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第57話 帰る場所 作:白金 将
― ― ― ― ― ― ― ―
遊乃 6600
クイーン 5300
― ― ― ― ― ― ― ―
「私はこれでターンエンドだ……どうした? 友を失って戦意喪失でもしたのか?」
「ユーノちゃん……どうして……」
遊乃は両手を地面に付いて血の抜けた色の顔をしてしまっていた。かつてアルストロメリアに花を咲かせたあのいたいけな少女の姿はない。そこにいるのはただ自らの戦友を、仲間を、家族にさえなり得た大切な人を失い、果ては希望さえ奪われようとしている悲劇のヒロインである。
「悲しみでデュエルが出来ないならば、サレンダーするが良い」
「ユーノちゃん」
遊乃がぽつりと呟く。
やや遅い時期ではあったが、ようやく彼女の目から涙が溢れ始めた。
「ユーノちゃん……寂しいよぉ……!」
所々えずくような声を混ぜながらも遊乃は彼女の名前を呼び続ける。何度も確認するように、狂ったように呼び続ける。それはもはや、寂しがり屋の少女がただ「寂しい」と口にする程度ではなかった。
極端にひとりを恐れる遊乃は、自らの心を蝕み始める「孤独」を自覚してしまった。
「寂しいよぉ! ユーノちゃん! ユーノちゃん!」
「これは……」
「どうして……私を、置いていくの……」
そう呟いた後、ほんの少し、沈黙が流れた。そして遊乃はふらりと立ち上がる。
彼女の輪郭には黒い靄のような物がかかっていて、目には生気が全く見られない。先程のユーノのドローに見られたようなレベルではない。もっと暗く、深く、底が見えない彼女の「負」そのものが具現化しようとしていた。
「ユーノちゃん……終わったら、いっしょに外に出ようね……」
「狂ったか……デュエルを続行するかしないか決断しろ!」
あまりに遊乃がデュエル行為を再開しようとしない為クイーンは半ば怒鳴るように命令する。それを聞いた彼女はハイライトの無いのっぺりとした瞳でクイーンを睨んだ。
「するよ」
「だったら――」
「私のターン、ドロー」
遊乃のフィールドは伏せカード1枚のみ。一方のクイーンも、モンスター効果を5回止めることが出来るスタンニング・クイーン1体のみであった。
そうして引いたカードを見た後、遊乃はケタケタと上品から程遠い声で笑った。
「私は〈貪欲な壺〉を発動するよ。墓地のアルタイル、ベガ、デネブ、デルタテロス、ヴァトライムスを墓地に戻して2枚ドロー」
「だが私のフィールドにはスタンニング・クイーンが……」
「関係ないよ」
ギロリと遊乃の目が大きく開く。
「私は手札から〈死者蘇生〉を発動。墓地から〈CNo.107 超銀河眼の時空龍〉を蘇生」
「攻撃力で超えようと言うのか? 一時しのぎにしかなるまい」
クイーンの手札は2枚。そしてフィールドには箱庭が残っている。スタンニング・クイーンを戦闘破壊した所で中途半端に終わってしまえば、次のターンに何らかの手段で除去されて継戦能力で劣る遊乃には辛い展開になる。
勿論、当の遊乃はそれすらも読んでいる。もっとも、決めきれなかった場合など全く考えていない。もはや、この段階でクイーンは敗北が決定したのだった。
「調子乗らないでよ」
「何だと……!?」
「私はネオタキオンでオーバーレイネットワークを再構築、エクシーズ召喚。顕現、〈ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン〉。そしてオーバーレイユニットを1つ取り除いて効果発動」
「忘れたのか! 私はスタンニング・クイーンの効果発動! オーバーレイユニットを1つ取り除き、その効果を無効にする!」
クイーンの動きにミスは無い。盤面だけ見たら制圧力ではクイーンの方が上だ。それでも、突如変貌した遊乃の様子にクイーンは何か禍々しい物がやってくる気配を感じずにはいられなかった。
一方、友を失った遊乃は、目の前の敵を潰すことしか考えていない。
「私はギャラクシーアイズでまたオーバーレイネットワークを再構築、エクシーズ召喚。顕現、〈No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン〉」
「ダークマター……?」
「そして私は手札から〈エクシーズ・ユニット〉を発動。対象はダークマター」
エクシーズ・ユニットは装備モンスターのランク×200だけ攻撃力を底上げする効果を持っている。ダークマターのランクは9。元の攻撃力は4000の為、合計の攻撃力は5800に達した。これはスタンニング・クイーンの4000を大きく上回る。
「バトルフェイズ。ダークマターでスタンニング・クイーンを攻撃」
「っ――!?」
― ― ― ― ― ― ― ―
遊乃 6600
クイーン 5300 → 3500
― ― ― ― ― ― ― ―
塗りつぶしたような闇の咆哮がクイーンを一直線に襲う。あまりの瘴気に思わず彼女のも顔をしかめざるを得なかった。だが、これがまだ前座であることを知った時、クイーンの頭はこの後起きる事態への絶望に染められてしまった。
「この光……まさか」
遊乃のフィールドの一角から、あの黄金色の光が漏れ出していた。
大地から漏れだす光は徐々にその強さを増していき、ついには一匹の龍が蘇る。
「私は〈リビングデッドの呼び声〉を発動、墓地のネオタキオンを特殊召喚!」
「馬鹿な……!?」
バトルは続行。ネオタキオンの三つ首が、一度にクイーンに狙いを定める。
友を失った怒り、恨み、悲しみが合わさった負の閃光が襲い掛かる。
「散れ」
― ― ― ― ― ― ― ―
遊乃 6600
クイーン 3500 → 0
― ― ― ― ― ― ― ―
「フラワリングカップ、もうそろそろだね、さくら」
「そうだね。大分準備に手間取っちゃったけど」
「んふふー、さくらがいたからここまで来れたんだよ」
時と場所が変わってフラワリングタウン政治部。そこではもうすぐ行われるフラワリングカップに向けての準備が大急ぎで行われていた。参加者名簿の整理や競技施設の確保などで桔梗を含めた役員たちは師走の如く忙しい日々を送っていたのである。その休憩時間を桔梗はさくらが常在している町長室のソファで過ごしていた。
仕事に忙殺されながらも流行に乗り遅れまいと着飾っていた桔梗でさえ今は町の職員に割り当てられる作業着を着ている所を見たら、彼女たちの激務は想像できるだろう。
「アルストロメリアのあの子……遊乃ちゃん、かな? 彼女はどうなの?」
「無事に戻って来てくれたみたいだよ。大会にも参加出来そうかな」
「良かったね。ところであの子、写真で見たけどとっても可愛くない?」
「お、さくらもそう思った? 遊乃ちゃんは絶対モテると思うんだよねー、あぢっ」
テーブルに置いてあった、淹れたてのコーヒーが入ったカップを持とうとした桔梗がぱっと指を離した。彼女はそれに顔の高さを合わせるとフーフーと息で冷まし始める。その様子をさくらは微笑ましい顔で見守っていた。
「来てくれるといいなぁ。私も遊乃ちゃんとお話をしてみたいなぁ」
「あはは、きっと仲良くなれるはずだよー」
「彼女とデュエル出来ないかな? 普段は私もここから離れられないし……」
「んー」
桔梗は、やっと冷めたコーヒーのカップを持って天井を仰ぐ。
「大会にエキシビジョンをねじ込むのは強引だし……ってそうだ、さくら、ちゃんと準備は出来てるの? さくらだって当日はヤバみ溢れてるんでしょ?」
「た、多分大丈夫、かなぁ……」
「あーっ……今回は本当に私も手伝えないからね。さくらは町長なんだからしっかり」
少し先の事を考えながらさくらは落ち着きなく窓の外を眺めはじめる。彼女の中にあるそれは不安ではない。期待と少々の興奮が混ざった、水晶に似た輝きをする気持ちだった。
アルストロメリア本部、地下牢獄。
遊乃が目を覚ました場所はそこだった。ひんやりとしたコンクリートの床から起き上がると膝の所にくしゃくしゃになっていた毛布が重なる。それは隣の方にも繋がっていて、遊乃のすぐ横で眠っていた彼女は肌寒さを感じたのか目を覚ました。
「葵ちゃん」
「ん……ああ、起きたのか」
遊乃の隣で身体を起こしたのは、間違いなく紫蘭葵、彼女だった。そして、葵の目の前には確かに遊乃の姿があった。どっちもいつもよりちょっと崩れた髪形で所々に跳ねた毛があったが、それでもお互いが探していた相手が、確かにそこにいた。
森から半ば泣き叫ぶように飛び出してきた遊乃は夕暮れ時のアルストロメリアに帰ってきた。そして、葵が地下にいることを知ると自分も今日は彼女と一緒にいたいと訴えだし、そうして葵の下にたどり着くや否や、スイッチが切れたかのように眠りについてしまったのだ。
少し肌寒さを感じた遊乃は葵に寄り添う。それを彼女は無言で受け止めた。久しぶりに落ち着いて感じることのできる温もりに二人に笑みが零れる。
「寂しくなかったか?」
「ん……ちょっといろいろあったんだ。いろいろありすぎて、何から話したらいいか分かんない位で、ええと……」
何かを話そうと遊乃が口を開いたその瞬間だった。彼女の脳裏に、ユーノがスタンニング・クイーンの攻撃を受けて吹き飛ばされていった記憶が蘇る。一人だった自分の唯一の味方が散った光景が瞼の裏から離れなくなった遊乃は声も出せずに葵にすがりつく。
「……怖かったんだな。大丈夫だぞ。私が傍にいる」
「ううっ……葵ちゃん……」
葵にも忌まわしい「何か」があることは間違いない。それは彼女自身が知っている。
だが、遊乃が帰って来たあの日の夜、彼女が夢で「それ」を見ることは無かった。
「大丈夫だ……そう。何にも怖くない……」
「ありがとう……葵ちゃん、大好き……」
葵は遊乃と頬を優しくすり合わせた。遊乃が猫のような声を上げた。
遊乃 6600
クイーン 5300
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「私はこれでターンエンドだ……どうした? 友を失って戦意喪失でもしたのか?」
「ユーノちゃん……どうして……」
遊乃は両手を地面に付いて血の抜けた色の顔をしてしまっていた。かつてアルストロメリアに花を咲かせたあのいたいけな少女の姿はない。そこにいるのはただ自らの戦友を、仲間を、家族にさえなり得た大切な人を失い、果ては希望さえ奪われようとしている悲劇のヒロインである。
「悲しみでデュエルが出来ないならば、サレンダーするが良い」
「ユーノちゃん」
遊乃がぽつりと呟く。
やや遅い時期ではあったが、ようやく彼女の目から涙が溢れ始めた。
「ユーノちゃん……寂しいよぉ……!」
所々えずくような声を混ぜながらも遊乃は彼女の名前を呼び続ける。何度も確認するように、狂ったように呼び続ける。それはもはや、寂しがり屋の少女がただ「寂しい」と口にする程度ではなかった。
極端にひとりを恐れる遊乃は、自らの心を蝕み始める「孤独」を自覚してしまった。
「寂しいよぉ! ユーノちゃん! ユーノちゃん!」
「これは……」
「どうして……私を、置いていくの……」
そう呟いた後、ほんの少し、沈黙が流れた。そして遊乃はふらりと立ち上がる。
彼女の輪郭には黒い靄のような物がかかっていて、目には生気が全く見られない。先程のユーノのドローに見られたようなレベルではない。もっと暗く、深く、底が見えない彼女の「負」そのものが具現化しようとしていた。
「ユーノちゃん……終わったら、いっしょに外に出ようね……」
「狂ったか……デュエルを続行するかしないか決断しろ!」
あまりに遊乃がデュエル行為を再開しようとしない為クイーンは半ば怒鳴るように命令する。それを聞いた彼女はハイライトの無いのっぺりとした瞳でクイーンを睨んだ。
「するよ」
「だったら――」
「私のターン、ドロー」
遊乃のフィールドは伏せカード1枚のみ。一方のクイーンも、モンスター効果を5回止めることが出来るスタンニング・クイーン1体のみであった。
そうして引いたカードを見た後、遊乃はケタケタと上品から程遠い声で笑った。
「私は〈貪欲な壺〉を発動するよ。墓地のアルタイル、ベガ、デネブ、デルタテロス、ヴァトライムスを墓地に戻して2枚ドロー」
「だが私のフィールドにはスタンニング・クイーンが……」
「関係ないよ」
ギロリと遊乃の目が大きく開く。
「私は手札から〈死者蘇生〉を発動。墓地から〈CNo.107 超銀河眼の時空龍〉を蘇生」
「攻撃力で超えようと言うのか? 一時しのぎにしかなるまい」
クイーンの手札は2枚。そしてフィールドには箱庭が残っている。スタンニング・クイーンを戦闘破壊した所で中途半端に終わってしまえば、次のターンに何らかの手段で除去されて継戦能力で劣る遊乃には辛い展開になる。
勿論、当の遊乃はそれすらも読んでいる。もっとも、決めきれなかった場合など全く考えていない。もはや、この段階でクイーンは敗北が決定したのだった。
「調子乗らないでよ」
「何だと……!?」
「私はネオタキオンでオーバーレイネットワークを再構築、エクシーズ召喚。顕現、〈ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン〉。そしてオーバーレイユニットを1つ取り除いて効果発動」
「忘れたのか! 私はスタンニング・クイーンの効果発動! オーバーレイユニットを1つ取り除き、その効果を無効にする!」
クイーンの動きにミスは無い。盤面だけ見たら制圧力ではクイーンの方が上だ。それでも、突如変貌した遊乃の様子にクイーンは何か禍々しい物がやってくる気配を感じずにはいられなかった。
一方、友を失った遊乃は、目の前の敵を潰すことしか考えていない。
「私はギャラクシーアイズでまたオーバーレイネットワークを再構築、エクシーズ召喚。顕現、〈No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン〉」
「ダークマター……?」
「そして私は手札から〈エクシーズ・ユニット〉を発動。対象はダークマター」
エクシーズ・ユニットは装備モンスターのランク×200だけ攻撃力を底上げする効果を持っている。ダークマターのランクは9。元の攻撃力は4000の為、合計の攻撃力は5800に達した。これはスタンニング・クイーンの4000を大きく上回る。
「バトルフェイズ。ダークマターでスタンニング・クイーンを攻撃」
「っ――!?」
― ― ― ― ― ― ― ―
遊乃 6600
クイーン 5300 → 3500
― ― ― ― ― ― ― ―
塗りつぶしたような闇の咆哮がクイーンを一直線に襲う。あまりの瘴気に思わず彼女のも顔をしかめざるを得なかった。だが、これがまだ前座であることを知った時、クイーンの頭はこの後起きる事態への絶望に染められてしまった。
「この光……まさか」
遊乃のフィールドの一角から、あの黄金色の光が漏れ出していた。
大地から漏れだす光は徐々にその強さを増していき、ついには一匹の龍が蘇る。
「私は〈リビングデッドの呼び声〉を発動、墓地のネオタキオンを特殊召喚!」
「馬鹿な……!?」
バトルは続行。ネオタキオンの三つ首が、一度にクイーンに狙いを定める。
友を失った怒り、恨み、悲しみが合わさった負の閃光が襲い掛かる。
「散れ」
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遊乃 6600
クイーン 3500 → 0
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「フラワリングカップ、もうそろそろだね、さくら」
「そうだね。大分準備に手間取っちゃったけど」
「んふふー、さくらがいたからここまで来れたんだよ」
時と場所が変わってフラワリングタウン政治部。そこではもうすぐ行われるフラワリングカップに向けての準備が大急ぎで行われていた。参加者名簿の整理や競技施設の確保などで桔梗を含めた役員たちは師走の如く忙しい日々を送っていたのである。その休憩時間を桔梗はさくらが常在している町長室のソファで過ごしていた。
仕事に忙殺されながらも流行に乗り遅れまいと着飾っていた桔梗でさえ今は町の職員に割り当てられる作業着を着ている所を見たら、彼女たちの激務は想像できるだろう。
「アルストロメリアのあの子……遊乃ちゃん、かな? 彼女はどうなの?」
「無事に戻って来てくれたみたいだよ。大会にも参加出来そうかな」
「良かったね。ところであの子、写真で見たけどとっても可愛くない?」
「お、さくらもそう思った? 遊乃ちゃんは絶対モテると思うんだよねー、あぢっ」
テーブルに置いてあった、淹れたてのコーヒーが入ったカップを持とうとした桔梗がぱっと指を離した。彼女はそれに顔の高さを合わせるとフーフーと息で冷まし始める。その様子をさくらは微笑ましい顔で見守っていた。
「来てくれるといいなぁ。私も遊乃ちゃんとお話をしてみたいなぁ」
「あはは、きっと仲良くなれるはずだよー」
「彼女とデュエル出来ないかな? 普段は私もここから離れられないし……」
「んー」
桔梗は、やっと冷めたコーヒーのカップを持って天井を仰ぐ。
「大会にエキシビジョンをねじ込むのは強引だし……ってそうだ、さくら、ちゃんと準備は出来てるの? さくらだって当日はヤバみ溢れてるんでしょ?」
「た、多分大丈夫、かなぁ……」
「あーっ……今回は本当に私も手伝えないからね。さくらは町長なんだからしっかり」
少し先の事を考えながらさくらは落ち着きなく窓の外を眺めはじめる。彼女の中にあるそれは不安ではない。期待と少々の興奮が混ざった、水晶に似た輝きをする気持ちだった。
アルストロメリア本部、地下牢獄。
遊乃が目を覚ました場所はそこだった。ひんやりとしたコンクリートの床から起き上がると膝の所にくしゃくしゃになっていた毛布が重なる。それは隣の方にも繋がっていて、遊乃のすぐ横で眠っていた彼女は肌寒さを感じたのか目を覚ました。
「葵ちゃん」
「ん……ああ、起きたのか」
遊乃の隣で身体を起こしたのは、間違いなく紫蘭葵、彼女だった。そして、葵の目の前には確かに遊乃の姿があった。どっちもいつもよりちょっと崩れた髪形で所々に跳ねた毛があったが、それでもお互いが探していた相手が、確かにそこにいた。
森から半ば泣き叫ぶように飛び出してきた遊乃は夕暮れ時のアルストロメリアに帰ってきた。そして、葵が地下にいることを知ると自分も今日は彼女と一緒にいたいと訴えだし、そうして葵の下にたどり着くや否や、スイッチが切れたかのように眠りについてしまったのだ。
少し肌寒さを感じた遊乃は葵に寄り添う。それを彼女は無言で受け止めた。久しぶりに落ち着いて感じることのできる温もりに二人に笑みが零れる。
「寂しくなかったか?」
「ん……ちょっといろいろあったんだ。いろいろありすぎて、何から話したらいいか分かんない位で、ええと……」
何かを話そうと遊乃が口を開いたその瞬間だった。彼女の脳裏に、ユーノがスタンニング・クイーンの攻撃を受けて吹き飛ばされていった記憶が蘇る。一人だった自分の唯一の味方が散った光景が瞼の裏から離れなくなった遊乃は声も出せずに葵にすがりつく。
「……怖かったんだな。大丈夫だぞ。私が傍にいる」
「ううっ……葵ちゃん……」
葵にも忌まわしい「何か」があることは間違いない。それは彼女自身が知っている。
だが、遊乃が帰って来たあの日の夜、彼女が夢で「それ」を見ることは無かった。
「大丈夫だ……そう。何にも怖くない……」
「ありがとう……葵ちゃん、大好き……」
葵は遊乃と頬を優しくすり合わせた。遊乃が猫のような声を上げた。
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108 | 第11話 たまにはみんなで温泉旅行! | 1120 | 4 | 2016-02-23 | - | |
135 | 第12話 シロちゃんは二度挟まれる | 1046 | 6 | 2016-02-28 | - | |
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110 | 第14話 王者の資格 | 1089 | 6 | 2016-03-09 | - | |
105 | 第15話 Execution | 1118 | 6 | 2016-03-13 | - | |
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130 | 第17話 キャット・アンド・ドッグ | 1056 | 4 | 2016-03-25 | - | |
55 | 第18話 積み込み・スリ替え・橙一色 | 964 | 6 | 2016-04-02 | - | |
87 | 第19話 孤独への恐怖 | 939 | 2 | 2016-04-10 | - | |
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128 | 第21話 「ふつうの女性」になりたくて | 1066 | 4 | 2016-05-01 | - | |
72 | 第22話 翌檜の恋心 | 929 | 4 | 2016-05-03 | - | |
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106 | 閑話休題:キャラクター紹介3 | 1003 | 0 | 2017-02-23 | - | |
118 | 第44話 不穏 | 780 | 4 | 2017-03-19 | - | |
121 | 第45話 BREAK DOWN | 959 | 2 | 2017-03-21 | - | |
122 | 第46話 その少女、黒紫の竜と共に有り | 952 | 2 | 2017-03-23 | - | |
90 | 第47話 おかえり | 928 | 4 | 2017-03-26 | - | |
120 | 第48話 大切な人 | 928 | 3 | 2017-03-29 | - | |
101 | 第49話 炎 | 757 | 4 | 2017-04-28 | - | |
106 | 第50話 Find Your Way | 878 | 2 | 2017-05-17 | - | |
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136 | 閑話休題:キャラクター紹介4&作者の呟き | 994 | 0 | 2017-10-01 | - | |
121 | 第58話 前哨戦(△) | 855 | 5 | 2017-11-09 | - | |
126 | 第59話 混沌を制す者(△) | 1046 | 2 | 2017-11-12 | - | |
54 | 第60話 侵略者の領域 | 921 | 4 | 2018-02-20 | - | |
111 | 【報告】現状と暗い見通し【更新できねぇ】 | 1147 | 0 | 2018-05-31 | - |
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- 2024/04/27 新商品 INFINITE FORBIDDEN カードリスト追加。
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- 04/27 12:42 評価 7点 《トラップ・ギャザー》「《名推理》→《トラップトリック》や《ア…
- 04/27 12:28 デッキ 純ウィッチクラフト(アドバイス求む)
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
でもそのまま発狂せずにアルストロメリアまで帰ってこれたこと、そして久しぶりに遊乃×葵の尊い絡みが見れて一読者としては安堵しています(まあ、フラワリングカップに向けて遊乃の闇がさらに深いことになる危険性はありますが……)
(2017-10-01 10:25)
物凄くいろいろなことがあったけれど結局戻って来られました。二人の絡みを書いたのも随分と久しぶりでしたね。遊乃の闇に関しては、おそらく葵がいる間は大丈夫でしょう。フラワリングカップ期間中は……どうなるかな? (2017-10-01 14:49)
さて、次はフラワリングカップでしょうか。果たしてどんな展開になるのか?
貪欲な壺のくだりですが墓地ではなくデッキに戻す、ということで合ってますよね? (2017-11-17 22:06)
ユーノを失いつつも遊乃は勝ちましたが、さてこれが彼女にどう影響を与えるか。何はともかく次はフラワリングカップです。戻ってきた日常と大会のデュエルをご期待ください。
貪欲な壺に関してはそうですね……書き間違えちゃってごめんなさい(´・ω・`) (2017-11-17 22:21)