運命の奴隷

黒壱(クロイツ)
「
※

『……わたくしたちは、この場所で、他の子たちと一緒に、何かの実験を受けていたの』
共に施設を抜ける階段を登りながら、カサンドラはぽつり、ぽつりとカキツバタに語った。
残留思念としてこの場所に縛られていた彼女だが、カキツバタの術によって切り離され、カキツバタ自身の魂を共有させることである程度の自我を回復していた。
今はカキツバタの隣をふよふよと浮遊して憑き従っている。
『時折、出資者らしい貴族様が来られて、わたくしたちの実験の様子を見に来る他は、来る日も来る日も、よくわからない薬を打たれたり、図柄の書かれたカードを当てるゲームをしたり、頭に電気を流されたり、そんな毎日だった』
共有した精神から、当時の情景が流れ込んでくる。それは控え目に言って、「地獄」と呼んで差し支えない日々だった。
「ーーそれで？」
『わたくしは弟を守るために、進んで実験に参加していたの。でもわたくしは、ずっと遠い未来のことしか見えなくて、それが本当に正しい予知なのか、わからなかった。だからいっぱい薬を打たれて、今日のことも昨日のこともわからなくなって、いつとも知れない先の悪夢だけを見ていたわ」
浮かぶ映像。津波に押し流される街、地割れに飲まれる建物、竜巻で吹き飛ばされる人々、火災、噴火、落雷。ありとあらゆる災害が目の前で吹き荒れて、やがて闇に消えた。
『弟には、他人の心で会話できる力があったわ。優しい弟は、ずっとわたくしの心に話しかけて、わたくしが完全に、心を失わないようにしてくれていたの』
それまでと対照的に、儚げな銀髪の少年が親身に語りかけてくる情景が浮かぶ。いつも何かを堪えているようで、しかし姉に対してはいつも笑顔だった。
『でも、実験が酷くなるに連れて、弟が自分の気持ちを伝えてくれる頻度が少なくなっていった。声はかけてくれるけれど、もうヘレノスの気持ちはわからなかった。……今思えば、きっとその頃には、弟は憎悪に取り憑かれていたのね』
「仕方ないわよ。アタシだって、今妹をアンタの弟に拐われて、腹わたが煮えてしょうがないんだから」
拳を痛むほど握り締めて、カキツバタは苦く笑う。
『わたくしには、弟が悪い方向に進んでいることがわかっていたの。けれど、どうすることも出来なかった。わたくしにわかるのは、いつも最悪の結果だけで。どうやってそれが起こるかの過程は見えなかった』
哀しみと自責と、弟への葛藤が伝わる。
それを感じるたびに、カキツバタの胸に痛みが走る。
「それでアンタはーー」
『わたくしは、そのうちに薬のせいで、目も耳も使えなくなって、弟を止めることすらできないまま、サンプルとして解剖されて死んでしまった。何も得られない生で、何も残せない死だった。それは良いの。でも……』
カサンドラが両の手で顔を覆った。はらりと長い髪が、銀の軌跡を闇に残した。
『弟は、ヘレノスは、まっとうな道を選んで欲しかった。わたくしが生きて、残せたものが弟の不幸など、悲しすぎるーー』
カキツバタはツインテールに結わえた黒髪をがしがしとかいて、階段を登りきった。
「アンタの気持ちはわかった。でもアタシのやることは変わらない。アンタの弟、ヘレノスを止めて、妹を取り戻す。運命なんて、糞食らえよ」
」(2015-10-12 21:37)

夏将軍
「ほぼすべてのデッキを封殺できるカード。サイクロン等が無い限り相手の展開と攻撃を疑似ロックできるのでテンポアドバンテージや直接的なアドも取ることができます。さらには虚無空間のように、ありったけ展開してから相手をロックすることもできるので末恐ろしい。どうして

この重い雰囲気をブレイクしたい…したくない？」(2015-10-12 21:59)

黒壱(クロイツ)
「夏将軍さん＞
まぁ代償を払えば簡単に突破できるので、完全に封殺とまでは行きませんね。」(2015-10-12 22:01)

名無しのゴーレム
「よくあると言えばよくある子供を使った人体実験。なんだ、やっぱりこんな世界滅べばいいんじゃないか（錯乱）。
どうしてこうフルモンを完全封殺するようなカードが増えていくのか……とりあえずインフェルニティが息してません。」(2015-10-12 23:22)

黒壱(クロイツ)
「名無しのゴーレムさん＞
むしろインフェルニティならエキセントリックデーモンを通すついでに手札が減って万々歳なんじゃ？」(2015-10-12 23:27)