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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第3話 攫う人あらば攫う訳あり

第3話 攫う人あらば攫う訳あり 作:ハントラ

※展開が若干プロットと変わったのでタイトルが前回の次回予告と異なります。申し訳ありません。



『ユーラ…ユーラ、起きなさい…』

(この声は…誰だ?カレンとは違うし、あの女でもない。)

『あの子を…カレンを守るのよ、祖国フリエンの光となるあの子を…』

(フリエンの…光?カレンが?)

『あなたならきっとできる、私は信じていますからね。』

(待ってくれ!あんた誰なんだ!?フリエンの光ってなんのことなんだよ!?)

『すぐに…知ることになるわ……それじゃあねユーラ、もう時間みたい。』

(待て!待ってくれ!)










「はっ!?」

ユーラはガバッと飛び起き、あたりを見回す。もうすっかり日は暮れ、あたりに夜の帳が降り始めている。すぐそばに置いてあったランプだけでは現在地がどこなのかは分からなかった。
次に自分の身体を確認する。どうやら寝袋に入れられて眠っていたらしい。服もデュエルディスクもそのままで、盗られたものは何もない。

(ここは……どこだ?確か俺、誰かに眠らされて…)
「気がついたか、ワコード。」

後ろから声をかけられ、ハッと振り向くユーラ。そこには『仙』と書かれたチャイナ服の少女で、左目と鼻の穴、口以外を全て覆うように包帯をグルグル巻いていた。ホラーによくあるミイラ(またはキョンシー)と間違えられそうな格好だ。少女といったが、先ほどの声の高さからそう判断したのであって、実際は変声期を迎えてない少年かもしれない。

「ああ、警戒せずともよい。小生はお主に飯を作ってやったのだ。即席ラァメン、食うか?」

よく見るとその少女はどんぶりを持っており、その中から醤油ダシの香りと湯気が出ている。

「………いらない。」

眠らされる前に見た女性の腕と違う。とはいえ、あの女性の仲間であることは間違いないだろう。少なくともユーラは目の前のミイラとキョンシーの融合体のような少女は見たことなかった。こんな見た目の少女がいたら村中で話題になっている。教会で戦った女の目的が分からない以上、その即席ラァメンも受け取れるはずがなかった。毒でもいれられていたらたまったものではない。

「なんじゃ、いらんのか?心配するな毒など入っておらぬ。それともあれか?具が全く入ってないのが気に入らぬのか?まあその気持ちは分かるが、我慢しておくれ。玉ねぎ、もやし、メンマ、ワカメ…色々持って来たかったんじゃがなぁ…」
「……いい、あんた食ってくれよ。」
「よいのか!?いやぁかたじけない!ではおもむろにコショウを……ふぇっくし!」

どこからか胡椒の入った瓶を取り出し二、三回ラァメンにふりかける少女。だがかけすぎてしまったらしく、どこかばばくさい喋り方の少女はくしゃみをする。

「…あ、そういえば名前を聞いておらんかったのぅ、小生の名は『カダ=ドルーク』という、ピチピチの17歳乙女じゃ!」
「(女で合ってたのか…)……ユーラ、『ユーラ=ギス=オウディナ』だ。」
「ほう、中々よい名前ではないか。縮めて『ユーギオウ』というあだ名はどうじゃ?」

カダがいたずらっぽく笑う。

「『ユーギオウ』……いや、名前のユーラでいいよ。そのあだ名は俺には似合わない気がする。」
「そうか?いいと思ったんじゃがのう…ズルズル…辛っ!?」

麺を啜った瞬間、舌を出して左目を閉じるカダ。どうやら相当辛かったらしい。

「あれだけ胡椒かければそうなるだろ…」
「水!ユーラ、水!!はようせい、舌が死んでしまう!」
「(教会でデュエルしたあいつもそうだけど、なんかこいつら悪い奴って感じがしないんだよな…)無茶言うなよ、いきなり眠らされてここに連れてこられたんだぜ?あたりも暗くて現在地が分からない以上、水がどこにあるかも分からねーよ…」

「いや、案外近くにあるかもしれないぞ?」

今度は男三人と女二人(教会でユーラとデュエルした女とユーラを眠らせた犯人の二人)、そしてユーラのよく知るカレンが現れる。

「カレン!?」
「ユーラ……!大丈夫?この人に何もされてない?」

カレンが心配そうな顔でユーラに駆け寄り、身体の隅々を調べようとする。

「何かされたっていうか…勝手に自爆されたっていうか……」
「な、なんじゃとお主…」
「ホレ、持って来てやったぞお前の水筒。中身は紅茶だったよな?」

ウエスタンハットに白いワイシャツ、ホルスターのついたズボンといったまさに西部劇のガンマンのような男が、内容量500mlくらいの水色の水筒をカダに手渡す。

「うひー、ラァメンに紅茶とかどういうチョイスじゃ全く…だからモテないんじゃよスティングは…」
「モテないのとは関係ねーだろうが!だいたいその紅茶自分で淹れたやつだろ!?」

そこに、群青色の背中が大胆に開いたデザインのドレスを身にまとい、両目を覆うように黒い布地に羽を広げた金の鷲が大きく描かれたバンダナを巻いた少女が割り込む。前は一切見えていないはずなのだが、全く危なげなく二人の間に入っていく。

「忠告です。ティアの分析によると、現在カダの舌が受けているダメージは6割を超えています。早急な回復行動を推奨します。」
「んなこた言われなくともわかっとるわティア!ごくっ、ごくっ………ぶはー、ましになったか…」

キョンシーミイラとガンマンとティアと名乗る機械的な話し方をする少女の会話。仮装大会にでも来てるかのような気分だったと後にユーラは語る…。

「……さて、ユーラ君。それとカレン君。私の名はシュラウスという、そろそろ君達を狙った理由について話したいのだが…」

一番の年長者らしき男、シュラウスが口を開く。金髪で黒い礼服に身を包んだ彼は、この中でも一番態度が紳士的だったようにユーラは感じた。

「……ああ、お願いする。」
「ほう、素直だね。普通犯罪まがいのことをした我々のことなど信用できないと噛み付いてくるはずなのだが…」
「あんた達の会話を聞いてると、どうにも悪い人には見えないからな」
「…それが演技である可能性を考えたことは?」
「考えるだけ無駄だと思うけど?」
「………フッ、なるほどな、キルが気にいるわけだ…」
「でしょう?いやー、リーダーのお眼鏡に叶うようでよかったです。」

キルと呼ばれた女性が得意げに髪を掻く。

「さて、本題に移る前に…我々フリエン国民にとって最悪なニュースを教えなければならない…」

フゥ、とため息をつきシュラウスがまた話し始める。

「三日前、我がフリエン国王が逝去なされた…45歳の若さだった…」
「国王様が…?」
「そんな……」

その話がでた瞬間、さっきまで騒がしかったカダも、スティングも、ティアも、キルも皆重暗い表情で黙ってしまった。田舎ぐらしであったユーラとカレンは、国王の姿を見るどころか評判すら聞いたことはなかったが、この反応を見てきっと良政をする王であったのだろうと悟った。

「…話を続けよう。国王様には、二人の子女がおられた。しかし長女のラム様は、国王が何らかの理由で王家の証である指輪と共にどこかに預けられ、次女のレイズン様はまだ12になったばかりなのだ…親族にも、あまり良い候補は無く現在王国フリエンは存続の危機に立たされている…」
「そこに目をつけた反逆者達が、王家の血を絶やそうと息巻いている。実際、レイズン様はもう何度命を狙われたか分からない…現に今、行方不明だったはずのラム様の場所も反逆者達に知られてしまったらしいからな…」
「カレン…」
「…みなまで言う必要はありません、要は私が、行方不明だったフリエンの王女様だった…と言うことですね?」

カレンが右手の人差し指につけた指輪をかざし、指輪に付いた青い宝石を見つめる。その中には、ティアのバンダナと同じ羽を広げた鷲が映っていた。

「私が産まれてきてから持っていたというこの指輪の宝石には、月夜にかざすと羽を広げた鷲…フリエンのシンボルが映り、どの方向から見ても同じように見えるという不思議な仕組みでした。ただの捨て子に過ぎない私が、どうしてこのようなものを持っていたのか前から不思議に思っていたのです。…今やっと、この指輪の意味がわかりました。」
「(あの時聞こえたフリエンの光って、こういうことだったのか…)質問、いいか?」
「どうぞ」
「さっき、カレ…いやラム様?」
「カレンでいいですよ。私はまだその名前に慣れませんので」
「じゃあ遠慮なく…カレンの居場所がバレたっていうけど、その証拠は?あんた達が来るまでそういう気配は感じなかったんだけど…」
「フム、君達を昼食に誘った婦人のことは覚えているかね?」

ユーラとカレンは一人の女性の顔を思い浮かべる、最近夫がギックリ腰になってしまったエレナという婦人の顔だ。

「…まさか!?」
「そのまさかだよ、あの婦人は料理に毒を仕込んでいたのさ。反逆者達に『やらなければ夫の命は保証できない』と脅されてね…」
「恩着せがましい言い方はしたくないですけど、あの時私が教会に行ってなかったらどうなっていたか分からなかったです」

キルのその言葉を聞いた瞬間、カレンは震え上がる。もうすでに自分を狙う者達の手が伸びてきているという事実に。

「大丈夫か?」
「ええ、ちょっと辛いですが…シュラウスさん、続けてください」
「分かった…暫定政府は、カレン君をフリエン軍の本部があり比較的安全な王都まで移動させるべきとの判断をとった。我々はその護衛のため、王都から派遣されたフリエン軍の一員なのだよ」
「じゃあ、俺が連れてこられた理由は?」
「君は我々護衛チームに入ってもらうことにした、カレン君の知り合いは我々の中には一人もいない、そのような環境でカレン君に不安がらせることはなるべく避けたかったのだ」
「…ん?のう、リーダー。ユーラはともかくとしてリーダーまでラム様のことを『カレン』呼びするのか?」

カダが首を傾げて問いかける。

「ああ、外で本名を呼んでは反逆者達に正体をバレてまう危険性があるだろう?暗号のようなものだと思ってくれ」
「なるほどのう….」
「まあ、すでにこの会話を聞いているものには無駄だけどね…そこの茂みに隠れている君!いるのは分かっているよ!」


「くそっ!なんで分かった!?」

ガサガサと音を立てながら茂みをかき分けて現れたのは身長150センチくらいの小柄な男。葉っぱや小枝が衣服のあちこちに付着しているところを見るに、茂みに隠れていたというのは本当らしい。

「私の部下達は騒がしいものでね、人の会話に平気で割り込んで来るような奴らが、さっきの会話に全然入ってこなかった。そういう時、大体は周囲に敵の気配を感じとっているからね」
「リーダー、こいつを撃つのは俺に任してくれ」

スティングが一歩前に進み出て拳銃の早抜きのようにデュエルディスクを構える。

「クソが!こうなったら全員ぶっ倒してやる!」
「やってみろよ、三流殺し屋!格が違うってことを教えてやるぜ!」











次回予告 ※台本形式導入

夜営途中の護衛チームに、早速国家反逆者の牙が襲いかかる!

スティング「新入り、よーく見ておけよ!俺様の華麗な早撃ちデュエルを!」

カダ「どうせ一ターンで決めるんじゃろ?じゃ、朝になったら起こしてくれ。おやすみー」

ティア「ふわぁぁぁ…、スリープモードに…移行…」

キル「夜更かしは美容の天敵ですので、おやすみなさいですー」

スティング「ぐぐぐ……このアホ女ども……!!」

ユーラ「襲撃されてるってのにこの雰囲気…やっぱりこいつらなんか変だ!」

次回 闇夜の銃声







おまけ コメント返信

ユーラ「前回のコメントはこれだ!」
カレン「コメントありがとうございます!」

から揚げさんからのコメント

カレンちゃんの柔肌を傷つけない様にとカレンちゃんを丁重に寝かせていた対戦相手の女の子に、とても好感が持てました!巨乳な所や、です口調もとても魅力的ですね!

デュエルの方もお互いにカードの効果を最大限発揮して白熱した激闘を繰り広げていたので、とても見応えがありました!

お互いに相手の墓地肥やしや自爆特攻に対して何かあると推測していた所が、洞察力やデュエルの実力の高さが感じられまして、とても素晴らしかったです!

面白い小説をお書きになって下さってありがとうございます!次回も楽しみにしております!ご無理の無い様にご執筆頑張って下さい!応援しております!

質問の方をさせて頂きますが、対戦相手の女の子へのパイタッチはありますか?

カレン「はい、あの時寝かせてくれなかったらどうなっていたか…」
キル「問答無用でぶっ飛ばしていましたもんですからねー」
ユーラ「しょうがないだろ、そういうデッキなんだから…」

ユーラ「というか、墓地肥やしや自爆特攻に対し警戒心を抱くのは当然のことじゃ…」
キル「原作や他の方のデュエルSSに喧嘩を売るのはやめるです!」
ユーラ「え?」

シュラウス「更新は不定期になりそうだ、そこのところは作者にはどうしようもないらしい」
カダ「首を洗って待っていろ!ってことじゃな」
ティア「違います」

ユーラ「パイタッチ…?」
カレン「何ですか、それ?」
シュラウス「…純朴とは尊いものだ、そうは思わないかなスティング?」
スティング「なんで俺に聞くんだよ…」
カダ「教えようものならギロチン台は免れないじゃろうな…」
ティア「ではここで解説です、パイタッチとは…もがが」
カダ「怖いもの知らずかお主は!?」

※作者より
から揚げ様、ありがとうございます。パイタッチ…というか性的描写はこの先あるかもしれません。ただ、国家への反逆者達が相手、という設定のため相当エグい描写になると思いますので覚悟してください。


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