぁ、来てやったぜ」

戒「……フッ。俺たちデュエリストに、これ以上の言葉は必要あるまい」

ジャキン！

戒は左腕にデュエルディスクを装備する。
俺も見様見真似でデュエルディスクを左腕に装備してみる。

火群「え〜っと、ここをこうして……よしっ！」

ジャキン！

戒「……市瀬 火群。全力でかかって来い！！」

火群「望むところ！」

火群・戒『デュエルスタンバイ！』

市瀬 火群【LP:4000】手札5枚
斬波 戒 【LP:4000】手札5枚


火群・戒『デュエル！！』


ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ーTo Be Continuedー〜ー〜ー〜ー〜


〜おまけ〜

☆《今日の注目カード》☆
な〜にっかな〜、な〜にかな〜♫
今日は、これっ！ テレン♫
ー〜ー〜ー〜ー〜ー☆ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー
*ﾟ▽ﾟ)/☆《炎王神獣 ガルドニクス》☆ヽ(´o｀；
ー〜ー〜ー〜ー〜ー☆ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー

*ﾟ▽ﾟ)「エロかったね！！」
(´o｀;「そんだけかよっ！！」