第15話　波乱の朝　作：ター坊

朝日が眩しく、目を覚ましたらいつもと同じ自室だった。





ということはなく、横には寝相が悪くイビキがうるさい万丈目とゴーシュがいた。自分の頬をつねるが、これは夢なんかじゃなく現実と再確認しただけだった。二人を起こさぬよう宿直室を出ると、誰もいないガランとした廊下が伸びているだけだ。舞たちもまだ起きてないようで、俺は学生ホールで何か飲もうと歩き出した。
学生ホールで缶コーヒーを飲みながら今日の行動を考える。いつまでも籠城と言うわけもいかないだろう。いつかはここもばれる、ならば別の隠れ家を探しに行くか？それともばれるまでここにいるか？どうしたものかと考えていると
「おはようございます、ユイさん」
「あぁ、龍可。おはよう」
「…？わぁ。綺麗…」
龍可の視線を追うと1本の桜の木がある。確か高校創設時に植樹されたもので、今の季節は花が咲き、枝と下の地面を鮮やかなピンク色に染めている。
「昨日、全然気付かなかった…」
「まぁ、昨日は色々とありすぎたからな」
「そうですよね…ん？」
龍可のは桜のさらに向こう側に何か見つけたようだ。
「ん？どうした？」
「えっと、あそこに人が…」
何！？もう見つかったのか？と思ったが何か違う。遠目で詳しくは分からないが、格好は黒タイツではなくバラバラで、身長から判断して1人は大人で、2人は俺より年下の年頃だろうか？ん？こっちに向かってる？あ！
「あいつらの後ろに昨日の黒タイツが！」
「あの人達、追われてるの？」
見つけた3人の後ろには7~8人の黒タイツがいた。
「んー。あいつらに見つかりたくないけど、助けないで無視する訳にもいかないか。龍可はみんなを起こしに行ってくれ」
「は、はい！」
さてと、今日も滅茶苦茶な１日になりそうだ。

~舞 サイド~

「オハヨウゴザイマス」
「は、ハ~イ。おはよう…」
アキちゃんは不機嫌な目でこっちを睨み付けてくる。さすがにイタズラで脱いだ服全部宿直室の前に置いたのはやり過ぎたか。あのあと説教されて終始威圧されっぱなしだった。黒薔薇の魔女ってあんな感じだったんだなぁと思った。龍可ちゃんに助け舟を頼もうにも起きた時にはもういなかった。
「アキさん！舞さん！起きて！」
龍可ちゃんが大声で部屋に入ってきた。タダ事ではないとすぐに直感した。
「龍可、どうしたの？」
「今、黒タイツの集団に追われてる人たちが外にいて…ユイさんがみんなを起こしてくれって…」
「ユイはもう出たんでしょ？龍可ちゃんは万丈目とゴーシュを起こしに行って。アタシとアキちゃんが先に行ってるから」
「は、はい」
龍可ちゃんはすぐ宿直室に向かった。今日も走り回る１日になりそうね。


~ゴーシュ サイド~

ん？なんだ？ドロワか？今日もスケジュールがあるって？もう少し寝かせろや…。
「万丈目さん！ゴーシュさん！起きて下さい！」
ん？なんだ夢か…。実際に起こしたのは龍可だった。万丈目は既に起きていたようで、応対する。
「龍可。どうしたんだ？」
「外に、黒タイツの集団に追われてる人がいて、ユイさんが助けに行きました！」
「何！？」
黒タイツの集団？昨日、ユイが言っていた謎のデュエリスト集団か。…フン。朝からノリのいい目覚ましだぜ。いっちょやってやるか！