第165話 世界樹への道　作：ヒラーズ

邪魔者を倒した俺達は施設に入り、探索を行っていた。
仮に内部の構造が覚えられなくても、ハルの能力でパソコンがある場所くらい把握できる。
ハルに任せっぱなしでは駄目だ・・・役に立たぬと・・・。
「この部屋にある・・・」
「セキュリティを破るのは任せろ。ネクロ、周囲の警戒を頼む」
「人使いが荒いねぇ・・・」
俺は部屋の中に入り、パソコンのセキュリティを破る。
「・・・ログの確認をする・・・2ヶ月前のものだ」
「2ヶ月も前のものか・・・どんどん新しくなってるね」
さて、録音データはあるし、聞いてみるか。
「・・・データを再生するぞ」
「・・・うん」
ｶﾞﾁｬｯ

『フランスまで来ても世界樹はなかった、私は・・・とんだ無駄足だった。けど、得たものがあった。ここから遠くの国に世界樹の情報があった。かつてソビエト連邦国と呼ばれた土地で最も極寒の地と言われる所に、世界樹があるらしいの。私はそこを目指そうと思う。だけど・・・フライト中に巨大な木のような影が見えた。間違いなく、そこに世界樹があると私は確信したわ。ここに来る前にハルバードという子供とも出会ったわ。姿も形もクォーツに似ていた。性格もジェムにそっくりだった。思い出しただけで研究所の生活を思い出すわ。けど・・・もう、後戻りはできない。あの子は可哀想だけど、置いて行ったにも理由がある。あの子は・・・人間じゃないのは一目で理解できたわ。「世界樹の子供」恐らく世界樹の場所を知っていると思うけど、私はその子に強引に場所を聞きだそうとは考えない。ハルバードはハルバード、私は私、自分の力で世界樹にたどり着く・・・そう誓ったわ。でも、廃墟に置いてきた私は酷い人かも知れない・・・今でも後悔してる・・・ごめんね・・・、ハル。もしこの録音を聞いている人がクォーツ、ジェム、ハルバード、または両方を保護している人なら、私が世界樹を目指している事を理解して私を探して・・・・作り主のレンギアより・・・』

ﾌﾞﾂｯ…

「・・・ここで終わってるな」
「ぼく・・・人間じゃないん・・・だ・・・」
「・・・」
ハルは下を向き、座り込む。












「どうするんだい？あの子、あまりにも酷すぎる現実を見たんだ。置いていった本人は十分反省してるようだから、あの子は気にしてはいないようだけど」
「・・・ネクロ、ちょっと良いか？」
ネクロの頭上に？が浮かび、俺の話を聞く。
「ハル・・・まるで昔の俺を見ているようだ」
「昔の・・・陸也君？」
「俺も9歳までは自分を人間だと思っていた、だが学校で教えてもらえたのは座学とかそう言うもんじゃない。「死に方」を教えられてばっかりだった。他のクラスとも遊ぼうとしても俺を仲間外れにしては、どこかへ行くし。友達となった奴は2日立たずで絶交されるし、転校もされた。デュエルでは誰も相手してくれなかった。そこで気づいたんだよ・・・俺は人間じゃない「呪われた子供」だと思い知らされたよ」
「・・・」
（初めて陸也君が弱音を吐いたぞ・・・！？陸也君の過去酷すぎでしょ！）

「勿論、反論はしたさ。けど・・・俺とネクロのいた世界では不老不死は不吉の象徴と呼ばれている・・・半ば諦めてたさ、どうだ？これが俺の過去だ、面白いだろう？百騎兵に転生してもなお、「呪われた子供」のレッテルはずっと貼られっ放しだなんて笑えるだろう？まだこれはクォーツ達に話してない」
「・・・」
と言っても、今更こんな過去話してもお前さんには関係ないんだがね。
「・・・」
「・・・」
互いに沈黙が続き、俺は溜息を吐きつつ言う。
「・・・ありがとよ、少しだけすっきりした」
「陸也君も色々背負っているんだねぇ・・・まぁ私もだけど」
「そうだな・・・まぁ俺達二人、長年人間を見てきたからな。何を今更と思うぞ。不老不死だから何だ？呪われた子供から何だ？常人とは違うから何だ？それでも、人として生きる意思は同じだ・・・って誰に説教してるんだ俺・・・ククク・・・！」
「ははははっ・・・！」
俺とネクロは笑い合い過去の過ちを笑い話に変えていった。
俺の生涯の敵だとはいえ、同じ世界で生きた存在。こんな時もある。
そんな会話をハルがこっそりと聞いていた。

（強いなぁ・・・陸也さん達・・・ぼくも・・・強くならなくちゃ！！）
そう思ったハルは物陰から出て俺達に近づく。
「ごめんね、二人とも。行こう、次はどこに？」
「次と言っても・・・分からないはずはないよねぇ？」
「ああ、ソビエト連邦国で極寒地帯は1つしかない、露国（ロシア）のシベリアだな」
「しべりあ・・・？」
「シベリアだよ、何でそんなところに世界樹があるんだろうねぇ・・・」
「恐らく、この世界が汚染される前、人類は多くの世界樹を持ってたと言う説は持っていた方がいいな、後は行ってみなければ分からん」
「・・・そうだね」
「じゃあ、互いに決意が固まったところで行くぞ」
「・・・うん！」
俺は能力を使い、ロシアに転移したのであった。












そして・・・。
「おかしいな・・・ちゃんと場所も把握したのに何でモスクワに転移したんだ？」
「もしかして・・・転移の範囲外なんじゃ・・・」
百騎兵に転生してから超能力なんて使ってなかったからか、劣化してしまったな・・・。
「仕方ない、ここからは徒歩で行くしかないな」
「それしかないねぇ・・・歩けるかい？ハル君」
「うん、大丈夫」
大丈夫だろうか・・・？
まぁ本人が言うなら良いけど。
「何かあったら言えよ、背負ってやるから」
その言葉を聞いてハルは顔を真っ赤にして怒った。
「ぼ・・・ぼくはそこまで子供じゃないよ！」
それにつられてネクロが笑う。
「はははっ！ハル君、君はまだ子供だ！頼れる人が私か陸也君しかいないんだ、思いっきり甘えた方が良いよ？」
「ネクロさんまで！？」
そうやって俺達は談笑しながらシベリアを目指して歩いて行ったのであった。












一方、世界樹？の内部では・・・。
巨大な装置が、突然起動し、辺りを見下ろす。
『汚染率・・・39％まで低下、猛毒隕石の駆除により、安全性を取り戻している模様、コールドスリープ装置内に未登録の女性を確認、レンギア＝ヴァレスと認定、無害のため放置。こちらに接近してくる人影を3つ確認。そのうちの1人は世界樹の子供の模様・・・



―――――お帰り、ハルバード。いや・・・ユグドラノイド03―――――



―――――我が子の帰りをどれくらい待ちわびた事か―――――



』





次回、世界樹
※タイトルが変わる可能性があります。