12 襲撃事件の真実　作：ギガプラント

（路地裏の拓けた空き地）



仁「………」


夏武斗「仁……！」


仁「…またお前か。」


夏武斗「あぁ！今度こそ絶対に勝つ！」


目を逸らす仁。


仁「…一度闘った奴とデュエルする気は無い…時間の無駄だ。」


夏武斗「な、なんだとぉ～！？」


仁「…」


夏武斗「なんだよ！今日勝っても明日負けるかもしれねえのがデュエルだろぉ！！」


夏武斗「ってか俺だって！一回はお前に勝ってるんだからな！」


仁「ああ…確かにそうだ。」


仁「…だが今の俺にはおまえと闘う理由がない。」


夏武斗「む～…！理由なんてそんなに大事なのかよ！昨日はあんなに急かしてきたくせに！」


仁「…言ったはずだ、時間の無駄だと。」




天音「それは…夏武斗君の情報は把握できたからですか？」




仁「…何を言っている。」


天音「…この近くのカードショップの方が言ってきました。ここに居座っているデュエリストを倒してほしいって。」


仁「………」


天音「でもそもそもおかしいんです。実際に何かしらの被害があったわけでもないのに、『ちょっと怖いから』なんて理由でわざわざ張り紙まで作ってあなたと戦わせようとするなんて。」


天音「…レアカードの割引を提案されましたし、買ったばかりのカードを試したい気持ちもあったでしょうから、あなたに挑みに来る人は度々現れた。」


仁「…仮にそうだとして、だから何だ？」


天音「ここであなたは相手を選ばずデュエルをしかけた。当然相手もあなたと闘う事目当てに来たわけですから、自然な流れで闘ったんでしょう。」


天音「ですがそれがあなたの狙い…あなたは仕掛けてくるデュエリスト達のデッキの情報を事細かに集めていたんです。」


仁「それで……？」


天音「…ここからがあなたの、いえあなた達の本当の狙い。」


天音「集めた情報を元に、徹底的に対策を施したデッキを作り…襲撃する。」


仁「………！」


天音「あなたはここで闘った相手の情報を襲撃犯達に流して…より確実に襲撃を行うための手助けをした。違いますか？」


仁「………」


天音「そして裏で繋がっているのが………」






？「エクセレントッ」






天音「！？」


夏武斗「だ、誰だっ！？」



仁「漆原（うるしばら）…。」


漆原「店にいる妹から連絡がありましたよ…なにやら怪しいお客様が居たってね。」


天音「じゃああなたが…！」


漆原「ご名答お嬢さん。私…カードショップのオーナーをしています。漆原という者です。」


仁「………」


天音「やっぱり…あそこのカード屋さんが黒幕だったんですね…！」


夏武斗「くそっ…本当にそうだったっていうのかよ。」


漆原「おやそちらの君は…確か昆虫使いの坊やでしたね。」


夏武斗「！？」


漆原「全く瓶田君には困ったものですよ…せっかく私が対昆虫カードを提供してあげたのに…。情報収集側はともかく、襲撃側が負けてしまってはお話にならない…。」


漆原「かなりの強者と聞いていたのでお願いしたのですが………夜見原君と役割を逆にするべきでしたかね。」


夏武斗「てっめぇ…！」


漆原「驚きましたよ。君はカードを購入しなかったので、あくまでノーマークの予定でしたが…まさかヴィクトリー・ビートルなどという素晴らしい物を見せて下さるとは。」


漆原「早速人を向かわせたのですが…歓迎役に少々欠陥があったようですね。申し訳ありません。」


天音「欠陥…って。」


夏武斗「おまえ！人を何だと思って…！」


漆原「彼は雇われデュエリストですよ？雇い主の機械のように動くのがお仕事です。それができなければ欠陥品に他なりません。」


夏武斗「こいつ……！」



漆原「さて…こうなってしまっては仕方がありません。お二方、私と取引致しませんか。」


夏武斗「取引…？」


漆原「私は商人なのでね。暴力は好まないのですよ。」


漆原「どうでしょう？うちのお店のカード、幾つか差し上げますよ。」


夏武斗「はぁ！？」


天音「口止め料…とでも言うつもりですか。」


漆原「勿論、流石に全部とはいきませんが…一応大事な商売道具ですので…。」




天音「やっぱり…！」


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天音（あ、このカードは初めてみますね…ふむふむ）


天音（融合、シンクロ、エクシーズ、なんでも揃ってるんですね…。）


天音（あれ？このカードは確か……やっぱり。シークレットレアの『氷結界の龍 トリシューラ』。そういえばあの人もここのお店で見つけたって言ってましたっけ…。）

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天音「高値で売ったカードを襲撃犯に奪わせてまた売り払う…それが貴方達の…！！」


漆原「レアカードとは皆が持っていないからこそのレアカードなんです。再利用しない手はないでしょう？」


夏武斗「何が再利用だ！ふざけんな！」


漆原「やれやれ……交渉決裂ですか。仕方ありませんね、こういうやり方はあまり好きじゃないのですが…。」


漆原「少々荒っぽい手を使わせてもらいますよ…！」

Ｄパッドを構える。


漆原「夜見原君！別件のお仕事です。」


仁「くっ……！」


夏武斗「仁！！」


仁「………」

Ｄパッドを構える仁。


夏武斗「くそっ！」


天音「闘うしか……ないみたいですね。」


夏武斗「こんな…デュエルをこんなとこに使う奴らに…負けてたまるか！！」






dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



タッグパートナーロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！




デュエル！！






夏武斗「俺のターン！！」


天音「夏武斗君！タッグデュエルでは全てのプレイヤーが１ターン目のドローと攻撃が行えません！気をつけて下さい！」


夏武斗「オッケー了解！」


夏武斗（仁……！）



夏武斗「俺はモンスターを裏側守備表示でセット！」


夏武斗「俺はこれで、ターンエンドだ！」



仁「…俺のターン。」


仁「…相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札から『先陣の魔妖兵』を特殊召喚する。」星６・ＡＴＫ２４００


仁「そして…俺は『デッド・プランドラー』を召喚。」星４・ＡＴＫ１５００


仁「…デッド・プランドラーの効果発動。」


仁「…フィールド上のレベル５以上のモンスター１体のレベルを１つ下げ、このモンスターのレベルを１つ上げる。」先陣 星６→５　プランドラー 星４→５


夏武斗「前と同じコンボか…！」


天音「レベル５モンスターが２体…！」


仁「俺はレベル５の先陣の魔妖兵とデッド・プランドラーでオーバーレイ！」


仁「２体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！」



エクシーズ召喚！


現れよ！深淵を駆ける瞬速の槍！ランク５！『冥獄の猛将 ナイトメア・エッジ』！ランク５・ＡＴＫ２５００



夏武斗「くっ！早速来たか！」


漆原「流石です夜見原君。やはり君の方が優秀そうだ。」


夜見原「ナイトメア・エッジの効果発動。１ターンに１度、オーバーレイ・ユニットを１つ使う事で、手札から闇属性モンスター１体を特殊召喚する。」


夜見原「…手札より『ランサー・デーモン』を特殊召喚。」星４・ＡＴＫ１６００


夜見原「カード２枚セット…これで俺はターンエンド。」



天音「私のターン！」


天音（あの人、仁さん一人ならなんとか話ができると思ってましたが…迂闊でした。）


天音（もっと後ろを警戒すべきでしたね…。）


天音「私は『ファイン・ファイター』を召喚します！」星４・１８００

太陽の如く身体から光を発する戦士。


天音「ファイン・ファイターの効果発動！このカードは１ターンに１度レベルを１つ上げる事ができます！」星４→５


天音「これで…ターンエンド。」



漆原「では私のターン。」


漆原「いやいや実に残念ですよ…あなた方とは良好な関係を築けると思っていたのですが…。」


夏武斗「そんなわけあるか！俺たちはそんなに人間腐っちゃいねえ！」


天音「その通りです…！こんな酷い事、見過ごすわけにはいきません！」


漆原「やれやれ、もう少し大人だと思っておりましたが…まぁいいでしょう。」


漆原「私は『プロフェット・マーチャント』を召喚します。」星４・ＡＴＫ８００

宗教団体染みた服装の商人モンスター。


漆原「プロフェット・マーチャントの効果発動。このカードが召喚された時、デッキの上から５枚を確認して順番を自由に入れ替える事ができます。」


夏武斗「デッキの上……つまり次に引くカードが確認できるのか…。」


漆原「商人と申しますのは…常に未来を見通す事が大事なのですよ。」


漆原「例えばカード産業ですと……皆がどんなものを望んでいるか、どんなカードなら値段が高くとも買ってくれるか…などですね。」

ニヤリと笑う。


夏武斗「てんめぇっ…！」


天音「くっ…！」


仁「………」


漆原「ふむ…まぁこんなものでよろしいでしょう。」

めくった５枚をデッキの上へ戻す。


漆原「更に私は魔法カード『招来の竪琴』を発動！」

不思議な光沢の装飾が付いた竪琴が現れる。


漆原「このカードはデッキの一番上の確認し、そのカードがレベル４以下の通常召喚可能なモンスターだった場合、そのカードを特殊召喚ができます。」


夏武斗「デッキトップのカードって事は…！」


天音「先程の効果で把握している部分ですね…。」


漆原「常に先を見据えて行動に移すのが優秀な商人というものです。」


漆原「めくったカードはレベル３のチューナーモンスター『コイン・ジャグラー』！特殊召喚！」星３・ＤＥＦ１００

大きめのコインでジャグリングする道化師のような風貌のモンスター。


漆原「コイン・ジャグラーが特殊召喚に成功した時、私はカードを１枚ドローする！」


漆原「私はレベル４のプロフェット・マーチャントにレベル３のコイン・ジャグラーをチューニング！」




果てる事無き数多の欲望、悪しき魔神の元に集え！




シンクロ召喚！




御出でなさい！『邪商神 エビルスター』！星７・ＤＥＦ２６００




強い気迫を放つ胡坐をかいた和装の邪神。


夏武斗「シンクロ召喚か…！」


天音（でも表示形式は守備……壁でしょうか…？）


漆原「ご安心を……先程も申した通り私は争いを好みません。皆様だけでお楽しみください…。」


夏武斗「なんだって…！？」


漆原「私はカードを２枚セットしてターンエンドです。」


天音（あの人…一体何を。）



夏武斗「俺のターン！ドロー！」


夏武斗「このターンから攻撃ができる…！一気に行くぜ！」


夏武斗「俺はセットしていた『霊木仙人』を反転召喚！」星４・ＡＴＫ２００


夏武斗「霊木仙人のリバース効果発動！デッキからレベル４以下のモンスター１体墓地へ送る事ができる！」


夏武斗「俺はこの効果で、レベル１の『クレストウィング・フェアリー』を墓地へ送る！」


仁「…チューナーか。」


漆原「ほうほう…どうするか見物（みもの）ですねぇ。」


夏武斗「更に俺は、『ビートルーパー』を召喚！」星３・ＡＴＫ１５００


夏武斗「ビートルーパーの召喚に成功した時、手札か墓地のレベル３以下の昆虫族モンスター１体を特殊召喚できる！」


夏武斗「クレストウィング・フェアリーを特殊召喚！」星１・ＤＥＦ１００


夏武斗「俺はレベル４の霊木仙人とレベル３のビートルーパーにレベル１のクレストウィング・フェアリーをチューニング！」





密林の王者よ！燃えたぎる闘志をその身に宿し、猛き一撃で勝利を掴め！



シンクロ召喚！



出でよ！『ヴィクトリー・ビートル』！星８・ＡＴＫ２５００




漆原「エクセレント！素晴らしいカードだ！この私ですら本物を見るのは初めてですよ。」



夏武斗「仁！なんでこんな奴に手を貸すんだよ！お前はそんな…！」


仁「………黙れ。」


夏武斗「くっ…だったらデュエルに勝って、今度こそ話を聞いてもらうまでだ！」




夏武斗「いくぞ！仁っ！！」





終










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（次回予告）


夏武斗「仁！こんな奴に手を貸すなんて！」


天音「一度売ったカードを奪い取るなんて…見過ごすわけにはいきません！」


夏武斗「あのシンクロモンスター…一体何をするつもりなんだ…！」


天音「先手必勝です…！私のターン！」


夏武斗「次回！『無差別攻撃！戦慄のタッグデュエル！』」


夏武斗「あいつ！！味方諸共攻撃する気か！！？」

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・タッグデュエルってアニメでもデュエル毎にルールが微妙に変わってるんだよな…。一応アニメZEXALの「遊馬＆凌牙ＶＳ陸王＆海王」や「遊馬＆カイトＶＳⅣ＆Ⅲ」あたりを参考にしています。
・ずっと前に作ったオリカ『招来の竪琴』を割と自然に使えて嬉しい…。
・そういえば「アブソーブ・ウィップ」もイラスト付きでオリカ投降しました。宜しければご覧ください。