逆転の切り札！女帝の力を解放せよ！　作：はにわ改

　
「ーー俺のターン、ドロー」

ターンを重ねる毎に厳しさを増す状況。
刹那の場に並んだ四大天使。
一万を超える刹那のライフ。
対策無しに越すことの出来ない次の刹那のターン。
むしろ、刹那によってライフを１ポイントも削られる事なく今までをよく凌いできたものである。
観客の一同もそれは認め、たとえここで負けたとしても、その健闘を讃えてくれるだろう。

ーーただ、透矢に逆転の手立てが無いわけではなかった。
朝早くからデッキを考え組み、一発逆転を生むコンボが仕込まれている。

ただそれには決定的に足りない、『１枚』。
その１枚が引ければーー。

そんな思いを馳せながらドローしたカード。
だがそう易々とは引き当てる事など出来ない。
３枚の手札を凝視しながら、透矢は必死に今、自分が出来る事を考える。

「（あのカードは引けなかったけど・・・この手札ならーー）」

急速に組み立てられる戦略。
そしてある程度の見通しを立てた透矢。
あの四大天使を倒すことに全力を注ぐ。

「ーースタンバイフェイズ！
『守護の鎧』の効果で、デッキから別の『守護の鎧』を手札に加える！」

ウリエルに倒された守護の鎧。
だがその効果は残存しており、デッキからもう１枚の守護の鎧を加えさせてくれる。

「更に、墓地の『女帝の裁き』の効果！
このカードをゲームから除外して、デッキまたは墓地から『女帝の聖杖』を手札に加える！」

「（『女帝シリーズ』を引いたわねーー）」

「俺は墓地から女帝を手札に加える！」

透矢は更に、２ターン前に発動した『女帝の裁き』の効果を使用。
コストとして使われた女帝を回収する。
だがそれは前のターンでも出来たはずであり、今それをしたという事は女帝が必要になったからだ。

刹那は女帝の存在には細心の注意を払っているようだ。

「手札から、『女帝の雷命』を発動！
手札かフィールドに女帝がある時に、手札かフィールドの『三騎士』と、相手の場のモンスターを１体ずつ破壊する！」

「（１対２交換・・・『女帝』カードにしては、ディスアドが目立つけどーー）」

「俺はこの効果で、手札の『影縫いの微刃』と、刹那の『ラファエル』を破壊する！」

発動された『女帝の雷命』。
刹那が感じたように、透矢は女帝の雷命含む、コストに三騎士と２枚を要求されるのに対して、刹那のカードは１枚しか破壊できない。
これだけならば、他に代替の利くカードもありそうなものだ。

とにかく、発動されたその効果により透矢は手札の『影縫いの微刃』を、刹那は『ラファエル』をそれぞれ破壊した。
刹那は『カオス・ホール』でラファエルを逃がすことも可能だったが、ここは敢えて見送る。

先ずは四大天使の一角を切り崩した。

「女帝の雷命の追加効果！
この効果で破壊した『三騎士』の同名カードをデッキから手札に加える事が出来る！」

「（なるほど・・・損失を回復して、実質ノーコストの破壊スペル・・・か）」

追加効果を聞いて刹那も一時は納得した・・・が。

「でも、俺はこの効果は使わない！」

「えっ？」

「使わずに、『影縫いの微刃』の効果を発動！」

「（ーーはっ！
しまった、『そっち』が透矢くんの本命ーー？！）」

理解力の早い刹那はすぐに察する。

「影縫いの微刃が効果で破壊された時、デッキから別の影縫いの微刃を墓地へ送る事で、相手の魔法・罠カード１枚を破壊する！」

「透矢くん・・・何て引きなのーー」

「俺はデッキから３枚目の影縫いの微塵を墓地へ送り、『カオス・ホール』を破壊する！」

透矢の真の狙いはカオス・ホールの破壊。
影縫いの微刃の効果を活かすための
女帝の雷命、とその２枚を引き当てた透矢のドローの力に、刹那は感銘を覚える。

「ならば私は破壊される前に、カオス・ホールの効果をチェーン発動！
対象は『リューゼリッド』よ！」

「・・・『Ｔ・Ｆモンスター』の除去耐性を発動。
墓地の『蒼き槍迅』をデッキに戻して、リューゼリッドを護る」

「了承。カオス・ホールは破壊されるわ」

刹那も抜かり無い。
破壊される前にカオス・ホールに最後の仕事をさせる。
当然防がれるが、墓地の素材モンスターを無駄に消費させる狙いだ。

それでもカオス・ホールを破壊し、これでもう混沌天使たちは自在に隠れる事は出来なくなったのである。

「更に手札から、魔法カード発動！」

そしてここまでの流れをコンボとして完結させる最後の一枚。
それが発動された。

「『トライ・フォーメーション』！」

「そのカードは！？」

「墓地に同名の三騎士が３体揃っているとき、その３体を素材とするＴ・Ｆモンスターを特殊召喚する！」

「（影縫いの微刃・・・女帝の雷命・・・そしてトライ・フォーメーションーー。
『英雄の落日』とこのターンのドローで、揃えたというの？！）」

驚愕する刹那。
だがそれも歓喜の思いへと変わる。

「（やっぱり君は・・・『あの人に選ばれたデュエリスト』！）」

「俺は影縫いの微刃を選択！
トライ・フォース・ユニオン、フォーメーション・『フュンフ』！」

刹那が思いを馳せる中、透矢は墓地に３体揃えた影縫いの微刃を対象に『トライ・フォーメーション』を発動。
墓地から３体の影縫いの微刃が場に姿を現す。

「真の闇を切り裂くため・・・自ら闇に堕ちた刃！
友を覆う暗き天を打ち払うべく、今、その魂を呼び覚ませ！」

３体の影縫いの微刃が黒い光と化し、それらが１つに融合。
黒く巨大な光の柱が生み出される。

「Ｔ・Ｆ召喚！
『影刃の淑女 ベアトリーチェ』！」

黒き真の闇から姿を現す、影を司る美しき淑女。
混沌天使と似た力を得る『ベアトリーチェ』が、透矢に逆襲をもたらす。