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第七話 作:KOUBOU(旧名:光芒)




「えっと、二人にしてほしいことだけど……今のところは特にないかな」
「えーっ! なにそれー!?」

 晴れてデュエル委員になった遊舞と結衣に遊大から告げられたのは、実に気の抜けるような指示だった。それを聞いた遊舞は不満をこぼし、それと共に口を尖らせる。一方で結衣は至って冷静だった。

「落ち着いてください。遊大さん、他人に何かを説明する時はちゃんと言うべきところは言わなくてはいけませんよ」
「そうだね……特にないとは言ったけど、何もしないでいいってことじゃないんだ。二人には今までと同じように過ごしてほしい。普通に授業を受けて、普通に生活して、普通に他の生徒たちとデュエルをする。それだけなんだ」

 この学校におけるデュエル委員は新しいカードやストラクチャーデッキの解説やレビューを生徒会報に載せることやデュエル試験の準備・補助もあるが、一番の役目は生徒へのデュエルの振興である。上級生はもちろん新入生たちへデュエルを奨励し、学校全体のデュエリストレベルの向上。それがデュエル委員の一番の役目なのだ。

「じゃあ特に何かしてってわけじゃないんだ……なんか拍子抜けだなぁ」
「私たちはまだ新入生です。まずは少しずつデュエル委員の仕事を覚えないといけません。あなたは免許を持っていない人に車を運転させるんですか?」
「あー、デュエル初心者に【ヴァリアンツ】や【花札衛】を使ってデュエルに勝てっていうようなもんか」
「……あなたにしてはまとも例えをしますね」

 それが本当にわかりやすい例えかどうかは別として、まだホップステップジャンプのホップにも至っていないということで遊舞は納得した。用件を終えて退室しようとする二人であるが、遊大は結衣だけを呼び止めた。

「……遊舞さんはどうかな?」
「どうって言いますと?」
「同じ部屋で一緒に過ごしてみて変わったところとか。何か気付いたことはある?」
「……奇々怪々。入浴していたら乱入してくる、食事を作っていたらつまみ食いをする、朝起きたらいつの間にか隣で眠っている―――正直とても疲れます。不快ではないですが。それで、どうして彼女のことを?」
「あからさまとには言わないけど、それとなく彼女のことを見ておいて欲しいんだ」

 遊大は結衣に遊舞についていくつかのことを話した。一つは彼女に謎が多いことだ。遊大は入学以降秘密裏に遊舞のことを調べているのだが、現時点で風花 遊舞という人物にはわからないことが多い。住所などの本籍などにはおかしいところはないのだが、彼女の持つデッキ【ゲイルアイズ】についてもどういった経緯で彼女の手に渡ったのかなど、未知なところが多い。そのため、遊大を含めて学校関係者は他の誰かに悟られないように調査していたのだ。

「そういうことですか。こそこそと嗅ぎまわるのはあまり好みませんが、怪しいところはありますからね。私の方でもできる限りのことは調べてみます」
「ごめんね、ここにきて色々と苦労を掛けて」
「こちらこそ。あまりお役には立てないかもしれませんが……あ、そういえば」

 思い出したかのように結衣は手を叩く。

「彼女、園芸部に入部するそうですよ?」
「園芸部? また意外なところが……」
「彼女の机……まあ想像できるとは思いますが、ごちゃごちゃしていて汚いんですけど……参考書や教科書、デュエルの本以外に植物図鑑が置いてあったんです。そのことを聞いてみたのですが」

―――アタシ、花が好きなんだ! 将来の夢がお花屋さんだったこともあったんだよね☆

「……と。土いじりが好きなイメージがなかっただけに意外でした」
「なるほど、じゃあ園芸部の人にもそれとなく伝えようか。教えてくれてありがとう」

 こんな情報でも役に立ったのかどうかはわからないが、遊大からしてみれば満足だった。結衣を見送り、生徒会室に一人になった遊大は小さく息を吐く。

(遊舞さんのことも大事だけど、俺一人では限界がある。それに、俺には大事な仕事もあるからね)

 そう言って遊大は生徒会室の自分の机に積み重なった書類の山に目をやった。雄大がデュエル委員となって初めての大仕事がそこにはある。

(俺の考えた試験内容、先生たちに認めてもらわないと)










「それでは、始めさせて頂きます」

 遊舞と結衣がデュエル委員になって数日後、遊大は大勝負に臨んでいた。それは去年デュエル委員だった遊希も通った道。校長である竜司をはじめとした教師陣に生徒の代表・デュエル委員として新一年生のテストを兼ねた特別なデュエルの内容をプレゼンをするのだ。
 去年新入生だった遊大が経験した地下施設でのラビリンスデュエル。あれは遊希が提案し、プレゼンをすることで実現に至ったもので、遊大は書類作りのみではあるが、実現には関わっていた。ただ、去年と今年とでは色々と訳が違っていた。
 そもそも去年のラビリンスデュエルに関しては、元々竜司が暖めていた案を遊希が発展させたものであるということを忘れてはいけない。ラビリンスデュエルは竜司がペガサス・J・クロフォード主催のデュエル大会『決闘者の王国』で行われた地下迷宮のデュエルに憧れて企画したのが去年のデュエルだったのだ。
 元々竜司が主導して地下スペースを使ったデュエルを計画していたのだが、予算の問題と実現の難しさから教頭であるミハエルを始め複数の教員から反対されて立ち消えになっていたものだった。
 それに目を付けた遊希はその案を発展、実現に移すことで竜司たちを味方に付けることに成功した。だからこそすんなり賛成を得ることができたのだ。この学校において理事長に次いで力を持った竜司の鶴の一声を得るために。

「今回の説明にあたり、改めて自己紹介をさせて頂きます。私は今年度、生徒会の一員としてデュエル委員を務めさせて頂いております、高海 遊大と申します。まだまだお聞き苦しい点等多数あると思われますが、宜しくお願い致します」

 そう言って遊大は頭を下げる。竜司はそう緊張しないでいいよ、と優しく声をかけるものの、ミハエルをはじめ他の教師たちは皆真剣な表情をしている。確かにこれがなんてことない雑談ならともかく、予算や新入生たちの成績に関わるのだから当然だろう。それだけに遊大は身が引き締まる思いだった。

「今年度、生徒会として提案させて頂く新入生対象のデュエルは―――」











「ねー、ゆいゆ~い!」
「……何ですか」
「なんでアタシたちもデュエル委員なのにセンパイのプレゼンに付き合っちゃいけないのー!」

 素直に疑問の言葉を投げかける遊舞に対して結衣はムスっとした表情を向ける。遊舞はそんな結衣に対して怒った顔も可愛い、と茶化すが、そういうことを言われるのが好きではない結衣は露骨に嫌そうな顔をする。

「ちょっと考えればわかることじゃないですか。遊大さんが今プレゼンしているのは今度私たちが受ける試験の内容についてです。受ける私たちが同席したら意味がないでしょう」
「でもどうせ試験の前にルールとかが説明されるんだしそんな変わんないんじゃない? 黙ってればアタシたちだって同席してもいいっしょ☆」
「あなたがそれを黙っていられるほど口が堅いとは思えないからですよ」

 意外とはっきりと物を言う結衣に面食らう遊舞。同室になって数週間経つが、遊舞は結衣のところは嫌いではなかった。

「そもそもそんなに時間を持て余しているなら、他の人とでもデュエルをすればいいじゃないですか」
「まー、そーなんだけどね。でも相手がさ……」
「皆さんもう少しで来るから待っていてください。って噂をすれば来ましたよ」

 遊舞と結衣の視線の先には二つの人影。その正体は二人がこの学校で初めて「友達」と呼べるほど仲が良くなった生徒たちだった。






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