DRAW:２３０ 託された竜魂　作：人喰い

(230)





だれも───いない。

寒い。

痛い。

ここはどこ？

パパとママは？

いつ帰ってくるんだろう。

おなかすいたなぁ。

待ってれば帰ってくるよね。

だから痛いのも寒いのもハラペコもへーきなんだ。

パパとママに会えるなら、なんだってガマンできるんだから。


あ！お星さま！


お星さまぴかぴか。きれーだな。

お星さまはね、いつもあたしとおはなししてくれるんだ。

きょうはなにを話そっか。

きれーだな。お星さま。



















◉◉◉遊戯王 Ph.X◉◉◉
───DRAW:２３０───
　　《託された竜魂》
















【Side:結維】


《神星樹内部》
『王冠の間』〜『美の間』

和泉の囚われている『美の間』の目前まで来た結維・鈴華・戒・栗須の4人だったが、終焉の焔・伍召焔の一人、エクシーズ召喚を担当する幼き少女・星奈に道を阻まれてしまい、結維と鈴華はデュエルを挑む。
星奈の操るテラナイトの猛攻は凄まじく、２対１という不利的状況をものともせず、先攻１ターン目からターンスキップで2人を追い詰める。
しかし結維の決死の一手、ワナビー！からの無限泡影で２人はかろうじて命を繋ぐ。そして返しのターン、鈴華は混沌の魔神と２対の竜を従え反撃に出る───



【決闘ルール】
２対１
新マスタールール(2017.3.25〜2020.3.31適用)

【ライフポイント】
結維＆鈴華:共有8000
星奈:8000

【フィールド・墓地・除外】
共有

【ターン進行】
星奈→結維→星奈→鈴華→星奈→…


星奈【LP 8000】
(モンスター)
『セイクリッド・トレミスM７』[ATK 2700]◉素材x6
(魔法)(罠)
『星守の騎士団』(永続魔法)
伏せ:3
手札:2
墓地:シリウス、アルテア、カドケウス、Xカドケウス、天架け


結維＆鈴華【LP 3600】
(モンスター)
『カオス・デーモン-混沌の魔神-』[ATK 4500]
『ライトパルサー・ドラゴン』[ATK 2500]
『ダークフレア・ドラゴン』[ATK 2400]
(魔法)(罠)
なし
伏せ:なし
手札:(結維:4(鈴華:2
墓地:コラプ
除外:カオスウィッチ、ドロドロゴン、ワナビー！、混沌領域



◉TURN:０４◉

ターンプレイヤー:鈴華

◉メインフェイズ１◉


鈴華「───あなたは多くの人を傷つけた。その罪が消える事はありませんわ」

星奈「───やめて」

鈴華「───けれど、まだ、やり直せる」

星奈「───やめてって言ってるでしょ！！

星奈は声を荒げ、叫ぶ。
初めの余裕はいつの間にか消え、目に涙を溜めふるふると震えている。
一方鈴華の墓地では、アドバンス召喚のためにリリースされた暗黒竜がその効果を発動させていた。

鈴華「…フィールドから墓地へ送られたコラプサーペントの効果で、私はデッキから再びワイバースターを手札に加えますわ！」[手札 3]

そして、と鈴華は続ける。

鈴華「───『ダークフレア・ドラゴン』の効果発動！！」


《ダークフレア・ドラゴン/Darkflare Dragon》 †
効果モンスター
星５/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守1200
このカードは自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを
１体ずつゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。
１ターンに１度、手札とデッキからドラゴン族モンスターを１体ずつ墓地へ送る事で、
自分または相手の墓地のカード１枚を選択してゲームから除外する。


鈴華「手札から『輝白竜 ワイバースター』、デッキから『百檎龍-リンゴブルム』を墓地へ送り、あなたの墓地の『星騎士 アルテア』を除外させてもらいますわ！」


手札、デッキより与えられた贄を糧に黒竜は力を蓄える。しかし今こそ火炎を吐き出さんとしたその瞬間───

ｶﾞｷﾝｯ!

───突如現れた鎖が、黒竜を縛り付けた。

鈴華「！！」

星奈「…トラップ発動っ！！『デモンズチェーン』！！」


《デモンズ・チェーン/Fiendish Chain》 †
永続罠
フィールドの効果モンスター１体を対象としてこのカードを発動できる。
(1)：このカードが魔法＆罠ゾーンに存在する限り、
その表側表示モンスターは攻撃できず、効果は無効化される。
そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。


星奈「させないよ…っ！させるわけないじゃんっ！！」

鈴華「…良いカード、使うじゃありませんの…！なら、このままバトル！ですわ！」

◉バトルフェイズ◉

鈴華の掛け声を受け、混沌の魔神は邪気を解き放ち、攻撃体制に入る。

鈴華「カオス・デーモンで、トレミスM７を攻撃！！
〝デス・クランチ・ヘル・グレイヴ〟！！」


『カオス・デーモン-混沌の魔神-』
[ATK 4500]
───VS───
[ATK 2700]
『セイクリッド・トレミスM７』


魔神が掲げた黒槍を勢いよく振り下ろすと、黒白２色の衝撃波が星龍へと降り注ぐ───


星奈「……きゃあああっっ！！」【LP 8000→6200】

衝撃波は星龍を撃ち貫き、その余波は星奈にもダメージを与えた。

鈴華「やった…！攻撃が、通っ……通った…！
削れた…！あの時ほとんど削れなかったあの子のライフを…！私が…！」


戒「…それだけじゃない。カオス・デーモンが破壊したモンスターはゲームから除外される…！
トレミスを失った今、これでヤツもこれまでのように簡単にターンスキップはできまい…！」

栗須「…行ける…！行けるぞ！西蓮寺さん！！」


星奈「…痛い…！痛い痛い痛い…っ！
ちがう…っ！こんなはずじゃなかったのに…っ！ぜんぶ、メガネのおねーさんがあたしのターンをジャマしたせいだっ！！」

鈴華「このまま押し切る…！！
行きなさい！ライトパルサー・ドラゴン！！
プレイヤーへダイレクトアタック！！」


『ライトパルサー・ドラゴン』
[ATK 2500]
───VS───
【LP 6200】
『常盤 星奈』


白竜は両翼を広げ、胸部にエネルギーを集中させる。そしてそのエネルギーを星奈に向け解き放とうとした、瞬間───

星奈「─── もう…っ…痛いのも寒いのも……“待つ”のもイヤなのっ！！！
トラップ発動っ！！『ダブル・フッキング』！！」


《ダブル・フッキング》 †
永続罠
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：手札を１枚捨て、自分の墓地のモンスターを２体まで対象としてこのカードを発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
対象のモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。
このカードがフィールドから離れた時に対象のモンスターは破壊される。


星奈「手札の『ティンクル・セイクリッド』を捨てて…っ、墓地から2体をふっかつさせるっ！！来てっ！！アルタイル！！シリウス！！」

『星因士 アルタイル』[DEF 1300]

『星因士 シリウス』[DEF 900]

鈴華「…！」

星奈「まだだよ！アルタイルとシリウスの効果はつどぉっ！！」


チェーン①
『星因士 アルタイル』
(1)：このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、
「星因士 アルタイル」以外の自分の墓地の
「テラナイト」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで「テラナイト」モンスター以外の
自分フィールドのモンスターは攻撃できない。
【対象:『星因士 デネブ』】


チェーン②
『星因士 シリウス』
(1)：このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、
自分の墓地の「テラナイト」モンスター５体を対象として発動できる。
そのモンスター５体をデッキに戻してシャッフルする。
その後、自分はデッキから１枚ドローする。
【対象】『星騎士 セイクリッド・カドケウス』x２『星輝士 セイクリッド・ダイヤ』『星因士 リュラ』『星因士 ウヌク』

星奈「5枚をデッキに戻して1枚ドローっ！！続けてデネブふっかぁつ！！」[DEF 1000]

鈴華（そうだ…っ…！蘇生効果を持った罠カードで、テラナイト達の特殊召喚時効果を自ターンと相手ターンで交互にフル利用することで全く途切れない手札と盤面…）

星奈「更にっ！デネブの効果でデッキからリュラを手札にっ！」[手札 3]

鈴華（この物量差に以前の私は手も足も出なかったんだ……けど！）


今の自分は───違う。


鈴華「───ライトパルサーの攻撃は中断！」

星奈「…っ！」

鈴華「カオス・デーモンは、相手モンスター全てに！1回ずつ攻撃できますわ！！」

星奈「！」

鈴華「続けてシリウスに攻撃───」

星奈「───させない…！！トラップはつどぉっ！！
『ワンダー・エクシーズ』！！」


《ワンダー・エクシーズ/Wonder Xyz》 †
通常罠
(1)：自分フィールドのモンスターを素材としてＸモンスター１体をＸ召喚する。


鈴華「…！！」

星奈「あたしの“でゅえる”は！！
だれにもジャマさせないっ！！！」

叫び、1枚のカードをEXデッキから抜き出す。
それは、鈴華にとって、忘れたくても忘れられないカード。

星奈「アルタイル、デネブ、シリウスの3体で───えくしーず召喚っ！！」

鈴華「───！！」

先日の戦いの記憶が蘇る。


……………


『───おつかれ、もう壊れていいよ』


……………


星奈の言葉が鈴華の脳内に反響し、思考を奪っていく。

鈴華「───っ」

やがて、目の前に輝く星が線で結ばれ、形成されるは、三角形。

冬の───大三角。


星奈「来て───『星輝士 トライヴェール』」



《星輝士
ステラナイト
トライヴェール/Stellarknight Triverr》 †
エクシーズ・効果モンスター
ランク４/光属性/戦士族/攻2100/守2500
レベル４「テラナイト」モンスター×３
このカードをＸ召喚するターン、
自分は「テラナイト」モンスターしか特殊召喚できない。
(1)：このカードがＸ召喚に成功した場合に発動する。
このカード以外のフィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。
(2)：１ターンに１度、このカードのＸ素材を１つ取り除いて発動できる。
相手の手札をランダムに１枚選んで墓地へ送る。
(3)：Ｘ素材を持ったこのカードが墓地へ送られた場合、
自分の墓地の「テラナイト」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。


鈴華「…あの…モンスターは…っ！」

決闘機兵工場にて鈴華を追い詰め、トドメを差したモンスターだ。
その恐るべき効果を思い出し、鈴華の手が僅かに震える。

鈴華「……ッ！」

警戒してなかったわけじゃない。しかし、エクシーズ召喚時の効果を自分のターンで発動される事は完全に想定外であった。
しかし───

星奈「───終わりだよ。おねーさんっ！！
トライヴェールの効果はつどぉっ！！」

最初のターン。
プトレマイオスのターンスキップにより勝利を確信した場面でのワナビーからの無限泡影。
その効果でリュラ、そして永続魔法『星守の騎士団』を止められ2度目のターンスキップを失敗。

星奈「このカード以外の！場のカードを！ぜんぶ！手札に戻すよっ！！」

返しの鈴華のターン。
強化された鈴華のデッキの初めて見る展開によって初めてライフを削られ───


星奈「きゃっっはははぁはははぁ！！きれーになったねっ！これで今度こそ───」


星奈は予定外の連続に、“焦り”を感じていた。


鈴華「───まだ！！」


大事な局面で、一手、早まってしまったのだ。


◉メインフェイズ２◉


鈴華の右手に再び黒き焔が宿り、墓地からは白黒２色の光が溢れ出る───

まだ、終わりじゃない。

鈴華「墓地のコラプサーペントとワイバースターを除外！！再び現れなさい！！『ダークフレア・ドラゴン』！！」

『ダークフレア・ドラゴン』[ATK 2400]☆5


鈴華「ダークフレアの効果発動！
あなたが手札に戻してくれた…『ライトパルサー・ドラゴン』と、デッキの『魔晶龍ジルドラス』を墓地へ送り、あなたの墓地の『星騎士 アルテア』を、今度こそ、除外させてもらいますわ！」

先程黒竜を封じた悪魔の鎖も今は星奈の手札に戻ってしまっている。
黒竜の炎を防ぐものは無く、星奈の墓地のアルテアを焼き尽くす。

星奈「…っ…！！」

墓地からの貴重な展開札を失い星奈は悔しそうに唇を噛む。
しかし文句を言う暇もなく鈴華の展開は続く。

鈴華「更に！私は墓地の『百檎龍-リンゴブルム』の効果を発動しますわ！」


《百檎龍
ひゃっきんりゅう
－リンゴブルム》 †
チューナー・効果モンスター
星２/光属性/ドラゴン族/攻 100/守1100
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：フィールドに効果モンスター以外の表側表示モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2)：自分のＳモンスターのＳ召喚に成功したターンの自分メインフェイズに、
墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分フィールドに「百檎トークン」（幻竜族・光・星２・攻／守１００）１体を特殊召喚する。
自分はこのトークンをＳ素材とする場合、このトークンをチューナーとして扱う事ができる。


鈴華「このターンにシンクロ召喚を行なっている場合、墓地のこのカードを除外し……『百檎トークン』を特殊召喚！」


『百檎トークン』[DEF 100]☆2
＊シンクロ素材とする場合チューナーとして扱う事ができる。


鈴華「私はレベル5の『ライトパルサー・ドラゴン』に、レベル2の『百檎トークン』をチューニング！！」


◉◉◉☆5+☆2=☆7◉◉◉


鈴華「シンクロ召喚！！レベル7───『邪竜星-ガイザー』！！」

『邪竜星-ガイザー』[ATK 2600]

鈴華「『邪竜星-ガイザー』の効果！！私の場の「竜星」モンスター……ガイザー自身と、トライヴェールを破壊！！」

邪竜星は力を振り絞り星輝士に突撃し、爆散。しかし邪竜星はタダでは死なない。その意志は、次の世代へと引き継がれる。

鈴華「…まだよ！破壊されたガイザーの効果！！」

星奈「…こっちだって！！墓地へ送られたトライヴェールの効果！！」

チェーン②『星輝士 トライヴェール』
墓地の「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚。【対象】『星因士 アルタイル』

チェーン①『邪竜星 ガイザー』
デッキから幻竜族モンスター1体を守備表示で特殊召喚。

星奈「来て！アルタイルっ！！」[ATK 1700]

鈴華「私が特殊召喚するのは……『カオス・ミラージュ・ドラゴン』！！」[DEF 600]☆4


《カオス・ミラージュ・ドラゴン/Chaos Mirage Dragon》 †
チューナー・効果モンスター
星４/光属性/幻竜族/攻1600/守 600
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：除外されている自分または相手の光・闇属性モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果を無効にして自分フィールドに特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は光・闇属性のＳモンスターしかＥＸデッキから特殊召喚できない。
(2)：このカードがＳ素材として墓地へ送られた場合、
そのＳ召喚の素材としたこのカード以外のモンスターの数まで相手フィールドのカードを対象として発動できる。
そのカードを除外する。


鈴華「カオス・ミラージュの効果！！
除外されているカオス・ウィッチを特殊召喚！！」

『カオス・ウィッチ-混沌の魔女-』[ATK 1500]☆4

鈴華「───私はレベル4のカオス・ウィッチに、レベル4のカオス・ミラージュをチューニング！！」



◉◉◉☆4+☆4=☆8◉◉◉


光の輪は列を成し、鈴華の背後で輝きを放つ。
そして“それ”は姿を現した。
光と闇を掌握し、振るう黒龍───


鈴華「過去も未来も、全てを越えて───混沌とした“現在(いま)”に祝福を！！！
シンクロ召喚！！
レベル８───『混沌魔龍 カオス・ルーラー』！！」



『混沌魔龍 カオス・ルーラー』[ATK 3000]



星奈「…っ…！ なんで…なんでなんでなんでなんで───」

鈴華「シンクロ召喚したカオス・ルーラーと、シンクロ素材になったカオス・ミラージュの効果！！」

チェーン②『カオス・ミラージュ・ドラゴン』

チェーン①『混沌魔龍 カオス・ルーラー』


鈴華「カオスミラージュの効果で、あなたの場のアルタイルを除外！」

星奈「……なんでなんでなんで……っ……！」

鈴華「そしてカオス・ルーラーの効果でデッキの上から5枚をめくり、その中の光・闇属性のモンスター1体を手札に加えますわっ！！」


星奈「なんで止まってくれないの！！！」

それは星奈の心からの叫びだ。

鈴華「───」

結維「───」

今まで星奈と戦ってきた相手は皆、この圧倒的な物量で押す展開の中で倒れ、朽ちていったのだろう。しかし今星奈の前に立つ2人の少女は、違った。
星奈の中で最も理解しがたい存在。
それが存在していることに、星奈の感情は、意志は、まともな状態を保てなくなりつつあった。

星奈「なんで…！効果も無効にして…いっぱい手札に戻したのに…！なんでなんでなんでなんで───」

結維「───あなたと同じよ」

遮る形で、結維は告げる。

星奈「……っ…！」

結維「…私達もあなたと同じで、大切なものを護りたい。そのために戦ってる。だからどんなにあなたが強くても、止まるわけには…いかないの」

星奈「…っ…それでも…っ！そうだとしても…っ！！
───見てよ！？わかんない！？
あたしの手札は6枚もあって、アルタイルとリュラに、星守の騎士団も手札に戻ってる！ちょっと足掻いたところでおねーさんたちなんか簡単に壊せちゃうんだから！！
それだけじゃない！場に残ってたデモンズチェーンとダブルフッキングもあたしの手札に戻った！おねーさんのターンが来たとしてももっかい使えるんだよ！？
もうムリなんだって！！！諦めて壊されちゃってよ！！！」

鈴華「………」

結維「………」

鈴華「……私だけだったら、止まっていたかもね」

だけど。


そう言って鈴華は、カオスルーラーの効果によってデッキの上から1枚ずつ、カードをめくってゆく───

鈴華「この戦いは、私だけの戦いじゃ無い───」

1枚目───『天魔神 ノーレラス』

鈴華「隣で一緒に戦ってくれている結維さんや───」

2枚目───『混沌空間』

鈴華「後ろで控えてくれている戒さんと古宮さん。そして───」

3枚目───『アークブレイブドラゴン』

鈴華「想いを託してくれた人間界の人たち───」

4枚目───『フェルグラントドラゴン』


鈴華「───みんなの想いが詰まってるから！！」



5枚目───『エフェクト・ヴェーラー』



鈴華「───『エフェクト・ヴェーラー』を手札に！残りのカードは墓地へ！」[手札 3]

星奈「───っ！えふぇくと…ゔぇーらー…っ…！それに、いま墓地に送られたカード……っ…！」

鈴華「希望は潰えてなんかいませんわ…！！
カードを1枚伏せて、ターンエンド！ですわ！」


◉エンドフェイズ◉


結維＆鈴華【LP 3600】
(モンスター)
『混沌魔龍 カオス・ルーラー』[ATK 3000]
(魔法)(罠)
なし
伏せ:1
手札:(結維:4(鈴華:2
墓地:ライトパルサー、ダークフレア、カオスウィッチ、カオスミラージュ、ジルドラス、ノーレラス、アークブレイブ、フェルグラント、混沌空間
除外:ドロドロゴン、ワナビー！、コラプ、ワイバー、リンゴブルム、混沌領域


星奈【LP 6200】
(モンスター)
なし
(魔法)(罠)
なし
伏せ:0
手札:6
墓地:カドケウス、デネブ、シリウス、トライヴェール、天架け、ティンクル、
除外:トレミス、アルテア、アルタイル、シェラタン


◉TURN:０５◉

ターンプレイヤー:星奈

◉ドローフェイズ◉


星奈「このターンで……絶対にぐちゃぐちゃにするから…っ！！おねーさんも…おねーさんのおともだちも…！！ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ！！！」

大粒の涙を流しながら金切り声を上げ、星奈は勢い良くデッキの上からカードを引き抜く。

星奈「あたしのターンっ！！ドローっ！！」[手札 7]

ダブルフッキングで蘇生したテラナイトの効果で増えた手札に加えて、トライヴェールで回収した永続魔法・罠を合わせ手札は7枚。

既に2ターンフルで展開した後とは思えない程のリソース回復量に、デュエルを見守る栗須は息が詰まりそうになっていた。

栗須「……ッ……あれだけ展開して…手札がまだ7枚も残ってやがる…」

戒「……」

しかし共に見守る戒の目線は星奈の手札では無く、鈴華たちの墓地へと向けられていた。
そして間も無くして、鈴華たちの墓地から淡く、気高き光柱が立ち昇った。
───スタンバイフェイズへと移行と共に。


◉スタンバイフェイズ◉


鈴華「───このスタンバイフェイズ！！」

叫び、墓地のカードに指をかける。

鈴華（力を貸してください───ジェシカさん）

鈴華「墓地へ送られた『アークブレイブドラゴン』の効果が発動しますわ！！」


《アークブレイブドラゴン/Arkbrave Dragon》 †
効果モンスター
星７/光属性/ドラゴン族/攻2400/守2000
(1)：このカードが墓地からの特殊召喚に成功した場合に発動できる。
相手フィールドの表側表示の魔法・罠カードを全て除外し、
このカードの攻撃力・守備力は、この効果で除外したカードの数×２００アップする。
(2)：このカードが墓地へ送られた次のターンのスタンバイフェイズに、
「アークブレイブドラゴン」以外の自分の墓地の
レベル７・８のドラゴン族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。


鈴華「私はこの効果で、墓地に眠るレベル７か８のドラゴンを復活させる───」

星奈「…まって…、まってよ……そのカードは───」

鈴華「墓地より現れなさい…っ！！『フェルグラントドラゴン』！！！」

星奈「───もう壊したはずなのに！！！」


『フェルグラントドラゴン』[ATK 2800]


巨竜の復活により、辺りに激震が走る。
そして雄々しき咆哮を轟かせ、巨竜は煌めきを放つ。
しかし、デュエルを見守る戒は違和感を感じ、声を上げる。

戒「……待て…ッ！『フェルグラントドラゴン』はフィールドから墓地へ送られていないと特殊召喚できないはず……それがなぜ───」

星奈「……そんなのどうだっていい！！そのカードは、あたしが壊した…こわしたこわこわこわしたこわしたしたのに！！なんでよ！！」

鈴華「───壊れてなんか、いませんわ」

気づくと巨竜の周りに光の粒子が漂い始めていた。

星奈「…！！」

鈴華「あなたとのデュエルで重症を負ったジェシカさんから預かったこのカードは、あなたに敗れ、あなたに奪われた精霊の、いわば前身───」

その粒子一粒一粒が、まるで意志を持っているかのように巨竜の元へと集まってゆく。

星奈「…なに、いって……」

鈴華「…一度負けたからといって、それで終わりじゃない。意志が壊れない限り、負けても、試行錯誤して、勝利に繋がるの。
敗北は、次へ繋がる糧となるのですわ！！」

やがて巨竜の全身を光が覆い、巨竜の姿が、より強く、大きく、進化を始めた。


鈴華「───それが“デュエル”って、ものでしょう！！！」


星奈「───っ！」


進化───否。


あるべき姿へと、回帰したのだ。



鈴華「今こそ真の姿を解き放つ時！！ですわ！！現れなさい！！
───『巨神竜フェルグラント』！！」


先程とは比べ物にならない程猛き咆哮を轟かせ、巨竜───改め巨神竜は大地に降り立った。


『巨神竜フェルグラント』[ATK 2800]


星奈「…ウソ……でしょ……。精霊が……力を…、取り戻した………」

見ると鈴華の場に出た『フェルグラントドラゴン』のカードは光を浴びた事で『巨神竜フェルグラント』へと書き変わり、完全に力を取り戻していた。

戒「───ッ！そうか…ッ、この地には、奴等に奪われた精霊が無数に存在している…！
その精霊エネルギーに呼応し、真の姿を取り戻したと言うのか…ッ！」

戒の言う通り、この神星樹の内部には、終焉の焔が各地から回収したカードの精霊とそのエネルギーが蔓延っている。
シルバの話では精霊エネルギーのほとんどは現在、“依代”に選ばれた和泉へと注ぎ込まれている最中らしいが、フェルグラントのカードに込められた強き意志が、自身の精霊エネルギーを感知し、引き寄せたのだ。

星奈「…そんな……そんなこと…っ…！」

鈴華「何度倒れても、立ち上がる。
そして立ち上がる度に強くなり、奇跡を起こす───。
それが私たち───決闘者ですわ」


倒れ、立ち上がる度に、強くなる。


そう───不死鳥の様に。






To Be Continued…