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HOME > 遊戯王SS一覧 > 1話:仮説と真実

1話:仮説と真実 作:ドクダミ2号

「時が……来た………?」

櫻は不思議そうな声をあげる。それもそうだ、今目の前にいるのは自分の父親だ。だがその父親は全てを知っているかの様な言葉を発している。

「何よそれ!ふざけてるの!」

六花が憤怒の声をあげる。しかし、それを気にもとめず、話を続ける。

「あぁ、時が来たんだ。もう……18年になるのか。そんなに待ったんだ。あの時の約束からな………。」
「約束って……何?何のこと?キチンと全てを話して!!」

櫻達4人は彼の言ってる事が分からない状況だった。

「………何なのよ!大体、どっからやって来たのよこのカード達は!知ってるなら答えなさい!!」
「うーん……どっからと言われてもなぁ………デュエルモンスターの世界からとしか言えないな………いや、冗談抜きで。」
「じゃぁ何でその……デュエルモンスターの世界?から来たなんて知ってるのよ!?」
「何でって……知ってるからだよ。」
「答えになってない!!」

声をあげる櫻。しかし父親はそれを軽く受け流す。……と言うより、答える気が全く無い様子だった。

「……もう良い。代わりに、別な質問をさせて。」
「ん?良いぞ?何でも聞け。答えるとは言ってないがな。」

別な質問……それは前に資料室で記事を見た時から、気になっていた事だった。

「お父さん。……貴方は、何者?」
「え……お姉ちゃんそれどういう意味?」

六花が不思議なそうに声をあげる。六花には質問の意図がよく分からないようだ。

「……それは何だ?俺が人間じゃ無いとか言いたいのか?」
「違うわ。……お父さん、18年前に不動杯に出て遊星とデュエルした人物の名前………分かるかしら?」
「………遊亜翔………だろ?」
「……えぇ。じゃぁお父さんの名前は?」
「………翔。生憎、同じ名前さ。ま、別人だけどな。」
「いいえ違うわ。……お父さん、貴方は………。」

櫻が答えを言いかけた時、急に近くから爆発音が鳴った。

「!?」
「来やがったな……!」

父親はこれも知っているかの様に対応する。今まで訳が分からず呆然としていた雷と凛もこればかりには気を取り戻した。

「な……何だ今の!?」
「ーーー!こ、怖いよ!何なのもう!」

爆発音が鳴った方向から1人の男がやってくる。……どうやら友好的な人物では無さそうだ。

「よぉ……何だぁ?変なのもいるな。まぁ良い!おい!遊亜翔!分かってんだろうな!?」

……遊亜翔の名を大きな声で呼ぶ。しかし反応は無い。そりゃそうだ。普通ならここにはいるはず無いのだから……。

「あぁ?おい!そこのおっさん!てめぇじゃねぇのかよ!?」

さっきの男が苛立った声で父親……もとい翔に話す。

「御生憎、俺は遊亜翔じゃない。他を当たるんだな。」
「……嘘をつくな!こっちは分かってんだよ!てめぇが住む環境も名前も変えて平和に過ごしてるのぐらいよ!」
「嘘じゃ無いさ、大体俺がその遊亜翔って言う証拠はどこにあんだ?」

……他の3人がこの状況に戸惑う中、櫻は不思議な事に平然としていた。

「やっぱり………ね。」
「何だ?何かあったのか?」
「いえ………やっぱり私の考えは当たっていた……という事ね。」
「はぁ?」

父親……いや、翔は素っ頓狂な声をあげる。自分の娘である櫻の言ってる事がよく分からない様だ。

「いえ……私も………貴方が遊亜翔だったんじゃないかって仮説を立ててね。」
「……だーかーらー!違うって何回言えばーーー!」
「じゃぁ、これについて説明できる?」

そう言って櫻が見せたのは、リベリオンマジシャン・ヴァルキュリアだった。

「んぐ!それは………!」
「これはお父さんが渡したのでしょ?だけど、とある記事じゃこのカード……遊亜翔だけが持つ世界にただ1つのカードなんですってね。……何で遊亜翔じゃない、別な翔が持ってるのかしら?」
「そ……それは………。」
「それは………貴方がその遊亜翔だからじゃないかしら?」

場に緊張が走る。………その緊張を解いたのは、あの男だった。

「どうなんだ!やっぱりてめぇが遊亜翔なんだろ!?」
「俺は……俺は………!」

沈黙した後、翔は一気に声をあげた。

「そうだよ!俺はその遊亜翔さ!今は………苗字こそ違うがな!榊原に変えたのさ!お前らから………逃げるために!」

真実を話す翔。しかし、櫻はある言葉に驚いていた。

「……逃げる……ですって?まさか私………余計な事をしたの………?」
「……あぁそうだよ!折角何もかも変えてこんな奴らから離れた世界で暮らそうって!あいつと一緒に過ごして行こうって………決めてたのに!もう……めちゃくちゃだ!」
「え……と……その………ごめんなさい!」
「謝ったってもう遅い!かかってこいディスペアー共!またこの俺が相手をしてやる!!」

そう翔が叫んだ時、後ろから別の声があがる。

「待って!お父さん!」

それは六花の声だった。訳が分からず、ずっと黙っていた六花だが、何やら考えがある様子だった。

「お父さん、もしかして前にも………?」
「あぁ。俺はこいつらと前にも戦った事がある。あれは………もう22……いや正確には23年前になるのか。撃退したのが22年前でそこからずっとこいつらとは出会わなかった。……まぁ残党はいたがな。」

語り続ける翔。今度は凛が口を開く。

「つまりその……えぇと……。」
「翔でいい。」
「翔さんは、今正に敵と再会してるって事………?」
「そういう事だ。」

動揺してるからか、まともな質問ができないでいた。

「さて………、お前が相手してくれるんだろ?やってやるさ!デュエーーー」
「待って待って!!!」

デュエルを開始しようとした時、またも六花が大きな声をあげる。

「お父さん、私達が相手をするよ!」
「な……何言ってんだ!ダメだ!お前らを巻き込むわけには………!」
「もう歳でロクに動けないって言ってたの誰!?」
「ぐっ。」

六花の言う通り、翔はもう数値にして40。体が以前の動かなくなってきたのだ。そんな状態で危なそうな相手と戦うなど……得策ではない。

「六花、待ちなさい。」
「お姉ちゃん!?でも………!」
「ここは………私がやるわ。」

櫻の返答は余りにも意外なもので、そこ場にいた全員が驚きの声をあげた。

「そこのいかにも悪そうなお方、覚悟なさい。私がいる限り………父に……妹に………仲間に………そして、この街に手出しはさせないわ!……デュエルよ!」

次回に続く
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