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第13話 事件勃発 作:イベリコ豚丼
「急ぎな武雄!宗ちゃん来てるよ!」
「分かってるよ!」
ハンガーに架かっているブレザーを掴み、反対の手で鞄を拾う。
「ごめんねぇ毎日迎えに来させちゃって」
「いえいえ、幼馴染みですからこれぐらいは」
「ほんとに良く出来た子だねぇ。これで女の子だったらあの馬鹿息子を貰ってもらうんだけど…。……宗ちゃん、おばさんお金出しちゃうからタイに行く気ないかい?」
「ないです」
「何をアホな会話してんだ母ちゃん」
何とか用意を済ませ、家を出た。
「おはよ、武雄君」
「悪ぃ、待たせちまったか?」
「ううん、僕も今来たところだから。それじゃあおばさん、行ってきます」
「はいよ、行ってらっしゃい!」
あの一件以来、俺と宗介は昔の様に連れ立って学校に通うようになった。
「武雄君が寝坊するなんて珍しいね」
「昨日お前に習ったこと復習してたら寝るの遅くなっちまってな」
「それで、出来るようになったの?」
「まぁ一応ってとこだ。未だにレベルとランクの違いは分からんが。レベルを持たないってのとレベル0は違うのか?」
「うーん…、それはもうそういうものだと考えた方が良いと思うよ?僕だって完全に理解してる訳じゃないしね…。鶴岐さんなら上手く説明出来るんだろうけど」
確かに、鶴岐のデュエルに関する知識には目を見張るものがある。しばらくデュエルをやっていないというが、現役時代は相当の腕前だったのではないだろうか。
「そういやあいつ最近見ねぇが何してんだ?」
「シフト変わって夜勤になったらしいよ?朝と昼で別の仕事場でバイトしてそっから学園に来てるんだって」
「相変わらず目茶苦茶な仕事量してんな…」
「でも、カードにお金掛けてる訳でも無さそうだし、いったい何の為に働いてるんだろうね」
「さぁな」
あれだけ働いていれば、生活費を差し引いても相当の金額を稼いでいるはずだ。
だが鶴岐は金に困っている姿しか見たことが無い。
「意外に女にでも貢いでんじゃねぇか?」
「あはは……」
と、そんなことを話ている間に学園に到着した。
「ん……?何だありゃ?」
昇降口で靴を履き代えようとすると、下駄箱前に設置されている掲示板に大勢の生徒が集まっていた。
「学校新聞………の号外かな?」
「ってことはまた誰かのスキャンダルか…。ったく、毎回毎回よくやるぜ」
あの暴力事件の時には俺もネタにされた。その時は俺だけでなく宗介や雅也さんにも迷惑を掛けてしまった。それ以来こういうのは読まないことにしている。
いつも通り一瞥して通り過ぎようとすると、新聞に見覚えのある人物の写真が掲載されていた。
「雅也……さん?」
「え?」
宗介には身長的に見えていない様だが、あの写真は間違いなく雅也さんだ。
「お、おいちょっとどいてくれ!!」
両手で集まっていた生徒達を掻き分け、何とか人混みの先頭に身体を差し込んだ。
「なっ………!何だよこれ!!」
『生徒会庶務兼柔道部主将、カードショップで万引きで逮捕!?』
『信用の失墜やいかに』
『今日にも担当教師が詳細を聞く予定』
そこには、信じられない内容が書き連ねられていた。
「………ふ、ふざけんな!あの人がそんな事する訳ねぇだろうが!何かの間違いに決まってる!!」
「武雄君落ち着いて…!」
「これが落ち着いてられるか!草津の野郎!俺の次は雅也さんにこんな濡れ衣着せやがって!ぶっ飛ばしてやる!」
「そんなことしたらあの人の思う壷だよ!またそれをネタにして記事にされるに決まってる」
「じゃあどうすれば…!」
「草津先輩は、脚色はするけど嘘は書かない。とにかく今日あるっていう面談の結果を待とう。本当に何も無いのならそれで全部解決するはずだ」
「くそっ………!」
草津にも、この記事にも、何より何も出来ない自分に無性に腹が立ち、張ってあった新聞を思いっ切り破り捨てた。
「ふっ…!ふっ…!ふっ…!!」
どうにかして記事の事を頭から消そうと、無心に筋トレに打ち込んだ。
「今日はえらい早く来てるんだな」
「副部長……」
「まだ練習始まるまで1時間はあるじゃないか。………と言っても、俺も似たようなもんだがな」
「あの副部長、雅也さんは……」
その問いに、力無く首が横に振られる。
「顧問曰く、今日は早退したらしい」
「そんな……」
あの雅也さんが部活を休むというのは、それだけで一大事だ。
「どうにかしてこれが嘘だって証明できねぇのかよ!」
「俺も同じ気持ちだ。雅也とは中学の時からの付き合いだが、絶対にそんなことをする奴じゃなかった。自分どころか、周りにも被害が出る行為をあいつをするはずがない…!」
そう言うと、悔しそうに下唇を噛んだ。
「あらぁ?今日は根黒くん休みかしらぁ?珍しいこともあるものねぇ」
「「!!」」
武道場の入り口から掛けられた声の主は、誰あろう、草津栄その人であった。
「おっと、今日はもう帰っちゃったんだったけぇ」
「草津…!!」
「何しに来やがった…!」
「私がすることなんて一つしかないじゃなぁい。取材よ取材、今回の事件についてあなたたちから話を聞こうと思ってぇ」
「そんな取材受けると思っているのか」
「それならそれでいいのよぉ。柔道部の皆さんはノーコメントでしたって記事に変わるだけだからぁ」
この女、雅也さんをあれだけ貶ておいてまだ柔道部にまで手を出そうというのか。
「いい加減にしろよてめぇ…!」
怒りに任せて草津の胸倉に掴み掛かった。
「全部てめぇの記事が原因だろうが!あんな嘘ばっか並べ立てやがって!そのせいでどんだけ…!」
「あらぁ、私は嘘なんて書いてないわぁ。根黒くんの逮捕のことだってちゃんと疑問形になってたじゃなぁい。それを真実と取るかどうかは読者の判断であって私の責任じゃあないわぁ」
身長180㎝を越える俺にここまで迫られておきながら、顔色一つ変えずにそんなことを宣う。
「それにいつも言ってるじゃない、怪しまれる様な行動を取った根黒くんが悪いのよぉ。上の立場にいるってことはそれだけで注目を集めるのにねぇ」
「ふざけんな…!!」
衝動的に握り締めた拳を振り上げる。
「やめろ武雄!」
そこで宗介の言葉を思い出す。
『暴力を振るったらそれこそあの人の思う壷だよ』
「くそっ!」
仕方なく草津の襟から手を離した。
「ふん。あなた達も可哀相よねぇ。根黒くんのおかげで色々大変な思いしてるでしょぉ」
「草津、俺達だってまだ混乱しているんだ。今はそっとしておいてくれ。………そして、二度と俺達の前に姿を見せるな…!」
いつも冷静なあの副部長が、初めてはっきりと怒りを露にした。
「……あっそ、じゃあもういいわぁ。ほっといてあげる。今はあなたたちよりも根黒くんの面談の結果の方が気になるしねぇ。明日また号外作らないと。あぁ忙しいわぁ」
そう言って草津は武道場を後にしたのだった。
「このままじゃあいつに好き放題されたままじゃねぇか…!副部長!何か方法はないんすか!?」
「…悔しいが、草津の新聞には絶大な影響力がある。たとえ俺達柔道部全員が力を合わせたところでどうにかできるものじゃない」
「………!」
今まで雅也さんが築き上げてきた信頼が、仲間が、たった一つの誤解で全て崩れ去ってしまう。
そんなこと…、そんなことあっていいはずがねぇ…!!
「畜生……!ちくしょおぉぉぉ!!!」
―――
根黒くん逮捕の日から5日が経ち、学園中がその話題で持ち切りになった頃、ふと気になる情報を耳にした。
「連続失踪事件?」
「はい、何でもあの日早退して以来、根黒先輩は一度も学校に来てないそうなんです」
まぁそれだけなら大したことでもないだろう。問題を起こした生徒が停学になったか行きづらいからで学校に来なくなったというよくある話だ。
「それでぇ?」
「事件発生から3日後、つまり根黒先輩が来なくなった次の日ですね。先輩が真犯人と疑っていた男子生徒がいたじゃないですか?」
「いたわねぇ、あの日店から逃げる様に走って行った子。確か一年生の子だったかしらぁ?」
「その生徒がこの3日間学校を欠席しているんですよ」
「ふぅん………」
まだ罪悪感に苛まれた少年がその重圧に耐え切れずに休んでいるだけだとこじつけられなくもない。しかしこの後輩はさっき『連続』失踪事件と言ったのだ。
「そして昨日、今度は根黒先輩の面談を担当した生徒指導部の先生が無断欠勤しているそうなんです」
これで一気に事件性が増した。
同じ学園の人間が3人立て続けに学校を休んでいるのだ。
ジャーナリストとして何かが起こっていると見ない方がおかしい。
「それじゃあその案件は私が受け持つわぁ。貴女は他に学校を休んでいる人間がいないか調べて頂戴」
「了解しました」
「それとぉ」
「はい、何でしょう?」
「―――くれぐれもこのことは内密にねぇ」
(初めは気に入らない根黒くんをちょっと虐めるだけのつもりだったけど、思わぬスクープが釣れたわねぇ)
一人になった新聞部の部室で先程の報告を反芻する。
(さぁてどうしたものかしらぁ。まずは失踪前日の三人の動向から調べましょうかぁ)
鞄から自分用に特殊な改造を施したパソコンを取り出し、自作のソフトを立ち上げる。
「D-ハッカー、起動ぉ♪」
公式に流通している全てのD-パッドには、過去の戦績やメールのやり取り等を記録するICチップが搭載されている。普通は厳重にロックが掛けられていて本人以外見ることは出来ないのだが、このD-ハッカーはデュエル中に相手のチップを解析し、情報の閲覧を可能にする機能が備わっている。
(毎年新学期に勧誘ついでに手当たり次第デュエルするようにしてるからねぇ。生徒は全員分把握してると思うんだけどぉ…。先生ってなるとちょぉっと厳しいわねぇ)
さすがに教員全てを網羅するというのは難しい。だが校長や理事長といった特殊な役職を除けば、何かと理由を付けてデュエルしているはずだ。
(あ、あったあった。浮気の証拠とか興味深いのもあるけどぉ…。今気になるのはこっちねぇ)
ログを遡っている内に、ある共通点に行き着いた。
(さっきの一年生くんの履歴の中にあったのと同じ内容のメール。そしてその送信者はやっぱり……)
そこに記されている名前を確認し、ほくそ笑む。
(ふぅんそういうことねぇ。ってことは多分次にメールを受け取るのは……)
ピルル!ピルル!
D-ゲイザーがけたたましく着信を告げた。
メールを開き、内容を確認する。
(あらぁ?来たわねぇ♪)
「分かってるよ!」
ハンガーに架かっているブレザーを掴み、反対の手で鞄を拾う。
「ごめんねぇ毎日迎えに来させちゃって」
「いえいえ、幼馴染みですからこれぐらいは」
「ほんとに良く出来た子だねぇ。これで女の子だったらあの馬鹿息子を貰ってもらうんだけど…。……宗ちゃん、おばさんお金出しちゃうからタイに行く気ないかい?」
「ないです」
「何をアホな会話してんだ母ちゃん」
何とか用意を済ませ、家を出た。
「おはよ、武雄君」
「悪ぃ、待たせちまったか?」
「ううん、僕も今来たところだから。それじゃあおばさん、行ってきます」
「はいよ、行ってらっしゃい!」
あの一件以来、俺と宗介は昔の様に連れ立って学校に通うようになった。
「武雄君が寝坊するなんて珍しいね」
「昨日お前に習ったこと復習してたら寝るの遅くなっちまってな」
「それで、出来るようになったの?」
「まぁ一応ってとこだ。未だにレベルとランクの違いは分からんが。レベルを持たないってのとレベル0は違うのか?」
「うーん…、それはもうそういうものだと考えた方が良いと思うよ?僕だって完全に理解してる訳じゃないしね…。鶴岐さんなら上手く説明出来るんだろうけど」
確かに、鶴岐のデュエルに関する知識には目を見張るものがある。しばらくデュエルをやっていないというが、現役時代は相当の腕前だったのではないだろうか。
「そういやあいつ最近見ねぇが何してんだ?」
「シフト変わって夜勤になったらしいよ?朝と昼で別の仕事場でバイトしてそっから学園に来てるんだって」
「相変わらず目茶苦茶な仕事量してんな…」
「でも、カードにお金掛けてる訳でも無さそうだし、いったい何の為に働いてるんだろうね」
「さぁな」
あれだけ働いていれば、生活費を差し引いても相当の金額を稼いでいるはずだ。
だが鶴岐は金に困っている姿しか見たことが無い。
「意外に女にでも貢いでんじゃねぇか?」
「あはは……」
と、そんなことを話ている間に学園に到着した。
「ん……?何だありゃ?」
昇降口で靴を履き代えようとすると、下駄箱前に設置されている掲示板に大勢の生徒が集まっていた。
「学校新聞………の号外かな?」
「ってことはまた誰かのスキャンダルか…。ったく、毎回毎回よくやるぜ」
あの暴力事件の時には俺もネタにされた。その時は俺だけでなく宗介や雅也さんにも迷惑を掛けてしまった。それ以来こういうのは読まないことにしている。
いつも通り一瞥して通り過ぎようとすると、新聞に見覚えのある人物の写真が掲載されていた。
「雅也……さん?」
「え?」
宗介には身長的に見えていない様だが、あの写真は間違いなく雅也さんだ。
「お、おいちょっとどいてくれ!!」
両手で集まっていた生徒達を掻き分け、何とか人混みの先頭に身体を差し込んだ。
「なっ………!何だよこれ!!」
『生徒会庶務兼柔道部主将、カードショップで万引きで逮捕!?』
『信用の失墜やいかに』
『今日にも担当教師が詳細を聞く予定』
そこには、信じられない内容が書き連ねられていた。
「………ふ、ふざけんな!あの人がそんな事する訳ねぇだろうが!何かの間違いに決まってる!!」
「武雄君落ち着いて…!」
「これが落ち着いてられるか!草津の野郎!俺の次は雅也さんにこんな濡れ衣着せやがって!ぶっ飛ばしてやる!」
「そんなことしたらあの人の思う壷だよ!またそれをネタにして記事にされるに決まってる」
「じゃあどうすれば…!」
「草津先輩は、脚色はするけど嘘は書かない。とにかく今日あるっていう面談の結果を待とう。本当に何も無いのならそれで全部解決するはずだ」
「くそっ………!」
草津にも、この記事にも、何より何も出来ない自分に無性に腹が立ち、張ってあった新聞を思いっ切り破り捨てた。
「ふっ…!ふっ…!ふっ…!!」
どうにかして記事の事を頭から消そうと、無心に筋トレに打ち込んだ。
「今日はえらい早く来てるんだな」
「副部長……」
「まだ練習始まるまで1時間はあるじゃないか。………と言っても、俺も似たようなもんだがな」
「あの副部長、雅也さんは……」
その問いに、力無く首が横に振られる。
「顧問曰く、今日は早退したらしい」
「そんな……」
あの雅也さんが部活を休むというのは、それだけで一大事だ。
「どうにかしてこれが嘘だって証明できねぇのかよ!」
「俺も同じ気持ちだ。雅也とは中学の時からの付き合いだが、絶対にそんなことをする奴じゃなかった。自分どころか、周りにも被害が出る行為をあいつをするはずがない…!」
そう言うと、悔しそうに下唇を噛んだ。
「あらぁ?今日は根黒くん休みかしらぁ?珍しいこともあるものねぇ」
「「!!」」
武道場の入り口から掛けられた声の主は、誰あろう、草津栄その人であった。
「おっと、今日はもう帰っちゃったんだったけぇ」
「草津…!!」
「何しに来やがった…!」
「私がすることなんて一つしかないじゃなぁい。取材よ取材、今回の事件についてあなたたちから話を聞こうと思ってぇ」
「そんな取材受けると思っているのか」
「それならそれでいいのよぉ。柔道部の皆さんはノーコメントでしたって記事に変わるだけだからぁ」
この女、雅也さんをあれだけ貶ておいてまだ柔道部にまで手を出そうというのか。
「いい加減にしろよてめぇ…!」
怒りに任せて草津の胸倉に掴み掛かった。
「全部てめぇの記事が原因だろうが!あんな嘘ばっか並べ立てやがって!そのせいでどんだけ…!」
「あらぁ、私は嘘なんて書いてないわぁ。根黒くんの逮捕のことだってちゃんと疑問形になってたじゃなぁい。それを真実と取るかどうかは読者の判断であって私の責任じゃあないわぁ」
身長180㎝を越える俺にここまで迫られておきながら、顔色一つ変えずにそんなことを宣う。
「それにいつも言ってるじゃない、怪しまれる様な行動を取った根黒くんが悪いのよぉ。上の立場にいるってことはそれだけで注目を集めるのにねぇ」
「ふざけんな…!!」
衝動的に握り締めた拳を振り上げる。
「やめろ武雄!」
そこで宗介の言葉を思い出す。
『暴力を振るったらそれこそあの人の思う壷だよ』
「くそっ!」
仕方なく草津の襟から手を離した。
「ふん。あなた達も可哀相よねぇ。根黒くんのおかげで色々大変な思いしてるでしょぉ」
「草津、俺達だってまだ混乱しているんだ。今はそっとしておいてくれ。………そして、二度と俺達の前に姿を見せるな…!」
いつも冷静なあの副部長が、初めてはっきりと怒りを露にした。
「……あっそ、じゃあもういいわぁ。ほっといてあげる。今はあなたたちよりも根黒くんの面談の結果の方が気になるしねぇ。明日また号外作らないと。あぁ忙しいわぁ」
そう言って草津は武道場を後にしたのだった。
「このままじゃあいつに好き放題されたままじゃねぇか…!副部長!何か方法はないんすか!?」
「…悔しいが、草津の新聞には絶大な影響力がある。たとえ俺達柔道部全員が力を合わせたところでどうにかできるものじゃない」
「………!」
今まで雅也さんが築き上げてきた信頼が、仲間が、たった一つの誤解で全て崩れ去ってしまう。
そんなこと…、そんなことあっていいはずがねぇ…!!
「畜生……!ちくしょおぉぉぉ!!!」
―――
根黒くん逮捕の日から5日が経ち、学園中がその話題で持ち切りになった頃、ふと気になる情報を耳にした。
「連続失踪事件?」
「はい、何でもあの日早退して以来、根黒先輩は一度も学校に来てないそうなんです」
まぁそれだけなら大したことでもないだろう。問題を起こした生徒が停学になったか行きづらいからで学校に来なくなったというよくある話だ。
「それでぇ?」
「事件発生から3日後、つまり根黒先輩が来なくなった次の日ですね。先輩が真犯人と疑っていた男子生徒がいたじゃないですか?」
「いたわねぇ、あの日店から逃げる様に走って行った子。確か一年生の子だったかしらぁ?」
「その生徒がこの3日間学校を欠席しているんですよ」
「ふぅん………」
まだ罪悪感に苛まれた少年がその重圧に耐え切れずに休んでいるだけだとこじつけられなくもない。しかしこの後輩はさっき『連続』失踪事件と言ったのだ。
「そして昨日、今度は根黒先輩の面談を担当した生徒指導部の先生が無断欠勤しているそうなんです」
これで一気に事件性が増した。
同じ学園の人間が3人立て続けに学校を休んでいるのだ。
ジャーナリストとして何かが起こっていると見ない方がおかしい。
「それじゃあその案件は私が受け持つわぁ。貴女は他に学校を休んでいる人間がいないか調べて頂戴」
「了解しました」
「それとぉ」
「はい、何でしょう?」
「―――くれぐれもこのことは内密にねぇ」
(初めは気に入らない根黒くんをちょっと虐めるだけのつもりだったけど、思わぬスクープが釣れたわねぇ)
一人になった新聞部の部室で先程の報告を反芻する。
(さぁてどうしたものかしらぁ。まずは失踪前日の三人の動向から調べましょうかぁ)
鞄から自分用に特殊な改造を施したパソコンを取り出し、自作のソフトを立ち上げる。
「D-ハッカー、起動ぉ♪」
公式に流通している全てのD-パッドには、過去の戦績やメールのやり取り等を記録するICチップが搭載されている。普通は厳重にロックが掛けられていて本人以外見ることは出来ないのだが、このD-ハッカーはデュエル中に相手のチップを解析し、情報の閲覧を可能にする機能が備わっている。
(毎年新学期に勧誘ついでに手当たり次第デュエルするようにしてるからねぇ。生徒は全員分把握してると思うんだけどぉ…。先生ってなるとちょぉっと厳しいわねぇ)
さすがに教員全てを網羅するというのは難しい。だが校長や理事長といった特殊な役職を除けば、何かと理由を付けてデュエルしているはずだ。
(あ、あったあった。浮気の証拠とか興味深いのもあるけどぉ…。今気になるのはこっちねぇ)
ログを遡っている内に、ある共通点に行き着いた。
(さっきの一年生くんの履歴の中にあったのと同じ内容のメール。そしてその送信者はやっぱり……)
そこに記されている名前を確認し、ほくそ笑む。
(ふぅんそういうことねぇ。ってことは多分次にメールを受け取るのは……)
ピルル!ピルル!
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Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
ジャーナリストタイプは敵に回ると怖いですねぇ…。ただ動いている事態はそれだけじゃなさそうですね。 (2016-04-05 22:14)
コメントありがとうございます!
書いていて自分でもイライラしていましたw
》ター坊さん
コメントありがとうございます!
栄のイメージはGF(仮)の望月エレナを下種さ300%増しぐらいしたのをイメージしています。
それほとんど下種じゃねえか。 (2016-04-06 09:30)